転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4529話

 空高くから降ってきたウサギの耳を持つ女は、かなりの高度から俺のいる側に落ちてきたというのに、その衝撃をかなり殺し、無事に着地する。

 

「ミルコ? 一体何でここに?」

 

 気配から予想した通りのプロヒーローの登場に、俺は思わずそう尋ねる。

 ミルコは現在日本のプロヒーローの中で、唯一ヒーロービルボードチャートのトップ10に入っている女のプロヒーローだ。

 顔立ちも整っており、子供好きな一面もあってか、かなり人気が高い。

 勿論、それは実力あってのものだろうが。

 そんなミルコだけに、とにかく忙しい。

 ……もっとも、緑谷から聞いた話によると、ミルコは龍子や優のようにどこかに事務所を持たず、好き勝手に日本中を飛び回って……もとい、跳び回ってはヴィランを倒しているらしいが。

 というか、事務所の類がないという事は当然ながら事務員の類もおらず、それはつまり公安とかに提出する書類は全部ミルコが自分で書いているという事になるのだが……俺が見る限りだと、ミルコは決してその手の作業が得意なようには見えない。

 実際、緑谷の話だとその辺りはプロヒーローの間にある謎の一つだって話らしいし。

 そんな風に思っていると、着地したミルコが顔を上げる。

 

「はっはぁ、久しぶりだな、アクセル。雄英での試験以来か。随分と活躍しているみてえだな」

「そうですね。で、ミルコは一体何でここに?」

 

 かなりの有名人であるミルコがこうしてやって来るというのは、俺にとってはかなり予想外だった。

 そういう意味では、俺の疑問は当然だっただろうが……

 

「あ? 何だ、私は呼ばれたからやって来たんだぜ? なぁ、イレイザー・ヘッド」

「ああ、俺がミルコを呼んだ」

 

 ミルコの言葉に相澤はあっさりとそれを認める。

 だが、それを認めはしたが、一体何の為にミルコを呼んだのかと言えば……まぁ、俺の存在が色々な意味で怪しいからだろう。

 もし何かがあった時の抑止力として、ミルコを呼んだという事か。

 とはいえ……それはちょっと俺を甘く見すぎじゃないか?

 これが、例えばオールマイトや……あるいはオールマイトに次ぐNo.2のエンデヴァーならともかく、ミルコとは。

 いや、これは別にミルコを侮ってこのように言ってる訳ではない。

 実際にミルコは間違いなく日本のプロヒーローにおいては、上澄み中の上澄みたる1人だろうし。

 

「話は分かりましたけど、呼んだからすぐ来られるような人じゃないでしょうに」

「昨日、お前の炎獣が抹消で消えなかったのを確認してから、ヒーローネットワークで呼んだからな」

 

 ああ、なるほど。昨日の時点で呼んでいたのか。

 それなら、今こうしてタイミング良く到着したのも分からないではない。

 ちなみにヒーローネットワーク、略称HNというのは、プロヒーローだけが使えるネット……というか、掲示板? チャット? とにかうそういうネットにだ。

 相澤もミルコも、プロヒーローだからこそ、HNを使って連絡が取れたのだろう。

 もっとも、それならそれこそオールマイトやエンデヴァーを呼べいいんじゃ? と思わないでもなかったが。

 あるいは、No.1とNo.2だけに、双方共にやるべき仕事が多くて、手が回らなかったとかか?

 特にオールマイトの場合は、プロヒーローとしてはNo.1なのは間違いないが、それ以外にも教師の仕事があったみたいだしな。

 だからこそ、今のオールマイトは忙しくても仕方がないとは思う。

 

「なるほど、随分と手回しがいいですね」

「お前の力は未知数だ。そうである以上、しっかりと準備を整えるのは当然だろう」

 

 期末テストでちょっとやりすぎたか?

 お守りをしているとはいえ、それでもプロヒーローの教師を多数、しかもオールマイトやミルコといった面々まで倒しただけに、相澤が俺の実力を未知数だと称してもそうおかしな事ではない。

 

「さて、これでプロヒーローが6人揃った訳だが……どうする?」

「どうする、とは?」

「俺としては大人しく捕らえられてくれれば、助かるんだがな」

 

 そう相澤が言うと、ミルコは先程まで普通に俺と話していたのに、今はやる気満々といった様子で俺を見てる。

 まさに、獲物を見る獰猛な肉食動物の視線で。

 ……あれ? ウサギって肉食動物だっけ?

 少しだけそのように疑問に思ってしまった俺は、決して間違ってはいないだろう。

 プッシーキャッツの面々も、合図があったらすぐに俺を取り押さえる気満々といった様子だし、相澤も捕縛布をいつでも使えるようにしている。

 いや、これ本当にどうしたらいいんだろうな?

 勿論、この場にいる全員を倒す……殺すのではなく、倒すのは、俺にしてみればそう難しい話ではない。

 ではないが、だからといってそんな事をすれば、俺としてもこれからの行動がしにくくなる。

 それこそ最悪の場合、雄英を追い出されかねなかった。

 公安からの依頼がある以上、それは避けたい。

 いや、公安からの依頼がなくても原作主人公の緑谷が雄英にいる以上、雄英からいなくなるのは是非とも避けたかった。

 となると、何らかの方法で……それも荒事ではない方法でこの場をどうにかするしかない訳で……駄目だな、これは。

 

「ちょっといいですか?」

「……何だ? 大人しく降伏するのか?」

「いえ、少し連絡を入れたおきたいところがあって」

「……それは、お前が所属する組織か?」

「微妙なところですね。どちらかといえば、仕事の依頼先という表現の方が正しいかと」

「何だと? 一応聞いておくが、ヴィランという事はないだろうな?」

 

 一応とかそういう風に聞いてくるという事は、相澤の目から見て俺はまだヴィランという扱いではないのだろう。

 USJの件でヴィラン連合の手の者で、信頼を得る為にそうした的な感じでは言っていたものの、あれはブラフだったらしい。

 

「違いますよ。寧ろ相澤先生達の方が親しい組織だと思います。……公安は」

「公安だと?」

 

 さっき少し話題にも出た事があってか、公安という単語を聞いた相澤が苦々しい様子を見せる。

 この感じからすると、やっぱり相澤的に公安という組織はそこまで信用出来る相手ではないらしい。

 まぁ、以前の公安は色々と問題があったらしいし、そういう意味ではまだプロヒーローからの信用を完全には取り戻せていないのだろう。

 そういう意味では公安もまだまだこれからか。

 といっても、プロヒーローとして活動する以上は纏め役は必須なので、公安は疑惑を抱かれつつも必要といったところなのだろう。

 

「はい、公安です。相澤先生も知っての通り、俺の後見人はリューキュウやマウントレディですが、他にも公安がいます。……というか、本当の意味での後見人となると公安になりますね」

「……分かった。連絡をしてもいいぞ」

 

 俺の言葉にどこまで納得したのかは、分からない。

 分からないが、それでもそうしなければ話が進まないとでも判断したのか、相澤は俺の言葉に頷く。

 チラリと他の面々を見ると、プッシーキャッツの4人はいきなり公安が出てきた事で戸惑った様子を見せており、ミルコは話はどうでもいいから戦わせろといった様子に見える。

 うーん……ミルコ……いやまぁ、俺としてもこのヒロアカ世界におけるトップクラスの実力を持つ相手との戦いというのは、かなり興味深いものではあるが。

 何しろ、俺と親しいプロヒーローは、龍子と優だ。

 どちらも戦闘時にはドラゴンに変身したり、あるいは巨人に変身して戦うので、こう……言い方は悪いが、人型機動兵器的な存在に近い訳で。

 それに対し、ミルコは実技試験の時にもそうだったが、あくまでも生身での戦いがメインだ。

 いやまぁ、プロヒーロー全体で見た場合、龍子や優の方が特殊なんだろうが。

 ともあれ、多くの視線が向けられたままスマホを手に取る。

 合宿所からちょっと離れているので心配だったが、ここまできちんと電波は来ていた。

 その事に安堵しながら、目良の電話番号に掛ける。

 

『もしもし、アクセルさんですか? 申し訳ありませんが、サポートアイテムの方は……』

 

 ワンコールあったかどうかといった素早いタイミングで、目良が電話に出ると、すぐにそう言ってくる。

 どうやらI・アイランドで俺が使った結果ステータスのスキル欄が増えた件で要望した、あのサポートアイテムについての催促の為に連絡をしてきたと思ったらしい。

 目良の声は当然ながら俺以外の面々……相澤とかにも届いており、一体何の事だ? といった視線を向けられる。

 相澤にしてみれば、恐らく今の会話もそれはそれで興味深い内容ではあったのだろう。

 だが、そんな相澤の視線はスルーし、電話の向こうの目良に向かって口を開く。

 

「いや、その件じゃない。勿論、そっちでも出来るだけ動いて欲しいとは思っているけどな。今日連絡をしたのは、ちょっとしたミスでどうやら相澤先生……イレイザー・ヘッドに俺がヴィランの協力者じゃないかといったように疑われてな」

『……は?』

 

 目良は数秒の沈黙の後、そんな声を漏らす。

 どうやら目良にとっても、俺からの報告は予想外だったらしい。

 いやまぁ、目良の立場になってみれば、そんな反応になるのは分からないでもなかったが。

 

「そんな訳で、悪いが目良の方から色々と説明をして欲しい」

『えっと、その……どこまで、ですか?』

 

 どこまで、か。

 相澤の性格を考えると、中途半端に説明をしても意味はない。

 ……いや、それどころか一体何がどうなってそうなったといったように鋭く突っ込んで来る筈だ。

 であれば、俺のカバーストーリーとかそういうのではなく、話せる内容を全て話してしまった方が分かりやすい。

 寧ろそちらの方がこれからは色々と隠す必要がない分、気楽ですらあるだろう。

 ただし、そうなれば当然ながら相澤だけに話すといった訳にはいかず、校長を始めとした面々にも話す必要が出てくるだろう。

 そうなれば……そうだな。

 

「今日はまず大雑把に。詳細については林間合宿が終わった後で、雄英の教師達……具体的にどのくらいの面々になるのかは分からないが、とにかくそういう感じでどうだ?」

『はぁ……分かりました。雄英の教師にというのは上司に説明する必要がありますが……根津校長が相手なら、恐らく許可されるでしょう』

 

 校長、何気に顔が広いというか、信頼されてるな。

 

「分かった。じゃあ、代わるぞ」

『はい、お願いします』

 

 目良がそう言ったのを確認し、俺は持っていたスマホを相澤に渡す。

 すると相澤は少し待ってるように視線で言うと、俺から離れて森の奥に向かう。

 

「……何だか、予想していたよりも随分と大事になってきた気がするわね」

 

 相澤が離れたところで、マンダレイがポツリと呟く。

 そのマンダレイが俺に向ける視線には、戸惑いの色がある。

 いや、マンダレイだけではなく、ピクシーボブも同じか。

 俺と今日会ったばかりのラグドールと虎はそこまで気にした様子を見せてはいなかったが。

 ミルコは……まぁ、うん。

 俺と戦えないのを残念そうにしているのは間違いなかった。

 いや、残念というか不満か?

 

「こういう事にならなければ、大袈裟な事にはならなかったですけどね」

 

 実際、マンダレイは大事と言ってはいるが、具体的にどのくらい大事なのかは恐らく本人は理解していないだろう。

 何しろ、異世界の国が絡んでくるというのを思えば、マンダレイには全く予想出来ていない筈だ。

 ……いやまぁ、このヒロアカ世界しか知らない者達に異世界の存在を想定しろと言う方が難しいだろうが。

 その点については、俺としてもそれは仕方がないとは思うが。

 

「アクセルがそういう風に言っても、明らかにおかしいんだから、イレイザーが今のような対応をするのは分からないでもないでしょ」

 

 俺とマンダレイの会話を聞いていたピクシーボブが、そう言ってくる。

 うん。まぁ……まさか、俺に気が付かれないように炎獣に対して抹消の個性を使うというのは予想外だったんだよな。

 いやまぁ、相澤の性格を考えれば効率を優先して猫の炎獣に抹消の個性を使うという事を考えてもおかしくはない。

 

「それは否定出来ませんけどね。とはいえ、これからの事を考えるとちょっと面倒なことになりそうですね」

「……それをすっきりする為にも、私と戦わないか?」

「いや、何でそうなるんです?」

 

 ミルコの誘いにそう返す。

 これが例えば、戦うのではなくデートとかそういうのなら、俺としても考えないではない。

 だが、これが戦いとなれば当然ながら話は変わってくる。

 ミルコとの戦いは楽しみと言えば楽しみではあるけど……だからといって、今この状況でやりたいとは思わない。

 あ、でもそうだな。

 もし俺についての情報が広まったら、狛治を召喚してミルコと戦わせてみてもおかしくはないな。

 もしくはグリとか……刈り取る者とか。

 

「うん? 何かおもしろそうな事を考えなかったか?」

 

 野生の勘、あるいは女の勘なのか、とにかくミルコは俺に向かって興味深げに尋ねてくるものの、俺はそっと視線を逸らすのだった。

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