転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4571話

「お、そろそろ時間だな」

 

 喫茶店の時計を確認すると、見舞いに行く為の待ち合わせの時間となっていた。

 喫茶店の窓ガラスの向こう側にある待ち合わせの場所を見てみると、切島と上鳴、砂藤の姿があった。

 あの3人がどうやら最初……いや、正確には最初に来たのはヤオモモで、その次は俺なのか。

 

「そうですわね。……既に何人かいるようですし、行きましょうか」

 

 ヤオモモも俺の視線を追って切島達の姿を確認したのだろう。

 そう言いながら、座っていた席を立つ。

 それぞれで会計をすませると、2人で喫茶店から出て……

 

「あれ? アクセルにヤオモモ?」

「え? あ、本当だ。アクセル君とヤオモモだ。喫茶店にいたんだ」

 

 ちょうどそのタイミングで声を掛けられる。

 声のした方に視線を向けると、そこには三奈と葉隠の姿があった。

 いつもより少し元気がないのは……まぁ、林間合宿の件があったからだろうな。

 あるいは開闢行動隊の襲撃がなければ……いや、もし襲撃があっても撃退して爆豪やラグドールを連れ去られなければ、もう少し元気だったとは思うが。

 実際、ヤオモモも俺と会った時は元気がなかったしな。

 喫茶店の中で話した事で気分転換になって、ある程度は落ち着いたっぽいけど。

 

「俺が来たらもうヤオモモが来ていたんでな。約束の時間までまだちょっとあったから、ヤオモモと一緒にこの店で休んでいたんだ。……この炎天下の中、ずっと外にいるのも、それはそれで問題だろう?」

「それは……まぁ、そう言われるとそうかもしれないけど」

 

 三奈は俺の言葉に同意するものの、完全に同意しているという訳ではなく、不承不承といった感じだ。

 何だ? もしかして三奈もこの喫茶店に入りたかったのか?

 

「一応言っておくけど……ああ、いや。まずは待ち合わせの場所に向かうか。向こうもこっちに気が付いている様子だし」

 

 いつの間にか切島達に合流した面々の中でも瀬呂が元気よく手を振っている。

 それに俺達が今いるのは喫茶店の前だ。

 そんな場所で実はこの喫茶店はいまいちだとか、そういう話をするのは、場合によっては営業妨害と言われてもおかしくはない。

 ……とはいえ、この喫茶店の従業員も多分自分達の店がそこそこでしかないというのは分かってそうだよな。

 それで十分儲かっているんだから、今のままでも構わないとか、そんな感じの経営方針のような気がする。

 もし俺がこの喫茶店のオーナーや店長なら、せめてケーキとかはもっと美味い店から仕入れるけど。

 あ、でもそうなると値段も上がるのか。

 そう考えれば、値段がそこそこ安くて、その代わりにケーキとかの味もそこそこってのは間違っていないのかもしれない。

 ……間違っていないのかもしれないが、だからといって俺がこの喫茶店をまた使う気になるかと言われれば、微妙なところではあるけど。

 ともあれ、喫茶店から離れたところで、俺は三奈に向かって口を開く。

 

「言っておくが、あの喫茶店はそこまでして入りたいとは思わない程度の店だったぞ。取りあえず俺なら、あの喫茶店に入るのならもっと別の喫茶店に入る」

「……あのね、私が言いたいのはそういう事じゃないんだけど?」

「うん? 違ったのか? てっきり……」

「あはは、アクセル君はもう少し女心を理解した方がいいね」

「女心、ですの?」

 

 葉隠の言葉にヤオモモが理解出来ないといった様子で首を傾げる。

 いや、男の俺ならともかく、何で女のお前が女心と聞いて首を傾げるんだよ?

 そう思うも、ここで突っ込むと碌な事になりそうもなかったので、黙っておく。

 そうして待ち合わせの場所に到着すると……

 

「おい、アクセル。お前こんな大変な時にオイラを差し置いて……差し置いて……」

 

 案の定と言うべきか、峰田がヤオモモ達と一緒にいる俺を見て不満そうに何かを言う……のかと思ったら、何故か不意にその言葉が止まる。

 あれ?

 いつもの峰田なら、嫉妬から血涙を流しながらこっちに攻撃して来たりする筈なんだが……今は何でそうしない?

 そのように思ったのは俺だけではなく、他の者達も同様だったらしい。

 

「おい、峰田。どうしたんだ?」

 

 集まっている面々を代表するように尋ねたのは、上鳴。

 峰田の親友……というか、相棒といった感じの人物なので、上鳴が峰田の心配をするのは分からないでもない。

 だが、峰田は自分を心配する上鳴に気が付いた様子もなく、俺をじっと見てくる。

 あれ? これ、本当に一体何があった?

 そんな疑問を抱くも、峰田の様子を見る限りだと何だかもの凄くショックを受けているようにすら見える。

 普段からうるさい峰田がそのようになれば、当然ながら他の面々も一体何があったのかと気になってもおかしくはない。

 そんな中、峰田はじっと俺を見ながらようやく口を開く。

 

「アクセル、お前……何だか妙に肌が艶々してないか?」

「は?」

 

 峰田の口から出たのは、俺にとっても完全に予想外の言葉。

 一体何でそんな言葉を口に出す?

 そう考え……ふと、気が付く。

 あれ、これもしかして……昨夜俺がホワイトスターでレモン達と熱い夜を楽しんだ事を察してないよな? と。

 朝に風呂に入ってその手の臭いはもうしない筈だ。

 ……ホワイトスターにある寝室は色々と酷い状態かもしれないが、量産型Wやコバッタによって今頃は綺麗に掃除されているだろう。

 まぁ、そっちについては今は関係ないので気にしないようにして。

 

「昨日はぐっすりと眠ったからな。そのお陰ってのもあるんだろ」

 

 適当にそう誤魔化す。

 実際には、睡眠時間そのものはそこまでしっかりとしている訳ではない。

 だが、俺の場合は混沌精霊だ。

 睡眠時間が一切必要ないという訳ではないが、人間と同じくらい……具体的には6時間から8時間くらい必要な訳でもない。

 その気になれば、それこそ一睡もしなくても数日程度なら問題なかったりする。

 

「いや、オイラには分かる。何かこう……女の臭いがする!」

 

 そう断言する峰田。

 ……いや、お前本当にどうやってそれを察した?

 それこそ、例えば五感が、あるいはそのものズバリ嗅覚が鋭くなるといったような個性を持つ者なら、あるいは風呂に入っても完全に消せなかった残り香を感じる事が出来るかもしれないが、峰田の個性はモギモギで、嗅覚を鋭くする個性はない。

 ……あるいは、本当にあるいはの話だが、峰田の両親のどちらかがモギモギではない個性で、嗅覚が鋭くなったとか、そういう可能性はあるかもしれないけど……峰田にそういう兆候は見られなかった。

 あるいは峰田がそれをいざという時の奥の手として隠していたとしても……うん。まぁ、今ここでそれを俺達に知らせる必要はないだろうし。

 つまり、今の峰田の言葉は個性でも何でもなく、本能、あるいは第六感とか、そういうので察知した訳だ。

 とはいえ、まさか今ここで俺が昨夜何をしていたか……そして何より、それに伴って俺の正体を知られる訳にはいかないので、適当に誤魔化す。

 

「何の事を言ってるんだ? 女の臭いって……さっきまでヤオモモと一緒に喫茶店にいたし、喫茶店を出たところで三奈と葉隠とあったから、それじゃないか?」

「え? その……臭いますか?」

 

 ヤオモモが俺の言葉に驚き懐から取り出した制汗剤……というのか? それを使う。

 

「あ、そのヤオモモ、私にも……」

「私にも貸して!」

 

 制汗剤を使っているのを見たヤオモモに、三奈と葉隠が急いでそう言う。

 ……微妙に俺から距離を取っているのは、自分の汗の臭いを俺に嗅がれたくないからだろう。

 もっとも、それは年頃の女として考えればそうおかしな事ではない。

 いや、寧ろ当然だろう。

 

「あぎゃっ!」

 

 そうしてヤオモモ達が制汗剤を使っていると、不意に悲鳴が聞こえてくる。

 何だ? と声のした方に視線を向けると、そこには目を押さえて地面を転がっている峰田の姿があった。

 何があった?

 そう聞こうかと思ったが、その必要はない。

 峰田の側には耳郎がいて、耳から伸びているイヤホンがヒュンヒュンと空中を動き回っているのだから。

 ……もっとも、この場にいる者達全員にとって救いだったのは、そこにいたのはまだ耳郎であって、耳郎さんではなかった事だろう。

 もしここで耳郎が耳郎さんになっていたら……多分、峰田はこの程度ではすまなかった筈だ。

 この程度と言っても、見た感じだと峰田の両目にイヤホンが刺さるというそんなとんでもないお仕置きだったようだが。

 

「ほら、いつまでもここにいても仕方がないでしょ。病院に行くよ。ここは暑いしね」

 

 耳郎さんにはまだなっていないとはいえ、耳郎のその言葉に反論出来る者はいなかった。

 あるいは単純に、耳郎の言うようにいつまでも真夏の日差しの下にいたいとは思わなかっただけなのかもしれないが。

 

「おう、じゃあ全員揃ったみたいだし、行くか!」

 

 切島がそう宣言し、俺達は病院に向かう。

 そうして歩き続けてから少しして、俺の近くを歩いていた瀬呂が、俺の持っている物……果物の盛り合わせを見て、口を開く。

 

「あ、しまったな。見舞いの品を買ってくるのを忘れた」

「大丈夫! 僕が兄さんに聞いて、色々と買ってきた!」

 

 瀬呂の言葉に、飯田が手にしたビニール袋を手に、そう告げる。

 なるほど、飯田の兄のインゲニウムはステインにやられて今もまだ入院中だったな。

 それだけに、インゲニウムが入院中にあれば便利だった物とかを聞いて、買ってきたのだろう。

 ……飯田もステインには色々と思うところが多かった様子だけど、そのステインも今はタルタロスに収監されてるしな。

 もっとも、タルタロス級の防御装備があったI・アイランドがヴィランによって侵入されてからまだそんなに経っていない。

 そういう意味では、タルタロスの防御装備というのもそこまで信用出来るようなものではないのかもしれないな。

 勿論、それでもその辺の刑務所よりは頑強な防御力を持っているのだろうが。

 ともあれ、今の飯田はステインについて思うところはないらしい。

 ……実際には完全に吹っ切ったという訳ではないだろうが、それを表に出すような事はなくなっている。

 だからこそ、こうして緑谷の為に入院している時に便利な諸々を購入したりしてきたのだろう。

 

「後で、割り勘……と言いたいところだけどアクセル君と八百万君は自分達で買ってきたようなので、2人はいらないという事にしよう」

「待って下さい。私が持っているこれは、アクセルさんの物です。アクセルさんが果物の盛り合わせを2つも持っているのでは大変そうだったので、私が1つ持っていただけで」

「む、そうなのか? では八百万君からも貰おう」

「いや、別に俺も渡してもいいんだけどな」

「……っていうかよ、ヤオモモの持ってるのもアクセルのって事は、アクセルは果物の盛り合わせを2つ持ってきたんだろ? 緑谷に2つやるのか?」

 

 飯田の言葉を聞いていた上鳴、そう聞いてくる。

 すると他の面々もそう言えば……と俺とヤオモモに視線を向けてきた。

 幸いなことに……いや、原作的にどうなのかはちょっと分からないが、とにかくA組の中で入院しているのは緑谷だけだ。

 他の面々も怪我をした者はいたが、入院する程でもなかった。

 あるいは雄英に到着した時にリカバリーガールに治して貰った者もいたのかもしれないが。

 緑谷の場合は怪我の度合いが酷くて入院という流れになったらしいが。

 なのに、何故果物の盛り合わせを2つ持ってるのかと、そう疑問を抱くのはおかしな事ではない。

 とはいえ、この件は別に隠す必要がある訳でもないので、素直に口を開く。

 

「茨の分だよ。茨もガスを吸った影響で入院しているらしいし」

「あ……なるほど」

 

 そう言い、上鳴は微妙な表情を向けてくる。

 上鳴も茨が俺を相手にどのような態度を取っているのかは分かっている。

 勿論、茨のような美人が側にいるというのは羨ましいのだろうが、その理由が異性に対する好意ではなく、信仰だしな。

 その信仰から、身も心も俺に捧げると常日頃から公言しているくらいなので、そういう意味では羨ましいのかもしれないが……うん、まぁ、だからといって自分が俺と同じ立場になりたいかと言われると、否なのだろう。

 この辺り、上鳴の判断力は普通というか、一般的だよな。

 

「けっ!」

 

 峰田の方は、上鳴と違って信仰心であっても茨が俺に付き従うのを心の底から羨ましそうに、妬ましそうにしていたが。

 この辺りの違いは、女に対する貪欲さというか……上鳴はチャラい外見をしているものの、顔立ちは普通に整っており、そういうのが好きな相手ならナンパにも成功するだろう。

 本人は林間合宿で補習を受けたりもしていたが、雄英に入学出来ているという時点で優秀な人材なのは間違いなく、将来性を見込んで近付くような者もいるだろうし。

 それに対して峰田は……雄英に入学したという条件は同じだし、何なら成績も上鳴よりも上で、クラスでも上位に入る。

 だが、やっぱりその……外見的な問題で、女にモテるというのは……特殊な趣味の持ち主を見つける必要があるのは、間違いなかった。

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