転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4579話

「じゃあ、オールマイトは退院……というのは少し違うわね。うち病院という訳じゃないんだし。取りあえず治療は一旦終わりという認識でいいのかしら?」

 

 レモンの言葉に、ヒョロガリ状態のオールマイトが頷く。

 

「治療のお陰で、以前と比べて随分と楽になりました。ヒーローとしての活動も、以前よりはしっかりと出来るでしょう」

 

 そう言い、右腕を曲げて見せるオールマイトだったが……まぁ、うん。

 本人としては少しでも右腕の筋肉を見せつけるといったつもりだったのだろうが、俺から見た限りだと、とてもではないが筋肉があるようには見えない。

 これが筋骨隆々の状態……いわゆる、マッスルフォームとオールマイトが名付けた状態でなら、しっかりと筋肉を見る事が出来るんだろうが。

 生憎と……あるいは残念ながら? とにかくそんな感じで今のオールマイトはヒロアカ世界における日本のNo.1ヒーローには思えない。

 もっとも、何十年もNo.1ヒーローとして活動してきた人物だと言われれば、それもそうかと納得するしか出来なかったが。

 

「そう。アクセルはそれでいいのね?」

 

 レモンが視線をこちらに向け、そう聞いてくる。

 レモンが言ったように、ここは病院ではない、

 そうである以上、オールマイトがもう大丈夫と言うのなら、レモンとしてもこれ以上止めるつもりはないのだろう。

 タルタロスのヴィランはまだ貰っていないが、オールマイトの細胞とかそういうのは既に入手しているし、治療の最中にも様々なデータを入手出来た筈だ。

 そういう意味では、レモンとしては最低限……あるいはそれ以上の報酬はもう貰っているという事になる訳で、そうなるとここで無理にオールマイトを止める必要もないのだろう。

 

「まぁ、オールマイトがそう言ってるし、以前にも言ったと思うが、爆豪とラグドールを助けた後でまた何かあったら、その時は再度入院させればいいだけだしな」

「……アクセル少年、すまない」

「別にオールマイトが謝る必要もないだろ。それにヴィラン連合の拠点を潰した後で危険な状態になったら、その時にまた入院すればいいんだろうし」

 

 そうしてあっさりとオールマイトの治療は終わり、オールマイトを引き連れてヒロアカ世界の雄英に戻る事になった。

 

 

 

 

 

「うーん、これがまだ2度目だけど、世界を渡るという経験は何とも言えないね」

 

 そう言うオールマイトはヒョロガリな状態ではなく、オールマイトと言われて誰もが思い浮かべるような筋骨隆々の、本人曰くマッスルフォームとなっていた。

 こうして転移区画でヒロアカ世界の、それでもオールマイトが教師をしている雄英に戻ってきた以上、いつ今のオールマイトの状態を知らない者達にあってもおかしくはないから、と。

 とはいえ、時間は既に午後8時くらいで、ゲートの周囲には護衛役の量産型Wやコバッタしかいなかったが。

 ホワイトスターも既にそれぞれの世界に帰る刻限をすぎていたので、転移区画には誰もいなかった。

 このくらいの時間に転移区画を使う事はあまりないので、ホワイトスター側のゲートに他の世界からの住人が誰もいないのはちょっと意外だったな。

 

「さて、それでどうする? やっぱり校長室に向かうか? 昨日の今日で何があったのかは分からないけど、それでもヴィラン連合の拠点襲撃に関する情報は色々と入っている筈だし」

「そうだね。私の治療の件についても校長に知らせる必要があるしね」

 

 そう言い、右腕を曲げるオールマイトだが、レモンの前でやった時とは違い、その右腕にはしっかりと筋肉が盛り上がっていた。

 うーん……寧ろこのマッスルフォームが何と言うべきか、この……うん。

 OFAがあったからこそのマッスルフォームなのか、それともOFAを譲渡される前からこのマッスルフォームはあったのか。

 その辺りについては色々と気になる。

 まぁ、その辺については俺がここで何を言っても意味はないだろうし、それなら止めておいた方がいいか。

 

「じゃあ、俺も行くよ。色々と説明をする必要があるだろうし」

「アクセル少年もかい? ……まぁ、私としては構わないが」

 

 オールマイトは、恐らく俺がすぐにでもホワイトスターに戻るとでも思っていたのだろう。

 とはいえ、それでも別に断るといった必要はないと思ったのか、あっさりと俺が校長室に行くのを承知する。

 そうして校長室に向かっていると……ガヤガヤとしたざわめきが聞こえてくる。

 校長室……というか、雄英の校舎があるのとは別の方向からの声に、一体何だ? と思ったのだが……

 

「記者会見はまだですか?」

「ヴィラン連合の襲撃があった事について、どのように責任を取るのかお聞かせ下さい」

「ヒーロー科として、これからの事についてはどうするのでしょうか?」

「入院した生徒もいますが、その生徒についてどのように思われるのか一言お願いします」

 

 そんな諸々の声。

 混沌精霊で常人とは比べものにならないくらいに五感の鋭い俺だからこそ聞こえたのだろう。

 ……いや、オールマイトが拳を握っているのを見れば、どうやらオールマイトにもこの声は聞こえているのだろう。

 恐らくは校門前でマスゴミが騒いでいる声が。

 マスゴミにしてみれば、雄英を突く事が出来る絶好の機会だ。

 それだけに、少しでも情報を得ようとマスゴミが群がってきているのだろう。

 そんな声を聞きつつ、俺とオールマイトは校長室のある校舎に入る。

 もう夜だからというのもあって、校舎に人はいない。

 ……いや、正確には教師は何人もいるのだろうが、その教師達も自分達のやるべき仕事をきちんとやっており、それだけに校舎の中を出歩いたりはしていないといったところか。

 

「こういう時って、七不思議とかそういうのがありそうだよな」

「……アクセル少年、雄英にも定番の七不思議はあるんだよ」

 

 俺の呟きにオールマイトが反応する。

 というか、雄英にも七不思議ってあるんだな。

 正直なところ、これはちょっと予想外だった。

 というか、個性による混乱期があったのに七不思議とかそういう文化……文化? とにかくそういうのは残ってるんだな。

 古き良き伝統的な?

 まぁ、その辺りの判断は俺がする訳じゃないので、そう表現してもいいのかどうかは微妙なところだったりするが。

 

「それはよくあるタイプの? 例えば、音楽室に飾られている音楽家の絵が動くとか、誰も鳴らしていないのに勝手にピアノが鳴るとか、骨格標本が動き出すとか?」

 

 他にも七不思議と言われて思い出すのは多いが、適当に切り上げる。

 

「幾つかは私が学生の頃に聞いた事があるね。……もっとも、この手のものは出たり消えたりする。私が知っている七不思議が、今でも同じように七不思議の一つなのかどうかは、分からないが」

 

 だろうな。

 オールマイトの言葉にそう思う。

 何しろ、オールマイトが雄英に通っていたのは何十年も前の事だ。

 その頃の七不思議が、今でも雄英の七不思議となって残っているのかどうかは、正直微妙なところだろう。

 とはいえ……その辺りの状況を考えると色々と怖そうなので止めておくが。

 そんな風に思いながら歩いていると、やがて目的の場所……校長室の前に到着する。

 中には気配があるので、校長が部屋の中にいるのは間違いないだろう。

 もしかしたら、教師達とヴィラン連合に対する対策を話し合っているかもしれないと思ったんだが、どうやらそうではないらしい。

 あるいは今は会議の休憩中で、校長が休む為に校長室に戻ってきているだけという可能性もあったりするが。

 

「失礼します、校長。オールマイトです」

 

 コンコン、とノックをし、オールマイトがそう言う。

 

『オールマイトかい? 入ってもいいよ』

 

 中から聞こえてくる校長の声。

 俺にしてみれば、昨日も聞いた声なので特に何も思わないが、魔法球の中で治療をしていたオールマイトにしてみれば、随分と久しぶりに聞く声なのだろう。

 少しだけ感動した様子を見せると、扉を開く。

 ……それにしても、校長の声を聞いてここまで感動する割に、俺が魔法球の中に入って会いに行った時は特に態度が変わらなかったのはどうなんだ?

 俺とオールマイトの付き合いは、校長とオールマイトの付き合いに比べるとかなり短いだろうし、オールマイトの治療を頼んで来た時の事を思えば、校長はオールマイトにとっても色々と頼りになる人物ではあるんだろうが。

 

「失礼します」

 

 そう言い、オールマイトが校長室に入ると、俺もそれを追うように校長室に入る。

 

「やぁ、オールマイト。治療の方は成功したようだね。……アクセル代表!?」

 

 最初は気軽にオールマイトに声を掛けた校長だったが、すぐに俺も一緒だという事に気が付いたらしい。

 ……それにしても、まだオールマイトが何も言っていないのに、それでもオールマイトの治療が終わったというのを見て取ったのは、素直に凄いと思う。

 野生の勘……というのとはちょっと違うか。

 単純に校長の能力でそういう風に見て取ったとか、そんな感じなんだろうと思っておく。

 

「昨日ぶりだな」

「ええ。……アクセル代表は今日は随分と楽しかったようですが」

「うん?」

 

 校長が俺を見てそう言ってくるのに疑問を抱く。

 いやまぁ、今日は色々と楽しかったのは間違いないが、何で校長がそれを知ってるんだ?

 

「どういう意味だ?」

「アクセル代表は自分がネットでは有名人だと自覚した方がいいですね。特にあのような美人達と一緒に歩いていれば、余計に目立ちますから」

 

 校長の口から出た言葉を聞いただけで、何が起きたのかを理解してしまう。

 慌ててスマホを取り出すと……うん、LINに幾つも書き込みがあったり、メールが来ていたり、着信履歴も結構な事になっていた。

 

「えっと、俺はちょっと色々やってるから、オールマイトと校長は話をしていてくれ」

 

 そう言い、俺はネットの大手掲示板サイトにある俺のスレを見る。

 するとそこでは案の定、俺が……アークエネミーが美人とデートをしていたといった書き込みと、証拠の写真が貼られている。

 ……せめてもの救い、不幸中の幸いなのは、マーベルとミナトの2人と一緒にいるところだったという事か。

 シェリルとスレイが一緒にいる写真はない。

 もっともそれはあくまでも掲示板の方だけの話なので、SNSとかそっちがどうなのかは分からないが。

 ただ、シェリルはこのヒロアカ世界でも恐らくは歌手として活動するのだろうし、あまりそっち方面で顔が知られるのは避けたい。

 謎の歌姫といった感じで、メディア露出は極力控えるというのがシェリルの方針だし。

 だから、例えば音楽番組とかに出たりはしないし、CDが発売される前に何らかのバラエティ番組とかに出たりもしない。

 動画投稿サイトとかにミュージックビデオとかそういうのは投稿したりするらしいが、言ってみればそれだけだ。

 歌手として活動する上で一番重要なのは間違いなく歌手の実力だろうが、それと同じくらい重要なのはやはり宣伝費だ。

 だが、シェリルの場合はその宣伝費がかなり少ない。

 それでいて、どの世界でもトップクラスの売り上げを誇るのだから、シェリルが所属している事務所にしてみれば、まさに金の卵を産む鶏だろう。

 そんなシェリルだが、このヒロアカ世界において俺と一緒にいる光景がネットにアップされ、それに気が付かないでシェリルがデビューした後でそれが掘り起こされるとか、そういう事になれば大きな騒動になる。

 自分で言うのもなんだが、俺は……アークエネミーは雄英のヒーロー科1年のトップに立つ人物として有名だしな。

 そんな人物が話題沸騰中の歌手と……という事になれば……いやまぁ、シェリルはその辺りは気にしないか。

 それどころか、寧ろ俺の恋人だとか、堂々と言ったりして、それはそれで騒動になりそうな気がする。

 ともあれ、今日にでもルリやラピスに頼んでヒロアカ世界のネットにそういう写真がないかどうかを確認して貰おう。

 もしあったら削除して貰うという事で。

 勝手にそういう事をしてもいいのか? と思わないでもないが、それなら俺に無断で撮った写真をネットにアップするのはどうなんだって事にもなるだろうし。

 ともあれ、そういう事で……後はLINとメッセージと着信履歴の嵐だな。

 まずLINの方は……うん、峰田とか上鳴がもの凄い勢いで書いている。

 メッセージの方は……こっちも峰田と上鳴からもの凄い数のメッセージが来ている。

 そして着信履歴だが……こっちは、瀬呂やヤオモモ、三奈、葉隠、拳藤といった面々からあり……耳郎の着信が1度だけあるというのが、何だかもの凄く印象的なんだが。

 あれ? これ……まさか耳郎じゃなくて、耳郎さんになってないよな?

 そんな不安を抱きつつ、取りあえず俺は峰田と上鳴はスルーして、知り合いであるとそれぞれに返事をする。

 うん、まぁ……恋人ではあるが、知り合いであるというのも決して間違っていないし、嘘という訳でもないから、何とかなるだろうと、そう思っておくのだった。

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