転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4575話

「あそこだ」

 

 1km程の距離を歩き、目的のラーメン屋を見つける。

 当然ながら、シェリル、スレイ、ミナト、マーベルという4人が一緒にいると、どうしても目立ってしまう。

 1人でも目立つ美人がこうして4人も一緒にいるのだから、それで目立つなという方が無理だろう。

 ましてや、その美人4人と一緒にいるのは雄英のヒーロー科1年として体育祭で優勝したり、保須市でヒーロー殺しのステインを倒したりと、あからさまに目立つ立場にいるのだから。

 ……多分、ネットにこの情報は容赦なくアップされたんだろうな。

 ネットの掲示板には俺専用のスレもあるって話だったし。

 ただ、せめてもの救いは写真を撮られた感じはしなかった事だろう。

 もっともスマホのカメラの位置を考えると、もしかしたら盗撮されている可能性もあるが。

 以前、峰田からスマホはアプリを使ってカメラのシャッター音を消したり、あるいは意図的にフラッシュを焚かないようにしたりも出来るって聞いていたから、そう考えると盗撮されている可能性は否定出来ない。

 ……何で峰田がそういうアプリについて知ってたのかは、疑問だったが。

 詳しい話を峰田がしようとしたところで、梅雨ちゃんの舌が振るわれて峰田が沈黙させられたしな。

 それを考えると、恐らくは何か犯罪に……それも性犯罪に関係するような事なのだろう。

 ともあれ、そんな訳で絶対という訳ではないが、俺のスレに俺が美人4人とイチャついていたという情報は書き込まれるかもしれないが、写真がアップされる事は多分ないと思う。

 

「さて、入るか。……言っておくけど、俺は美味いと思ったが、究極とか至高とか、そういうラーメンじゃないからな。あくまでも一般人が普通に食べて美味いと思えるような、そんなラーメンだというのを理解しておいてくれよ」

 

 そう言うと、4人は頷く。

 ……本当に理解してくれているといいんだが。

 そう思いながら、店の中に入る。

 時間は午後1時くらい。

 昼食を食べに来たピークの時間はそろそろ終わりなので、行列がなかったのは助かったな。

 とはいえ……

 

「あら、結構込んでるのね」

 

 マーベルが店の中を見てそう言う。

 その言葉通り、店の外に並んでいる客はいなかったが、店の中は満員……とまではいかないものの、殆どの席が埋まっている。

 

「いらっしゃ……ぐぎぎ」

「おい?」

 

 近くを通った店員の1人が愛想良く挨拶をしたかと思ったら、途中で何かこう……耐える? 奥歯を食い縛る? そんな感じになっていた。

 

「いらっしゃいませこの野郎。美人を大勢連れて羨ましいですね。リューキュウの同僚のプロヒーローですかこの野郎」

 

 あー……なるほど、うん。

 どうやら以前俺が龍子やねじれと来た時に俺の顔を覚えていたらしい。

 まぁ、雄英の体育祭とかでTVに出たんだから、覚えていても仕方がないが。

 それで以前龍子と一緒に来た俺が、また美人を……それも4人も連れてきたのを見て、頭に来たのだろう。

 

「おらっ、客に絡むなんて馬鹿な真似をしてないで、とっととお客を席に案内しろ。すいませんね、お客さん。見ての通り今は空いている席があまりないから……2人と3人ずつになるけど、構いませんかね?」

 

 従業員を叱り、俺にそう聞いてくる店長。

 ……以前とはちょっと違う対応なような気がするけど、忙しいからのこういう対応なのかもしれないな。

 

「ああ、それで構わない。……いいよな?」

 

 店長にそう答えてからシェリル達に尋ねると、それぞれ頷く。

 とはいえ、そこからどういう風に分けるかという事で少し揉め……結局俺とシェリル、マーベルの3人と、スレイとミナトの2人に分かれる事になった。

 そうして食券を買う事になったのだが……さて、今日は何を食べるか。

 以前は普通のラーメン……いや、ワンランク上のラーメンだったか?

 取りあえずそういうラーメンだったが、冷やし中華というのもありだな。

 ……いや、つけ麺もありか?

 前回はラーメンを食べたから今日はちょっと変わり種を食べたい。

 少し悩み……結局8月という事で今日は冷やし中華にする事にする。

 普通のラーメンと違って、冷やし中華にはワンランク上の奴はない。

 その代わり、醤油ダレとゴマダレの2種類から選べるようになっている。

 冷やし中華の醤油ダレゴマダレ論争は、カレーに何の肉を使うか、唐揚げにレモン汁を掛けるかどうか、あるいは焼き鳥を串から外すかどうか……それらと比べると、そこまで大きな論争には発展しない。

 発展はしないものの、それでもそれなりに話題になるというか、どっちが美味いか論争になる事は多い。

 同じようにしゃぶしゃぶでも、醤油ダレ……というか、ポン酢とゴマダレで論争になる事もあったりするが。

 ともあれ、俺の場合は……冷やし中華なら中立だな。

 醤油ダレもゴマダレも好きで、どちらが出て来ても美味く食べられる。

 もっとも、今日は夏真っ盛りといった頃合いという事もあるので、気分で醤油ダレを選ぶ。

 麺は大盛りで、トッピングで半熟の煮卵も追加する。

 冷やし中華で卵となると、細く切った卵焼き……いわゆる錦糸卵を想像するだろうが、煮卵もそれなりに悪くない。

 ……あ、煮卵だけじゃなくて燻製卵も追加されてるな。

 しまった、知っていればこっちを……まぁ、別に俺にとって食事というのは、栄養とかじゃなくて単純に趣味だ。

 なら、煮卵だけじゃなくて燻製卵も追加で注文してもいいか。

 錦糸卵に、煮卵に燻製卵……凄い卵だらけの冷やし中華だな。

 

「よし、俺はこれでいいか。シェリル達はどうする?」

「私は……そうね、これがいいわ」

 

 意外な事に、シェリルが選んだのは普通の醤油ラーメン。

 正確には比内地鶏の出汁を使った醤油ラーメンだ。

 秋田名物の稲庭うどんの製法を使った中華麺なのだから、やっぱり地元の食材である比内地鶏の出汁を使った醤油ラーメンが合うんだろうな。

 

「このお店の基本はこのラーメンなんでしょ? 券売機にも当店人気No.1って書いてるし」

 

 シェリルの言葉通り、醤油ラーメンの人気は高いらしい。

 するとマーベルやミナト、スレイといった面々も醤油ラーメンを選ぶ。

 ……こうなると、俺だけ冷やし中華なのが……いやまぁ、実際に美味いんだから、俺は構わないんだけどな。

 そうして食券を買うと、それを店員に渡してそれぞれの席に座る。

 

「出来れば全員で食べたかったわね」

「マーベルの言いたい事も分からないではないけど、今回は仕方がないでしょ。お店が混んでるんだし」

「シェリルの口からそんな常識的な言葉が出て来る、だと?」

「……アクセル?」

「いや、冗談だ、冗談」

 

 軽くからかったつもりだったのだが、どうやらシェリルにとっては面白くなかったらしい。

 とはいえ、シェリルは常識……かどうかは分からないが、こういう食券を使うような店でのやり取りをそれなりに知っているのは少し意外だったな。

 まぁ、シェリルもそれなりに人との付き合いはあるし、その中にはこういう店とか、牛丼やハンバーガーのファーストフード店に行くような者もいるだろうし、そう考えればそこまでおかしな事ではないのか?

 あくまでも俺がそう思っているだけで、実際にどうなのかは分からないが。

 

「アクセルの冗談って、あまり面白くないわよね」

「そう言われると反論出来ないな」

 

 そうしてやり取りをしていると、すぐにラーメンがやって来る。

 注文してから5分程。

 麺を茹でる時間を考えると、こんなものだろう。

 いやまぁ、稲庭うどんの製法を使った麺の茹で時間がどのくらいなのかというのは分からないが。

 ともあれ運ばれてきた冷やし中華を見る。

 醤油ダレに沈んでいる麺の上には、様々な食材が並んでいる。

 チャーシュー、キュウリ、トマト、錦糸卵、エビ、キクラゲ、メンマ……ちょっと珍しいところでは、ミョウガや青じそ、白髪葱もあって夏らしさを演出している。

 それだけではなく、他にも俺が追加した煮卵と燻製卵もそれぞれ半分に切られて器に乗せられていた。

 うん、美味そうだ。

 シェリルとマーベルはと見てみると、こちらは既にラーメンを食べていた。

 シェリルはレンゲでスープを一口飲み、マーベルは早速麺を食べている。

 そんな2人を見て、ふと視線を感じて隣を見ると、そこには俺達が来た時にはテーブルに座っていて、ラーメンと半炒飯を食べていたサラリーマンっぽい男がじっとこちらを見ていた。

 シェリル達のような美人を引き連れているのが羨ましいのか?

 そうも思ったが、男が俺に向けてくる視線には好意の色がある。

 どうやら、嫉妬とかそういうのではないらしい。

 

「えっと、すまないが……もしかして、アークエネミー?」

 

 

 ああ、なるほど。そっちか。

 シェリル達のような美人を引き連れていたのですっかり忘れていたんだが、俺は俺でこのヒロアカ世界においては有名人なんだよな。

 もっとも、それを知った上でシェリル達のような美人を引き連れているなんて……と嫉妬の視線を向けてきてもおかしくはないのだが。

 

「ああ、そうだ」

「やっぱり。ステインの動画、見せて貰ったよ。凄かった」

「えっと……ありがとう」

 

 ストレートに褒めてくる男にそう返事をすると、シェリルはどこか面白そうに、そしてマーベルは満足そうに笑みを浮かべていた。

 シェリルが面白そうな笑みを浮かべているのは、さっき俺がからかったのが面白くなかったからとか、そういうのが理由なんだろうな。

 とはいえ、だからといってそれで俺がどうこう言ったりとか、そういうのをするつもりはなかったりするが。

 いや、寧ろここで何かを言えばかえってシェリルを面白がらせるだけだろう。

 

「アークエネミーはリューキュウの事務所で職場体験をしたらしいけど、そうなるとやっぱりインターンとかもリューキュウの事務所に行くのか? あそこにはネジレちゃんもいるらしいから、凄い事務所になりそうだな」

 

 こいつ、さてはヒーローオタクだな?

 一瞬そう思ったが、考えてみればこの手の知識を持っている者はそう珍しい訳でもない。

 ヒーローオタクはヒーローオタクであっても、緑谷程の域に達していれば、あるいは驚くべきかもしれないが、この男は到底緑谷の域には達していない。

 ……もっとも、緑谷の域に達してブツブツ呟き始めたりした場合、それはそれで怖かったりするが。

 緑谷の場合は、最初はともかく今はもうそれなりに親しいのもあって、そういう個性――特殊能力的な意味ではなく――だというのを知っているから気にならない……と言えば嘘になるが、とにかくまぁ、引きはするものの、そういうものだと納得はする。

 だが、初めて会ったこの男が同じようにしたら……取りあえず一緒のテーブルで食事をするのはちょっと避けたいところだな。

 なので、この男がそこまでのヒーローオタクではなくて安堵する。

 

「どうなるかはまだ分からないけど、やっぱりリューキュウの事務所が一番可能性が高いのは間違いないな」

 

 そう言うと、男は嬉しそうな表情を浮かべる。

 もっとも、リューキュウ……龍子の事務所が何らかの理由で駄目になったら、優の事務所にインターンに行ってもいい。

 もっとも、優の事務所が色々とアレなのは峰田を見れば分かってしまうが。

 女好きの峰田が、仮にも美人と呼んでも異論が出ない優と数時間一緒に行動しただけで、あんな状態になっていたしな。

 それを思えば……うん、出来れやっぱり龍子の事務所の方がいい。

 

「応援してるよ」

 

 そう言い、食事を終えた男は午後の仕事があるからと去っていく。

 

「……随分とアクセルはこの世界で有名になったのね」

 

 そうして3人になったところで、シェリルがどこか面白そうに言ってくる。

 まぁ、俺がマクロス世界に行った時は、最後の方はともかく、最初はそこまで有名じゃなかったしな。

 もっともマーベルと会ったダンバイン世界ではドレイクに最初からシャドウミラーという国の王だと示したりもしたが。

 そういう意味では、世界によって俺の存在が有名になるかどうかというのは違う。

 それこそケースバイケース的な感じで。

 このヒロアカ世界においては、公安からの依頼からの流れでかなり有名になったりしたが。

 

「色々とあったからな。……それよりもどうだ? 念願のラーメンは」

「美味しいわね」

「ええ、この出汁が凄く奥深くて」

 

 簡単に話題を変える事に成功する。

 いやまぁ、シェリルやマーベルもその辺については理解した上で、今のようにあっさりと話題を変えたのに付き合ってくれたっぽいが。

 

「そうか、喜んで貰えたようで何よりだ。……スレイとミナトも見た感じたと美味そうに食べている感じだしな」

 

 離れた席にいる2人を見てそう言うと、シェリルとマーベルもそちらを見て、納得の表情を浮かべる。

 こういうラーメン屋って、実は当たり外れが多いんだが……俺にとっても、シェリル達にとっても、どうやら当たりだったのは間違いないらしい。

 そう思いつつ、俺は冷やし中華を食べるのだった。 

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