転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1913 / 2196
4551話

『いただきます』

 

 そんな言葉と共に、朝食の時間となる。

 当然ながら、食事の風景は決して明るいとは言えない。

 昨夜の開闢行動隊の襲撃で爆豪とラグドールが連れ去れさられたのだから、それで元気でいろという方が無理だろう。

 また、開闢行動隊との戦いで怪我をした者達も病院に運ばれたのでこの場にはいない。

 いや、怪我をした者だけじゃなくて、茨のようにガスによって意識不明になってしまった者も同じように病院に運ばれている。

 結果として、かなり人数が少ない、そして元気もない朝食となっていた。

 昨日龍子との電話が終わった後で男子の寝室となっている大部屋に戻った時は、既に全員が寝ていたのもあって、そこまで気にしてはいなかったのだが……今日起きた時、やはり昨日の件を引きずっている者が多い。

 当然ながらそれはA組だけではなくB組も同じで、物間もいつものように煽ってきたりはしていない。

 何だかんだと、状況を読む程度の事は出来るのだろう。

 だからといって、それで物間と仲良くやろうとは思えないが。

 

「さて、食べながら聞いてくれ。朝食が終わったら、すぐに雄英に戻る。理由は言うまでもないな?」

 

 こちらは珍しくゼリー飲料ではなく普通の食事をしている相澤が、A組とB組に対してそう言う。

 この合宿中も相澤がゼリー飲料以外に普通に食事をしている光景は何度も見ているのだが、それでもこうして実際に見ると、何かこう……違和感があるな。

 そう思うも、さすがにこの状況でそのような事を言える筈もないので黙っておく。

 俺以外の生徒達も、相澤の言葉に異論を口にする者はいない。

 

「学校に戻ったら、すぐに解散となる。寄り道はせず、家に帰るように」

 

 この状況で寄り道とかをしようものなら、ある意味で強者だな。

 ……まぁ、まだ夏休みだと考えれば、そこまでおかしな事でもない、のか?

 そうも思うが、もし遊んでいるのが見つかった場合、間違いなく面倒な事になるだろう。

 

「相澤先生、入院した人達のお見舞いとかって出来ますか?」

 

 手を挙げ、そう尋ねる。

 シャドウミラーのアクセル・アルマーではなく、雄英の生徒としてのアクセル・アルマーなので、言葉遣いは昨日の会議の時とは違う。

 相澤もその辺りは理解しているのだろう。俺の質問を聞いても特に驚いてはいない。

 ……ただし、プッシーキャッツの面々とブラドキングは驚いていたが。

 ミルコ? ミルコは俺達よりも前に朝食を食べると、既にどこかに行ったらしい。

 元々ミルコは決まった事務所を持たず、文字通りの意味で日本中を跳び回っている。

 その為、ミルコは旅立ったのだろう。

 もっとも昨日の会議では雄英で俺が諸々の事情を説明する時は来るという話だったので、そこまで離れた場所には行っていないだろうが。

 

「構わん。入院した病院については、後で連絡をしておく。……それと、マスコミが動いているようだから、余計な事は言わないようにな」

 

 念を押すように相澤がそう言ってくるが……恐らくこのヒーロー科でマスゴミにインタビューをされても、余計な事を言うような奴はいないと思う。

 何しろ入学してすぐの、マスゴミ集団乱入事件をその目で見ている者も多いし、当時食堂にいなかったとしても実際に見た者から話を聞いたりもしている。

 その為、マスゴミに対する評価は低い。

 勿論、マスコミの全てがあのようなマスゴミではないという理屈は分からないでもないのだが……それでもやはり、マスゴミへの対応は厳しくなってもおかしくはない。

 乱入事件以外にも、朝から校門の前に集まってそこを通る生徒達にしつこくインタビューをしたりしていたしな。

 

「よし。じゃあ、後は食事をして帰る準備をするぞ」

 

 相澤のその言葉で話は終わり、再び朝食を食べる。

 ちなみに今更だが、食事のメニューは鮭の塩焼きと卵焼き、味噌汁、漬物、おひたしといったような和風の食事だ。

 これがいつもなら、訓練前の食事という事でかなり食べるのだが……今日は訓練もなく、食事が終わったらすぐに帰るのだから、ここ数日のようにしっかりとした朝食を食べる必要はない。

 まぁ、中にはそんなのとは関係なく、ここ数日と同じようにしっかりと朝食を食べている者もいるが。

 

「なぁ、アクセル。今日雄英に帰ったら、どうする?」

 

 瀬呂が食事をしながら、そう聞いてくる。

 

「どうするって言われてもな。この状況で下手に寄り道をしたりは出来ないし、そもそも荷物があるから、そういうのも出来ないだろ」

 

 俺の場合はAI搭載型のスーツケースがあるので、荷物を持ち歩く必要はない。

 だが、それでもスーツケースが俺を追い掛けてくるのを考えると人の多い場所にいくのはあまり好ましくはない。

 それに……雄英での説明会がどうなるかという問題もあるしな。

 相澤の性格を考えると、それこそ今日雄英に戻ったらすぐにでも説明会……というか、会議か? そういうのをすると言ってもおかしくはない。

 いや、これは合理性を重視する相澤だからという訳ではなく、雄英側としても純粋に今回の襲撃の異常さを理解していれば当然か。

 特に内通者がいる可能性が高い以上、早急にその人物を炙り出す必要があるだろうし。

 であれば、少しでも早い方がいい筈だ。

 ましてや、爆豪とラグドールを取り返すという事も考えると、ここはやっぱり少しでも早く動く必要があるのも事実。

 何しろ、いざ爆豪やラグドールを取り返そうとする時に、内通者からヴィラン連合に情報が漏れていたりしたら、どうしようもないのだから。

 それこそ、それを逆手にとってこっちに大きな被害が出かねない。

 

「やっぱりそうか。アクセルなら色々と考えがあるかと思ったんだけどな」

「誰かの家に集まって打ち上げをやるとか、そんなところだろうけど……今はそんな気分じゃないだろ?」

 

 瀬呂に対し、そう言う。

 林間合宿の荷物をそれぞれ持っている以上、どこかの店……それこそファミレスやファーストフード店で打ち上げをするといった事は出来ないだろう。

 とはいえ、爆豪とラグドールの件、それに緑谷を始めとした入院している者達の件を考えると、打ち上げをするといった気分には慣れないだろう。

 どうせ打ち上げをするのなら、爆豪とラグドールを取り返し、入院している者達も無事退院してからの方がいい筈だ。

 

「まぁ、そう言われるとそうなんだけどな。ただ、こう……胸の中にあるモヤモヤとした気分をどうにかしたいと思って」

 

 なるほど、瀬呂の性格からして今のこの状況で何か遊びたいとか、そういう風に言うのはと疑問に思っていたんだが、どうやらそういう事らしい。

 となると……A組の中でも賑やかし要員というか、何らかのイベントを行う時はその中心になる事が多い者に話してみるか。

 そう思って周囲を見ると、上鳴は峰田と女の趣味について話しており、切島は誰と話すでもなく真剣な表情で食事をしていた。

 上鳴はともかく、切島は仕方がないか。

 恐らく切島は、A組の中で……それはつまり、雄英の中で一番爆豪の仲が良い人物だ。

 それだけに、連れ去られた爆豪について心配しているのだろう。

 そうなると誰に聞くべきか。

 改めて周囲の様子を見ると、不意に少し離れた場所に座っていた三奈と視線が合う。

 この状況で俺と視線が合ったという事は、三奈は俺を見ていたのだろう。

 だが、その三奈は俺と視線が合うと半ば反射的な動きで視線を逸らす。

 

「えっと……あれ?」

 

 三奈の行動に戸惑うも、多分昨夜の出来事が理由で視線を逸らしたんだろうなと思う。

 まぁ、自己嫌悪がなくなった……かどうかは分からないが、とにかく今はそれどころではなかったのは喜ぶべきだろうと思っておく。

 

「アクセル? どうしたんだよ?」

「あ、いや。何でもない。とにかく、色々と思うところはあるんだろうけど、今日は大人しく家に帰ってここ数日の疲れを癒やした方がいい」

 

 そう言うも、これは決して適当に言った事ではない。

 林間合宿そのものはそこまで長くはなく3泊4日ではあったが、その内容は非常に厳しいものだった。

 俺にしてみれば特に問題ないくらいだったが、幾ら相応に鍛えていたとはいえ、まだ高1の面々にしてみれば地獄の特訓といった表現が相応しい、そんな厳しさだったのは間違いない。

 今は寝起きという事でまだ体力はそれなりにあるが、それでもあくまでもそれなりでしかない。

 家に帰ってゆっくりとすれば、今日個性を伸ばす訓練をしていなくても、林間合宿によって蓄積した疲れで眠ってしまってもおかしくはない。

 

「うーん、やっぱりそうなのか? けど……まぁ、そうだな。今日はアクセルの言葉に従っておくよ」

 

 そんな会話をしながら朝食を食べ終えると、帰る前に合宿施設の掃除をするように相澤やブラドキングから指示される。

 この辺は昨夜の襲撃があったり、あるいは爆豪やラグドールの件があっても変わらないのだろう。

 あるいは、掃除をさせる事で爆豪の件を少しでも忘れさせようとしているのか。

 ともあれ、そんな訳で俺は常闇と障子と共に会議室の掃除をする事になる。

 ……そう、昨夜俺が狛治や刈り取る者を召喚した会議室だ。

 

「俺達はこの部屋を使った訳でもないのに掃除をするとは……」

 

 常闇が不満そうに言う。

 ……そうしながらも、掃除をする手が止まることはなく、しっかりと掃除はしていた。

 

「ふむ。しかしこの合宿施設を使ったという意味では間違っていないのだから、そういう意味ではここの掃除をするのも間違ってないのではないか? アクセルはどう思う?」

 

 障子が個性を使って手を幾つも生み出しては、器用に椅子を片付けながら聞いてくる。

 聞いてくるが……俺の場合は昨夜普通にこの部屋を使っていたしな。そう考えるとこの会議室を掃除するのはおかしな話ではない。

 とはいえ、昨日の会議の件については生徒達には話していないので、素直に答える訳にもいかない。

 

「ヴィランに燃やされた場所の掃除をするよりは、こっちの方が楽だと思うけどな」

 

 なので、昨日の口裂け男が燃やした場所を話題にする。

 実際にはあの口裂け男が燃やしたのは外壁だけで、建物の中身は無事だったらしい。

 補習をやっていた面々から聞いたので、その辺りは間違いないだろう。

 だが、外壁部分が焼かれたのは間違いない以上、リフォーム……いや、この場合は表現が違うのか? とにかく外壁を修理する必要がある。

 で、修理をするにも焼かれた部分……正確には焼かれて地面に落ちた残骸とか炭とか、そういうのを片付ける必要があった。

 そういう時こそ俺の炎獣を使えば楽に片付けられるんだが。

 正確には片付けるんじゃなくて、ゴミとなったのを炎獣で燃やして灰にするというだけなんだが。

 とはいえ、炎獣の数を増やせばかなり楽になるのは間違いない。

 

「なるほど。アクセルが言う通り、この会議室の方が掃除が楽なのは事実か。……ダークシャドウ、この椅子をそっちに纏めてくれ」

 

 常闇がダークシャドウに指示を出すのを眺めつつ、掃除を進めていると……

 

「アクセル、ちょっといい?」

「マンダレイ?」

 

 会議室にマンダレイが顔を出し、そう声を掛けてくる。

 

「悪い、ちょっと行ってくる」

 

 常闇と障子にそう声を掛けると、マンダレイのいる方に向かう。

 会議室の扉から出ると、すぐにマンダレイが口を開く。

 

「えっと、洸汰を助けてくれた子がいるでしょ? 緑谷君だったかしら。その、入院してしまった」

「そうですね。……ただ、命に別状はないらしいですよ」

 

 洸汰……マンダレイが預かっている子供が、昨夜の襲撃の時にヴィランに襲われ、洸汰を気にしていた緑谷はそんな洸汰を助けたらしい。

 俺が緑谷と遭遇した時、緑谷は障子に背負われていたのだが、あれは暴走したダークシャドウにやられた訳ではなく、そのヴィランとの戦いで負った傷だった、と。

 開闢行動隊に所属しているだけあって、かなり強いヴィランだったらしい。

 もっとも、スピナーのように単体での戦闘力は弱いヴィランもいたので、そういう意味では緑谷と戦ったヴィランはかなり強力だったのだろう。

 結果として、自分でコントロール出来る以上の個性を発揮し、その結果があの怪我だったらしいし。

 障子に背負われていた緑谷がボロボロだったのは、そのヴィランの攻撃によって負ったダメージもあったらしいが、限界以上に使った個性の方が大きな理由だったらしい。

 

「私もそれは聞いたわ。ただ……今度洸汰の件で直接会ってお礼を言いたいと思ってるのよ」

「なるほど?」

 

 話は分かったが、何故それで俺に声を掛けてきたのかが分からない。

 そんな風に疑問に思っていると、マンダレイは話を続ける。

 

「ほら、アクセルは普通の生徒と色々と違うでしょ? だから、何かあった時の為に連絡先を交換しておきたいのよ。ラグドールの件もあるし」

 

 俺とラグドールがどう関係してくるのかは分からないが、とにかくマンダレイがそう言うのならということで、電話番号の交換と、LINの交換をするのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。