転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1901 / 2196
4539話

 えっと……これ、一体何がどうなっているんだ?

 俺は口裂け男とシルクハットの男の身体が崩れ、残骸となったのを見て、理解が出来ない。

 最初はシルクハットの男の個性がこういう……どう表現すればいいのか分からないが、とにかくそんな感じの個性だと思っていた。

 だが、口裂け男も同じようになったのを見れば、それが違うというのは分かる。

 あるいは、シルクハットの男がいなければ口裂け男の個性は蒼炎と身体を残骸のようにして……ようにして……何だ? 転移するとか? そんな個性なのかもしれないと思ったが、シルクハットの男の個性を見る限りだと、まさか2人が同じ個性を持っているとは思えない。

 いやまぁ、ヒロアカ世界も広い。

 世の中には同じ個性を持っている者がいてもおかしくはないが、それが揃ってヴィランになっているというのは、やはりおかしいいだろう。

 つまり、これはまた何か別の理由があってこういう風になっているって事か?

 開闢行動隊とか言っていたが、聞き覚えのない組織だ。

 ……いや、隊と名称だという事を考えると、もしかしたらどこかの組織の特殊部隊とか、そんな感じだったりしないか?

 しくじったな。

 出来ればもっとしっかりと情報収集をすればよかった。

 次に開闢行動隊とやらに遭遇したら、しっかりと情報収集をする事にしよう。

 もっとも、痛めつけるのはそれはそれで難しい。

 さっきの口裂け男とシルクハットの男もそうだったが、ある程度のダメージを与えると残骸になって消えるっぽいし。

 そうなると、ある程度気を付ける必要がある……

 

「ん?」

 

 こちらに向かって飛んで来る者の気配を察知する。

 真っ直ぐ一直線に向かってくるのは、背中から翼を生やし、脳みそを剥き出しにしたかのような存在……そう、脳無だ。

 なるほど。やっぱり開闢行動隊とかいう存在はヴィラン連合の特殊部隊的な存在だったらしい。

 というか、開闢行動隊の連中も何を考えてるんだろうな。

 もしここで脳無を出さなければ、俺は開闢行動隊とヴィラン連合を結びつける事は出来なかった。

 いや、もしかしたら……とは思ったかもしれないが、それは俺の勘と状況証拠でしかない。

 つまり、もしかしたら最終的にはその辺について結びつけていなかった可能性も十分にあるのだ。

 だが、こうして脳無が姿を現したとなれば、開闢行動隊とヴィラン連合の関係は明らかだ。

 脳無などという存在をヴィラン連合以外で使えるとは思えない。

 敢えて可能性を考えるとすれば、ヴィラン連合が何らかの理由……脳無を動かす際のデータが欲しいとか、あるいは資金稼ぎとか、もしくは失敗作の脳無の処分とか……そういうので他の組織に脳無を譲渡する可能性はあるが……でも、その辺はどうなんだろうな。

 まぁ、可能性としては完全には否定出来ないといったところか。

 そんな風に思っていると、脳無が鳥……というか、プテララノドンっぽい感じの長いクチバシを開き……それを見た瞬間、俺はその場から移動する。

 すると一瞬前まで俺のいた場所が何かによって斬り裂かれた。

 ……恐らくは風の刃か何か。

 俺が召喚するモンスターのグリが使う、カマイタチブレス的な感じの攻撃方法なのだろう。

 もっとも、その威力はグリのものに比べると大きく劣るが。

 あ、いや。でも召喚魔法か。

 グリを召喚するのはその大きさから目立ってしまうので避けられないが、他の奴……狛治か、もしくは刈り取る者なら召喚してもいいかもしれないな。

 いや、刈り取る者は迫力というか、初めて見る者に恐怖を抱かせ、その外見からしてヴィランであると認識されてもおかしくはない。

 となると……

 

『我と盟約を結びし者よ、契約に従いその姿を現せ!』

 

 呪文を詠唱し、魔法陣を構築する。

 次の瞬間、その魔法陣から狛治が姿を現す。

 

「アクセル? 一体どうしたのだ?」

「悪いな。今はちょっと炎獣だけじゃ手が足りないから手伝って欲しい」

 

 本来なら召喚魔法については、公安にも秘密にしている手札の1つだ。

 だが、既に相澤やプッシーキャッツ、ミルコといった面々には俺が普通の存在ではないというのは、既に知られている。

 この林間合宿が終わった後で色々と事情を話すつもりだったし、そうなると召喚魔法についても知られるくらいは別にいいだろう。

 いっそ、ニーズヘッグを……とも思ったが、それはさすがにやりすぎだろう。

 何よりも、グリと同じで目立つしな。

 

「つまり、敵だな?」

「あれとかな」

 

 そう俺が言うと同時に、脳無が急降下してくる。

 どうやらカマイタチブレスで攻撃をしても俺には効果がないと悟ったらしい。

 もしくは、俺が召喚魔法で呼び出した狛治を脅威と見て取ったか。

 その辺りの理由はどうあれ、俺にしてみれば向こうから近付いてきてくれるのは助かる。

 だが、俺が前に出るよりも早く狛治が前に出て、拳を構える。

 以前と比べるとその構えは機動性を重視したような……ボクシングに近いものになっている。

 

「はぁあ!」

 

 鋭く伸びた爪で攻撃をしてきた脳無に対し、狛治はカウンターの一撃を放つ。

 それも、鬼の力を持ったまま俺の血によって召喚獣となり、より高い身体能力を持つにいたった狛治の一撃だ。

 脳無の振るった爪はあっさり切断され、それどころか手……どころか、肘の辺りまで砕かれ、爆散した。

 

「このような敵は……いや、そうでもないようだな」

 

 自分の一撃があっさりと肘までを砕いてしまった事に、最初は不満そうな様子を見せた狛治だったが、次の瞬間には脳無の消失した肘から先が再生するように元に戻ったのを見て、少しだけ興味を抱いた様子を見せる。

 どうやら、あの脳無は再生の個性を持っているらしい。

 俺も今まで何度か脳無と戦ってきたが、再生の個性を持っている個体はそれなりにいる。

 というか、今回のように単独で使わせる場合、再生能力の有無というのは継戦能力に大きな違いが出る。

 どうやって複数の個性を脳無に持たせているのかは、俺には分からない。

 まぁ、ヴィラン連合というこの世界の原作における敵として考えた場合、そういう生物を生み出せる個性を持つ者がヴィラン連合にいたとしてもおかしくはなかったが。

 

「見ての通り、そんなに強い訳じゃないが、高い再生能力持ちらしくてな。暫くあいつの相手を狛治に頼みたい」

 

 脳無は狛治の一撃の威力を警戒したのか、空を飛びながらも下りてくる様子はない。

 あの脳無がどこまでの判断能力を持っているのか、俺には分からない。

 分からないが、狛治の存在が危険だというは本能的に理解出来たのだろう。

 ……本能があるかどうかは微妙なところだが。

 

「再生能力は、下弦くらいか? ……俺が相手をしてもいいが……倒しても構わんのだろう?」

「いや、出来ればすぐに倒さないで、時間を稼いでくれ」

「……何?」

 

 狛治の不満そうな声が聞こえてくる。

 まぁ、狛治の性格を思えば、この状況で敵を倒すのではなく、時間稼ぎをしろと言われたのが面白い筈もない。

 面白い筈もないのは分かるが……だからといって、俺もここでは退けないのは事実。

 何しろ相手は脳無だ。

 一体どのような仕掛けがあるのか分からない以上、もし脳無を倒してしまえばシラタキが何らかの方法でそれを察知し、開闢行動隊とやらを撤退させる可能性は十分にある。

 だからこそ、あの脳無を倒すのは出来れば避けたかった。

 ……勿論、これが俺の考えすぎという可能性もある。

 実際には脳無を倒しても、それがシラタキに知られるようなことはなく、そのまま今の戦いは続くかもしれない。

 あくまでもそうかもしれないというだけであって、本来ならどうなるのかというのは分からないのだ。

 だからこそ、俺としては安全策を採る必要があった。

 

「頼む」

「……アクセルの頼みだ。引き受けよう」

 

 喜んでという訳ではなく、本当に渋々といった様子ではあったが、狛治はそう言ってくる。

 

「悪いな」

「構わん。魔法界以外の者と戦えるいい機会だ」

 

 この言葉から、どうやら狛治は今もまだネギま世界の火星にいるらしい。

 まぁ、狛治は竜翼とでも呼ぶべきドラゴンの翼が背中から生えており、額からは30cm程の長い角が1本生えている。

 魔法界のマジックアイテムを使ったり、あるいは幻影の魔法を使って竜翼や角が他の相手に見えないようにすれば魔法界以外、それこそ麻帆良とかでも普通に動けるが、それでも面倒なのは間違いない。

 その点、魔法界なら普通に亜人とかそういうのがいるので、自分の姿を隠さずに行動出来る。

 そう考えると、異形系として活動出来るヒロアカ世界って実は狛治向けの世界なのかもしれないな。

 ヒロアカ世界なら異形系の個性持ちという事で、素のままの狛治でも問題なく行動出来るし。

 ……もっとも、異形系は田舎では差別対象らしいから、ヒロアカ世界でも都会でしか活動出来ない事になるが。

 特に狛治の性格の場合、差別して当然だと思っているような連中が危害を加えてきたら、即座に反撃をして、その結果地元の警察に捕まるといった可能性もあるし。

 何しろ異形系は差別して当然といった中にいる者達だ。

 そうなると、問答無用で狛治が悪いという事にもなりかねない。

 まぁ、その辺については特に心配しなくてもいいか。

 

「じゃあ、とにかくあの敵……脳無という名前らしいけど、その脳無の相手を頼む。現在この森では俺の同級生が多くいるし、俺が通っている学校の教師とかもいるから、何者だと聞かれたら俺の知り合いだと言っておいてくれ」

「……は?」

 

 狛治は俺の言葉に意表を突かれたような声を上げ、動きを止めてからこちらを見てきた。

 その瞬間、狛治の注意が自分から逸れたと判断したのか、脳無が動くが……そんな脳無の攻撃に対応するように、狛治も竜翼を羽ばたかせて空を飛ぶ。

 既に俺から視線を逸らしており、真っ直ぐ脳無に向かって飛んでいく。

 あれ? 狛治に俺が雄英高校に通うって話はしてなかったか?

 以前一度召喚した時に、その辺の話をしたことがあったような、なかったような……

 まぁ、話をしていても実際に俺が高校に通っているというのは狛治にしてみれば意外だったのだろう。

 狛治の知っている俺は、学校に通ったりするような奴じゃないだろうし。

 とはいえ、実際には今まで何度か学校に通ってきた経験を持つのも事実。

 狛治は基本的に火星にいるので、フェイト辺りと仲が良いだろうが、そうなるとネギま世界で学校に通っていたのを聞いていてもおかしくはないと思うのだが。

 フェイトもフェイトで自分から余計な事は口にしないので、狛治が聞かない限りは自分から話したりしないとは思うけど。

 

「おい!」

「くっ!」

 

 狛治が俺の方を見ているのを隙と判断したのか、脳無がカマイタチブレスを放つ。

 狛治は竜翼を使ってその一撃を回避したものの、地面が……そして森に生えている木がカマイタチブレスによって切断されていく。

 狛治は竜翼を羽ばたかせ、脳無に空中戦を挑む。

 それを見て、取りあえずここはこれで安心だろうと判断すると、他の連中のところに向かう。

 そういえば狛治はガスマスクをしていなかったが、ガスは問題ないのか?

 召喚獣だから、ガスは問題ないとか?

 そうなると……俺は一応何かあってもすぐ対処出来るように、それこそ影のゲートで地中に潜るなり、あるいは跳躍して上空に避難するなりの準備をしてからガスマスクを外し、大きく息を吸う。

 だが、空気を吸っても特に身体に異常はない。

 ……そもそも俺は混沌精霊で、魔力によって身体が構成されている。

 それを思えば、ガスが俺の身体に悪影響を与える筈がない。

 いやまぁ、ガスが個性で出来ている以上は、やっぱり魔力で身体を構成されている俺にも影響がある可能性は否定出来ないが……それでも今は特に問題ない。

 

「よし」

 

 そうなると、まずは他の連中に合流だな。

 開闢行動隊……もとい、ヴィラン連合が一体どれだけの戦力をこの合宿に投入してきたのかは分からないが、わざわざこのような事をしているのを考えれば、中途半端な戦力でどうこうするとは思えない。

 ……というか、ショッピングモールでの一件もあって合宿場所は当初の予定とは違う場所になり、それがこのプッシーキャッツのいる場所となった訳だが、一体何でヴィラン連合はここを襲撃出来たんだ?

 ここで合宿をやっていると知ってる者は少数だ。

 そうなると……ヴィラン連合がどこから情報を入手出来たのかという事が疑問だった。

 いや、疑問じゃないな。

 これは恐らくだが雄英にヴィラン連合と繋がっている者がいるという事なのだろう。

 ヴィラン連合のスパイなのか、それとも情報を売って金を貰っているのか。

 その辺りは俺にも詳細は分からないが。

 ただ……雄英も教師は全員がプロヒーローだ。

 それだけに、雇う時にその辺についてはきちんと調べている筈だが……そんな風に思いながら森の中を移動していると、不意にこちらに殺気が向けられ、その場から退避する。

 すると次の瞬間、俺がいた場所に青い炎が命中し、蒼炎が燃え上がるのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。