転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4532話

 俺が生み出した炎獣が個性の訓練をやっている場所を走り回り、あるいは飛び回り、A組の面々は周囲に注意しながら個性の訓練を続けていた。

 ……いや、妨害をしているのは炎獣だけではなく、俺の見張りについてるミルコも同様だったが。

 見張り……見張り? いや、見張りってこういうのだったか?

 まぁ、ミルコが何気に林間合宿を楽しんでいて、それによって俺に迷惑を掛けないのなら、それはそれで構わないが。

 そんな風にやっていると、やがてB組の面々が姿を現す。

 昨日、俺が寝る前には合宿施設に到着していなかったのだが、夜遅くに到着したのか、それともどこか別の場所に泊まって、それで今日こちらに合流したのか。

 その辺りは俺にも分からなかったが、とにかくA組から少し遅れて到着したのは間違いない事実だ。

 プッシーキャッツや相澤、あとはB組の担任でもあるブラドキングがB組の生徒に色々と話をしている。

 

「うわあああああっ!」

「おら、どうした! その尻尾は飾りかぁっ!?」

 

 そんなB組の様子を見ていると、不意にそんな声が聞こえてくる。

 声のした方に視線を向ければ、そこではミルコによって尾白が蹴り飛ばされていた。

 見た感じだと尾白も咄嗟に尻尾で自分の身を守ろうとしたっぽいのだが、どうやらその尻尾ごと吹き飛ばされたらしい。

 

「うおおおおおおお!」

 

 続いてミルコの蹴りが向かったのは、硬化の個性を使い続けている切島。

 こちらは防御が優先されているだけあって、ミルコの蹴りに1発、2発と何とか耐える事は出来ていたのだが……続けて、3発、4発と蹴りが続くと、やがて吹き飛ばされる。

 

 ……それでも硬化の個性を使い続けていたのは素直に凄いとは思うが。

 ただ、硬化の個性を使った上でミルコの蹴りに吹き飛ばされず、耐えることが出来なかったのは減点だったな。

 

「おら、ヒモ野郎! もっとこいやぁっ!」

 

 切島を見ていると、爆豪のそんな叫びが聞こえてくる。

 声のした方に視線を向けると、そこでは犬が二匹と猫が一匹の炎獣に狙われ、更にはドラム缶の中の水に手を突っ込みながら、それでも回避し続けている爆豪の姿があった。

 ……さっきまでは三匹の炎獣を相手にして、回避出来ずに何度も命中しては怒声や罵声を口にしていたのだが、いつの間にか三匹の炎獣を相手にしても回避出来るようになっているな。

 そうだな、B組も来たし……

 

「どわあああああっ! ちょっ、ちょっと、アクセル!? いきなり数を多くしすぎだってばぁっ!」

 

 掌だけではなく、身体中から酸を出し続けていた三奈が自分の方に向かって犬が二匹、フクロウが一匹、鹿が一匹……と、合計四匹の炎獣が向かって来たのを見ながら悲鳴を上げる。

 

「見た感じ、B組がもう少しで参加するっぽいから、それまでは頑張れよー」

「きちくー!」

 

 人聞きが悪いな。

 逃げながら三奈が叫ぶ声にそう思う。

 いやまぁ、さっきまでは精々二匹の炎獣を相手にしていたのに、いきなり倍の四匹……それも中には鹿のような大物にも追われているのだから、三奈がそう叫ぶのは無理もない。

 とはいえ、それでも逃げ続けている辺り、三奈は以前と比べて成長したと思う。

 酸を使って滑る事によって、普通に走るよりも明らかに素早く移動出来ている。

 ……もっとも、炎獣の方も三奈の速度に合わせて速度を上げてはいるのだが。

 つまり、結局のところ三奈がどんなに頑張って速度を上げても、その分だけ炎獣も速くなるという事。

 本人にしてみれば、生きた心地がしないだろう。

 実際には炎獣に追いつかれてもちょっと熱い思いをするだけなのだが。

 

「ん?」

 

 そんな三奈を見ていると、常闇の入っている洞窟の中の様子が微妙に変だ。

 いやまぁ、常闇の個性のダークシャドウは光を嫌う。

 そういう意味では炎獣というのはダークシャドウの天敵……というのは少し大袈裟か?

 ただ、それに近い存在なのは間違いない。

 それだけに、洞窟の中にどれくらい炎獣を送ればいいのか疑問だったのだが……

 

「あ……ん……やん、ちょ……アクセル……」

「おう?」

 

 常闇のいる洞窟の様子が変だと思って視線を向けていると、先程までB組に事情を説明していたマンダレイが俺の方に近付いてきていた。

 いやまぁ、それだけなら別にそこまで気にするような事ではない。

 だが、目が潤み、頬が赤く染まり、内股を擦り合わせるような状況……ぶっちゃけ、発情してると称しているような状態となれば、話は別だった。

 ……いや、何がどうなってこうなった?

 A組は個性伸ばしの訓練に集中しているし、B組の面々も自分の個性に合った訓練を始めようとしていた。

 その為、まだ誰もマンダレイの様子には気が付いていないようだったが、何がどうなってマンダレイはこうなった?

 これが例えば、結婚願望の強いピクシーボブがこうなったのなら……いや、結婚願望が強いのと、発情するのは話が別か。

 ともあれ、これはちょっと不味い。

 何故いきなりマンダレイがこんな感じになってるのかは分からないが、まさかこのままにしておく訳にもいかないだろう。

 

「マンダレイ、大丈夫ですか? 取りあえずちょっと木陰で休み……」

「ん……あああああ……あ……ああ……」

 

 えっと……あれ? これ、本当にちょっと、こう……うん。

 俺がマンダレイに触れた瞬間、こう……露骨な言い方をすればまるで絶頂したかのような様子を見せてしまう。

 見た感じ、何がとは言わないがもの凄く敏感になってるのは間違いないので、俺が触れるのは不味い。

 そう思ったところで、こっちの異常に気が付いたのだろう。

 B組の生徒達用に訓練出来る準備を終わらせた為に一段落したからか、ピクシーボブが俺とマンダレイの様子に気が付いて近付いてくる。

 

「ちょっと、どうしたの……って……本当にどうしたのよ、これ? アクセル、何かした?」

「いえ、何も。あっちの……常闇の入っている洞窟の方を見ていたらマンダレイが近付いてきて、その時はもうこんな感じでした」

 

 そう言い、マンダレイに視線を向ける。

 今のマンダレイは、まさに成熟した女の艶というものが溢れていた。

 ……言ってみれば、事後的な感じで。

 もし峰田が今のマンダレイを見れば、それこそ暴走してもおかしくはないと思えるくらいには艶っぽさがある。

 それはマンダレイを見たピクシーボブも理解したのだろう。

 同僚の、仲間の、親友のそんな姿を見た事に気恥ずかしそうな様子を見せつつ、マンダレイから視線を逸らすように俺を見てくる。

 

「本当に何をしたの?」

「いや、だから何もしてませんって」

「本当だぞ。アクセルは何もしていない」

 

 トン、と。

 鉄哲を蹴った反動でこっちに跳んできたミルコが俺の横に着地すると、そう断言する。

 

「ん……」

 

 だが、そんなミルコが殆ど音も立てずに着地した振動ですらマンダレイに快感をもたらしたのか、艶っぽい声がマンダレイの口から出る。

 

「……これでも?」

 

 そんなマンダレイを見たピクシーボブがミルコにそう言うが……ミルコはあっさりと頷く。

 

「何でマンダレイが発情してるのかは分からないが、私は一応アクセルのお目付役でもあるからな! アクセルが何か妙な事をしていないか、しっかりと確認していたんだ!」

 

 そう、断言する。

 そんなミルコの言葉のお陰で、俺はマンダレイに対して何か妙な事……具体的には峰田的な事をした訳ではないと、そう証明されたのは助かった。

 

「……でも、それじゃあ、なんで?」

 

 ピクシーボブが心配そうにマンダレイを見る。

 未だにビクビクと手足の先端を痙攣させているマンダレイだったが、それでもある程度は落ち着いたのか、それともピクシーボブの声が聞こえたのか、薄らと目を開けて口を開く。

 

「マンダレイ!? 大丈夫なの!?」

「ええ。……それより、まずは洞窟の方に……」

「ああ、そっちなら炎獣を向かわせておいたので問題ないかと」

 

 常闇のいる洞窟の中に感じた異変。

 それについては十匹程の炎獣を向かわせたら、特に何の問題もなくなったようだったので、取りあえず今は心配いらない。

 

「……そう」

 

 マンダレイが安堵した様子でそう呟く。

 自分の今の状況を理解した上で常闇の心配をするんだから、プロヒーローってさすがだよな。

 ともあれ、常闇の一件が片付いたと聞いたマンダレイは少しずつ事後感も抜けてきたのか、しっかりと自分の足で立つ。

 

「……それで、何があったの?」

 

 そんなマンダレイに代表して尋ねるピクシーボブ。

 ピクシーボブにしてみれば、自分の親友がこのような状態になっているのだから、それを気にするなという方が無理だろう。

 ましてや、最初は俺がマンダレイに何かをしたと、そんな風に思っていたくらいなのだから。

 

「あの洞窟の子がちょっと危なかったから、アクセルに炎獣を向かわせて貰おうと思ってテレパシーをアクセルに送ったのよ」

 

 あー……うん。何となく事情が理解出来てしまった。

 

「それで?」

「そしたら、何かこう……大きな……圧倒的な……ん……あんっ」

「え? ちょっ、マンダレイ!?」

 

 何かを思い出したかのように艶っぽい声を上げ、内股を擦り合わせるマンダレイに慌ててピクシーボブが声を掛ける。

 幸い、マンダレイもそこまで深く自分の中に残っている感覚……快楽に溺れるような事はなく、すぐ我に返る。

 

「ごめんなさい。……とにかく、アクセルにテレパシーを繋いだら……その……」

 

 性的な意味での快感が強烈に、全身に広がって抵抗も出来ないままにこうなった、と。

 そこまではマンダレイも口にはしなかったが、それでも話を聞いていた面々は事情を理解したらしい。

 ……俺もまぁ、その、そういう経験は多いので、マンダレイの様子からマンダレイがどういう状態なのかは理解出来た。

 そして俺は……いや、俺だからこそマンダレイがそのような状況になった理由が理解出来てしまう。

 マンダレイの個性である、テレパシー。

 これが全ての理由なのは間違いない。

 念動力レベル11という常識外れのレベルの俺と、マンダレイの個性のテレパシー。

 そんな超能力が接触すれば、どうなるのかは考えるまでもないだろう。

 ……いや、寧ろマンダレイにとってはこの程度ですんだことがラッキーだったと思う。

 最悪……本当に最悪の場合、頭がパァンッとなっていても不思議ではなかったのだから。

 俺が召喚魔法を契約をする時に相手に血を飲ませる必要があるのだが、相手がその血……より正確にはその血に込められた魔力に耐えられなかった場合、その身体はパァンッされてしまう。

 マンダレイのテレパシーでも、最悪の場合はそんな事になっていてもおかしくはなかったのだ。

 

「大体分かった。……マンダレイが無事だったのは、幸運だったんだろうな」

「ちょっと、何でマンダレイがこうなったのか、アクセルは知ってるの?」

 

 ピクシーボブが真剣な表情でそう聞いてくる。

 ピクシーボブにしてみれば、自分の仲間がこんな状況になったのだから、こんな風に心配になってもおかしくはない。

 

「マンダレイも言っただろ? テレパシーで俺に接触したのがそういう風になった理由だって」

「だから、何でテレパシーでそうなるのか、それが聞きたいんだけど?」

「うーん……どう説明すれば分かりやすいんだろうな」

 

 目良が相澤に色々と説明したらしいが、それでも具体的にどのくらい説明したのかというのは分からない。

 となると、俺が念動力……超能力を持っていると、そう話してもいいのかどうか、微妙なところだ。

 とはいえ、ピクシーボブの様子を見ると話せないと言っても素直に聞くとは思えないので……

 

「誤解を恐れずに分かりやすく言えば、俺の中にある力が強すぎて、テレパシーを使って俺に直接接触してきたマンダレイが、その俺の中にある力の大きさに影響して悪影響を与えたといったところだな」

「……それ、マンダレイは本当に大丈夫なんでしょうね?」

「俺にテレパシーを繋げてこなければ、大丈夫だと思う」

 

 はっきりとそうだと理由が判明した訳ではなく、あくまでも今は俺の予想でそうなっているから確実にそうだとは言えないが、それでも俺の感覚的には間違いないと思う。

 

「取りあえず、マンダレイは休ませた方がいい」

 

 俺とピクシーボブの間に割って入った……という訳ではないのだろうが、ミルコがそう言う。

 そんなミルコの言葉に、ピクシーボブも自分の仲間にして親友のマンダレイがどんな状態なのかを理解し、すぐに頷く。

 

「分かったわ、マンダレイは休ませるわね。……でも、そうなると、個性の訓練は……」

「だ、大丈夫。その……アクセルにテレパシーで接触しなければ大丈夫だとは思うから」

「そうなの?」

「ええ。それにアクセルは個性を伸ばす訓練は……その、今のところ必要なさそうだし」

 

 そんなマンダレイの言葉に、なるほどと頷く。

 実際俺がやっている炎獣を生み出しては自由に行動させるというのは……うん。

 そもそも個性ですらないしな。

 そんな風に思っていると、ピクシーボブがマンダレイを運んでいくのだった。

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