転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4588話

 スマホを使ってLINやメッセージの返事をしていると、扉がノックされる。

 

「入っていいぞ」

 

 そう声を掛けると扉が開き、荒垣が姿を現す。

 

「悪いな、アクセル。邪魔をしたか?」

 

 見掛けによらず、この辺りの心配りが出来るのが荒垣なんだよな。

 そう思いながら首を横に振る。

 

「いや、LIN……あー……ネットでクラスの連中とやり取りをしていたんだよ」

「クラス……そうなんだよな、アクセルはまた高校に通ってる訳だ」

 

 荒垣が微妙な表情を浮かべるのは、俺がペルソナ世界に行ってゆかりと出会い、その後で荒垣とかと出会った後でアパートを借りて、その後で色々とあって月光館学園に通っていたのを知っているからだろう。

 で、俺がペルソナ世界で荒垣と会ったのは……あれ、いつくらいだったか。

 ペルソナ世界での騒動、それもマヨナカテレビではなくニュクスの件が終わってから結構経つし、俺は俺で色々な世界に行ったりしてるのでちょっと正確なところは分からないが、とにかくそんな感じで結構な時間が経っているのは間違いないし、実際に荒垣も今は高校を卒業して……卒業して……あれ? 卒業したんだったか、自主退学したんだったか?

 とにかくそんな感じでもう高校を出てから何年も経ってる訳だ。

 だというのに、未だに俺が高校生をやっているのが、荒垣には微妙に思ったのだろう。

 

「高校生活は楽しいぞ。それに……このヒロアカ世界の高校は、一般的な高校と違って面白いし」

 

 勿論、雄英であっても普通科の生徒なら授業内容も普通の高校とそう違いはないのだろう。

 だが、ヒーロー科の授業はプロヒーローになる為の授業なので、普通の授業とは全く違う。

 普通の高校なら、模擬戦とかそういうのをやる事はまずないだろうし。

 

「……その辺は好きにしてくれ。俺はあくまでもシャドウミラーの協力者でしかないし、シャドウミラーでどういう風に行動してるのかってのは、俺には分からないしな」

「それはそうか」

 

 荒垣はあくまでも外部協力員的な存在である以上、この件でどうこう言ったりはしないのだろう。

 見た感じ、色々と思うところはありそうだったが。

 

「まぁ、その件はともかく、用件は?」

「ああ、昼飯はどうする?」

「あー……一応冷蔵庫に色々と入ってなかったか?」

 

 さっきその辺について話したと思ったんだが。

 まぁ、冷蔵庫にあるのはあくまでも空間倉庫用のカモフラージュなので、そこまで量は多くないものの、適当に何かを摘まみ、昼食の用意をするくらいなら問題はないと思うんだが。

 

「いや、それなりにある。それなりにあるんだが……折角この部屋の台所には最新のシステムキッチンが用意されてるから、出来れば使ってみたいと思ってな。……見た感じ、あまり使ってないだろう?」

「そうだな」

 

 高級マンションだけに、システムキッチンに用意されている調理器具の類はかなり高性能な物が揃っている。

 だが、基本的にはこのマンションの1階にあるスーパーで弁当やパン、惣菜、冷凍食品を買っているし、あるいは外食をしたりしている。

 勿論、全く使っていない訳ではないが、それでも荒垣にしてみれば勿体ないと思うのだろう。

 

「アクセルはあまり自覚がないようだが、この部屋のシステムキッチンはかなり高性能だぞ? それこそ料理を仕事にしている者が使っても……多少は不満を覚えるかもしれないが、それでもきちんとした料理を作れるくらいには凄い」

「……そういうものなのか?」

 

 荒垣にしては珍しく、興奮した様子でそう言ってくるのを聞きながら、そう返す。

 

「ああ、特にIHなのにかなり火力が高く出来るようになっていて、例えば炒飯とかを作る時にも店で出すようなパラパラな炒飯を作れるぞ」

「……なるほど」

 

 俺はそれなりに冷凍炒飯とかを食べたりする。

 そして冷凍炒飯というのは、レンジでチンするか、あるいはフライパンで炒めるといった解凍方法がある。

 この時、レンジでチンした場合は、シットリ系の炒飯になり、フライパンで炒めた場合はパラパラ系の炒飯になる訳だ。

 ちなみに個人的にはフライパンで温める方が多かったりする。

 単純にパラパラ系の炒飯が好きだというのもあるし、長ネギ、チャーシュー、メンマといった具材を追加することも出来たりするし。

 勿論、楽な方は電子レンジなのだが。

 何しろ皿に移してチンするだけでいいのだから。

 ともあれ、そうした感じでシステムキッチンのIHはそれなりに使っていたのだが……正直なところ、まさかそんな風になっているとは思わなかった。

 いや、でもこの辺りで一番家賃の高い高級マンションであるという事を考えれば、システムキッチンが高性能であってもそうおかしな事はないのか?

 

「そんな訳で、食材とかを買ってきたいんだが……」

 

 荒垣が俺の部屋に来たのはそれが理由か。

 荒垣は当然ながら、この世界の金は持っていない。

 あるいはペルソナ世界の金は持ってるかもしれないが、同じ日本とはいえ、異世界の金が使えるかどうかは微妙なところだろう。

 だからこそ、この世界で生活基盤のある俺を頼ってきたらしい。

 実際、俺には公安か貰ったカードがあるので、金については気にしなくてもいい。

 ……ただ、ホワイトスターと繋がった以上、このカードは今も使っていいんだろうか?

 まぁ、取りあえず今日くらいはいいだろう。

 その辺については政治班が公安と話して決めるだろうし、使いすぎたら金塊やら宝石やらで払ってもいいし。

 ただ、問題なのは俺達はこの部屋に直接転移してきたんだよな。

 そうなると、当然ながらこのマンションの防犯カメラに俺達が入ってきてはいないのに、何故か部屋にいるという事に……いや、それなら影のゲートを使って一度外に転移した方がいいか。

 正直なところ、今のこの状況を思えばわざわざそこまでする必要はないと思う。

 何しろ、近いうちにこの部屋を引き払う可能性が高いのだから。

 俺が雄英に通い続けられるかどうかも、今のところ不明だしな。

 そんな訳で、防犯カメラに映ったとか、そういうのはそこまで気にしなくてもいいのかもしれないんだが……それでも、万が一を考えれば、やはり難しいだろう。

 

「分かった。このマンションの一階にはスーパーが……それもいわゆる高級スーパーがあるから、そこで買い物をしよう。金に糸目はつけなくていいから」

「いいのか?」

「何だ、料理をしたいんじゃなかったのか?」

「いや、そうだが……けど、わざわざ高級スーパーを使うのはどうかと思うんだが」

「その辺は心配するなって。折角料理を作るんだから、どうせなら美味い料理を食べたいしな」

 

 荒垣の料理の腕は、プロ級……というのは少し大袈裟だが、セミプロ級なのは間違いない。

 そんな腕の持ち主が料理を作ってくれるのだから、これ幸いと色々作って貰ってもいいだろう。

 幸い、俺には空間倉庫があるので、作りすぎでも美味いままで保存出来るし。

 

「それに、普段使う事が出来ないような高級食材……興味ないか?」

「ぐっ、そ、それは……」

 

 俺の言葉に荒垣は何も言わなくなる。

 荒垣にとっても、やはり高級食材というのは魅力的なのだろう。

 ……もっとも、ペルソナ関係の実験とかデータ提供とかそんな諸々によって、荒垣はシャドウミラーから結構な報酬が出ている。

 元々は俺が荒垣を危ないところで助けた恩返し的な意味での行動ではあった、それでもシャドウミラーとしては相応の報酬を支払っている。

 いっそ、荒垣もシャドウミラーに所属すれば、面倒はなくなると思うんだが。

 ただ、荒垣にとっては色々と思うところがあるらしい。

 なので、無理にそうしろとは言わない。

 ……あるいは荒垣は俺に強い恩を感じている様子だったし、シャドウミラーに無理にでも入るように言えば、あるいは入るかもしれない。

 だが、そうして無理矢理にシャドウミラーに所属させても、意味はないしな。

 そんな訳で、荒垣については自由にさせている訳だ。

 

「文句はないな? なら、一度マンションの外に転移して、それから1階のマンションに行くぞ」

「面倒だな」

「直接この部屋に転移してきた以上、防犯カメラとかに映像が残っていないと問題になるしな。それで、スーパーに行くのは俺と荒垣だけでいいのか? ムラタはどうする?」

「今、時代劇を見ているから行かないと思うぞ」

「時代劇か。……ムラタらしい」

 

 少し……本当に少しだけだが、このヒロアカ世界で放映されている時代劇が気になった。

 一般的な……俺が知ってるような、個性とかそういうのがない時代劇なのか、それとも時代劇の中でも個性が使われているのか。

 その辺りが気になったが、それでもどうしても見たいという訳ではないので、荒垣と共に準備をして影のゲートに潜るのだった。

 

 

 

 

 

「なるほど、高級スーパーと言われるだけはあるな」

 

 スーパーにならんでいる食材を見て、荒垣が感心したように、そして微妙に嬉しそうに言う。

 俺から見ると、別にそこまで気にする食材には見えないのだが、荒垣の目には……料理をする者の目には、並んでいる食材が高級食材だと認識出来るらしい。

 この辺は普段から料理をする荒垣と、適当な料理しか出来ない俺との違いだろう。

 

「じゃあ、適当に買っていくぞ。好きなだけ買ってもいい。余った料理は俺が空間倉庫に入れておいて、出来たてのままで食わせて貰うから」

「……羨ましいよな、空間倉庫」

 

 しみじみと言ってくる荒垣。

 荒垣にしてみれば、空間倉庫というのが本当に羨ましいのだろう。

 もっとも、実際には空間倉庫は料理を保管する為のスキルではない。

 それこそホワイトスターとか、そういうのですら保管出来るスキルな訳で……それを料理だけの為に欲しがるのは、ある意味で大物だと言ってもいいだろう。

 

「いいだろう、としか俺には言えないな」

 

 もしかしたらペルソナ世界でも何らかの条件を満たせば空間倉庫的なスキルが使える世になる可能性はあったが、だからといって今ここでそんな可能性の低い話をしても意味がないしな。

 

「うお……フォアグラか? それも結構いい奴だぞこれ」

 

 肉のコーナーに行くと、そこではフォアグラが売られていた。

 真空パックに入れられたフォアグラは当然ながら結構な値段だが……

 

「よし、20個だな」

「ちょっ、おい、アクセル!?」

 

 容赦なく20個を買い物かごに入れた。

 

「気にするなって。カードがあるから買い物の料金については問題ないから。……それより、荒垣はフォアグラを調理した事があるのか?」

「ある訳ねえだろ、こんな高級食材。……まぁ、料理番組とかそういうので見た事はあるけどな」

 

 そう言う。

 まぁ、荒垣は料理が得意ではあるが、その料理は基本的に家庭料理とかそっち系の料理だ。

 高級食材の類はあまり使ったりしないっぽいしな。

 もっともシャドウミラーから報酬が出ている以上、高級食材を買おうと思えば買えるのは間違いない。

 それでもこうしてあまり慣れていないのを考えると、単純に荒垣の趣味だろう。

 その後も高級食材を次から次に購入していく。

 ただ、ブランド牛の類は程々にした。

 この辺はあくまでも個人の好みだが、ブランド牛のA5ランクとかそういうのって、大半が脂身であまり好みじゃないんだよな。

 個人的には、やっぱり肉といったら赤身肉の方が好みだ。

 肉を食っている! って感じがして。

 ……とはいえ、折角なのでその手の肉も買っていく。

 100g8000円の肉を大量に購入したり、伊勢エビがあったのでそれも購入する。

 

「おい、アクセル。この伊勢エビは生じゃなくて冷凍ものだぞ?」

 

 買い物かごに放り込んでいると、荒垣が呆れたように言ってくる。

 

「ん? そうなのか?」

「そうだよ。伊勢エビの旬は基本的には秋から冬。本当の旬は冬だ。特に8月は禁漁期間になっている筈だ。……もっとも、それはあくまでも俺が知ってる知識だから、もしかしたらこの世界では違うかもしれないけどな」

「まぁ、冷凍でも美味いものは美味いし……あ、ロブスターとかもあるな。これも買っていくぞ」

「……何でそんなにエビを買う?」

「好きだから」

「……そうか」

 

 俺の言葉に呆れたように言う荒垣だったが、ロブスターって正確にはエビじゃなくてザリガニの仲間だったりするんだよな。

 もっともそういう事を言うのなら、カタツムリとかナメクジだってサザエの仲間って事になるんだが。

 

「……で、こうして適当に買ってるけど、昼食は何を作る?」

「牛肉やらエビやらとなると……すき焼き……いや、しゃぶしゃぶだな。それ以外には、フォアグラのソテーと炒飯といったところか」

 

 和洋折衷どころではないし、昼食に食べる料理でもないんだが……まぁ、それを言うのなら俺が適当に食材を選んで買っていたんだし、それはしょうがない。

 そんな訳で、他にもバルサミコ酢とか、野菜とか豆腐とか、そういうのを色々と買い物かごに放り込んでいく。

 支払いの時にもの凄い値段になったが……まぁ、うん。その辺りは公安に頑張って貰うとしよう。

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