転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4524話

 何を思ってか、相澤がピクシーボブを煽るような事を言い、その結果として俺は土で出来たモンスターによって追われる事になった。

 とはいえ、結局はただの土のモンスターであり、例えばペルソナ世界で戦ったシャドウのように、魔法とかそういうのを使ってくる訳ではない。

 そんな訳で、土のモンスターは次から次に出て来たのを倒していたんだが……それによって何だかんだと時間が経ち、もう少しで4時になる頃……

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 森……いや、魔獣の森から緑谷達が姿を現す。

 それを見ては、さすがにピクシーボブもこれ以上は俺に構っている訳にはいかないと思ったのか、俺を追い掛けていたモンスターを解除して土に戻す。

 ちなみに俺とピクシーボブの騒動に気が付いたのか、あの子供もいつの間にか戻ってきている。

 もっとも、子供が俺を見る目は不機嫌そうな、不満そうな、そんな色だったが。

 

「やーっと来たにゃんね」

「……それを今言っても、説得力ないと思うわよ?」

「ぐぬぅ」

 

 取り繕った様子で言うピクシーボブだったが、マンダレイにそう言われると反論も出来ず言葉に詰まったらしい。

 これで最初からA組の面々が姿を現すと分かって、それで待っていて今のような言葉を言ったのなら、それなりに様になっただろう。

 だが、生憎とつい先程まで俺と遊んでいた……いや、一応訓練だったと言ってもいいのか? それが具体的にどっちにとっての訓練だったのかは微妙なところだけど。

 とにかくそんな風にしていたので、それを考えればマンダレイが言うように格好をつけても今更って気がしないでもない。

 とはいえ、森から出てきた他の面々は疲れ切っており、こちらの様子に気が付いてはいなかったようだが。

 

「けど……予想よりも早いわね」

「え?」

 

 ピクシーボブがA組の面々と話しているのをみていると、近くにいたマンダレイがそう呟くのが聞こえてきた。

 

「どういう意味です?」

「……まぁ、アクセルには言ってもいいかしらね。前もって雄英から貰っていた生徒達の資料を見る限りだと、この合宿施設に到着するのはもう1時間以上……5時から6時くらいになると思っていたのよ。でも、今はまだ4時を回ったところでしょう? これは私達の見積もりが甘かったのか、それともA組の生徒達が予想よりも優秀だったのか……アクセルはどっちだと思う?」

「それなら後者ですね」

 

 即座に断言する。

 するとマンダレイは少しだけ驚いた視線をこちらに向けてきた。

 

「何でそう思うの?」

 

 原作主人公とその仲間達だから。

 そう言えれば楽なのだが、まさかそのようなことを言える筈もない。

 

「夏休みに入ってからでも、色々と騒動があったからですよ」

 

 これは事実だ。

 具体的には、I・アイランドの一件が大きい。

 勿論、I・アイランドの一件に参加していない生徒達もいるが……良くも悪くも、I・アイランドの一件には大半の生徒が参加してる。

 そして1度の実戦は十数日、場合によっては数ヶ月の訓練にも勝る。

 特にこの世界のように原作のある世界ともなれば、余計にそのような事はある。

 それ以外にも、夏休みだからといって遊んでいる者だけではなく、夏休みだからこそしっかりと自主訓練をしていた者もいるだろう。

 そう考えれば、夏休み前のデータしか知らないマンダレイの予想外の展開になってもおかしくはなかった。

 

「その色々というのは?」

「あー……一応オールマイトから秘密だと言われてるので、もし知りたいのならオールマイトに聞いて下さい」

 

 マンダレイの問いにそう誤魔化しておく。

 実際、I・アイランドで起きた一件はそう簡単に話せるような内容ではない。

 タルタロス級の警備装置が用意されているにも関わらず、内部にいた裏切り者によってあっさりとタワーを占拠され、VIPが多数参加していたレセプションパーティも同様に占拠されたのだから。

 I・アイランドには世界中の多数の……それも名だたる大企業が出資をしている、この世界におけるサポートアイテムの最先端が集まっている。

 そんな場所が、内部の裏切り者の手によって制圧されたというのはとてもではないが表沙汰に出来る事ではない。

 実際、ニュースとかでもヴィランによる襲撃で一時的にI・アイランドが制圧されといったような事は報道されていたが、内部に裏切り者がいてヴィランと通じていたという点に関してはニュースではやっていなかった。

 つまり、隠しようがないヴィランの襲撃の件は情報公開しているものの、I・アイランドに裏切り者がいたという点については公開するつもりはないのだろう。

 そんな訳で、オールマイトからはI・アイランドの件については話さないように言われている。

 守秘義務……と呼ぶ程のものではないが、だからといってNo.1ヒーローから言われているのに、あっさりと破る訳にもいかない。

 実際、オールマイトも何かあったら自分に言うようにとバーベキューの時に言っていたし。

 相澤とかがI・アイランドの件についてどこまで知っているのかは分からないが……まぁ、オールマイトと同じ教師なんだし、相澤の場合は何かあれば俺達じゃなくてオールマイトに直接聞くだろう。

 

「オールマイトに、ね。……今更だけど、オールマイトが教師をやっているというのには、やっぱりまだどこか違和感があるわね」

 

 マンダレイがしみじみと呟く。

 実際その気持ちは分からないでもない。

 俺がこのヒロアカ世界に来てから、1年も経ってはいない。

 だがそれでも毎日のようにニュースでオールマイトの活躍を見ていたのだ。

 だからこそ、俺にとってもオールマイトは教師ではなくNo.1ヒーローであるという認識が強い。

 もっとも俺の場合はこの世界に原作があるのを知っているのもあってか、オールマイトがこの世界の原作の主人公である緑谷の師匠役的なところもあるのだろうと納得は出来る。

 だが、そんな俺とは裏腹に、この世界の住人にしてみれば、オールマイトというのは永遠のNo.1ヒーローという認識が強いのだろう。

 だからこそ、今年になって急にオールマイトが日本最高のヒーロー科とはいえ、雄英で教師になった事に違和感があってもおかしくはなかった。

 何しろ、何十年も日本のNo.1ヒーローだったオールマイトなのだから。

 

「A組も、そして多分B組も、最初は皆がオールマイトが教師というのには違和感があったと思いますよ、ただ、1学期だけでもオールマイトが教師として授業を受けてきたので、今では違和感も大分なくなってきたと思いますけど。……あー……」

 

 言葉の最後で微妙な感じになったのは、ピクシーボブが緑谷、轟、爆豪の3人に文字通りの意味で唾を飛ばしていたからだ。

 ピクシーボブ程の美人の唾だ。

 特殊な趣味を持つ者にとってはご褒美かもしれないが……幸か不幸か、緑谷達はそういう趣味の持ち主でなかったらしい。

 

「あー……うん。取りあえずちょっとは見逃してあげてちょうだい。アクセルとのやり取りで乱れたペースを元に戻そうとしているだけみたいだから」

 

 マンダレイの言葉に、そういうものか? と疑問に思う。

 とはいえ、それはつまり緑谷達がああいう目に遭っているのは、実は俺のせいかもしれないという事になるのか。……黙っておこう。

 そう思ったところで、峰田が緑谷を庇う振りをしてピクシーボブの唾を浴びに行ったが、それを察したピクシーボブは唾を飛ばすのを止める。

 

「ああ、あの子が……」

 

 マンダレイが峰田を見て、微妙な表情を浮かべつつ言う。

 峰田にしてみれば、緑谷を庇うというつもりはなく、単純にピクシーボブの唾を浴びたいからこその行動だったのだが、マンダレイにはそれが分かったのだろう。

 大人だけに、そういう……一種の倒錯した性癖についても理解があるといったところか。

 

「何で……何で止めるんだよ、ピクシーボブ! 俺に! 唾を! 掛けてくあべしっ!」

 

 峰田がピクシーボブに対して自分の欲望を口にした瞬間、梅雨ちゃんの舌が鞭の如く伸びて、峰田を叩き、吹き飛ばす。

 うわぁ……峰田の体重が軽いのも影響しているのかもしれないが、真横に数mも吹き飛んでいったぞ。

 

「凄いわね、あの子」

 

 マンダレイが梅雨ちゃんを見て、そう呟く。

 梅雨ちゃんも、魔獣の森を抜けてきた事で疲れ切っている筈なのに、こうして峰田を吹き飛ばすくらいの力は残っていたのだ。

 マンダレイ的には、それが驚きだったのだろう。

 

「梅雨ちゃんは、自主訓練にもかなり真面目に参加してましたしね」

 

 そう、梅雨ちゃんはかなり雄英の生徒としてはかなり真面目な方だ。

 もっとも、家のこともあってか毎日のようにとはいかなかったが。

 何でも両親は共働きなのもあり、弟や妹の面倒を見る必要があるらしい。

 

「……なるほど、あの子もアクセルの……そう、ピクシーボブ的に言えば、唾を付けた相手って事?」

「え? 何で急に?」

 

 マンダレイの口から出たのは、俺にとっても予想外の言葉。

 まさかそのような事を言われるとは思っていなかっただけに、戸惑う。

 

「だって、クラスメイトを親しげにちゃん付けで呼んでるんだし、そうかと思ったんだけど……違うの?」

「違いますね。というか、ちゃん付けで呼ぶのはそれなりに珍しいかもしれませんけど、それでも他にもそういう人がいてもおかしくはないと思いますけど? それに……梅雨ちゃんと呼ぶのは、本人からそうして呼んで欲しいと言われたからですし」

 

 梅雨ちゃんにしてみれば、友人から梅雨ちゃんと呼ばれるのは嬉しい事らしいしな。

 だからこそ、仲良くなった相手には梅雨ちゃんと呼んで欲しいと言ってるのだろう。

 そして、俺はクラスにいる女の中でも中心人物的なヤオモモや三奈と仲が良いのもあってか、比較的早く梅雨ちゃんとも仲良くなり、そういう風に呼んで欲しいと言われた。

 

「ふーん。まぁ、本人がそういう風に言ってるなら……あら、珍しいわね」

「え?」

「ほら、ピクシーボブを見て。珍しくドン引きしてるわ」

 

 マンダレイの言葉にピクシーボブに視線を向けると、なるほど、マンダレイが言うように峰田の一件でドン引きをしている。

 あるいは峰田が吹き飛ばされたのを見てドン引きした……とか?

 いや、さすがにそういうのはないと思うけど。

 

「ピクシーボブでもドン引きする事ってあるんですね」

「あのね、ピクシーボブを何だと思っているの?」

「……ちなみに、峰田は性格とか性癖とかそういうのは色々とアレだし、性欲の権化と呼ぶに相応しい存在ではありますけど、将来有望という意味では間違いないですよ。で、性欲が今も言ったようにもの凄いので、ピクシーボブが誘えば即座に飛び込んでくるかと」

 

 そう言うと、マンダレイは微妙な表情を浮かべる。

 実際、峰田のモギモギは敵を倒すのは難しいものの、拘束するという意味では大きい。

 それに本人がモギモギを使うと跳ね返るというのもあり、色々と使い勝手のいい個性ではある。

 ステインとの一件で弱点が炎と判明したが、それだって言わなければそうそう分からないだろう。

 ……炎系の個性って、何気に多いので弱点が知れ渡ると大変かもしれないが。

 また、競争率300倍の中で合格した生徒達が集まったクラスの中でも、トップクラスとまではいかないが、かなり頭の良い方だし。

 それでいて非常に女好きで、ピクシーボブは美人だ。

 そう考えると、何気に悪くない取り合わせのように思えるんだが。

 

「そうかもしれないけど……私も親友の結婚については祝福したいのよ」

 

 それは言い換えれば、マンダレイ的には峰田はピクシーボブの相手として相応しくないと言ってるようなものだった。

 さっきのやり取りを見れば、そういう風に思ってもおかしくはないけど。

 ただ、峰田は普段の態度はアレだし、爆豪と並んでA組代表のアレな奴ではあるが、やる時はやる性格をしている。

 それを普段から表に出していれば峰田もそれなりにモテるんだろうけど、本人がそういうのを好まないしな。

 いやまぁ、ありのままの自分を曝け出し、その上で好きになってくれる相手が欲しいという、峰田の気持ちも分かる。

 また、そういう相手がこのヒロアカ世界にいる可能性も十分にあり……その上で、そのような相手と峰田が実際に巡り会える可能性がどのくらいかと言われると……微妙なところなのは間違いない。

 その後も魔獣の森から出て来た面々とピクシーボブ、あるいはマンダレイは色々とあった。

 具体的には、一緒にいた子供がマンダレイの従甥……つまりはマンダレイの従兄弟の子供らしい。

 従甥っていう言葉自体、初めて聞いたかも。

 とにかくその従甥……洸汰というらしいが、その洸汰に話し掛けた緑谷の金的に思い切り拳を振るったり、それで緑谷が動けなくなって飯田が怒ったり。

 そんなやり取りがあったが……まぁ、うん。取りあえず無事に全員が魔獣の森をクリアし、それもピクシーボブやマンダレイの予想以上の早さだったという事で、初日の訓練にしては悪くない結果となるのだった。

 ……緑谷以外。

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