転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4527話

 猫好きっぽい相澤には悪いと思ったが、いつまでも猫の炎獣を出している訳にもいかないので、猫の炎獣を消す。

 そして相澤と別れて大部屋に戻ってくると……

 

「うわ、もう半壊状態だな」

 

 大部屋に敷かれた布団の中には、既にこうして見た感じだと半分以上が眠っていた。

 

「まぁ、仕方がないだろ。今日は何だかんだと厳しかったしな。……ふぁああぁぁあ……俺ももう寝るよ。お休み」

 

 俺が戻ってきたのを見た瀬呂が、そう言うと布団で横になる。

 爆豪は……もう寝ているな。

 峰田も同様に眠っている。

 今日の魔獣の森での一件で疲れ切り、空腹だったところで高校生が喜ぶような夕食を腹一杯食べ、温泉に入って疲れを癒やした。

 そう考えれば、こうしてもう眠っている奴が多いのも納得は出来る。

 ただ、相澤の話を聞く限りだと、今日はまだ軽いメニューだったっぽいんだよな。

 それを考えれば、林間合宿の本番となる明日からは一体どこまで忙しくなるんだろうな。

 そんな風に思いながら、俺も寝る事にする。

 ……俺の場合は他の連中と違って今日の午前中には既にこの合宿施設に到着していたし、その後もそこまで忙しくなかったので、そこまで疲れている訳ではない。

 とはいえ、だからといっていつまで起きていても仕方がない。

 世の中には何故か他人よりも長く起きている事に優越感を抱いたり、睡眠時間が短いのを自慢する奴とかもいるけど……まぁ、うん。そういう連中については俺がどうこうといったところで意味がないしな。

 このクラスにそういうのがいないように祈っておこう。

 ……爆豪辺りは煽れば普通にそういうのに乗ってそうではあるが、だからといってわざわざそんな事をしようとは思わないしな。

 

「お前らも、明日からは林間合宿の本番で忙しくなるんだから、早く寝て体力を回復しておけよ」

 

 まだ起きている数人に向かってそう声を掛け、俺も自分の布団で横になるのだった。

 

 

 

 

 

「ほら、起きろ。いつまで眠っているつもりだ」

 

 そんな声が聞こえ、意識が急速に覚醒してく。

 目を覚ますと、大部屋の中には相澤の姿があり、多くの者を起こしていた。

 既に明るくなっているので、真夜中って訳ではないのだろうが……

 そう思いながらスマホを手にして時間を確認すると、AM5:00ジャスト。

 うわ……夏だからまだこの時間でも明るいが、もし今が冬ならまだ真っ暗な時間だぞ。

 そう思いながら、俺は起きる。

 他の面々も、相澤の声で起きた者達は布団から出たり、相澤の声が聞こえても、まだ起きていない者達を起こしていた。

 

「相澤先生? 何でこんなに早朝に起こすのですか?」

 

 飯田が手を挙げて相澤に聞いているものの、それでもやはり早朝ということもあってか、いつもはピンと伸ばされている飯田の手は、微妙に曲がっていた。

 

「決まっている。合宿だからだ。早く起きないと朝食は抜きになるぞ」

 

 そう告げる相澤の言葉に、食欲の大きい者達は素早く起きるのだった。

 

 

 

 

 

「おはよう、アクセル」

 

 昨日と同じ食堂で朝食を食べていると、そう声を掛けられる。

 声のした方に視線を向けると、そこには耳郎の姿があった。

 いや、耳郎だけではなく、A組の女が全員揃っている。

 

「おはようさん。それより、早く食べないと時間がなくなるぞ」

「俺達は5時おきだったのに、女子はもう少し寝ていられたのかよ。羨ましいな」

「上鳴……あんた……刺すよ」

「え? ちょ……耳郎……さん?」

 

 ゆらり、ゆらりと揺れる耳郎のイヤホン。

 それはまるで、蛇が獲物を狙っているかのような、そんな動きだった。

 それを見た上鳴は、気迫に押されてしまったらしい。

 上鳴も馬鹿だな。

 女というのは、身嗜みに時間が掛かる。

 男なら……特にその辺が雑な奴なら、それこそ寝起きの10分で全ての準備を整えて学校に向かうといった事が出来たりもするが、女の身嗜みは時間が掛かるのだ。

 この辺は恋人達と同棲をしている俺にしてみれば、非常に分かりやすい。

 ……とはいえ、そういう経験のない上鳴であっても、そのくらいは予想出来てもいいようなものだと思うんだが。

 勿論耳郎達だって、今日は別にどこかに出掛けたりする訳でなく、あくまで林間合宿の訓練だ。

 であれば、化粧とかそういうのは最低限でもいい筈だ。

 だが、それはそれでやっぱり時間が足りないのは間違いなく、だというのに上鳴にその辺をからかわれたから、耳郎が耳郎さんになってしまったのだろう。

 耳郎のイヤホンが暫く空中を動いて上鳴を狙っていたものの、やがて許したのか、どうでもよくなったのか、あるいは何かそれ以外の理由なのか。

 ともあれ、耳郎は空いている席に向かう。

 耳郎がいなくなった事で安堵する上鳴に、周囲で一緒に食べていた他の何人かが責めるような視線を向けていた。

 上鳴にしてみれば、別に険悪な雰囲気にするようなつもりはなく、ただの朝の挨拶のつもりだったのだろうが……その内容をミスった感じだな。

 

「いいか、上鳴。重要な事を教えてやる。女の身支度については、何があっても不満を言うな。これは買い物についても同じだが」

「お、おう」

 

 俺のアドバイス……というか、林間合宿の間、毎朝のように今のような雰囲気にして欲しくはないので、そう言っておく。

 上鳴はチャラい奴だし、そういう意味では女を相手にしては駄目な話題とか、そういうのを知っていてもいいと思うんだが。

 ただ、今の様子を見る限りでは決してその辺りに問題がない訳ではないらしい。

 とにかく朝食という事もあって簡単な料理を食べ終わると、すぐに合宿施設の前に集合する。

 

「おはよう、諸君。本日から本格的に強化合宿を始める。この合宿の目的は、全員の強化及びそれによる仮免の習得。具体的になりつつあるヴィランの敵意に立ち向かう為の準備だ。心して掛かるように」

 

 そう言うと、相澤は見覚えのある……個性把握テストの時に使ったボール投げのボールを取り出す。

 わざわざどこまで飛んだのかを計らなくても相澤の手元に飛距離を教えてくれる優れ物だ。

 

「アクセル……は、駄目か。そうなると爆豪でいいか」

 

 相澤がそう言って俺ではなく爆豪にボールを渡す。

 まぁ……うん。自分で言うのも何だけど、俺があのボールを投げた時は色々と大変だったしな。

 麗日のように無限とまではならなかったが、それでも市街地まで飛んだし。

 そういう意味では、俺ではなく爆豪にやらせるというのも分からないではない。

 

「爆豪、これを投げてみろ」

「……ヒモ野郎の代わりか……」

 

 小さく呟く爆豪の声が聞こえてくる。

 そこには強い悔しさが滲んでる。

 ……それでいながら、憎悪といったものがないのは、爆豪らしいところだろう。

 あるいは原作において主人公の緑谷のライバル的な存在だからというのもあるのかもしれないが。

 もっともライバル的な存在については、それこそいわゆる闇落ちをするような者だったりがそういう役割だったりする事も多いので、もしかしたら爆豪が何らかの理由で闇落ちし、ヴィラン側についてしまう可能性も十分にあるのだろう。

 爆豪は元々ヴィラン寄りの人物なのは間違いないし。

 ともあれ、爆豪は悔しそうな表情を浮かべて一瞬俺を睨んだものの、すぐにボールを握り……

 

「く・た・ば・れぇっ!」

 

 そう叫びながらボールを投擲する。

 

「……ねぇ、今のって……」

 

 近くにいた三奈が、俺を見ながらそう言ってくる。

 うん。まぁ、今のくたばれってのが誰に向けての言葉なのかは、俺にも容易に理解出来てしまった。

 投げる前に俺を睨んだのを見れば、それこそ誰であっても容易に想像出来るだろう。

 

「取りあえず特定の人物に向けたものではないと思う事にする」

「うん、そうだね。頑張ってね」

 

 いや、何を頑張れと?

 そう思ったが、取りあえず今は黙っておく。

 そして投げられたボールは……

 

「709.6m」

 

 相澤が手元の装置でどれだけの距離飛んだのかを確認し、そう言う。

 

「え?」

 

 相澤のその言葉に、そう声を上げたのは一体誰だったか。

 もっとも、声を上げたりはしなくても、殆ど全員がそのように思ったのは間違いない。

 何しろ投げた本人ですら、その記録が信じられないといった表情を浮かべているのだから。

 そんな面々に対し、相澤は落ち着いた様子で口を開く。

 

「お前達が雄英に入学してから、約3ヶ月。ヴィランの襲撃を含めて、色々な経験をしてきた。そういう意味では、お前達は間違いなく成長している。だが……それはあくまでも精神面や技術面。後は多少……」

 

 そこまで言った相澤は、ふとそこで一旦言葉を切って俺の方を見ると、再び口を開く。

 

「いや、かなり成長しているかもしれないが、あくまでもそれは体力的な成長や身体の動かした方といったのがメインだ。個性もそのものは今の爆豪のボール投げを見れば分かる通り、そこまで成長していない」

 

 これ、俺を見て言い直したのは俺の自主訓練に参加している者達は何だかんだと強くなっているというのをミッドナイトとかから聞いてるからなんだろうな。

 だが……そうか。個性については確かにより上手く使いこなすといった事はしていたが、個性そのものを成長させたりはしていなかったな。

 

「今日から君らの個性を伸ばす。……死ぬ程キツイが、死なないように」

 

 そう相澤が言うと、そのタイミングを待っていたかのように……いや、実際に待っていたのだろうが、ピクシーボブとマンダレイ。それに昨日はいなかったラグドールと虎が姿を現す。

 

「煌めく眼でロックオン!」

「猫の手手助けやって来る!」

「どこからともなくやって来る……」

「キュートにキャットにスティンガー!」

『ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!』

 

 全員の声が揃う。

 多分こういうのって、しっかりと練習してるんだろうな。

 でないとこんなに息が合った名乗りは出来ないし。

 相澤は……と視線を向けると、あれ?

 てっきりプッシーキャッツの行動に苛立ちを見せているかと思ったら、別にそういう事はないな。

 特に何を感じているでもなく、黙って見ている。

 いやまぁ、それはそれで構わないんだけどな。

 あるいは相澤も何だかんだとプロヒーローなんだし、こういうのには慣れているのかもしれないな。

 もしくは、ふーん……といった感じで、特に何も気にしていないか。

 

「さて、プッシーキャッツの皆さんの協力によって、これから全員がどういう訓練をすればいいのか、知る事が出来る」

「相澤先生、それはラグドールのサーチですか!?」

 

 緑谷が手を挙げ、相澤にそう尋ねる。

 相澤はそんな緑谷の言葉に素直に頷く。

 

「そうだ。正確には……」

「あちきの個性のサーチで見た人の情報とかを分析して」

「私の土流でそれぞれの鍛錬に見合う場を形成!」

「そして私のテレパスで一度に複数に相手にアドバイス」

「そこを我が殴る蹴るの暴行よ」

 

 ラグドール、ピクシーボブ、マンダレイ、虎がそれぞれ順番に言う。

 言うのだが……虎の発言には問題ないか?

 他の3人とちがって、殴る蹴るといった事を普通に言ってるし。

 

「そんな訳で、それぞれラグドールのサーチによってそれぞれの個性について聞くから順番に並ぶように。……ああ、アクセルは一番最後にしてくれ」

 

 プッシーキャッツの面々のやり取りが終わると、相澤がそう指示を出す。

 指示を出すのだが……

 

「えっと、俺が最後ですか?」

「そうだ。アクセルは特殊だからな。アドバイスをするにしても、じっくりと時間を使いたい」

 

 特殊?

 ……というか、ラグドールのサーチを使われた場合、俺ってどうなるんだ?

 当然ながら、俺の混沌精霊というのは個性ではない。

 俺の能力……というか、俺の種族だ。

 そうなると、ラグドールのサーチで俺の個性を見ようとしても、俺はどのように映るのか。

 単純に無個性となるのか、それとも文字化けするのか……いやまぁ、俺のステータス画面と同じようになるかは分からないが。

 あるいは俺のステータス画面とは違い、もっとこう……本能的に分かるのかもしれないが。

 とにかくそうなると、俺がどのように認識されるのかは分からない。分からないが……あれ? ちょっと待った。それだと、何故相澤が俺を特殊だと判断して一番最後に回すとか、そういう事をするんだ?

 わざわざそんな事をする必要はないと思うんだが。

 つまり、相澤は俺が何か特殊な存在だと認識しているとか?

 ……まぁ、個性事故によって龍子や優が後見人となり、公安からの紹介で雄英の入学試験に参加したんだから、そういう意味で特殊なのは間違いない。

 だが、それでもこれからどうするべきかというのが問題だな。

 逃げるか?

 一瞬そうも思ったが、間違いなく面倒な事になるだろう。

 それは俺としても遠慮したい訳で……

 そうだな。最悪の場合、公安に連絡をして話を通して貰った方がいいか?

 そう考えていると、ふと視線を感じた。

 視線の主を見ると、そこにいたのは相澤。

 うーん……さすがにこれを偶然で片付けるのは無理があるか?

 そう思いながら、俺はラグドールの前に作られた列の一番後ろに並ぶのだった。

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