転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4534話

「美味っ! 美味美味美味!」

 

 最初はうまっと口にしたのに、びみびみと鳴き声を上げるように食べている切島をみながら、俺も一口食べる。

 ちなみにカレー論争については結局終わらなかったので、ジャンケンをした結果、チキンカレーに雑穀米となった。

 雑穀米と一口で言っても色々な種類があるのだが……最悪、ある程度の雑穀を自分達で用意しないといけないかもしれないと、そんな不安を抱いていたのだが、幸いなことに用意された食材の中には雑穀米の素というか、普通に白米を炊飯する時にそれを入れれば雑穀米になるという、そういうのがあったので、それを使った。

 なお、この雑穀米は米の雑穀の目利きとかいう個性を持っている人物が社長をしている会社で作られている奴で、プレミアム雑穀米としてかなり評判のいい雑穀米らしい。

 そんな手間暇を掛けた雑穀米だけあってかなり美味い。

 袋に書かれていた炊き方によると、雑穀米を焚く時は普通に焚く時よりも多く水を入れる必要があるらしいのだが、今回はカレーなので少し固めに焚く必要があり、水の追加はしなかったんだが、それが上手い具合に成功したらしい。

 切島のみならず……少し離れた場所では、ヤオモモもひたすらにチキンカレーを食べていた。

 

「はっはぁっ! なんだよ、A組のそれは彩りがないねぇ。ほら、見なよ。B組のご飯はターメリックライスだよ! 知ってるかい、ターメリックライス。ターメリックってのは、カレーを作るのに必要な香辛料なんだ。そんな香辛料を使って炊いたターメリックライスが、不味い訳ないよねぇ? これでB組あべしっ!」

 

 自分のカレーの皿を持ち、わざわざ煽りにやって来た物間だったが、その物間が言い終わるよりも前に素早くやって来た拳藤が、いつものように物間の首筋に手刀を入れて一発で気絶させる。

 それでいながら、物間の持っていたカレーの皿は引っ繰り返すことなく、どこからともなく飛んできた取蔭の両手でキャッチした。

 取蔭の個性って、こういうのを見ると素直に凄いと思うよな。

 

「悪い、A組の皆。物間はいつものアレだから」

 

 そう言い、拳藤はB組に戻ろうとし……そんな中で不意に俺に視線を向けると、微かに笑みを浮かべてから、気絶した物間を引きずってB組の場所まで戻っていく。

 いつものやり取りだよなぁ……と思い、俺もまたチキンカレーを食べようとしたところで、ふと気が付く。

 

「あれ? 緑谷は?」

 

 そう、ふと周囲の様子を確認してみると、そこに緑谷の姿はない。

 もしかしてもう食い終わったのか? そう思ったんだが……

 

「あ、デク君ならあの子……マンダレイの知り合いの子にカレーを持ってったよ」

 

 緑谷と飯田、麗日で纏まって食べていた中で、緑谷がいないのを疑問に思うと麗日がそう言う。

 なるほど、そう言えばプッシーキャッツや相澤、ブラドキング、ミルコといった面々が食事をしているが、マンダレイの従甥? だったか、とにかくあの子供がいないな。

 緑谷の緑谷をパンチで潰そうとした子供だったが、緑谷にしてみれば子供だけを放っておくといった事は出来なかったのだろう。

 

「美味いな、このカレー。ニンジンは勿論だが、ステーキのトッピングがいい!」

 

 取りあえずあの子供については、緑谷に任せておこう。

 この世界の原作主人公の緑谷がこうして動いているという事は、もしかしたらあの子供は実は原作の重要人物である可能性が高いのかもしれないし。

 そんな風に思っていると、ミルコの嬉しそうな声が聞こえてくる。

 ちなみにミルコの食べているカレーはプッシーキャッツの面々が作ったカレーだ。

 どうやら俺達の世話はしないが、自分達で食べるカレーはきちんと作るという事だったらしい。

 まぁ、20人くらいいるA組やB組と違って、プッシーキャッツ達の場合は7人分だ。

 そう考えれば、作る量もそこまで多くなくてすむ。

 ……ミルコはもう何杯もおかわりをして、その度にトッピングを色々と変えている様子だったが。

 あの様子を見ると、どうやらステーキのトッピングが当たりだったらしい。

 個性ウサギなのに、肉食好きって……いやまぁ、ミルコを見て肉食と草食のどっちかと聞かれれば、恐らくは大半が肉食と答えるだろうから、ある意味で間違ってはいないんだろうけど。

 

「個人的には、カレーは2日目が好きなんだけどね」

 

 カレーを食べつつ三奈がそう言うと、それを聞いていた他の面々も頷く。

 まぁ、2日目のカレーは美味いとよく言われるから、そういう意見は分からなくもない。

 ただ、個人的にはあまり違いがあるようには思えないけど。

 ここでそういう事を言えば、カレーの事だけに思い切り反論されそうなので止めておく。

 

「……で、あっちはあっちで何があったんだ?」

 

 三奈と話している中でふと気が付くと、瀬呂が耳郎にイヤホンを使って成敗されていた。

 そうしたヤオモモは、打ちひしがれた乙女といったタイトルが相応しい様子で絶望の表情を浮かべている。

 

「あ、うん。あれはね……ああなっても仕方がないと思うよ」

 

 葉隠がカレーを食べつつ、呆れたように言う。

 透明の個性を持つ葉隠だったが、食べたものは当然ながら見えるとかそういう事はなく、普通に見えなくなっている。

 まぁ、食べた物が体内を通るのが見えるというのは……うん。葉隠にしてみればというか、女にしてみれば決して好ましい事じゃないしな。

 ともあれ、葉隠の様子からするとどうやら瀬呂の自業自得っぽかったので、その件については特に何も言わないでおく。

 そんな、賑やかではあるが楽しい夕食を食べ終え、片付けなんかの諸々が終わると……

 

『風呂だぁっ!』

 

 皆が喜びの声を上げる。

 この合宿施設の風呂は温泉、それも露天風呂なので、人によってはこれを楽しみにしていた者がいてもおかしくはない。

 ……同時に、別の意味で楽しみしてそうな峰田が目を輝かせていたが。

 

「風呂は女子はA組とB組一緒で問題ないだろ。ただ、男子は人数が多いから、最初はA組からだな」

「いやっほぅ!」

 

 ゲスい笑みを顔一杯に浮かべつつ、峰田が歓声を上げる。

 何を企んでいるのかは、考えるまでもなく明らかだ。

 明らかだったが……

 

「ただし、峰田。お前は昨日の件があるから、風呂に入るのは教師と一緒になる」

「はああぁあぁぁあぁっ!?」

 

 相澤の言葉に、峰田が今まで見た事がないような、聞いた事がないような、そんな声で叫ぶ。

 

「お前な、昨日の一件があった後で、今日また同じように風呂に入れると思っていたのか?」

 

 呆れたように言いながら、捕縛布を伸ばす相澤。

 それを見た峰田は逃げようとしたものの、元々今日の個性を伸ばす訓練で疲れきっている状態だ。

 カレーを食べてある程度回復したものの、それでも相澤の……プロヒーローの捕縛布から逃げられる筈もなく、呆気なく捕まり、そのまま連れていかれるのだった。

 

「えっと……さぁ、B組も待っているんだ! 早速風呂に行こう!」

 

 普段は生真面目で仲間思いの飯田であっても、昨日の一件がある以上はさすがに庇うといった事は出来なかったらしく、気分を切り替えるように言う。

 いやまぁ、同級生だから、あるいは普段の峰田が峰田だからという事でこの程度で許されているものの、もし峰田以外の、例えば全く関係ない部外者が女風呂を覗いたりしようものなら、即座に捕らえられて警察に連れていかれてもおかしくはないような行為だ。

 学生でそういう事をやったのが見つかれば、厳しい学校なら即座に退学、それがなくても停学くらいはあってもおかしくはない。

 それだけに、峰田が相澤やブラドキングに監視されているだけというのは、ある意味で恵まれてはいるんだよな。

 もっとも、内申点的には大きなマイナスなのは間違いなかったが。

 ともあれそんな訳で、峰田は相澤に預けたまま俺達は風呂に入る。

 

「うーん……気持ちいいなぁ……」

 

 珍しく口田が、温泉に浸かりながら大きな声でそう言う。

 それだけ今日の訓練が厳しかったという事なのだろう。

 他の面々もそれは変わらず、今日の疲れを癒やすように温泉に浸かっていた。

 

「それにしても……なぁ、アクセル。俺達もそうけど、炎獣をあんなに出しまくって大丈夫なのか?」

 

 砂藤が心配そうに聞いてくる。

 今日の砂藤は、ヤオモモと一緒に甘いものを食べては個性を発揮していた。

 そんな中で俺の炎獣が頻繁に砂藤にもちょっかいを掛けていたのだが、それでも俺を心配する辺り、雄英の生徒らしいよな。

 

「俺の方は問題ない。あれも一応俺の個性の訓練にはなっているしな」

 

 これは実は嘘だ。

 そもそも個性というのは筋肉と同じで使えば使う程に強化されていく。

 それが今日の訓練で個性を使いまくった意味だ。

 だが……それはあくまでも個性の場合だ。

 俺の混沌精霊は個性という事になってはいるものの、実際は個性ではない。

 つまり、今日出した程度の炎獣を使う程度では、全く消耗はないのだ。

 白炎も分類すれば魔法側である以上、使えば使う程に魔力を消費するのは間違いない。

 だが、俺の魔力……SPの数値は圧倒的で、しかも回復速度も速い。

 ぶっちゃけ、今日程度の炎獣の数を出した程度では魔力の消耗よりも回復速度の方が上回ってすらいた。

 だからこそ、砂藤は心配してくれているものの、そこまで気にするような事ではない。

 ……まぁ、その辺については言えないので、問題ないという事にしておくが。

 

「それにしても、まさかアクセルの個性で生み出した炎獣を俺達に向けてくるとは思わなかったよな」

 

 しみじみと瀬呂が呟く。

 夕食の時は耳郎を怒らせた瀬呂だったが、その件については既に解決したらしい。

 

「いつもの合理的な判断なんだろうけど、俺もそれについてはちょっと意外だった」

 

 瀬呂にそう言うものの、俺が意外に思うのと瀬呂が意外に思うのとでは、その内容は大きく違う。

 瀬呂が意外に思ったのは、まさか俺の個性という事になっている炎獣で他の生徒達を攻撃――という程に大袈裟なものではないが――するというものだったが、俺が意外に思ったのは、目良から俺の件についてある程度の事情を聞いた上で、それでも俺の炎獣を出して他の生徒達の訓練に使った件だ。

 俺の混沌精霊というのが個性ではなく、もっと別の何かだというのを知ったのに、それでも合理的に考えて生徒達の訓練に使おうとするのだから、その件については素直に凄いと思う。

 何だかんだと俺がA組やB組の生徒を相手に、何かしないという信頼はあってのものなんだろうけど。

 ……あ、でも今にして思えば物間は他の生徒よりも比較的多く炎獣に攻撃されていたような気がするな。

 もしかしたらその辺は、炎獣も俺の影響を微妙に受けているのかもしれないな。

 とはいえ、だからといって俺は別に物間に殺意を覚えているとか、恨んでいるとか、そういうのがある訳ではない。

 何かある度に煽りに来るので面倒だなとは思うが。

 その上で毎回の如く拳藤の手刀によって意識を刈り取られて気絶するのだから……まぁ、うん。本当に面倒な奴という認識しか俺にはなかったりする。

 炎獣はそんな俺の影響によって、物間に比較的多く攻撃した……そんな可能性は、十分にあった。

 

「とにかく、合宿が終わるまで頑張るだけだ」

 

 轟の言葉に、だよなぁ……と話を聞いていた者達も同意していた。

 もっとも、轟を始めとした他の面々にしてみれば、林間合宿を乗り越えるだけというのを考えておけばいいんだが、俺の場合は林間合宿が終わった後の事もある。

 具体的には、相澤を始めとした雄英の教師陣……後はプッシーキャッツとミルコもか? そんな面々にシャドウミラーについての事情を話す必要が出てくるだろう。

 勿論そうなると、龍子や優、もしかしたらねじれも出てくるかも?

 それと目良を始めとした公安も出るのは間違いないと思う。

 何しろ、目良がもうある程度は相澤に説明していたし。

 ……寧ろ、そうしてある程度の事情を説明されておきながら、俺に話をしろとか言ってこない辺り、相澤も我慢強いよな。

 プッシーキャッツの面々の中でも、ピクシーボブ辺りなら暴走してもおかしくはないだろうに。

 また、ミルコなんかは周辺の状況なんかは関係ねえと言わんばかりに俺に突撃してきてもおかしくはない。

 だが、そういう風になっていないのは……今が風呂の時間だからか?

 それとも相澤が押さえているのか。

 ……もし風呂の時間だろうが関係ねえと言わんばかりに突撃してきた場合、風呂だからという理由で裸だったりしたら、喜びそうな者達が何人かいるな。

 そうなったらそうなったで面白そうではあるんだが。

 とはいえ、さすがにミルコでもそういう事はしないだろうと思う。

 そんな風に思いつつ、峰田がいないので今日はゆっくりと風呂に入って疲れを癒やし……その後は、疲れから夜更かしをするような事もなく眠りに就くのだった。

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