転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4537話

 補習組がいなくなったところで、ピクシーボブから肝試しの説明が行われる。

 とはいえ、別にそこまで複雑なものではない。

 A組はくじ引きでペアを決めて、2人1組で3分おきに出発する。

 移動ルートの真ん中にお札があるから、それを持ってくる事。

 脅かす側は直接接触禁止で、個性を使って脅かす事。

 ……何気にここでも雄英らしいやり方で相手を驚かせる必要があるんだな。

 峰田が舌打ちしているのを見ると……まぁ、つまりそういう事だろう。

 あるいは峰田がいるからこそ、直接接触禁止になったのかもしれないな。

 そして、より多くの相手を失禁させた方のクラスが勝利、と。

 うん。まぁ、特殊な趣味の持ち主なら喜びそうなルールではあるが。

 実際、峰田なんかは数秒前の舌打ちは何だったのかといったくらいに嬉しそうにしているし。

 そんな訳でくじ引きとなったのだが、A組は21人いて、その中で5人が補習。

 つまり残り16人なので、誰か1人になる者がいないのはラッキーだったかもしれないな。

 

「よろしくお願いします、アクセルさん」

 

 俺とペアになったヤオモモがそう言ってくる。

 尾白とペアになった峰田が、例によって例の如く血の涙を流しながら睨み付けてくるものの、それに関しては俺からは何も言えない。

 くじ引きで決まったんだから、俺をそういう風に睨んできてもしょうがないだろうに。

 もっとも、プッシーキャッツも峰田の性欲については知っている。

 そんな峰田と女子を夜の森の中で2人だけにするというのは危険極まりないので……もしかしたら、プッシーキャッツが細工をして、峰田が女子とペアにならないようにしたのかもしれないな。

 何しろ初日に女子風呂を覗こうとしたのだから。

 プッシーキャッツ的にも、峰田に注意するのは当然だった。

 それこそ峰田を女子と一緒にするのなら、ミルコと……

 

「あれ?」

「どうされました?」

 

 周囲の様子を見ている俺に、ヤオモモが不思議そうに聞いてくる。

 

「いや、ミルコがいないと思って。夕食の時はいたよな?」

「え? ええ。そういえばいつの間にか……」

「ミルコなら、何か気になる事があるってどこかに行ったよ」

「どこかにって……あれ? それってもしかしてミルコも脅かし役に合流しているとか?」

 

 ふとそんな疑問を抱くも、すぐにそれを否定する。

 何故なら、今回の肝試しのルールでは直接触れるのはNGなのだ。

 ミルコはプロヒーローとしてはかなりのものだが、その能力は基本的に肉弾戦に特化している。

 つまり、個性を使って相手を驚かすといったようなことは出来ない。

 ……あ、でもそうだな。ミルコの高い瞬発力を活かして、相手に近付いてから首の後ろや耳に息を吹きかけて、音もなく跳び去るといったようなことなら、直接接触する訳でもないので、問題なかったりするのか?

 

「は? あー……うん。もしかしたらそういう事もあるかもしれないけど、多分違うと思うわ」

 

 どうやら俺の予想はピクシーボブにとっても予想外だったらしく、そう言ってくる。

 ミルコとはそこまで親しい訳ではないが、それなりに悪戯好きだったりするので、もしかしたらもしかするかもしれないな。

 そんな風に考えている間に、1組目、2組目、3組目と森の中に足を踏み入れていき……

 

「じゃあ、4組目、スタート!」

 

 ピクシーボブに促され、俺とヤオモモは森の中に入る。

 入るのだが……

 

「前から何だか結構な悲鳴が聞こえてきているな」

「そうですわね。大丈夫でしょうか?」

 

 ヤオモモが心配するのは、俺達の前の3組目が耳郎と葉隠のコンビだったからだ。

 耳郎は耳郎さんになればともかく、素のままではお化けとかそういうのは苦手そうだ。

 葉隠も、性格的にそういうのが得意そうには思えない。

 結果として、耳郎と葉隠は何かある度に悲鳴を上げているのだろう。

 

「心配なのは分かるけど、これはあくまでも個性を使った肝試し、それも直接の接触は禁止だしな。そう考えれば、恐らく悲鳴は上げてもそこまで問題はないと思う」

 

 思いたいというのが、正直なところだが。

 ただ、B組には峰田がいない。

 B組のアレな奴代表の物間も、確か補習だった筈だ。

 そういう意味では、特に何らかの心配はないと思う。

 そんな風に思いながら進んでいると……クン、と。

 俺の嗅覚に何か引っ掛かるものがあった。

 

「何だ?」

「アクセルさん? どうかしましたの?」

 

 足を止めた俺に気が付いたのだろう。

 数歩先に進んだヤオモモが、こちらに戻ってきながらそう聞いてくる。

 

「何かこう……焦げ臭くないか?」

「そうですか?」

 

 ヤオモモは俺の言葉に首を傾げる。

 どうやらヤオモモには前方から漂ってくる焦げ臭さが分からないらしい。

 ……いや、これは俺が混沌精霊で常人よりも鋭い五感を持っているからこそ嗅ぎ分ける事が出来たのだろう。

 俺以外の者達なら、まだ臭いは微かなので嗅ぎ取る事は出来ないだろう。

 あるいはもう少し経てば、ここまで本格的に焦げ臭さが漂ってくるかもしれないが。

 

「爆豪さんが何かしたのでしょうか?」

「あー……それはあるかもしれいな」

 

 爆豪の性格を考えると、B組に驚かされた時、反射的に個性を使って攻撃をした……そんな可能性も否定は出来ない。

 あるいは爆豪のペアは轟だったので、温泉では幽霊は怖くないといった様子を見せていたものの、実際に肝試しをやると、実は怖くて炎を出した……とか?

 以前までの……雄英に入学してから体育祭までの轟なら、そういう事をするとは思えない。

 思えないが、それ以後の力が抜けた轟なら、もしかしたら咄嗟に炎を使うといったようなことをしてもおかしくはない。

 つまり、爆豪と轟のどちらもがそのようなことをやる可能性がある訳だ。

 そういう意味では、今のこの状況は心配なのだが。

 そんな風に思っていると、森の植物に紛れて蔦が伸びてくる。

 なるほど、どうやらこの近くには脅かし役として茨がいるらしいな。

 どうする?

 茨の性格を考えると、信仰の対象である俺を驚かせるとか、そういうのはあまり出来ないような気がする。

 ……下手にそういう事をすると、それこそ今度懺悔とかそういう感じでしてきそうなんだよな。

 そんな風に思っていると、不意に蔦が止まる。

 あれ? 驚かせる対象が俺だと知って、動きが鈍ったか?

 そうも思ったが、この蔦の動きは何となく違う感じがする。

 

「アクセルさん? どうしましたの?」

「……そこ、分かるか?」

「え?」

 

 声を掛けてきたヤオモモに、地面の蔦を示す。

 それを見たヤオモモは最初こそ俺が何を言ってるのか分からないようだったが、すぐにそれが何なのかを理解する。

 

「これ、もしかしたら塩崎さんの……」

 

 ヤオモモも、当然ながら茨については知っている。

 ヤオモモは俺と一緒に行動する事が多いし、茨は俺を信仰の対象としてるのだから。

 そうなると、自然とヤオモモと茨が会う機会も多くなる。

 また、ヤオモモと茨は性格的にもある程度相性がいい。

 そんな訳で、ヤオモモと茨は仲がいいのだ。

 

「ああ、茨の蔦で間違いないと思う。けど……その蔦が途中で止まった。何でだと思う?」

「その……アクセルさんが相手だからではないでしょうか?」

 

 当然ながら、ヤオモモも茨が俺を信仰しているのは知っている。

 だからこそ、ここで俺を驚かすのを恐れ多いと思い、蔦を止めたとしても、茨の行動が理解出来ない訳でもないのだろう。

 それは俺も分からないではないが……

 

「ただ、俺が見た感じだとやっぱりこう……そういうのとはちょっと違うように思えるんだよな」

「そうですの? では……」

「ちょっと待った」

 

 ヤオモモが何かを言おうとしたのを、手を伸ばして止める。

 ヤオモモも、俺の様子から何かあると思ったのか素直に口を閉じる。

 すると、それから数十秒が経過し……漂ってくる焦げ臭さがより一層強くなったところで、ガサガサと茂みを掻き分けるようにして誰かが姿を現す。

 

「鉄哲? ……どうしたんだ、お前?」

「アクセルか!? 何だか分からねえが、焦げ臭ぇ臭いを嗅いだら、塩崎がいきなり倒れちまったんだよ」

 

 どうやら鉄哲は俺達よりも大分先……というか、焦げ臭さの近くにいたらしい。

 だが……それはつまり、この焦げ臭さが爆豪の爆発や轟の炎によるものではない事の証でもあった。

 いや、だが……そうなると、有毒ガス?

 そう判断した瞬間、口を開く。

 

「ヤオモモ、ガスマスクだ!」

「はい!」

 

 さすがヤオモモと言うべきだろう。

 俺が指示をすると、一瞬の躊躇もなくガスマスクを作り出す。

 あるいは俺と鉄哲の会話から、ガスマスクを創造で作る準備をしていたのかもしれないな。

 ともあれ、ヤオモモが作り出したガスマスクは合計4個。

 そのうちの2個を鉄哲に渡す。

 俺とヤオモモは残った2個のガスマスクをそれぞれ装着する。

 ぶっちゃけ、俺に普通のガスは効かない。

 だが、それはあくまでも普通の……化学兵器としてのガスの場合の話で、これが個性によるガスだった場合、話が別だ。

 個性因子の影響か、俺に効果がある可能性は十分にある。

 例えばステインの場合、動きは素早くナイフを始めとした刃物の技術は高かったものの、それは個性ではなくあくまでも技術だ。

 だからこそ俺に効果はなかったが、このガスが個性で出したものであった場合、俺にも効果がある可能性がある。

 もっとも心操の件もあるから、絶対に効果があるとは限らないんだが。

 それでも万が一の事を考えると、ガスマスクはしておいた方がいい。

 ……ガスマスクをすると視界が狭まるのであまり好みではないんだが、幸いな事に俺は気配を察知出来る能力を持つので、視界が狭まるのというのはそこまで問題にはならなかったりする。

 

「悪い、助かった。けど、塩崎が……」

 

 鉄哲がヤオモモにガスマスクを付けて貰って安全を確保した茨を見て、そう言う。

 そんな茨の様子を見てから、ヤオモモを見る。

 

「ヤオモモ、このガス……どういう効果のガスか分かるか?」

「いえ、申し訳ありませんが分かりません。ですが……彼女の様子を見る限りでは、恐らく、本当に恐らくとしか言えませんが、殺傷能力そのものはそこまで高くない……と思います」

 

 ヤオモモのその言葉は、ヤオモモの持つ膨大な知識からの予想……であると同時に、そうであって欲しいという願望もそこにあるのは間違いない。

 つまり、ヤオモモは恐らく大丈夫だとは言っているものの、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、これが致命傷になる可能性もある訳だ。

 

「ひぃっ!」

 

 何故か鉄哲が俺を見て、そんな悲鳴を上げる。

 鉄哲は強気というか、イケイケというか、負けず嫌いというか、そんな性格をしており、怖がるといった事はない……訳ではないだろうが、それを表に出すような事は滅多にない。

 何故そんな鉄哲が悲鳴を上げる?

 ……一瞬そう疑問に思ったが……

 

「そうか」

 

 俺が原因か。

 自分は冷静なつもりだったのだが、どうやら俺は怒っているらしい。

 何故?

 言うまでもなく、茨がこんな目に遭っているからだろう。

 俺は茨に好意を抱いているのは間違いない。

 あれだけ一心に好意を向けられているのだから、それを受け取る俺が茨に対して同じように好意を抱くのは当然だろう。

 勿論、それは好意は好意であっても、男女間の好意、異性に対する好意、いわゆる恋や愛といったものではないだろうと、自分では思っている。

 だが、それでも好意は好意だ。

 そんな好意を抱いている茨が、こんな目に遭った。

 ……一体誰がこれをやったのかと聞かれれば、それは考えるまでもなく明らかだろう。

 何らかの事故ならまだ理解出来る。

 だが、この辺りにあるのは魔獣の森という名称のただの森で、化学薬品製造工場とか、そんなのはない。

 なら、自然のガスか?

 例えば火山が噴火した時とかは身体に害のあるガスが同時に噴き出る事も多い。

 もしくは、地震か何かによって地中からガスが噴き出るという可能性もあるだろう。

 だが……この世界には原作があり、林間合宿の買い物に行った時に緑谷がシラタキと遭遇し、林間合宿は人の殆どいない場所で行われている。

 ……それを考えれば、何が起きたのかというのは容易に予想が出来る。

 I・アイランドの件からまだそんなに経っていないものの、I・アイランドで遭遇したのは傭兵団的なヴィランだった。

 であれば……そう、原作において主人公の緑谷が戦うべき、シラタキの率いるヴィラン連合。そのような連中の襲撃の可能性は高い。

 というか、原作の流れ的にそれで間違いないように思える。

 まさかこの期に及んで実はヴィラン連合以外の組織が襲撃してきたとは思えないだろう。

 

「なら……俺のやるべきことは1つだろう」

「え? アクセルさん、一体何を……?」

 

 鉄哲が怯えた様子で俺を見て、それでも怯えた様子がないヤオモモが、俺の呟きにそう聞いてくる。

 この辺りは俺が少しは冷静になったからか、それともヤオモモは何だかんだとそれなりに付き合いがあるからか。

 その辺りは分からないが……俺はパチン、と指を鳴らす。

 瞬間、俺の右手が白炎と化し……百匹近い炎獣が周囲に生み出されるのだった。

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