転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4563話

「……それで、千鶴は結局何を要求したの?」

 

 レモンが培養ポッドに入っているオールマイトを見つつ、俺にそう聞いてくる。

 既に治療の準備は終え、後はこの培養ポッドを魔法球の中に運び入れるだけだ。

 以前、レモンが培養ポッドは取り外しが出来るし、移動も出来ると言っていたのを覚えておいて、本当によかった。

 

「ヴィランの身柄だな。ただし、タルタロス……ヴィラン用の刑務所の中でも一番厳重な場所に捕らえられていて、死刑になるヴィランをこちらで引き取る事になった」

 

 ヒロアカ世界において、死刑というのはかなり厳しい処罰だ。

 だが……だからこそ、そのようなヴィランをシャドウミラーで引き取って貰えるのなら、ヒロアカ世界の者達にとっても嬉しいだろう。

 そしてシャドウミラー的には個性という、未知の存在……敢えて似ているのを挙げるとすれば、ペルソナ世界のペルソナとか、あるいはダンバイン世界のオーラ力とか、そんな感じか?

 勿論、詳細に考えれば違うのだろうが。

 ヒロアカ世界においては、10人中9人は個性を持っている世界なのだから。

 そういう意味ではやはりヒロアカ世界というのは特殊な世界なんだろうな。

 それに……タルタロスに収監されているヴィランは当然凶悪なヴィランだけに、その個性も凶悪なものが多い。

 そう考えれば、シャドウミラーにとっても大きな意味を持つ。

 ……問題なのは、そういう約束をしたのは校長だが、校長が公安を始めとした組織と交渉して、上手く話を纏められるかといった問題もあるのだが。

 とはいえ、校長もこちらの条件を引き受けた以上は、公安や国と交渉するのは間違いないだろうが。

 国はともかく、公安辺りなら普通にその辺りの取引は受け入れそうな気もする。

 ただし、問題なのは今回の契約はあくまでもオールマイトの治療であって、公安的にはそこまでメリットがないという事だろう。

 いやまぁ、公安にとってもNo.1ヒーローのオールマイトが万全の状態で働けるというのは悪くない事だとは思うが。

 

「なるほど、少し聞いた限りでも個性というのは興味深いし……そういう意味では、アクセルの判断も間違っていなかったのかもしれないわね」

「そう言って貰えると、俺としても嬉しいよ。……それで、オールマイトの状態はどんな感じだ?」

 

 ヒョロガリ状態のまま、培養ポッドの液体の中で眠っているオールマイトを見て、レモンに尋ねる。

 だが、そんな俺の言葉にレモンは難しい表情を浮かべる。

 

「かなりボロボロね」

 

 レモンがそのように言うとなると、オールマイトの状態は俺が予想していたよりもかなり悪いっぽい。

 

「具体的には?」

「どこが……と特定するのも難しいくらい、身体がボロボロよ、今はまだ何とかなっているけど、治療をしないままならいつ死んでもおかしくない……とまではいかないけど、10年……いえ、5年くらい後には寝たきりになってもおかしくないわね。ただ、そんな中でも厳しいところは、呼吸器と胃かしら。……特に胃はもう残ってないわ。多分、怪我をした時に摘出したんでしょうね。呼吸器は半壊といったところかしら」

「それはまた……」

 

 レモンの口から出たのは、俺にとっても驚くべき内容だった。

 呼吸器が半壊というのもそうだが、やはり胃を完全に摘出したというのはオールマイトにとって非常に痛い出来事だろう。

 オールマイト、食事どうしてるんだろうな?

 点滴とか?

 ……あるいはその辺が理由で素のオールマイトはあんな風にヒョロガリなのかもしれないが。

 

「それで治療だけど……取りあえず呼吸器系と胃の再生は必須として、他にもダメージを受けている部分は回復しておく必要があるわね」

 

 あっさりとそう言うレモンだったが、量産型Wの技術があればこそだろう。

 一般人と量産型Wでは、そもそも身体の構造からして大きく違うし。

 それはつまり、オールマイトも一般人ではないという事を意味している。

 もっとも、オールマイトが一般人かどうかは実際のところ微妙な問題ではあったが。

 

「その辺については、俺は詳しくないし、レモンに任せるよ。ただ、オールマイトはヒロアカ世界の平和の象徴だ。そう考えると、出来るだけ完全な状態で戦場に送り出したい」

 

 原作において、オールマイトがどういう風になったのか、俺には分からない。

 だが、それでもこれまでの経験からすると、何となく予想は出来る。

 ……なら、その原作よりも多少はマシな状態にするくらいは、俺にも出来るだろう。

 

「分かったわ。……ただ、時間がないんでしょう? 魔法球を使っても、完全にとはいかないわよ?」

「それでも出来る限りの事はやってくれ。最悪、今回の一件が解決したらまたホワイトスターに来て貰って治療をするといった選択肢もあるしな」

 

 爆豪やラグドールを取り返す為の戦いにおいて、オールマイトが言っていたAFOが直接出てくるのかどうかは俺にも分からない。

 もしAFOが出てこなければ、治療が中途半端であってもどうとでも出来るだろう。

 だが、もしAFOが姿を現せば……どうだろうな。

 ヒーローネットワークでプロヒーローを呼ぶ事にはなっているが、その戦力で足りるのかどうか。

 ああ、いや。だからこそシャドウミラーから戦力を欲してるのか。

 とはいえ、そうなるとそうなったで一体誰を派遣するのかといった問題もあったりするのだが。

 

「そうね。治療をする私にしてみれば、シャドウミラーで治療をするのだから、完治にはしたいところだけど、どうかしらね」

 

 レモンの言葉を考えると、間違いなく今回の一件が解決した後は再度入院……入院? まぁ、取りあえず治療をする必要が出てくるだろう。

 

「その辺はレモンに任せるよ。オールマイトにとっても、中途半端に治療が終わるより、完全に回復した方がいいだろうし。……さて、とにかく今は時間も惜しい。オールマイトを魔法球まで運ぶぞ。魔法球の設定の方はもう終わってるんだよな?」

「ええ、そっちはエキドナに言っておいたから問題ない筈よ」

 

 なら、安心だろう。

 生真面目な性格のエキドナだけに、当然ながらレモンからの命令に逆らうといった事はしない。

 いやもしレモンの命令が不合理なものだったら……例えばレモン本人に危害を加えるような、そんな命令であったりした場合は、また話は違うだろう。

 だが、魔法球の設定を変えるというのは、そういうのじゃないしな。

 

「じゃあ、俺はちょっと校長に会ってくる」

「今日は家に帰るのよね?」

 

 座っていた椅子から立ち上がってそう言うと、レモンが聞いてくる。

 家、か。

 どうしたものか。

 いや、勿論俺としても家に帰るのは問題ないとは思う。

 だが、ヒロアカ世界の家もある以上、あっちをずっとそのままにするって訳にもいかないんだよな。

 それに今は夏休みだからいいが、夏休みが終わって2学期が始まったら俺が雄英に通うのをどうするかといった問題もある。

 今まで通り生徒として雄英に通うのか、あるいはシャドウミラーとしての行動を重視する為に雄英の生徒を辞めるべきか。

 ただ……原作的な意味を考えると、原作の舞台となる雄英の、それも原作主人公の緑谷の同級生といった立場を捨てるのは痛い。

 公安からの依頼でもあった、壁になるという件も……まぁ、仕事としてはともかく、原作的な流れを考えればA組の生徒達を、あるいはB組の生徒達も鍛える必要があるのは間違いない。

 だからこそ、俺としては雄英の生徒のままでいた方がいいとは思うのだ。

 

「そうだな。取りあえず今日はホワイトスターの家に帰るよ。ただ、ヒロアカ世界にある俺の部屋もそのままって訳にはいかないだろうし」

 

 あるいは目良に言えば公安の方である程度の手続きはしてくれるかもしれないが、あの部屋にはそれなりに気に入っている物もある。

 具体的には、ロボット掃除機とかAI搭載型のスーツケースとか。

 また、俺の住んでいるマンションの1階にあるスーパーも値段は相応に高かったりするが、売ってる料理とかはどれも美味いしな。

 

「アクセルの部屋ね。……少し気になるわ」

「ホワイトスターとはこうして繋がったんだし、興味があるのならいつでも来てもいいんじゃないか? もっとも、部屋そのものはそれなりに高級なマンションだが、あくまでもそれなりでしかないけどな」

 

 レモンはその気になれば一流のホテルの最上階を借りるといった事も容易に出来る。

 実際、政治班の面々が何らかの理由で他の世界で寝泊まりする時は、可能な限り高価な、そして豪華な部屋が用意されるらしいし。

 ……普通、向こうの世界に行った時に泊まる部屋というのは、自分達で金を出すのが普通だ。

 しかし、シャドウミラーの立場を考えると、基本的には向こうの世界が金を出すような事になるらしい。

 それだけ、シャドウミラーという国の影響力が強いという事なんだろうけど。

 

「アクセルの部屋ってだけで、興味深いのよ。1人暮らししていたんでしょう?」

「そうだな。とはいえ、掃除の類はロボット掃除機だったり、マンションの清掃サービスを使ったりしているから部屋は綺麗だし、食事も……たまに作る事はあったが、基本的には外食だったり、1階のスーパーで弁当とか惣菜とかそういうのを買ってきて食べていたな」

 

 一応誰か来た時のカバー目的で冷蔵庫の中にはそれなりに飲み物や食料なんかを入れてあるし、冷凍食品の類もあったりはする。

 世界にもよるんだが、冷凍食品って……それも日本のスーパーやコンビニで売っている冷凍食品ってレベルが高いんだよな。

 俺がヒロアカ世界でよく買ったのは、冷凍炒飯や冷凍パスタ、あるいは冷凍ラーメンといった諸々だ。

 本当は冷凍のエビフライとかそういうのを買ってもよかったんだが、揚げ物は片付けが面倒でな。

 それにエビフライ、トンカツ、コロッケ、魚のフライ……そういうのは1階のスーパーで普通に売ってるので、それを買ってきて食べる時にはオーブントースターで温め直せば普通に揚げ立て……には劣るものの、しっかりとした食感にはなるしな。

 だが、逆に惣菜コーナーとかで売っている炒飯は、レンジで温めてもいまいちだ。

 ちなみに俺は冷凍炒飯も電子レンジで温めるのではなく、フライパンで炒める派だ。

 基本的に電子レンジで温めるとシットリ系の炒飯になり、フライパンで炒めるとパラパラ系の炒飯になる。

 で、俺の好みはパラパラ系なので、フライパンで炒める訳だ。

 フライパンで炒める時は、長ネギのみじん切りを加えたり、焼き豚を加えたりと具材をプラス出来るのも嬉しい。

 ただ、注意事項としてはフライパンで炒める時に炒飯の量が多すぎるとしっかりとしたパラパラ炒飯にはならない。

 なので、250g前後くらいを強火で5分くらいがベストだと思う。

 ……まぁ、この辺は好みにみよるので何とも言えないが。

 

「ふーん。うちで食べる料理よりも美味しいの?」

「いやいや。そんな筈がないだろ。俺に取ってはマリューや千鶴が作ってくれる料理の方が好きだし、外食をする場合でも超包子の料理の方が好きだって」

「なら、いいわ。もう連絡はいってる筈だから、マリューと千鶴も、あるいは他の子達も家に集まって料理をしている頃だと思うわよ? もしそんな状況で今日は家に帰らないで、ヒロアカ世界に行くと言っていたら……さて、どうなっていたのかしらね?」

 

 笑みと共に、そうレモンが言う。

 

「うん、取りあえず今日は家に帰るから安心してくれ。ただ、ヴィラン連合の拠点……それが本拠地かどうかは分からないが、そっちに突入するのがいつになるのかは知っておきたいし」

「シャドウミラーからも戦力は出すんでしょう? 具体的にはどのくらい出すの?」

「それが難しいところなんだよな。コーネリアと相談をして決めようと思う」

 

 これがオルフェンズ世界のような世界なら、シャドウミラーという組織についても大々的に公表しているし、MSが普通に存在しているので、PTとかそういう戦力も普通に出せたりする。

 だが、今回そのようなことは出来ない。

 つまり、PTとかじゃなくて生身で戦う必要がある訳だ。

 ……いっそ、ハシュマルでも出すか?

 ふとそう思ったが、ヴィラン連合の拠点が人里離れた場所でもなければ、ハシュマルを出すのは問題だろう。

 もし街中に拠点がある中でハシュマルを出せば……うん、間違いなくネットに拡散する。

 ヒロアカ世界はネットが発展しているのもあって、ちょっとした事でもすぐに誰かがネットに映像や画像をアップする。

 具体的には、保須市で俺がステインを倒した時の映像だろう。

 あれ、別にどこぞの放送局のアナウンサーとか、あるいはTV局のカメラマンとか、そういう連中ではなく、普通の一般人がネットにアップした奴だしな。

 そんな訳で、ハシュマルを一般人の見える場所で使おうものなら……うん、公安や雄英が阿鼻叫喚と呼ぶに相応しい状態になる未来しか見えなかった。

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