転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4578話

「で? オールマイトの様子はどうだ?」

 

 俺の部屋を満喫してからホワイトスターに戻ってくると、レモンのいる場所に向かってそう尋ねる。

 幸い……幸い? まぁ、とにかくレモンは魔法球の中ではなく外にいたので、あっさりと見つける事が出来た。

 

「あら、アクセル。もうヒロアカ世界の方はいいの?」

「大体やるべきことはやったしな」

 

 とはいえ、やったのはラーメンを食べてCD屋に行って、俺の部屋で話をしただけなのだが。

 ……こうして考えると、これはこれでどうなんだ? と思わないでもない。

 

「そうなの? てっきりヒロアカ世界で泊まってくるのかと思ってたけど、違ったのね」

「まぁ、それも考えないではなかったけどな」

 

 俺の部屋で泊まるのもいいし、5人で使うにはベッドが狭いのならどこかのホテルを使ってもいい。

 そう思ったが、結局こうして戻ってきた訳だ。

 

「それで、オールマイトの方は?」

「取りあえず出来る治療はしたわ。なくなっていた胃についても、Wナンバーズの技術を使ってしっかりとした……以前よりも丈夫で高性能な胃を使ったわ」

「Wナンバーズの? ……一応聞いておくけど、それをやる前にオールマイトから許可は取ったんだよな?」

「ええ、普通の胃と高性能な胃のどちらがいいかと聞いたら、高性能な胃の方がいいと言っていたわよ?」

「あー……まぁ、うん」

 

 高性能な胃というのは間違いないが、それが量産型Wどころではなく、Wナンバーズの胃となると、普通に考えれば話は違ってくる。

 その辺りの説明もしっかりとしたのか、それとも高性能な胃という説明しかしていないのか。

 その辺りについては俺も分からないので、何とも言えない。

 ただ、レモンはオールマイトからや校長……というか、この場合は雄英か? とにかくその雄英からの報酬をしっかりと貰っているので、そうである以上は手を抜くという事はない。

 あ、けど報酬のうちの1つ、タルタロスの囚人についてはまだ貰ってないから何とも言えないけど。

 ただ、オールマイトの細胞やら各種データやらは完全に習得しているのを思えば、レモンが治療に手を抜くといった事は考えられない。

 もっとも、だからといってWナンバーズの技術で作った胃を使うというのは……そもそも免疫とかそういうのはどうなっているんだ?

 ふとそう思ったが、レモンならその手の技術についてもどうとでも出来るのだろう。

 そもそも量産型Wの技術の時点でそういうのはどうとでもなってる気がするし。

 けど……だとすれば、意外とそちらでも事業って出来そうだよな。

 多くの世界では、移植手術の際に免疫とか、他にも色々と理由があってなかなか出来ない。

 だが、レモンの技術があればその辺はどうとでも出来る訳だ。

 ……もっとも、法律とかその辺の問題で公には出来なくなってしまうだろうが。

 そうならないようにするには、秘密裏にやる必要があり、そうなるとそれはそれで手間が掛かる。

 どうしても金が必要だとか、そういう理由があればともかく、今の状況ではわざわざそのような事をする必要はない。

 金儲けというだけなら、異世界間貿易のハブとしてだけでの稼ぎでかなりのものがあるし。

 それこそキブツを使えば高額で売れる宝石やレアアース、レアメタルの類も容易に作り出せる。

 そうなると、今のこの状況においてはわざわざ金儲けをする必要はない。

 だからこそ、レモンがわざわざ危険な事をする必要もない訳だ。

 あるいは、シャドウミラーの存在を知っている者が何らかの病気で移植をしたりとか、そういう風にする必要はあるかもしれないが。

 

「ともあれ、まずはオールマイトの様子を見てくる。出来るだけ早く出した方がいいだろうし」

「そうね。リハビリの方も量産型Wに頼んでいるから、進捗具合とかは聞ける筈よ。それで問題ないのなら出してもいいんじゃない? もっともオールマイトの様子からすれば、無理をしてでも出ようとするかもしれないけど……その時はアクセルが止めてね?」

「俺がか? ……まぁ、最悪爆豪の件が解決したら、また治療をさせればいいだけだろうし。そういう意味では、そこまで気にする必要もないのかもしれないな」

「……あら、冷たいのね。もっとしっかりと心配すると思ったのに」

「そう言っても、オールマイトだしな」

 

 良くも悪くも、ヒーローの権化と呼ぶに相応しい存在が、オールマイトだ。

 であれば、すぐにでも爆豪を助けに行ったりしてもおかしくはない。

 本人はそれでいいのかもしれないが、周囲の心配する者達の事も考えて欲しいよな。

 

「まぁ、その辺については自分で確認しなさい」

 

 そうレモンに言われ、俺はオールマイトのいる魔法球に向かうのだった。

 

 

 

 

 

「ここがオールマイト専用の魔法球か。……まぁ、こんな感じなのは分からないでもないな」

 

 レモンの……というか、量産型Wの案内でやって来た魔法球の中は、オールマイトを治療しているのだろう建物以外何もない場所だった。

 そう、自然とかそういうのがある訳でもなく、本当に何もない空間が広がっている。

 以前何かで『何もないがある』というのを見たか聞いたかした事があったが、まさにこの魔法球は何もないがあるといった表現が相応しい、そんな場所だった。

 オールマイトの治療をするという意味では、こういう場所が最善なのかもしれないが。

 

「さて、じゃあオールマイトに会いに行くか」

 

 呟き、建物に向かったところで……

 

「うおおおおおおおおお!」

「うん?」

 

 不意に聞こえてきた声に視線を向けると、そこには建物の外を走っているオールマイトの姿があった。

 普通に見ればかなりの速度だが……ヒロアカ世界でオールマイトの伝説を見たことがある俺にしてみれば、今のオールマイトの速度はかなり遅いのは間違いない。

 何しろ嘘か本当か、全盛期のオールマイトはとなりの県からでも悲鳴が聞こえたとか、北海道にいるのに数分も掛からず沖縄に移動したとか、そういう話があったのだから。

 ……勿論、これについてはデタラメというか、大袈裟に言ってるだけなのかもしれないが。

 とにかく、今のオールマイトは個性のOFAを緑谷に譲った事もあり、かなり弱っているのは間違いない。

 それでもこれだけ走れるのは……まぁ、凄いとは思う。

 というか、予想通り治療は既に終わってリハビリをしているらしい。

 もっとも普通ならリハビリと言われて思い浮かぶのは1歩ずつ歩くとか、そういうのだろうが。

 こうして走り続ける様子というのは、とてもではないがリハビリには思えない。

 それこそ普通に走って鍛えているようにしか見えないんだが。

 まぁ、オールマイトだからと……OFAの前継承者であると思えば、こういうのもおかしくないとは思うが。

 

「オールマイト!」

「おや、アクセル少年! ……ではなかった、アクセル代表か!」

 

 建物の周囲を走っていたオールマイトは、俺の声に気が付くとそう言いながらこちらに近付いてくる。

 

「いや、別に代表と呼ぶ必要はないぞ。勿論公の場での時とかであれば話は別だけど、今のような時なら今まで通りアクセル少年でいい」

 

 まぁ、少年って年齢でもなかったりするのだが、その辺についてはまぁ、いいとして。

 そもそも俺は人間ではなく混沌精霊である以上、今となっては人の年齢というのはあまり意味がなかったりするし。

 それなら外見年齢に合わせた方がわかりやすいと思う。

 そういう意味では、アクセル少年というオールマイトの呼び方は悪くないのだろう。

 

「その様子を見ると治療は成功したようだな」

 

 今、俺の目の前にいるオールマイトは、オールマイトと言われてすぐに思い浮かべるような、そんな筋骨隆々の外見だ。

 昨日見た、ヒョロガリの様子とは違う。

 そう思ったのだが……次の瞬間、オールマイトの外見はヒョロガリに姿に変わる。

 

「あれ? 治療は……成功したんだよな?」

「ああ、勿論成功したよ。この状態……トゥルーフォームになってからも、咳をしたり、血を吐いたりはしなくなったしね。ただ、先程の状態、マッスルフォームはOFAありきの状態なんだ。OFAを緑谷少年に渡した今となっては、あの状態でいられる時間は限られている」

「それは……なら、治療した意味ってあったのか?」

「勿論だとも。今の私のこの状態でも以前よりも楽に動けるし、マッスルフォームの時の戦闘能力も間違いなく以前よりも上がっている。そういう意味では、私の治療をしてくれた事は非常にありがたい。ただ……」

「ただ?」

 

 何故か微妙に力のないというか、弱々しそうな様子でそう言ってくるオールマイトが気になって、そう尋ねる。

 

「その、だね。私の細胞とかそういうのを採取したようだけど……どういう風に使われるのかなと思って」

 

 ああ、なるほど。その辺りが気になっていたのか。

 何も知らない状態なら、その辺りについて気になってもおかしくはないか。

 

「どういう風にと言われても……正直なところ分からないな。あるいは採取した状態のまま、コレクション的な感じで保管しておくだけかもしれないし」

 

 考えられるとすれば量産型Wのバージョンアップにだが……今の量産型Wは、Fate世界で入手した金ぴかの肉体の一部から細胞を培養して作っている。

 そのお陰で量産型Wの基礎性能がかなり上がったのは間違いない。

 そこにオールマイトの細胞を入手したからといって……どうなるか、だな。

 レモンの事だから実際にオールマイトの細胞を培養して量産型Wに組み込んでみたりとか、そういうのはすると思う。

 それで成功すれば……具体的には量産型Wの性能が上がれば、本格的に組み込むかもしれないものの、それが出来なかったらコレクション的な感じになると思う。

 あるいは今は使わなくても、将来的に何かに使う可能性も否定は出来ないのだから。

 

「ほっ、そうなのか。なら、安心だな」

「そうだな」

 

 本当の意味で安心出来るかどうかは分からない。

 だが、リハビリ中のオールマイトに不安な思いをさせるといったようなことにでもなったら、それこそ洒落にならないだろう。

 だからこそ、俺としてはオールマイトには心配させないよう、今のように言うのだった。

 

「それで、リハビリの状態はどうなんだ? こうして施設の回りを走ったりしていたから、治療そのものは問題なく終わったと思ってもいいんだろうけど」

「その通りだ。シャドウミラーの治療技術というのも凄いな。私も治療の為に色々な医者に見て貰ったものの、治療らしい治療は出来なかった。だというのに……」

 

 そう言い、手を握り締めるオールマイト。

 ヒョロガリの状態ではあったが、それでもしっかりと……力が込められて手を握っているのが見ただけで分かった。

 

「オールマイトが無事なようで何よりだよ。……となると、爆豪達を助ける作戦には参加出来そうか?」

「勿論! ……と言っておいて何だが、私がここで治療をしてから外ではどのくらい経ったのか聞いてもいいかな?」

「安心しろ。まだ1日だ。俺にしてみれば、昨日林間合宿から帰ってきて、シャドウミラーの件を話したくらいだよ」

「……何と……大丈夫だとは思っていたが、それでも……」

 

 俺の言葉に驚くオールマイト。

 というか、俺を……あるいはこの魔法球について説明したレモンを完全に信じているようだったが、もしそれが嘘だったらどうするつもりだったんだろうな。

 例えば実はもう外では爆豪を救出する作戦は終わっていたとか、そんな感じだったら。

 怒ったオールマイトとか、とてもではないが考えたくはないんだが。

 その辺はそれだけこっちを信頼しているという事なのだろうと思っておく。

 

「ちなみに、オールマイトがここで治療を始めてからどのくらいの時間が経ったんだ?」

「3ヶ月程か」

「それは……」

 

 多いと見るか、短いと見るか微妙なところだな。

 外の1日が3ヶ月と考えれば、間違いなくかなりの長期間になるだろう。

 だが、治療前のオールマイトの状態を考えると、3ヶ月の治療で足りるのかといった疑問もある。

 それこそヒョロガリ状態だったオールマイトの様子を思えば、3ヶ月どころか年単位での治療が必要になるのではないかと、そう思えるのだから。

 勿論これはあくまでも俺がそのように思っているだけであって、他の面々……例えば治療をしたレモンとかにしてみれば、年単位だと長すぎる、あるいは年単位でも足りないと、そういう風に言われる可能性もあったが。

 

「まぁ、いい。じゃあそろそろここから出るか? もし爆豪やラグドールを助けた後でまた治療が必要になったら、治療をすればいいだけだしな。……もっとも、その場合は今回と同様、あるいはそれ以上に何らかの対価が必要となるだろうが」

「ぐっ、そ、それは……」

 

 俺の言葉にオールマイトは言葉に詰まる。

 その気持ちは分からないでもない。

 しかし、オールマイトとしてはこの状況で引く事も出来ない以上、俺の言葉に頷くしかなかった。

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