転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4531話

 ガサガサと、茂みを掻き分けるようにして相澤が姿を現す。

 ……あれ? 目良と話をする時は茂みじゃなくて普通に歩ける場所を移動していた筈なんだが。

 そんな疑問を相澤に向けると、その相澤も俺のスマホを持ったままこちらに呆れの視線を向けていた。

 

「どうしたんです? 目良との話は終わったんですよね?」

「……いや、それはそうだが……何でミルコを反対にして持っているんだ?」

 

 相澤の言葉に俺は自分の手が持っているミルコの足を見る。

 その先には当然ながらミルコがブラブラとぶら下がっていた。

 

「いや、成り行きで……っていうか、起きろよ」

 

 ミルコは俺の手に握られた状態ではあったのだが、そのような状況でも普通に眠っていた。

 頭に血が上るとか、あるいは耳は地面に擦れて痛いとか、そういうのについては全く気にした様子もなく眠っていたのだ。

 この状況でよく眠れるな。

 そう思いながら、俺は手を放す。

 すると次の瞬間、ミルコは空中で身体を捻って足で地面に着地する。

 この辺りの咄嗟の対応は素直に凄いよな。

 

「よし、蹴るか!」

「だから止めろって。……えっと、まぁ、そんな感じでこういう事になってました」

「……そうか。ほら」

 

 相澤は何と言えばいいのか分からない様子で頭を掻くと、俺にスマホを返している。

 返されたスマホを見ると、既に目良と電話は切れていたらしい。

 

「それで、どうなったんです?」

 

 相澤の様子から、取りあえず敵対ルートの類はないと判断してもいいっぽいな。

 その事には安堵しつつ、それも当然かと思う。

 目良が相澤にどの辺りまで事情を説明したのかは、俺にも分からない。

 分からないが、もし相澤が完全に納得するだけの情報を話していたら、相澤の判断だけでどうにか出来る訳でもないだろうし、ある程度の情報であってもそれは同様だろう。

 つまり、相澤にとって自分の判断で俺を拘束するとか、そういうのは出来なくなってしまった訳だ。

 もっとも、元々相澤が俺を拘束しようとしたのは俺が謎の存在……相澤の個性の抹消でも俺の個性――という事になっている炎獣――を消したり出来ず、ラグドールの個性のサーチを使っても俺についての情報を見られないといった、そんな謎の存在だったからだ。

 そんな謎の存在がヴィランであったらどうなるか。

 そう考えれば、他の生徒達の安全の為もあり、念の為に俺を捕らえようと考えてもおかしくはない。

 もっとも、公安からの保証があったのだ、今は一応止めたらしいが。

 

「取りあえず保留だ。林間合宿が終わってから、校長を始めとした他の面々に公安から詳しい事情を説明するという事になった」

 

 どうやら俺の予想通りの展開になったらしい。

 

「そうなると、俺の対応はどうなるんです?」

「取りあえずは今まで通りだ」

 

 なるほど、この辺については相澤の要望か? それとも目良か?

 まぁ、どっちでもいいんだが……ただ、それはそれで少し思うところがない訳でもない。

 

「おい、イレイザー。そうなると私が来たのは意味がなかったという事にならないか?」

「アクセルが大丈夫だというのは分かってますが、それでも万が一という事があるので、ミルコにはアクセルの見張りを頼みます」

「アクセルのか? 分かった、それは楽しみだな」

 

 相澤の言葉にそう言うミルコだったが……俺の見張りを楽しむのって、それこそ蹴りたいからとか、そういう理由での事じゃないよな?

 少しだけそんな風に不安に思う。

 もっとも、自分で言うのもなんだが、そう簡単に蹴りを受けたりするつもりはない。

 ただ……ミルコが常に俺と一緒にいるとなると、峰田辺りがまた血の涙を流しそうなんだよな。

 ミルコは名実共に女のプロヒーローの中ではNo.1の存在なのだから。

 その上で顔立ちも整っており、流行の露出度が高かったり、身体のラインを見せつけるタイプのヒーローコスチュームなので、峰田にしてみれば羨ましい事この上ないだろう。

 もっとも、ミルコの場合はその性格が色々と問題だったりするのだが。

 俺を蹴ろうとするのなんかは、その典型的な例だろう。

 ……いっそ、峰田を蹴らせてみるのもいいかもしれないが。

 その際に峰田が変な趣味に目覚めたりしようものなら……いや、峰田なら問題ないか?

 

「ミルコの件は分かりましたけど、それで俺はどうすればいいんです?」

「お前にはミルコと一緒にこちら側に回って貰う。そもそも今回の林間合宿の目的はあくまでも個性伸ばしだ。無個性……というのとは少し違うかもしれないが、とにかくそのようなアクセルが他の連中と一緒に訓練をしても意味はないだろうからな。……もっとも、もしアクセルの能力が個性であっても、どのように伸ばそうとすればいいのが分からなかった以上、同じような事になっていたかもしれないが」

 

 これは褒められたのか、呆れられたのか、一体どっちだ?

 そう疑問に思ったが、どっちでもそう違いはないかと思っておく。

 多分だけど、もし俺が林間合宿の個性伸ばし訓練に参加していたとしたら……炎獣を延々と生み出していたか、それとも増強系の訓練に入っていたかだな。

 

「となると、アクセルを見張る私も訓練に参加するのか? 雄英の林間合宿ってのは、前々からちょっと気になってたんだよな」

 

 相澤の言葉に少しだけ嬉しそうな様子でそう言うミルコ。

 あれ? ミルコのこの様子からすると、雄英出身じゃないんだな。

 いやまぁ、雄英が日本で最高のヒーロー科を有しているからといって、プロヒーローが全て雄英の生徒って訳でもないんだから、当然だろうが。

 雄英や士傑といった有名校以外のヒーロー科であっても、普通にプロヒーローになれてもおかしくはないのだから。

 ただ、ミルコが雄英の林間合宿に興味を抱いているのは少し意外だったけど。

 

「そうして下さい。……アクセル、炎獣は何匹まで出せる?」

「数については、そこまで問題はないですね。百匹でも二百匹でも」

「……炎獣は、相手に痛みを与えるが、実際に怪我をさせないとか、そういう風には出来るか?」

「問題なく」

 

 炎獣にそういう風に命令すれば、間違いなくこちらの指示を炎獣は聞く。

 

「なら……ランダムに炎獣を出して、多くの者達に攻撃をするようにしてくれ。実際には怪我をさせないようにしてな」

 

 相澤からの指示は、俺にとっても予想外のものだった。

 

「えっと……それ、いいんですか? さっき見た感じだと、自分の個性の訓練に皆が集中してましたけど」

「構わん。集中している時にちょっかいを出されても、冷静に対処出来るようにするのはヒーローとしては当然の事だ」

 

 そう断言する相澤。

 どうやら本気で言ってるらしい。

 

「イレイザー、私はどうすればいいんだ?」

「ミルコは……蹴って下さい」

「蹴っていいのか?」

 

 いや、だから蹴れるのをそんなに喜ぶというのは、それはそれでどうなんだよ?

 そう思ったが、プッシーキャッツや相澤の誰もがその件に反応しないのを見て取ると、多分言っても無駄か、それともミルコには自由にさせた方がいいと、そんな風に思っているのだろう。

 ヒーロービルボードチャートでも上位に位置するプロヒーローが本当にそれでいいのか?

 そう思わないでもなかったが、その辺については俺がどうこう言うような事もないか。

 ……うん? 俺がミルコと一緒に行動するのなら、やっぱり俺が何かを言ってもいいんじゃないか?

 そう思ったが、俺が何かを言うよりも前に相澤が口を開く。

 

「さて、じゃあ戻ろう。もう少ししたらB組も来るだろうから、アクセルやミルコも忙しくなると思う」

 

 どうやらB組の訓練にも俺は参加する事になるらしい。

 話を聞く限りだと、俺がやるべき事はあくまでも死なない、ダメージも殆どない程度の炎獣を大量に生み出すだけでいいっぽいので、B組が炎獣の攻撃対象に入ってもどうという事もないんだが。

 そんな風に考えつつ、俺達は魔獣の森から個性の訓練をしている場所に戻る。

 そこでは相澤やプッシーキャッツといった面々がいないにも関わらず、A組の皆が必死に個性の訓練を行っていた。

 誰もサボるとかそういう事を考えていない辺り、雄英の生徒だよなと思ってしまう。

 

「じゃあ、ミルコとアクセルは予定通りに」

 

 そう言い、相澤はヤオモモと砂藤のいる場所に向かう。

 プッシーキャッツの面々も、それぞれに自分のやるべき事をやりに移動した。

 

「って事らしいから、俺達もいくか」

「おう」

 

 ミルコが俺の言葉に返事をし……次の瞬間、モギモギを千切り続けていた峰田がこちらに視線を向けてくる。

 その目から血涙を流しているのは、俺がミルコと一緒にいるからか、それともモギモギを千切り続けるのが痛いからか。

 ……血涙というのを考えると、何となく前者のような気がするな。

 そんな風に思いつつも足を進め、訓練をしている場所の中央付近までやって来る。

 個性の訓練をしている場所はかなりの広さだからか、俺とミルコの存在に気が付く者はあまりいない。

 それだけ自分の訓練に集中しているという事なのだろう。

 

「じゃあ、俺はこの辺りで炎獣を出すけど、ミルコはどうする?」

「適当に蹴るから心配するな」

 

 ミルコの言葉に、俺はだろうなと返すしかない。

 そもそも相澤から他の生徒達を蹴ってもいいという許可を貰っているのだから、ここで俺がどうこう言っても仕方がない。

 A組の面々については……そしてこれから来るB組の面々についても、ご愁傷様と思うしかない。

 もっとも、それを言うのなら俺の炎獣に攻撃される連中だって、同じようにご愁傷様と思うしかないのだが。

 

「分かった。じゃあ、俺の方は……」

 

 そう言い、右手を白炎にすると次の瞬間にはまず最初ということで二十匹程の炎獣を生み出す。

 

「へぇ、炎獣も以前見たとの違って色々な種類がいるんだな」

 

 ミルコは興味深そうに生み出された炎獣を見ていた。

 犬、猫、鳥、リス、ネズミ……後はミルコがいるからというのもあってか、ウサギ。

 それらの炎獣に向け、俺は口を開く。

 

「適当に動き回ってこい。誰かにぶつかりそうになっても回避したりとかしなくてもいい。当たったら当たったで構わないからな」

 

 そう言うと、炎獣達が一斉にそれぞれ好きな方に向かって走り出す。

 

「う……うわあああああっ!」

 

 真っ先にそう悲鳴を上げたのは、上鳴。

 鳥の炎獣だけに移動速度が地上を移動する他の炎獣よりも上回っていたのだが、その鳥の炎獣が真っ直く個性を使いまくっていた上鳴に向かって突進したのだ。

 上鳴にしてみれば、電気を出しているところにいきなり鳥の炎獣に突っ込んでこられたのだから、たまったものではない。

 

「ちょぉっ! 何でウチに……ええいっ!」

 

 鳥の炎獣に続いて標的に辿り着いたのは、ウサギの炎獣。

 ……ウサギって実際にはそこまで速い訳ではないのだが、ミルコが側にいるからか、そのイメージに引っ張られた結果、ウサギは鳥には負けるものの、地面を走る炎獣の中では一番の速度を得た。

 その速度を使い、耳郎に向かって突進していったのだ。

 一体何を思って耳郎を選んだのかは、俺にも分からない。

 まぁ、炎獣だし偶然そのように思ったとか、そんな感じであっても俺としては納得出来る。

 他にも色々な炎獣がそれぞれのいる場所に向かい……

 

「ミルコの足ぃっ! ぐべっ!」

 

 ミルコはミルコで、何がどうなって峰田を選んだのかは分からないが、その峰田に蹴りを放っていた。

 ……蹴られたとはいえ、峰田はミルコの足に触れる事が出来て嬉しそうな声を上げていたように思うのは、きっと俺の気のせいではないだろう。

 もっとも、ミルコの剥き出しの足に欲望を抱く者は何気に多い。

 男なら、その気持ちは分からないでもない。

 分からないでもないが……だからといって、その足で蹴られても喜ぶというのは、どうかと思わないでもない。

 

「ちょっ! わーっ、わーっ、わーっ! こっちに来ないでぇっ!」

 

 犬の炎獣に追われる葉隠が必死になって走って逃げている。

 

「うおおおおっ!」

 

 猫の炎獣が突っ込んでいったのを、切島は硬化の個性を使って受け止めていた。

 

「くそがぁっ! ぶっ殺すぞ!」

 

 そして爆豪は、ヴィランのような言葉を口にしつつも手を水に入れた状態のままでリスの炎獣の攻撃を回避する。

 手を水に入れた状態であっても、リスの炎獣の攻撃を回避出来る辺り爆豪の才能はさすがだな。

 

「おいこら、ヒモ野郎! 何をしてやがる!」

 

 リスの炎獣の攻撃を回避した爆豪が、俺に向かって叫んでくる。

 とはいえ、炎獣を放つ行動に対しては、相澤からの要望によるものだ。

 それを思えば、爆豪が叫んでいてもそれを止める事は出来ない。

 そんな風に思いつつ、俺は再度炎獣を十匹程追加して放つ。

 

「負けるかぁっ!」

 

 何故か飯田は追加で作った豹の炎獣と追いかけっこをしたりしていたが……まぁ、うん。飯田らしいと言えばらしい行動だったのは間違いないだろう。

 飯田を見つつ、俺は更に追加で炎獣を生み出すのだった。

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