転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4533話

 マンダレイがちょっとした事情からリタイアする。

 とはいえ、それでもマンダレイの個性であるテレパシーは離れていても問題はないので、個性の訓練の仕方について多くの者にアドバイスをしていた。

 俺とテレパシーで接触すると不味いので、俺とマンダレイはテレパシーは使っていなかったが。

 幸い……と言ってもいいのかどうか分からないが、俺の場合は自分の個性を訓練する訳ではなく、教師側となって動いてたので問題はなかったが。

 それでもマンダレイが何か俺に用事がある時……具体的には炎獣の数を増やしたり減らしたり、あるいは特定の相手に向かわせるようにしたりとか、そんな事をする時は俺と同じ役目で訓練場を素早く動き回っては蹴りを放っているミルコが俺に伝言をしてたりしていたが。

 ともあれ、俺の正体の件であったり、あるいはマンダレイの件とか、色々とあったものの……

 

「今日の訓練はこれで終わりだ」

 

 相澤の言葉によって、夕方……というにはまだ少し、大分? 早い午後4時前には訓練が終わる。

 とはいえ、生徒達はA組は勿論、少し後から合流してきたB組の生徒達も思い切り疲れていたが。

 まぁ、無理もないか。

 早朝から個性を伸ばす為の訓練を行い、昼の時点でかなり疲労していて昼食を食べる余裕もなかったので、相澤が用意してくれたゼリー飲料で昼食となり、午後の訓練が始まるまでは多くの者が倒れ込むようにして眠っており、そんな状態で午後の訓練も行ったのだ。

 ……まぁ、そうして疲労困憊といった状態だったのは、俺の生み出した炎獣も影響していた以上、俺のせいでもあったりするけど。

 その辺もあって、まだ午後4時くらいだというのに今日の訓練は終わったといったところか。

 

「ひぃ、ひぃ……」

 

 訓練が終わったという事で、皆が喜ぶ……という訳ではなく、疲れ切ってすらいた。

 特に峰田なんかはかなりミルコに蹴られていたのもあって、限界が近い。

 ……もっとも、ミルコもあくまでもモギモギの上から蹴っていたので、峰田のダメージはそこまででもないが。

 何しろ峰田は蹴られ続けたことによってミルコの蹴りに慣れたこともあってか、途中からはミルコに蹴られながらもミルコの足を撫でるといったような事まで出来るようになっていたのだから。

 ミルコは仮にもプロヒーローの中でもトップクラス。

 女のトップヒーローという意味では、優は勿論、龍子も押さえて問答無用のNo.1だ。

 そんなプロヒーローの蹴りを受けつつ足を撫でることが出来るというのは……うん。

 もしかしたら、本当にもしかしたらの話だが、今日の個性の訓練でA組、B組含めて一番伸びたのは峰田だったりするかもしれないな。

 ……もっとも、今日の訓練で限界以上に個性を使って死ぬ思いをした者達がそれを知れば、ふざけるなと言いたくなるかもしれないが。

 ただ、峰田の場合はエロを使えばかなり成長するのは間違いない。

 

「うぇーい……うぇーい……」

 

 そんな峰田に介抱されるかのように移動してきたのは、上鳴。

 こっちは元々個性を使いすぎるとウェイるようになるんだが、今日は限界まで個性を使いきってはウェイって、復活すればまたウェイっての繰り返しだったんだよな。

 その影響もあってか、今のところはまだウェイっている状態から回復していない。

 ただ、ウェイったのが少し前だった筈だから、そう遠くないうちに復帰するとは思うんだが。

 他の面々も……それこそB組の面々もかなり疲れている。

 ……あ、茨は疲れを顔に出していないな。

 いや、勿論茨も同じように訓練をしたんだから疲れているのは間違いないんだろうが、それでも疲れを態度や表情に出していないのはさすがだ。

 これって多分、信仰の対象である俺がいるから疲れた様子を見せたくなくて我慢してるといったところか。

 そんな他の面々を見ていると、ピクシーボブとマンダレイ、ラグドール、虎のプッシーキャッツの4人が前に出る。

 ……あ、マンダレイ復活したのか。

 そう思ったが、マンダレイは俺と視線を合わせると頬を……いや、顔を赤くして視線を逸らす。

 まぁ、マンダレイの体験した事を思えば、そういう風になってもおかしくはないと思うけど。

 マンダレイはピクシーボブと違って真面目そうな性格をしているので、そっち方面はかなり初心っぽいし。

 

「さぁ、昨日言ったよね? 世話を焼くのは今日だけって! 己の食う飯くらい、己で作れ! カレー!」

 

 ピクシーボブのその言葉と共に、テーブル……というか、作業台? の上にある大きな布をラグドールが取る。

 するとそこには、ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、タマネギ、肉、それ以外にもカレールーや各種調味料、食器といった諸々があった。

 

「なるほど。ヒーローは災害時などに救助先で食事を作る事もあります」

「さすが雄英、無駄がない! さぁ、皆。世界一美味いカレーを作ろう!」

 

 ヤオモモと飯田がそう言い、A組の面々は早速カレーを作る事になる。

 B組の方も少し遅れたものの、カレーを作り始めるが……

 

「アクセル、見ていないでお前も参加だ」

「……え?」

 

 相澤のその言葉は、俺にとって意外なものだった。

 

「えっと。俺もですか?」

「そうだ」

「今日の訓練でも教師側だったんだし、俺はそっち側だと思ってたんですけど」

「訓練中はそうだったな。だが、食事は別だ。ほら、行ってこい」

 

 そう言われると、俺としても反論は出来ない。

 いやまぁ、俺だって料理が出来ない訳じゃないしな。

 

「あれ、アクセル君も手伝ってくれるの?」

 

 近付いて来た葉隠が俺に向かってそう聞いてくる。

 すると、他にも何人かが期待の視線を向けてきた。

 俺が1人暮らしをしているのはそれなりに多くの者が知っている……というか、結構な面々が1人暮らしをしているんだが。

 とにかく、葉隠は俺に期待の視線を向けてくる。

 

「ああ、どうやら俺の夕食もカレーらしくてな。……タマネギを切るのは俺がやるか」

「え? いいの!?」

 

 嬉しそうに叫ぶ葉隠。

 いや、葉隠だけではなく口田や砂藤といった面々も俺に期待の視線を向けていた。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 カレーを作る――カレーだけに留まらないが――際の難関の1つが、タマネギを切る時に出る涙だ。

 これはタマネギの成分が問題なのだが、それが効果的なのは人……というか、生き物だけだ。

 そして俺は混沌精霊なので、その辺の成分の影響は全く問題ない。

 

「ああ、任せろ。それでどういう感じに切るんだ? 薄切りか、ある程度厚みを持たせるか……みじん切りは面倒だから遠慮したいけど」

 

 カレーを作るとなると、基本的にタマネギは溶ける。

 ゴロゴロ野菜の場合は話が別だが。

 そんな訳で、薄切りもみじん切りも、そう違いはない。

 

「厚みって……くし切りって言うんだよ。でも、やっぱりアクセル君の様子を見ると、料理は出来そうだね。薄切りでお願い」

 

 くし切り……そういえば何かで聞いた事があるな。

 そう思いながら、薄切りをしていく。

 

「うおっ、アクセルって何気に包丁使うの上手いな!」

 

 ジャガイモとニンジンの皮を剥いていた切島が、俺の手際を見て感心したように言う。

 葉隠や切島もそうだが、先程までは訓練の疲れでぐったりとしていたのだが、カレーを作るというのが何気に楽しいらしく、大分元気になっていた。

 生徒達が自分で料理の準備をするというのは、その辺も考えてのものなのかもしれないな。

 

「まぁ、それなりに料理は出来るしな。あくまでもそれなり、男の料理とかそんな感じだけど」

 

 今の1人暮らしでは、弁当とか惣菜とかそういうのがメインなのは間違いない。

 特にマンションの一階にあるスーパーは、その辺の定食屋よりも美味い惣菜が売っていたりするし。

 そんな訳で基本的に出来合の物を食べているのだが、俺がペルソナ世界にいた時は、それなりに自炊もしていた。

 その為、決して美味いとまではいかないが、取りあえず食べる事が出来て、それなりに美味い料理くらいは作る事が出来る。

 それに今日のカレーはあくまでもカレールーを使ったカレーだ。

 小麦粉からルーを作るとか、そういうのじゃないしな。

 

「ふーん。じゃあ、カレーとかも作るのか?」

「まぁ、それなりには。ただ、単純にカレーを食べたいだけならレトルトカレーの方が便利だけど」

 

 レトルトカレーにトンカツやコロッケ、エビフライ、ハンバーグといったのをトッピングすると、それだけで豪華なカレーとなる。

 あるいはそこまでいかなくても、ジャガイモをレンジでチンして追加するとか、そういうのでもいい。

 ……まぁ、レトルトカレーというのは手軽に食べられるのが最大の売りなのに、そこで余計な手間暇を掛けてどうするんだという思いがない訳でもないのだが。

 

「ふーん。じゃあ、どういうカレーが好みなんだ?」

「どういうカレー? 例えば?」

「え? そうだな。辛さとか」

「辛口だな。あるいはスパイシーという、俺がよく使っていたルーだと辛口の1個上の辛さの奴も好きだ。とはいえ、俺が美味いと思って食べられるのはそのくらいまでで、よくカレー店で売ってるような一口で汗が出るような辛さの奴は好みじゃないけど」

「漢だな!」

「……そうか?」

 

 何でいきなり切島から漢判定を受けたのかは、俺にも分からない。

 分からないが、それでも切島にとってはそういう風に感じたのだろう。

 まさか、辛口が好みだから漢って判定でもないだろうし。

 

「取りあえず切島から褒められたのは喜んでおくとして……カレーの肉はどうするんだ?」

 

 そう言った瞬間、A組全員の動きが止まったように思えた。

 ……それどころか、B組の方も何故か動きが止まっている。

 

「やっぱりカレーときたらビーフカレーだろ!」

「待ちたまえ、切島君! ポークカレーを忘れてはならないぞ!」

「私はチキンカレーが好みなのですが」

「ヤオモモの意見も分かるけど、ウチは辛めのシーフードカレーがいいな」

 

 うわ、しくじった。

 以前……雄英に入学したばかりの時、食堂に行く時にカレー論争が起こったが、これは第2次カレー論争的な感じになってしまった。

 それどころか、何故か話が飛び火してタマネギをどこまで炒めるか、カレーにジャガイモは必要か、蜂蜜を隠し味として入れるべきか、他に隠し味は何を入れるか、ラッキョウの酢漬けと福神漬けのどちらがいいか、トッピングは目玉焼きとゆで卵のどちらがいいか、ゆで卵は半熟と完熟のどちらがいいか……他にもそんな論争が始まってしまう。

 当然ながらそうなるとA組だけでは収まらず、B組にも波及して物間が何故か煽るようにこっちに来たかと思えば、拳藤の手刀によって一瞬にして気絶させられていた。

 

「闇を司る者よ、どのような肉が好みだ?」

 

 常闇のその問いに、うーんと考える。

 ぶっちゃけ、俺はそこまでカレーの肉に拘りはない。

 牛、豚、鶏、シーフード、変わったところではキーマカレーの挽肉とか、ラム肉もありだ。

 とはいえ、そんな中で俺の拘りとなると……

 

「肉はどれでもいいけど、カレールーを入れた後で焼いた肉を加えるな」

「ちょっ、待てよ! それだと肉の出汁がないだろ!?」

 

 上鳴が俺の意見に異議があるといったように言う。

 いや、上鳴だけではなく、他にも俺に同じような視線を向けている者がいる。

 

「あのな、カレールーを使って作るカレーだぞ? 肉の味とかそういうのは、ルーの中に入ってるんだよ。それなら下手に肉を煮込むんじゃなくて、焼いた肉を入れて数分煮込ませる事によって焼いた肉にカレーの味を馴染ませて、それでいながら焼いたばかりのしっかりとした肉を楽しめる方がいいと思わないか?」

 

 そう言うと、俺の話を聞いていた者のうちの何人かが納得した様子で……そして実際に俺のお勧めの作り方で食べてみたいといったような表情を浮かべる。

 ちなみにこの作り方は俺のオリジナル……という訳ではなく、それこそペルソナ世界で自炊をしている時にTV番組のカレー特集か何かで見た作り方だ。

 あくまでも肉の味が入っているカレールーだからこその作り方なので、それこそ小麦粉から作る場合は肉もきちんと煮込んで出汁を取った方がいい。

 あるいは余計に金が掛かるが、出汁を取る用の肉は煮込んで出汁を取ったら取り出し、後から具材用にお肉を追加するといった方法もない訳ではないが。

 

「美味そうだ……美味そうだが……俺はやっぱり食べ慣れたカレーの方がいい」

 

 障子が俺を見るとそう言ってくる。

 保守的な感じではあるが、その点については俺も不満はない。

 料理というのは、小さい頃から食べ慣れている味が一番美味いと思えるのは間違いない。

 そういう意味では障子が今のように言ってきてもおかしくはないのだろう。

 

「だーかーら、ゆで卵は完熟がいいの!」

「待てよ、芦戸。オイラは半熟の方が美味いと思うぞ!」

「はぁっ!? カレーに納豆だって? 冒涜者がここにいるぞ!」

 

 そんなやり取りをしながらも、A組とB組の生徒達はカレーを作っていく。

 ……ちなみにカレーだけではなく、一緒に食べるのは何がいいかという事で、サフランライスだったり、バターライスだったり、ターメリックライスだったり、あるいは雑穀米だったり、パンだったり、ナンだったり……そんな論争も起きるのだった。

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