転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4548話

 ブラドキングに促され、部屋の中にいる面々の視線が俺に向けられる。

 この手の事態にあまり慣れていないような者なら、多数の……それもプロヒーローの視線を向けられれば、怯えてもおかしくはない。

 だが、俺の場合はこの程度の事でどうにかなる筈もなく、あっさりと口を開く。

 

「いいだろう、俺の秘密を話そう。だが、この件が終わったら雄英の教師達にも話す必要がある以上、詳細については雄英で話させて貰う。プッシーキャッツが、あるいはここにはいないがミルコがその辺りについて知りたいと思ったら、雄英から聞いてくれ」

 

 突然変わった言葉遣いに、相澤以外は驚きに表情を変える。

 もっとも、相澤もピクリと眉を動かした以上、全く驚いていない訳ではないのだろうが。

 言葉遣いを変えたのは、曲がりなりにもこれからの発言は雄英のヒーロー科A組の生徒であるアクセル・アルマーではなく、シャドウミラーを率いるアクセル・アルマーとしてのものだからだ。

 ……もっとも、その辺りの事情についてまでは話すつもりはないが。

 とはいえ、相澤は公安の目良から多少は事情を聞いており、同じ教師という事でブラドキングにも話してはいるだろう。

 プッシーキャッツの面々についても、この林間合宿においては俺と一緒に行動するという事で、ある程度事情については話していてもおかしくはない。

 その割には、プッシーキャッツの面々……特に俺が絡むことが多かったピクシーボブやマンダレイは俺に対する態度が変わったりはしていなかったが。

 

「それで、まず……そうだな、プッシーキャッツの面々が知りたい事を話そう。相澤もそれでいいな?」

 

 確認を求める意味で相澤に視線を向けると、呼び捨てにされた相澤はその事には特に気にした様子もなく口を開く。

 

「異形系の個性を持つ人物が姿を現して、一瞬にして消えたと聞いているな」

「異形系か。……まぁ、この世界の住人ならそう認識してもおかしくはないか。しっかりと見ているといい」

 

 そう言うと、他の面々の視線が俺に集まるのを感じながら呪文を唱える。

 

『我と盟約を結びし者よ、契約に従いその姿を現せ!』

 

 そうして呪文を唱え終わると同時に召喚魔法が発動し……背中には竜翼、額からは30cm程の角を持つ狛治が姿を現す。

 

「随分と早いな」

「すぐに呼ぶって言っただろう?」

 

 狛治にそう返す。

 この世界とホワイトスター……いや、正確にはホワイトスターとゲートで繋がっているネギま世界の間にどのくらの時差があるのかは、俺には分からない。

 ただ、狛治の様子を見る限りだとそれなりに時差はあるらしい。

 

「まぁ、そうだな。それで? この連中がこの世界でのアクセルの仲間か? ……見た感じ、そこまで強そうには思えないが」

 

 そう言う狛治の言葉に、ブラドキングと虎が反応する。

 ……恐らくミルコがいれば、ミルコも反応していただろう。

 

「誰と比べているのかは……まぁ、分からないではないけど、その辺にしておけ」

 

 狛治が比べたのは、鬼滅世界での鬼の宿敵だった鬼殺隊……それも幹部級の柱か、もしくは現在狛治がいるネギま世界の魔法界にいる者達か。

 その辺りは俺にも分からないが、狛治にしてみればこの場にいる者達は力不足だと思ったのだろう。

 とはいえ、この場にいる者達はこのヒロアカ世界の中では上澄みではあるものの、トップクラスといった訳ではない。

 特にヒーロービルボードチャートでトップ10に入る者達と比べると、どうしても戦闘力は落ちる。

 いやまぁ、相澤の抹消とかは相手がオールマイトであろうとも一発逆転を狙えるような反則的な個性ではあるのだが。

 ただ、それはあくまでも相手の個性を消すという意味での抹消であって、狛治のように個性ではない力には全くの無意味なのも事実。

 ……あるいは、相澤がもっと訓練をすれば、個性だけではなくそれ以外の、それこそ魔力と気とかそういうのも消せるようになるかもしれないのだが。

 いや、でも以前緑谷からちょっと聞いた感じだと、相澤の抹消は個性因子に影響させるとか何とか言っていたな。

 そう考えると、やっぱり個性以外は消せないのかもしれないが。

 

「とにかく、こいつは狛治。俺と召喚の契約を結んで強くなった代わりに、俺が召喚をしたらこうしてやって来る事になる」

「……待て、召喚の契約を結んで強くなっただと? その辺を詳しく聞かせて欲しい」

 

 意外な事に、俺の言葉に興味を持ったのはブラドキングだった。

 ブラドキングの個性は血を自由に操るといったようなものだった筈だが……今よりも強くなりたいと、そう思っているのか?

 今夜の襲撃を考えると、そういう考えを持ってもおかしくはない。

 おかしくはないのだが……

 

「止めておけ」

 

 俺が何かを言うよりも前に、狛治がそう言う。

 珍しいな。

 狛治の性格的に考えて、強くなる為に命を懸けて、それで死んだらそれはそれで仕方がないといったように思うかと思ったんだが。

 もしかして、何らかの理由でブラドキングを気に入ったのか?

 そんな疑問を抱く俺の視線の先で、ブラドキングが狛治を睨み付ける。

 狛治はブラドキングを気に入ったっぽいんだが、ブラドキングの方は別に狛治を気に入った訳ではないらしい。

 まぁ、意訳すれば雑魚って感じで言われたのだ。

 それも見知らぬ相手に。

 ブラドキングにしてみれば、それで納得しろという方が無理だろう。

 それこそミルコがここにいれば、話をするでもなく実力を見せつけて狛治の言葉を撤回させようとして蹴りを放っていてもおかしくはなかった筈だ。

 

「ブラドキング」

 

 だが、ブラドキングが何かを言うよりも前に相澤がその名前を呼ぶと、ブラドキングも不満そうにしながらも、それ以上は何も言わずに黙り込む。

 そうして黙り込んだところで、俺は口を開く。

 

「狛治を悪く思わないでくれ。実際、今の狛治の言葉はブラドキングの命を心配してのものなんだから」

「どういう事だ?」

 

 命懸け。

 そう口にするのは簡単だし、実際に何かあればそんな風に言う者は多い。

 だが、それは大半が口だけで、残りの少数もそういう気概というだけで、本当の意味で命懸けでそのような言葉を口にするのは少数だ。

 

「文字通りの意味だよ。俺と召喚の契約を結ぶには、俺の血を1滴舐める必要がある。だが、俺の血は濃密な……莫大な、もしくは人外と言っていい程の魔力が込められている」

「ちょっと待て、魔力だと? 魔法だとでも言うつもりか?」

 

 相澤が魔力という俺の言葉にそう言ってくるが……

 

「俺が瞬動とかを使う時、魔力を使ってるってのは言った筈だと思うが?」

 

 あれ? それとも気と言っていたか?

 

「それに、俺が狛治を呼び出しているのも『召喚魔法』だ。魔法である以上、魔力を使うのは当然だろう? そして俺は……そうだな、自分でいうのも何だが莫大な魔力を持つ」

 

 魔法が存在しないこのヒロアカ世界で、一体どういう風に魔力を表現すればいいのか、ちょっと分からない。

 いや、勿論ヒロアカ世界にもゲームやアニメ、漫画、映画といったものはあるので、そういうので魔法とかは普通に存在している。

 してはいるが、だがしかし……それでも俺の魔力は色々と普通でではない事もあり、どのように説明すればいいのかは難しい。

 

「つまり、強力な……非常に強力な個性因子が圧縮されて濃密な状態で詰まっていると思って欲しい。そして俺の血を飲んで召喚の契約に無事成功すれば、一気にパワーアップ出来る。……もっとも、狛治のように背中から竜翼が生えたり、角が伸びたりするけどな」

 

 ただ、このヒロアカ世界なら狛治であっても異形系の個性だと言えばそれで通るので、そういう意味では悪くないと思う。

 

「竜翼に角、か。だが……血だろう?」

 

 そうブラドキングが言ったのは、自分の個性が血だからこそ、もしかしたら俺の血に耐えられるかもしれないと思ったのだろう。

 あるいはこれで召喚された際には命令に絶対服従とかそういう誓約があるのなら、ブラドキングもそこまで俺の血に興味を持たなかった筈だ。

 だが、狛治は俺の言いなりになる訳ではなく、きちんと自我があり、こうして普通に意思疎通も出来て、不自由はないように思えたのだろう。

 ……実際、召喚魔法で呼んだ相手は普通に自我がある。

 ただし、俺が召喚魔法を使えば問答無用で召喚されてしまう点がデメリットだろう。

 例えばトイレに入っている時に召喚される可能性もあるし、もしくは食事中だったり、恋人と良い雰囲気の時に召喚される可能性もあるのだ。

 だからこそ、気軽に召喚の契約は結べないのだし、何より……

 

「血だな。だが、もし俺の血に身体が耐えられなかった場合は、頭がパァンッ、としてしまう」

「……パァンッ?」

 

 ブラドキングには疑問では意味が分からなかったらしい。

 ただ、マンダレイと相澤は俺の言葉の意味を理解したらしく、表情が厳しいものになる。

 

「つまり、死ぬのか?」

 

 真剣な表情で聞いてくる相澤に頷きを返す。

 

「そうだ。……まぁ、頭が破裂しても生きていられるような個性を持っていれば、あるいは生き残れるかもしれないけど」

 

 普通に考えればそういう個性があるとは思えない。

 だが、このヒロアカ世界には時折突拍子もない個性の類もある。

 だからこそ、もしかしたら俺には理解出来ないような個性がある可能性は十分にあった。

 

「……危険性が高すぎるな。そっちの、狛治だったか? そいつもよくそのような契約を受け入れられたものだ」

「俺の場合は、もっと酷い状態から脱出する為だったしな」

 

 相澤の言葉に狛治が昔を……鬼だった頃を思い出してか、しみじみと呟く。

 まぁ、無理もない。

 鬼滅世界において、狛治は鬼として……それもただの鬼ではなく、上弦の鬼として無惨に仕えていた。

 鬼は大量の雑魚がおり、幹部として上弦と下弦の鬼が数人ずついる。

 言葉から分かるように下弦よりも上弦の方がより高い地位にあり、狛治もそんな上弦の鬼だったのだが、上弦にしろ下弦にしろ、仕えているのは無惨だ。

 頭無惨というのが鬼滅世界を知っている者達の間で少し流行った事があったが、まさにそのように言われるような存在が鬼の首領だった。

 そんな無惨から逃れる為に、あるいは無惨が死んだ時に巻き込まれない為、狛治は俺と召喚の契約を結んだのだ。

 そのお陰で狛治は今もこうして生きているし、自分の趣味として強さを求め、ネギま世界の魔法界で活動しているのだから。

 

「……話は分かった。取りあえず、気軽に行えるようなものではないのだな」

 

 ブラドキングの言葉に頷く。

 どうやらブラドキングも血を操る個性だからといって、俺の血を飲んで普通ではいられないというのはしっかりと分かったらしい。

 ……あるいは、本当にあるいはの話だが、ブラドキングなら俺の血を飲むのではなく、自分の武器として使えるかもしれないが、その件については黙っておこう。

 実際問題、ブラドキングの個性が他人の血も操れるのかどうかは分からないしな。

 それにもし操れても個性因子を持つ相手の血でないと操れないとか、そういう事も普通にありそうだし。

 

「そうなるな。基本的にプロヒーローだろうとなんだろうと、生身の人間が耐えるのは……不可能とは言わないが、難しいと言っておこう」

「ちっと待て。それだと狛治も普通の人間ではないということになるのだが?」

 

 ブラドキングの言葉に狛治を見て……なるほどと思う。

 竜翼と角は俺の血の影響だと説明してあるし、それを思えば狛治が鬼だというのを知らない以上、そういう風に認識してもおかしくはないか。

 なら……と、俺はトンと床を軽く踏む。

 普通ならただ俺が床を踏んだだけにしか思えないだろうが、俺の足下……正確には俺の影に潜んでいる存在にしてみれば、話は別だ。

 ズズ、と。

 俺の影の中から刈り取る者が姿を現す。

 

『っ!?』

 

 刈り取る者を見た瞬間、俺と狛治以外の全員が即座に反撃体勢を取る。

 まぁ、無理もない。

 狛治はその外見が……竜翼や角の影響もあってそれなりに怖いが、それでも普通に話せる相手だ。

 だが、刈り取る者の場合は見た者の本能を刺激する雰囲気を持っている。

 それでも何度か見ていれば慣れるんだが、俺と狛治以外の者達は初めて見るしな。

 

「安心しろ。こいつは刈り取る者。とあるタルタロス……いや、ダンジョンと言った方が分かりやすいか? そこで契約した存在だ」

「……それを聞いて、どう安心しろと? そもそも、ダンジョンだと?」

 

 相澤の言葉に、やっぱりこのヒロアカ世界にダンジョンはないのかと思う。

 いやまぁ、ネギま世界の魔法界でもないんだから、本当の意味でのダンジョンがあるとは俺も思っていない。

 だが、ダンジョンを生み出す個性とか、そういうのはあってもおかしくないとは思うんだよな。

 もっとも相澤の様子を見る限りだと、いないらしいが。

 あるいは日本にはいなくても、世界にはいてもおかしくはないけど。

 そんな風に思いながらも、相澤達を警戒させたままだとどうかと思うので、出て来たばかりだが刈り取る者には影に戻って貰うのだった。

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