転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4557話

『……』

 

 しん、と。

 会議室の中が静まり返る。

 それこそ静寂といった表現が正しいかのような、そんな状況。

 だが、俺は知っている。

 今まで何度も同じような経験をしてきたので、この静寂は一種の準備期間、あるいは助走しているかのようなそんな状態だと。

 そんな訳で、やがて静寂の中でプレゼント・マイクが口を開こうとしたところで、耳を塞ぐ。

 

『ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?』

 

 耳を塞いでいても、聞こえてくる絶叫。

 特にプレゼント・マイクの声がでかい。

 ……まぁ、その辺については個性の関係上仕方がないか。

 やがて、視線の先で校長がパクパクと口を開いているのを見つけると、耳を覆っていた手を外す。

 

「その……それはつまり、アクセル代表はシャドウミラーという国を率いる立場にいるという事なのかな?」

 

 そう聞いてくるものの、校長の様子からすると是非違っていて欲しいといったような感じだ。

 まぁ……うん。校長にしてみれば、そのように思うのは仕方がないとは思う。

 思うのだが、だからといって状況が変わる訳ではないのも事実な訳で。

 

「そうなるな」

「……何故、一国の代表が異世界に?」

「色々とあるんだよ、色々と。けど単純に言えば……シャドウミラーで最強なのは俺で、何かがあった時に生き残れるのが俺だからか。それにシャドウミラーの代表という事になってはいるが、俺の場合は国を動かしている訳じゃないし。国を動かしているのは、専門の者達に任せてる」

 

 俺が言うのも何だが、シャドウミラーは国ではあるがとてもではないが普通の国とは言えない。

 何しろ国を率いる俺が異世界に向かい、それでも普通に国が運営されているくらいなのだから。

 普通の国と一緒にする事は出来ない。

 ……とはいえ、そもそもの話、シャドウミラーという国は特殊部隊だったシャドウミラーがそのまま国になった形だしな。

 国力だったり戦力だったり、そういうのを考えれば間違いなく大国と呼ぶに相応しい……いや、大国よりも覇権国家といった表現の方が正しかったりするか?

 とにかくそんな感じな訳だが、国に所属する人数となると……量産型Wを抜きにして、またコバッタを始めとする無人機も抜きにした場合、冗談でも何でもなく覇権国家や大国、中堅国、小国、県、街、村……それを構成する一部、町内会程度の人数しかいなかったりする。

 それでも門世界からエルフ達が移住してきたので、相応に人数は増えているのだが。

 まぁ、シャドウミラーという特殊な国の事を考えれば、そのような感じになるのはそうおかしな事ではない訳で。

 だからといって、その辺りについての詳細を話す必要はないと思うが。

 

「……正直なところ、話を聞いても理解出来ないね。そのような国の在り方が異世界流なのかい?」

「色々な世界と関係はあるけど、シャドウミラーが特殊な国であるのは間違いないな」

 

 シャドウミラーと関係のある世界で、普通の国と違うような国となると……オルフェンズ世界か?

 今はもう色々と社会構造が違っているが、俺が最初にオルフェンズ世界に行った……というか、ペルソナ世界でのやり取りで世界を追放されて、ダンバイン世界のジャコバ・アオンの力でオルフェンズ世界に転移させられた時のオルフェンズ世界は、国はあったが、軍事力は持たず、軍事力を持ったギャラルホルンが実質的に国の上に立つ組織として存在していた。

 あの当時のオルフェンズ世界は、普通の国ではないだろう。

 後は……今はもう行けなくなったが、門世界やダンバイン世界なんかはまんま中世ファンタジー世界の国といった感じだったな。

 ……まぁ、そんな諸々を考えた上でも、やっぱりシャドウミラーは普通の国とは言えないのは間違いないが。

 

「ともあれ、俺の事はそこまで気にしないでくれ」

「……一国を率いる人物がいて、気にするなという方が無理なのでは?」

 

 校長のその言葉に、他の者達も同意するように頷く。

 うーん、この様子を見ると、これ以上俺が雄英の生徒としてやっていくのは難しいか?

 いや、けどそれでも俺にしてみれば雄英を今の時点で辞める訳にもいかないんだよな。

 何しろこのヒロアカ世界はダンバイン世界と同じように特殊な能力が存在する。

 個性については、シャドウミラーにとっても重要な存在となるのは間違いない。

 そんなヒロアカ世界において、原作主人公の緑谷が通っているのが雄英だ。

 であれば、その雄英に通えなくなるというのは、個人的には困る。

 その辺については、それこそ後で交渉次第だろう。

 政治班に期待だな。

 

「ともあれ、今はまず爆豪やラグドールを助ける時の戦力についてだな。……で、どうする? シャドウミラーの戦力はさっきも言ったように全力を出せるが」

 

 そう言うが、実際には本当の意味で全ての戦力を用意する事は難しいだろう。

 メギロートやバッタ、あるいは量産型Wが操縦するシャドウは多くの世界に配備されている。

 全戦力となれば、当然ながらそれらの戦力も呼び出す必要が出てくるのだが、それは難しい。

 いや、やろうと思えば出来るだろうが、わざわざそのような事をする必要まではないと思っているしな。

 とはいえ、それらの戦力を抜きにしても、こちらで用意出来る戦力は圧倒的なのだが。

 

「いや、そこまでは頼まないよ。出来る限り密かに行動したいとは思っているけど、あまりに世界観の違う存在を見せられると、それが知られた時に一般人が困惑するだろうしね。……公安の方はどう考えているのかな?」

 

 校長が言葉に最後、目良にそう尋ねる。

 そう聞かれた目良は、少し困った様子で頭を掻きながら口を開く。

 

「根津校長の仰る通りだと思います。今のこの状況でシャドウミラーの件を発表すると、間違いなく世間は混乱するでしょう。……いえ、混乱程度ではすまない可能性もあります。それこそ諸外国から情報を求め、自分達もシャドウミラーと接触するべきだと主張してくるでしょう」

 

 目良の説明に、雄英の教師達が……いや、プッシーキャッツの面々も含めて面倒そうな表情を浮かべる。

 実際、このヒロアカ世界は複数の国が存在しており、決して統一はされていない。

 ただ、オールマイトの影響もあり、世界的な地位で見るとかなり高いらしいが……あくまでもかなり高いであって、突出した存在という訳ではない。

 それこそ他の国が……特にアメリカとかがその気になれば、日本としても譲歩しなければならないだろう。

 そこに異世界の存在が現れたと知れば、余計に。

 

「となると、ゲートを設置してシャドウミラーとやり取りが出来るようになっても、その辺りの事情は公表しないのか? ……いずれ知られるとは思うけど」

 

 特にこのヒロアカ世界のマスコミはマスゴミと言われる程に民度が低い。

 雄英の敷地の一部を譲渡された存在がいると知れば、知る権利を盾に侵入してきてもおかしくはない。

 ……勿論、ゲートが設置されれば量産型Wやコバッタが警備につくので、もし侵入してもすぐに捕まるだろうけど。

 そこまで考え、ふと気が付く。

 

「目良、雄英の敷地が提供されてゲートを設置した場合、そこは大使館扱いでシャドウミラーの領土となるのか? それとも、あくまでもこの世界の日本という扱いになるのか?」

「それは……申し訳ありませんが、当初は日本という扱いになるかと。さすがに公安の方では、大使館という扱いには出来ませんので。ただ、今すぐには無理でも上に働き掛けて、将来的には大使館のような扱いにしたいところです」

「なるほど」

 

 目良の言葉からすると、暫くの間はマスゴミが無断で侵入してきてもシャドウミラーの法律で裁く事は出来ないのか。

 もっとも、シャドウミラーの法律と一口で言っても、大雑把にしか決まっていないが。

 そうなると、もしこの世界のマスゴミが無断でシャドウミラーの敷地内に入ってきたら行方不明者が出そうだな。

 雄英の教師達がいるので、それを実際に口にするようなことは出来ないが。

 

「敷地の件はともかく、戦力は……例えば、PTやMS……全高18m前後の人型機動兵器とか、そういうのは無理か?」

「無理だね」

 

 校長は俺の言葉に即座にそう言ってくる。

 

「そうか、残念だ」

 

 そう言いつつも、実際にはそこまで残念には思っていない。

 恐らくそうなるだろうという予想がそこにはあったのだから。

 このヒロアカ世界においては、PTやMSのような大きさの人型機動兵器は存在しない。

 だからこそ、そういうのが出現して一ヶ所に集まれば、その時は対処が難しくなるのだ。

 なので、校長に提案はしたものの、恐らく断られるだろうというのは俺にとっても容易に予想出来ていた。

 だが……それなら……

 

「5m前後のKMF、7m前後のオーラバトラーとかもあるけど、どうだ?」

「……出来ればそれも止めて欲しい。機械ではなく、生身の人達はどうなんだい?」

「やっぱりこの世界だとそうなるか」

 

 この件については別に驚くような事ではない。

 これまで半年以上このヒロアカ世界で生活してきたのだから、そのくらいは寧ろ容易に予想出来ることですらあった。

 

「そうなるね。……で、どうかな?」

「まぁ、シャドウミラーは600年を生きる吸血鬼が生身の戦闘訓練の教官をやっていたりするから、そういう意味では生身でも十分に強いぞ」

「……は?」

 

 校長が俺の言葉にそんな声を漏らす。

 どうやら俺の言葉をしっかりと理解出来なかったらしい。

 

「だから、600年を生きる吸血鬼だ。とある世界でシャドウミラーに所属する事になったんだよ。当然ながら吸血鬼だから、魔法とかそういうのも普通に使える」

 

 そう言いながらも、そこまで驚く事か? と思わないでもない。

 個性が存在するこの世界だけに、それこそ吸血鬼の個性とか、そういうのが普通にあってもおかしくはないと思うんだが。

 ドラゴンに変身する個性を持つ龍子を見て、そんな風に思う。

 とはいえ、ドラゴンの個性は珍しい個性であるのも事実。

 そう考えれば、吸血鬼という個性があってもかなり珍しいのは間違いないだろうし、場合によってはヴィランになっていてもおかしくはない。

 

「さっきも言ったが、シャドウミラーは色々な世界と繋がりがある。そういう世界の中には、シャドウミラーに所属する事を希望してそれが受け入れられる者も多い。……まぁ、そうやって受け入れられる者は多くないけどな」

 

 何しろ、シャドウミラーに所属すれば無条件に不老となれる。

 これは普通に考えてとんでもない特典だろう。

 それを目当てにシャドウミラーに所属したいと思う者は、それこそ幾らでもいる。

 だが……だからこそ、俺としては手当たり次第に受け入れるといったような事は考えていない。

 で、エヴァはそんな中でも数少ない合格者な訳だ。

 もっとも、エヴァの場合は吸血鬼なので元々不老ではあるのだが。

 

「で、そんな吸血鬼に戦闘訓練をつけて貰っているので、シャドウミラーの実働班……まぁ、分かりやすく表現するのなら軍隊だと思ってもいいけど、そこに所属する者達は……そうだな、プロヒーローとしてもトップクラスの実力を持つのは保証する。他にも量産型Wという兵士がいるけど、こっちはどうする?」

「量産型W? その名称からして嫌な予感しかしないけど、どういう存在なのか聞いても?」

「そうだな……どう説明すればいいか」

 

 量産型Wの説明は、色々と難しい。

 だが、同時に端的に答えるだけなら簡単でもある。

 

「人造人間だな。シャドウミラーにおいては、コバッタという小さなロボットと一緒に色々な作業をしているが、その中には戦闘も入っている。で、人造人間である以上は当然かなりの強さを持つ。それこそこの世界のプロヒーローの平均以上の実力を持つのは間違いないな」

 

 もっとも、プロヒーローと一口に言っても、色々な者がいる。

 例えば、雄英の教師もしている13号は、自然災害や事故といったことが起きた時にレスキューをするのがメインの仕事だ。

 勿論相応に戦闘訓練も重ねてはいるだろうが、本職はやはりレスキューなのだ。

 そういう意味でも量産型Wがプロヒーローの中で具体的にどのくらい強いのかと言われると、俺としても素直に答えることは出来ない。

 ただ、ギルガメッシュ……金ぴかの肉片を培養したり、凛の魔術回路を解析してガンドくらいは使えたり、魔力や気を使って戦闘が出来たりと、それが量産型W……敵対している相手にしてみれば、雑魚に等しい存在とか、クソゲーかこれといったように叫んでもおかしくはない強さを持っていたが。

 

「……それは、脳無と違うのか?」

 

 不意に相澤の言葉が部屋の中に響き、それを聞いた者達は俺に視線を向けてくるのだった。

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