転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4572話

 緑谷や茨、他にもB組の生徒が入院している病院にやってきた俺達は、受付をしてから緑谷の病室に向かう。

 

「個室なんや」

 

 緑谷が入院しているからだろう。

 今日は大人しかった……というか、緑谷を心配していた麗日が、緑谷の部屋にやってくるとそう呟く。

 まぁ、無理もない。

 以前聞いた話だと、麗日の家は決して金持ちという訳ではない。

 いや、寧ろどちらかと言えば貧乏よりらしい。

 だからこそ麗日も普段から節約を心掛けているって話だし。

 ともあれ、そんな麗日にしてみれば緑谷の入院している病室が個室というのは色々と思うところがあったのだろう。

 ちなみに個室と一般的な病室……この場合は4人部屋か? そんな4人部屋の値段の違いだが、何かで見た記憶によると4倍くらいは差があった。

 具体的には4人部屋なら2000円ちょっとなのに対し、個室だと8000円ちょっと。

 この値段の違いは、1日2日ならともかく、長期入院という事になればかなりの金額差になるだろう。

 麗日がその辺りの詳細について知ってるとは限らない。

 だが、それでも個室が高いというくらいは、普通に暮らしていれば分かる内容なのは間違いない。

 

「麗日、心配いらん。緑谷の入院費については雄英から出る筈だ」

「常闇君……そ、そうだね」

 

 常闇の言葉に、麗日が安心したように言う。

 実際、常闇の言葉もそう間違ってはいないと思う。

 緑谷にしてみれば、雄英の学校行事の最中にヴィラン連合に……開闢行動隊に襲撃されたのだ。

 これが、もし個性を……オールマイトから受け継いだOFAの訓練中に自爆して怪我をしたとか、そういう事なら自費で入院という事も……いや、ちょっとした怪我程度なら、緑谷の重要性からリカバリーガールによって治療されるか。

 

「では、入りますね」

 

 皆を代表するように、委員長のヤオモモが扉をノックする。

 コンコン、コンコン、と。

 だが、ノックをしても中から何の反応もない。

 

「あら?」

 

 ヤオモモが疑問を抱いた様子で、そっと扉を開く。

 すると……

 

「眠っていますね。いえ、この様子だとどうやら意識を失ったままといったところでしょうか?」

 

 ヤオモモがそう言う。

 その言葉に、麗日が落ち込んだ様子を見せる。

 麗日にしてみれば、見舞いにくれば元気な緑谷の姿を見る事が出来ると、そう思っていたのだろう。

 だからこそ、まだ意識が戻っていない緑谷を見てショックを受けたらしい。

 まぁ、その辺りについてはしょうがないとは思うが。

 

「じゃあ、見舞いの品を置いて帰ろう。……まだ意識が戻っていないのに俺達がいても、病院の迷惑になるだけだしな」

 

 障子の言葉に反論を口にする者はおらず、飯田が持ってきた入院グッズの詰め合わせと果物の盛り合わせを置くと、書き置きを残して病室を出る。

 

「さて、それじゃあ……どうする? てっきり緑谷はもう目覚めてると思ったから、見舞いで時間を使うつもりだったんだけどな」

「まぁ、昨日の今日だし、仕方がないだろ」

 

 切島の言葉に砂藤がそう言う。

 実際、見舞いに来るのなら明日か明後日辺りがよかったのではないかと、今更ながらに思う。

 

「では、明日も見舞いに来るという事でどうだろう?」

 

 飯田の言葉に反対をする者はおらず、取りあえずその場で解散となるのだった。

 

 

 

 

 

「で、アクセルはどこに行くの?」

 

 解散をしたので、茨のいる病室に向かおうとすると、そんな風に声を掛けられる。

 声のした方に視線を向けると、そこにはヤオモモ、三奈、葉隠、耳郎の4人の姿があった。

 ……どうせなら女全員が揃っていたら面白かったんだけどなと思いつつも、麗日は緑谷の件もあってそれどころではなかったようだし、梅雨ちゃんは夏休みという事で弟の世話があるらしく、既に帰っている。

 他の面々も既にほぼ全員が帰っていた。

 ……普段であれば、あるいは皆で集まったんだし、街中に出たんだから全員で遊ぼうといった事を考えたのかもしれないが、緑谷が入院し、爆豪やラグドールが連れ去られた今となっては、とてもではないがそのような気分にはならなかったらしい。

 いやまぁ、それも当然か。

 あるいは俺を始めとしたシャドウミラーの面々のように修羅場に慣れていたりすれば、こういう時でも気を抜く重要性を知っているので、遊んだりとかも出来るのだが。

 いや、ヒーロー科の生徒……つまり、少し前までは中学生だった面々に気を抜く重要性があると言っても、それを素直に聞くとは思えないが。

 

「茨の病室だよ。ガスの影響で茨もまだ意識が戻っていなかった筈だから、緑谷の時と同じようにちょっと顔を見るだけになるかもしれないけど」

 

 そう言うと、三奈達はどこか納得した様子を見せる。

 何だかんだと、茨も俺達と一緒にいる事は多いしな。

 それを思えば、三奈達も茨の事が心配だったのだろう。

 

「でも……彼女もまだ意識不明なんでしょ? 女の子の寝顔を見るのは、あまりいい趣味とは言えないと思うんだけど」

 

 耳郎がジト目でそう言ってくるものの、今の状況を思えばそのくらいは仕方がないと思うのはおかしいだろうが?

 これが、例えば普通に眠っているだけなら寝顔を見るのはいい趣味ではないと言われても仕方がないとは思う。

 だが、ヴィランのガスによって意識不明の状態なのだから、そういう意味では見舞いに行くのはそうおかしな事ではない……と俺は思う。

 あくまでも俺がそう思うだけで、他の者達がどう思うのかは別の話だろうが。

 それに茨なら……俺を信仰し、身も心も捧げると普通に言う茨なら、寝顔を見られるくらいは全く何の問題もないと言いそうだよな。

 

「そうなると、男は見舞いに行けないって事になるんだが?」

「それは……まぁ、人に寄るんでしょ。ウチはあまり寝顔を見られたくないけど」

 

 そう言い、取りあえず見舞いに行くというのは問題がないという事になる。

 耳郎も茨とそれなりに付き合いはあるので、茨が寝顔を見られても俺に見舞いに来て欲しいと思うのはおかしくない……いや、普通にそのように思ったのだろう。

 そんな訳で、俺達は茨の病室に向かう。

 

「あれ? アクセル?」

 

 茨の病室に向かっていると、ちょうど前から拳藤が……あとは取蔭が姿を現す。

 

「拳藤、それに取蔭も。どうしたんだ……って質問はわざわざするまでもないか」

「ああ、B組でまだ意識が戻っていない者達の見舞いにな。それでアクセル達は?」

 

 者達という事は、やはり茨以外にもガスにやられた奴がいるのだろう。

 もしかしたらガス以外の何か別の個性によるものである可能性もあったが。

 

「緑谷の見舞いに行ってきたところだ。それで茨の見舞いにもと思ってな」

「……そっか。ありがとな」

 

 いや、別に拳藤が感謝するような事じゃないだろう。

 そも思ったが、拳藤にしてみれば自分が委員長なのだから、それで感謝したのだろう。

 

「まぁ、茨とは色々とあるしな」

「あははは、アクセルが見舞いに来たと知ったら、どういう顔をするんだろうね」

 

 取蔭がそう言ってくると、話を聞いていた面々は俺を含めてそれを想像し……笑う者、呆れる者、哀れみの表情を浮かべる者と、様々な表情を浮かべる。

 茨が一体どういう反応をするのかを想像したのだろう。

 俺の場合は……まぁ、うん。ちょっとアレな想像をしてしまったので、口にする事はしない。

 

「じゃあ、行きますか」

「あれ? 拳藤も行くのか?」

「ああ。そっちの方がいいだろう?」

「……いいのか?」

 

 いいだろう? と聞かれた俺は、そう三奈達に尋ねる。

 すると三奈、葉隠、ヤオモモ、耳郎の全員が同意するように頷いたので、取りあえずそういう事なのだろうと思っておく。

 別にどうしても拳藤と取蔭がいるのが悪い訳ではないので、反対する者がいないのならと、そのまま拳藤達と一緒に茨の病室に向かう。

 ちなみに茨の病室も緑谷と同じく個室だった。

 緑谷の場合は身体がボロボロだったので個室でもそういうものかと思ったんだが、ガスで眠っていた茨の場合も同じように個室なのは疑問を抱く。

 あるいはこれも雄英の配慮……もっと言えば、マスゴミへの対処なのかもしれないな。

 拳藤が念の為に茨の病室に扉をノックするものの、当然のように中からは何の反応もない。

 これはつまり、まだ茨の意識が戻っていない事を意味していた。

 

「入ってくれ」

 

 拳藤に促され、病室に入る。

 するとそこでは、茨がベッドで眠っているのが見えた。

 こうして見ると、やっぱり茨って顔立ちが整ってるんだよな。

 そんな風に思いながら、近くの棚に果物の詰め合わせを置く。

 そうして茨を見ていると、ふと昨日ホワイトスターで明日菜と一緒に行ったエルフの小物屋で買った、棘のある植物で作られた髪飾りを思い出す。

 髪飾りを買った時も茨の事を思い出したし、何よりこういう髪飾りを俺が持っていても意味がない。

 どうせ茨向きの髪飾りなんだし、それなら俺が髪飾りを持っていても意味はないんだから、茨にやるか。

 空間倉庫についてはここにいる面々に対しても話す事は出来ないので、懐から取り出したようにしながら、髪飾りを取り出す。

 すると、次の瞬間……

 パチリ、と茨の目が開く。

 

「え?」

「どうしたの、アクセル……あ」

 

 俺の声が聞こえた拳藤が、そして他の面々もこちらにやって来ると、茨の意識が戻った事に気が付く。

 

「ちょっ、ナースコール、ナースコール!」

 

 取蔭が慌ててナースコールのボタンを押す。

 そんな中、俺は茨に見られて動きを止めていた。

 より正確には、髪飾りを持っている俺の手を、意識が戻った茨はじっと見ていた。

 

「えっと……茨?」

「……アクセル様、感謝します」

 

 それは茨にとって自然と出た言葉だったのだろう。

 だからこそ、いつもは言わないアクセル様と、俺を様付けで呼んだりしたのだと思われる。

 もっとも、それはつまり茨は日頃から俺を様付けで呼びたかったがという事でもあるのだが。

 茨の普段の行動を考えれば、それは別におかしな事ではない。

 ただ、何故感謝を口にしてるのかが分からない。

 いや、髪飾りを持っている俺の手を見ているんだから、この髪飾りを渡そうとしたのに気が付き……というかそれで意識を取り戻し、感謝の言葉を口にしたとか、そういう感じなのか?

 いや、けどそれはちょっとタイミング……いや、都合が良すぎないか?

 そう思うも、こうして実際に茨の意識が戻ったのは間違いない訳で。

 

「えっと、茨。何がどうなって今のような状況になっているのか分かるか?」

「……いえ、私の最後の記憶は肝試しのものです」

 

 そう答えてくる茨だが、全く慌てた様子がないのは一体どうなってるんだろうな?

 

「そうか。後で色々と説明はされると思うけど、肝試しの最中にヴィラン連合に襲撃されて、茨はガスを生み出すヴィランによって昏倒して、今目覚めた訳だ」

「……アクセルさん、感謝します」

 

 ある程度落ち着いたからか、茨の俺の呼び方がさん付けに戻ってるな。

 

「いや、別に俺がどうとか関係ないと思うんだけど」

「いえ、アクセルさんが私の近くに来て下さったので、そのお陰で今の私はこうして目覚めたのです」

 

 それは医者の治療のお陰なのでは?

 そうも思ったのだが、今の茨の様子を見ればここで俺が何を言っても意味はない……というか、茨の言葉を否定することで部屋の中にいる他の面々の視線が痛い事になりそうだったので、取りあえずこれは茨の為に買った……という訳ではないのだが、取りあえず俺が持っていても意味はないので、茨に渡す。

 

「取りあえず、あそこの果物の盛り合わせもそうだが、これも見舞いの品だ。……茨とちょっと似てると思ったから何となく買ったんだけど」

「……ありがとうございます、アクセルさん。この髪飾りは家宝にさせて貰います」

「いや、どうせなら普通に使って貰った方が嬉しいんだけど」

 

 この髪飾りは伝説の品とかそういうのではなく、小物屋で買った品だ。

 それを家宝にされるとか、そういうのはちょっと……

 あ、でもヒロアカ世界に個性という特殊能力はあっても、エルフとかのファンタジー系の要素はないのか。

 もっともドラゴンに変身するような龍子の個性があるのを思えば、エルフに変身する個性とか、あるいはいっそ異形系でエルフのような外見を持っているとか、そういうのはあるかもしれないが。

 そう考えると、異世界の……それもエルフが作った髪飾り的な意味で、家宝にするという茨の考えは決して突飛なものではないのかもしれない。

 俺にしてみれば、やはりそれはどうなんだ? と思わないでもなかったが。

 

「アクセルさんがそのように仰るのでしたら……」

「ともあれ、茨の意識が戻ってよかった。そういう意味では、その髪飾りを持ってきた甲斐があったって事か」

「やはり家宝に……いえ、しかしアクセルさんが……ですが……」

 

 そうして悩む茨に、拳藤と取蔭が、そして他の面々が喜びながら声を掛け、それはナースコールでやってきた医者が病室に到着するまで続く。

 けど……ナースコールなのに、やって来たのは医者? と、そう疑問に思った俺は悪くないだろう。

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