転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4547話

 相澤がスマホでどこかに連絡をするのと前後して、森の中にいた者達が戻ってくる。

 ただし、中にはまだ森の中で身動き出来ない者もいるので、取りあえず会議は終了という事になり、手分けして対応する。

 怪我をしている者も多いので、薬の用意をしたり。

 あるいは汚れている者、疲れている者もいるので温泉の用意をしたり。

 喉が渇いている者達の為に飲み物を用意したり。

 そんな風に諸々を用意していると、やがて電話で呼んだ救急車が到着し、茨を始めとしてガスを吸った者、あるいは緑谷のようにボロボロな者達が運ばれていく。

 そうして一段落すると、まずは今日は休めという事になった。

 ただ、俺は特にやるべき事もないので、何となく合宿施設から出て、夜空を眺める。

 すると、こちらに近付いてくる気配を感じる。

 開闢行動隊の襲撃があったその日のうちに、皆がいる建物から出て来るというのは、正直どうかと思う。

 思うのだが……最初に外にいる俺がそんな事を言っても、説得力はないだろう。

 もっとも俺の場合、もし開闢行動隊が再度襲撃してきても1人でならどうとでも対処出来る自信がある。

 いざとなれば、炎獣も出せるし。

 ……ちなみに、森の中に放った炎獣は、既に全て消している。

 口裂け男を運ぶように指示をした馬の炎獣も、今はもう姿を消しているだろう。

 一体誰がどうやって馬の炎獣に運ばせていた口裂け男の分身を殺すなりなんなりして解除したのかは分からない。

 一番可能性が高いのは黒霧だろうけど。

 そんな風に思いながら、俺は気配の主に声を掛ける。

 

「開闢行動隊の襲撃があったのに、こうして夜に外に出て来るのはどうなんだ?」

「……それを言うなら、アクセルだってここにいるじゃないか」

 

 俺の言葉に不満そうに拳藤が言う。

 そうして不満そうな様子を見せつつ、拳藤は俺の隣までやってくる。

 

「そう言われると反論するのは難しいけど、俺の場合はヴィランに襲撃されても対処できるしな」

「む……私だってそれなりに自信はある……あるんだけど、今日は存分に力を発揮出来なかったんだよな」

 

 最初は不満そうな様子を見せつつ、やがて落ち込んだ様子を見せる。

 拳藤は自分の力に相応の自信があったのは間違いない。

 拳藤の個性は単純な個性だけに、使いやすい個性ではある。

 また、俺が行っている自主訓練にも拳藤は頻繁に参加しているのもあって、相応に自信があったのだろう。

 

「森でガスを生み出していたヴィランを倒したのは、お前なんだろ? なら、十分に活躍はしてると思うけどな」

 

 今回襲撃してきた開闢行動隊のうち、厄介という意味では何人も分身として俺の邪魔をしてきた口裂け男だったが、純粋に多くの生徒達に被害を与えたのは、やはり森の中でガスを生み出していたヴィランだろう。

 そんなヴィランを倒したのが、拳藤だ。

 いや、正確には……

 

「鉄哲がいたお陰だけどな。もし鉄哲がいなければ、私も動こうとは思わなかっただろうし」

 

 そう、拳藤は言う。

 謙遜を……と思ったが、拳藤の様子を見る限りだと違うらしい。

 あるいは、実は違うのかもしれないが拳藤はそのように思っているだけなのかもしれないな。

 

「理由はどうあれ、ヴィランを1人、それも危険性という意味では襲ってきた連中の中でトップクラスの奴を倒したのは事実なんだ。そう考えれば、今回の件は決して悪くないと思うぞ」

 

 あるいは、口裂け男が俺の足止めに徹するのではなく、森を燃やして森の中にいた生徒達を全員焼き殺そうしたりしたのなら、そちらの方が危険性という意味では上だろう。

 ……いや、でもどうだろうな。

 口裂け男の蒼炎は、見れば炎だと分かるから危険性はすぐに判断出来る。

 だが、ガスの場合は無味無臭……あ、でも焦げ臭かったんだったか? ただ、蒼炎とは違って危険性をすぐに察知は出来ない。

 そういう意味では、やっぱりガスを使っていたヴィランの方が危険性は高かったのかもしれないな。

 

「アクセルがそう言ってくれると、少しは安心出来るよな」

 

 そう言い、笑みを浮かべる拳藤。

 完全に自分の不甲斐なさを吹っ切った訳ではないのだろうが、それでもある程度はすっきりとした様子を見せていた。

 

「そうか。拳藤が安心してくれたようで何よりだよ。拳藤はやっぱり今のように笑っているのがいいしな」

「……なっ、ちょっ、馬鹿ぁっ! いきなり何を言うんだよ!」

 

 俺の言葉に、何故か顔を赤く染めながら言う拳藤。

 普通なら夜なので分からないかもしれないが、混沌精霊の俺は夜目が利く。

 なので、拳藤の頬が赤く染まったのは俺にも十分に分かった。

 分かったのだが……今のやり取りで一体何故そうなったのかは、分からない。

 

「それで……ん?」

 

 拳藤と話を続けようとしたところで、ふとこちらに近付いてくる気配に気が付く。

 とはいえ、それは見知った気配だった事もあって、特に警戒したりとか、そういう事はない。

 

「どうやら話は終わりみたいだな。お迎えが来た」

「え?」

「……ったく、部屋にいないと思ったら何で外にいるんだお前は」

 

 そんな声と共に姿を現したのは、相澤だ。

 いつもの格好なのは……まぁ、何かあってもマフラー代わりの捕縛布があれば対処出来るという自信からだろう。

 もっとも、夏にマフラーって時点で正気か? と思われてもおかしくはないのだが。

 まぁ、相澤の場合はその辺は気にしないしな。

 もし人目を気にするのなら、無精髭を生やしたままだとか、授業中でも暇な時間は寝袋で寝るとか、しかも寝袋に入ったままで食事としてゼリー飲料を口にしたりはしないだろうし。

 

「ちょっと気分転換に星空でも見ようと思ったんですよ」

「……林間合宿中に夜に外で逢い引きとか、峰田じゃない……いや、峰田とは少し方向性が違うか。とにかく本来なら反省文でも書かせているところだぞ」

「逢いっ!? ち、違う。違います。別に私とアクセルはそんな関係じゃ……」

「分かった、分かった。今はいいから、部屋に戻れ。恐らく明日は忙しくなる。お前達もな。だから、今のうちに休めるのなら休んでおけ」

 

 動揺する拳藤だったが、相澤はそんな拳藤の様子を気にせず一方的に言う。

 拳藤もここでこれ以上何かを言っても意味はない……どころか、相澤に叱られるとでも思ったのだろう。

 それ以上は特に何も言わず、合宿施設の中に戻っていく。

 この辺りの判断力はさすがだよな。

 もしこれが爆豪とか峰田とか物間だったら、大人しく戻るような事はせずに何かを言って相澤を余計怒らせたりしそうだし。

 ともあれ、拳藤が消えたのを確認してから俺は相澤に視線を向ける。

 

「それで、そっちは一段落ついたんですか?」

 

 そう聞くと、相澤は疲れた様子で大きく息を吐いてから口を開く。

 

「本当の意味で全てが片付いたとは言えないだろうな。だが、今出来る事はやった。……ああ、それとピクシーボブも少し前に目を覚ましたぞ。取りあえず今のところ異常はないらしい。明日にでも病院で詳細な検査をするって話だが」

 

 相澤の言葉に納得する。

 ピクシーボブはサングラスの大男の武器で思い切り頭を殴られたらしい。

 一応頭部にはサポートアイテムがあったが、それはあくまでもサポートアイテムであって防御力を重視するようなものではない。

 防御力もない事はないが……といったところらしい。

 

「それと……ラグドールが見つかっていない」

「……そうですか」

 

 本来なら、肝試しの中間地点にはラグドールがいる予定だった。

 だが、その中間地点にあったのは血溜まりだけで、ラグドールの姿はなかったらしい。

 あるいは森の中でプロヒーローとして活動しているのかも……とは思っていたのだが、開闢行動隊が撤退しても戻ってくる様子はないという事で捜したのだが、どうやら見つからなかったらしい。

 

「そうなると、爆豪と同じくラグドールも連れていかれたんですかね?」

「その可能性が高い」

 

 そう言う相澤の表情には、若干だが苦々しげな色がある。

 まぁ、その気持ちは分からないではない。

 開闢行動隊、あるいはヴィラン連合に連れていかれたラグドールが、どのような目に遭っているのかは、容易に想像出来る。

 ラグドールはマンダレイやピクシーボブとは方向性が違うものの、それでも顔立ちは整っている。

 そんなラグドールが、ヴィランに……それも男のヴィランに捕まったらどうなるのか。

 サングラスの大男のようなタイプもいるから、絶対にそういう目に遭うとは限らないが、それでも実際問題プロヒーローの女がヴィランに捕まってそういう目に遭うというのは、このヒロアカ世界においては頻繁にある……とまではいかないが、それでもそう珍しい話という訳でもないのは事実。

 

「そうなると、爆豪もそうですけどなるべく早く助ける必要がありますね」

「……そうだな。とはいえ、それについてはこっちで動く。今はそれよりもお前の話だ。マンダレイと虎から聞いたが、召喚魔法だと? お前の個性ではない力について説明して貰うぞ」

 

 そう言い、鋭い視線を向けてくる相澤。

 とはいえ、もしこれで俺が嫌だと言って敵対したらどうするつもりなんだろうな?

 相澤の個性の抹消は、相手の個性を消す極めて強力な個性だ。

 それは間違いないが、それはつまり俺のように消される個性を持っていない相手の場合は、個性を使わず純粋に自分の強さだけでどうにかする必要があった。

 勿論、相澤も自分の個性についてはしっかりと理解している。

 実際にUSJでヴィラン連合の襲撃があった時、脳無やシラタキのような例外以外は捕縛布を使った戦闘で倒したのだから。

 だが……言ってみれば、それはあくまでもこの世界での実力でしかない。

 俺は勿論、シャドウミラーの実働班……いや、実働班以外であっても、相澤に勝てる実力を持つ者は多い。

 もっとも、相澤は色々とズボラなところはあるが、教師としてはしっかりしている。

 それこそUSJの一件でその辺りははっきりと分かっていた。

 なので、結果的に……取りあえず今のところは、俺が相澤と戦う理由はないんだけどな。

 もし相澤と戦うとすれば……例えば公安が俺を切った時とか?

 もしくは公安と繋がっている俺を信用出来ず、取りあえず捕らえる事したりとか?

 ……どっちも可能性が皆無とはいかないが、それでもゼロではないといったところか。

 

「どうした、行くぞ」

 

 相澤に促され、俺はその後を追う。

 向かったのは、合宿施設にある会議室。

 一応合宿施設だけに何かあった時とか、合宿中にブリーフィングをする時とか、そういうのに使う為に、会議室の類はあったりする。

 その会議室の中に入ると、ブラドキング、マンダレイと虎……それに驚いたことに、先程目を覚ましたと聞いたピクシーボブの姿もあった。

 ミルコがいないのは……まぁ、ミルコの性格を考えると難しい事は興味ないとか言いそうだし、あるいは万が一に備えて周囲の警戒をしているのかもしれないな。

 

「あ……」

 

 そのピクシーボブは、会議室に入ってきた俺と相澤……より正確には俺を見ると、頬を赤くしながらも口を開く。

 

「えっと、アクセル。その……気絶した私を運んでくれたって聞いたけど……」

「あ、はい。そうですね」

「それで、その……私を運ぶ時、お姫様抱っこで運んだって……本当?」

 

 誰かに聞いたから、そういう風に言ってきているんだとは思うんだが、それでもこうして俺に改めて聞いてくるのは何でだ?

 

「まぁ、そうなります」

「じゃあ、その……」

「ピクシーボブ、その辺にしておきなさい。ラグドールの件もあるんだから」

 

 ピクシーボブの言葉を、マンダレイが切る。

 そのマンダレイの言葉に、ピクシーボブの表情は真剣なものに変わる。

 自分達の仲間がいなくなったのだから、真剣にもなるのだろう。

 とはいえ……ラグドールの死体は見つかっていない。

 見つかったのは、あくまでも血溜まりだけだ。

 そうなると、それはつまりラグドールが敵に連れ去られたという事を意味している……と思うのは、俺だけだろうか?

 爆豪を連れ去った以上、ラグドールも同様に連れ去られてもおかしくはない。

 とはいえ、その理由が不明だったが。

 爆豪の場合は、そのヴィランっぽい感じからスカウトといった可能性であったり、あるいは原作主人公の緑谷のライバル的な存在だけに、もしかしたら何らかの隠された力とか、そういうのがあってもおかしくはない。

 だが、ラグドールは……

 考えられるとすれば、やはり女ヒーローに対する恨みとか?

 もしくはサーチという個性を持っている以上、それを使う為?

 いや、けどラグドールがヴィランの命令に素直に従うとは思えない。

 となると、心操のような洗脳系の個性を持ってる奴がいる可能性もあるな。

 そうなると、最悪爆豪も洗脳されて敵に回るといった可能性もあるのか。

 とはいえ、心操の洗脳であっても外側から衝撃があれば解除されるようなものだ。

 そうなると、洗脳と一口に言っても永続的に、それも多数を完全に洗脳するというのは難しい筈だった。

 

「とにかく、今は出来る事をするべきだろう。……アクセル、お前について聞かせてくれ」

 

 ブラドキングがそう言うと、部屋の中にいる俺以外の面々の視線が全て俺に向けられるのだった。

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