転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4589話

「おら、出来たぞ。食え!」

 

 リビングにあるテーブルに荒垣の作った料理が並ぶ。

 ……なお、テーブルの真ん中にはしゃぶしゃぶ用の鍋が置かれていた。

 当然ながら俺の家にはしゃぶしゃぶ用……すき焼きとかにも使えるが、とにかくその手の鍋はなかったのだが、さすが高級スーパーと言うべきか、これも普通に売っていた。

 いや、何で? と疑問に思ったが。

 これが例えば冬に売っているのなら分かる。

 冬に鍋というのは定番なのだから。

 だが、今は8月の真夏日だ。

 この部屋の中はエアコンで25度くらいになっているが、それでも鍋を食べるには暑いだろう。

 それでも一体何故こうして……と疑問に思ったのだが、その辺は高級スーパーであると考えて納得しておく。

 あるいは俺達が知らないだけで、夏に鍋というのが微妙に流行っていたりしてもおかしくはないし。

 ともあれそんな訳で俺はしっかりと鍋を食べる事にする。

 他にも今回こうして昼食を作るようになった理由であるシステムキッチンを使う為に、炒飯や炒め物もそれなりにある。

 後は、メイン……メイン? まぁ、多分メインという扱いで間違いないだろうフォアグラのソテーとか。

 バルサミコ酢を使ったソースは、荒垣曰く自信作らしい。

 

『いただきます』

 

 俺とムラタがそう言い、早速食べ始める。

 まず手を伸ばしたのは、やはりしゃぶしゃぶ。

 ただし、牛肉ではなくエビ……でもなく、クエの身。

 このクエというのは魚の中でもかなり美味い事で有名らしく、刺身でも食べられる新鮮な身をしゃぶしゃぶしてから食べる。

 ちなみにしゃぶしゃぶのタレがポン酢かゴマダレかで論争になりやすかったりするが、俺にとってはどっちでもいい。

 ただ、イメージ的にクエはポン酢で食べたい。

 なお、さすがに時間がなかったのもあって、しゃぶしゃぶのタレについては出来合の物を買ってきた。

 荒垣いわく、本気になればポン酢やゴマダレも作れるらしいのだが、残念ながらそんな時間はなかったらしい。

 とはいえ、高級スーパーに売っていた中でも高めのポン酢やゴマダレなので、どれも十分に美味いのだが。

 そんな訳で、クエの身を食べると……うん、美味い。

 そうして一切れ、二切れと食べて取りあえず満足したところで、次はエビ。

 半生になったエビは甘く美味い……が、個人的にはしっかりと火を通したエビフライとかの方が好みなんだよな。

 で、次は野菜。

 鍋に浮かんでいる長ネギやキノコをポン酢やゴマダレで食べる。

 これもまた、それなりに悪くないんだよな。

 そうして野菜で口直ししたところで、肉を食べる。

 ……うん、美味い。

 脂身が多いだけに、ガツンと直接的な美味さがある。

 ただ、脂身が多すぎるのもあってか、しゃぶしゃぶした程度では程よく脂身が落ちるといったようなことはない。

 この辺についてはしょうがないといったところもあるのだろう。

 それに不味い訳でもないので、不満はない。

 そうしてしゃぶしゃぶを一通り食べたところで、炒飯を食べる。

 しゃぶしゃぶが脂っこいのもあってか、炒飯は卵と長ネギ、かまぼこで出来たあっさりとした仕上がりだ。

 けど……なるほど、荒垣が凄いシステムキッチンだと断言するだけあって、パラパラの炒飯になっている。

 もっともこのパラパラ具合は、誰がやっても出来るという訳ではない。

 IHの火力――という表現は少しおかしいのかもしれないが――が高いのは間違いないのだが、それにプラスして相応の技術力があってこそ、こうしたパラパラ具合になる訳だ。

 そうして炒飯を食べてから、エビフライ。

 ちなみにタルタルソースは荒垣の手作りだ。

 ……ポン酢やゴマダレを作る時間はなかったのに、タルタルソースを作る時間があるというのはどうなんだ?

 そう思わないでもなかったが、エビフライにしっかりと合うタルタルソースである以上、文句はない。

 サクッと揚げられた衣とタルタルソースの味が一体になり、衣を食い破ったところでプリプリのエビの身の食感を楽しめる。

 火を通したエビの何が凄いって、やっぱりこのプリプリ具合だよな。

 そうしてエビフライに満足すると、いよいよ本日の主役であるフォアグラのソテーを食べる。

 バルサミコ酢を使った黒いソースが食欲を刺激する。

 いやまぁ、しゃぶしゃぶもエビフライも、十分に今日の主役と言ってもいいような、そんな代物ではあったのだが。

 そんな風に思いつつ、俺はフォアグラのソテーを切って口に運ぶ。

 本来ならナイフやフォークで食べるのがいいのだろうが、箸でもしっかりと切り取る事が出来た。

 口に運ぶと、最初は酸味のあるソースが口の中に広がり、次にフォアグラの濃厚な旨みが口の中に広がる。

 いつまでも味わっていたいと思わせような、そんな味。

 

「美味い」

「どれがだよ」

 

 全ての料理を一通り食べてからそう口にする俺に対し、荒垣はそう返してくる。

 とはいえ、言葉はぶっきらぼうなものだったがその顔にはどこか嬉しそうな色があった。

 荒垣にとっても、自分の料理を美味いと言ってくれるのは嬉しいのだろう。

 勿論、荒垣が作る料理よりも美味い料理は今まで幾らでも食べた事がある。

 マリューや千鶴、凛、ミナトが作ってくれる料理はしっかりと美味いし、他にも超包子で四葉が作る料理はまさに本職だけに明確に荒垣の料理よりも美味い。

 だが……それでも荒垣の作る料理が美味いのは間違いない。

 それを示すように、ムラタもまたガツガツと料理を口に運んでいるしな。

 この様子を見れば、それこそ誰であってもこの料理が美味いというのは予想出来る筈だ。

 

「どれも美味いな」

「ふんっ、そうか」

 

 俺の言葉に照れ臭そうな様子を見せる荒垣。

 荒垣にしてみれば、それだけ自分の料理が褒められたのが嬉しいのだろう。

 そうして昼食をしっかり食べると、午後からはまた暇になる。

 どこか適当に遊びに出掛けるって訳にもいかないしな。

 もしそういう事をすれば、ムラタがいれば自分から何らかのトラブルを起こそうとしてもおかしくはない……いや、日本刀を持っている時点でどうしても怪しくなるか。

 だとすれば、やはりその辺は怪しくないように空間倉庫に収納するとかする必要があるが、ムラタがそれを受け入れるかどうかはまた別の話だろう。

 そんな訳で、夕方くらいまでは家ですごすことにする。

 ……TVは相変わらずムラタが時代劇を見ている……って、まだ時代劇をやってるのか?

 午前中から時代劇を見ていたと思うんだが。

 もしかしたら、今日は時代劇スペシャルとか、そういう日なのかもしれないな。

 もっとも今この時期に時代劇スペシャルをやるのは……それこそTV局なら視聴率を稼ぐ為に雄英の林間合宿の件を……それも雄英を責める形でやりそうなものだが。

 そう考えると、時代劇スペシャルをやっているTV局は優秀なのかもしれないな。

 ともあれ、ムラタがTVを見ていて荒垣が暇ではないかと思ったのだが、荒垣は荒垣でシステムキッチンを見て回ったり、何故か部屋の掃除をしようとして、ロボット掃除機によってしっかりと掃除されているのを見て残念そうにしていた。

 最高級グレードなのは伊達ではなく、ロボット掃除機の掃除能力は非常に高い。

 床にゴミ一つ、塵一つ見逃さないような、そんな感じでしっかりと掃除をしていた。

 この辺り、素直に凄いと思うんだよな。

 ヒロアカ世界の技術力の高さをこれでもかと言わんばかりに示している。

 

「荒垣、掃除については諦めろ。……というか、俺の家に来てまでわざわざ掃除をする必要はないだろうに」

「少し気になっただけだ。……けど、これ……見た感じだと、ロボット掃除機だけの掃除には思えないんだがな」

「ああ、そうだな。マンションの清掃サービスを使ってるから、俺がいない時に掃除をしてくれたりする」

「……そういうサービスもあるのか」

「まぁ、高級マンションだしな。そのくらいのサービスはあるんだろ」

 

 これがヒロアカ世界特有の、あるいはこの地域特有のサービスなのかどうかは、俺にも分からない。

 ただ、あると便利なので俺にとってはなくてはならない……とまではいかないが、こうして利用している訳だ。

 

「アクセルがよく部屋に人を入れられるな」

「ん? どういう意味だ?」

「アクセルは……こう言ってはなんだが、色々と秘密が多いだろう? 部屋の中を自由に掃除させたら、そういう秘密が知られる可能性があるんじゃないか?」

「どうだろうな。俺にとって重要な物は基本的に空間倉庫に収納されているしな。部屋に置かれているのは、基本的に誰に見られてもいいような、そんな奴だ」

「……まぁ、アクセルは空間倉庫があるから、そういうのはあまり気にしなくてもいいのか」

 

 料理を作る前に話した時と同じように、俺の持つ空間倉庫を羨ましそうにする荒垣。

 

「そうだな。……それより暇なら、また何か料理を色々と作ってくれ。それを空間倉庫に収納しておきたいし」

「あー……まぁ、1階のスーパーを見る限り、色々と料理を作ってみたりしたいとは思うが……いやまぁ、今はやる事がないしな。それなら適当に作るか」

 

 普通なら自分が食べる訳でもない料理を作れと言われても、面倒だと言うだろう。

 だが、荒垣の場合元々料理を作るのが趣味……とまではいかなくても、嫌いじゃない。

 それでいて外見に似合わず面倒見が良いというのもある。

 また、俺の部屋のシステムキッチンをもっとしっかりと使いたいという風にも思っているのだろう。

 あるいはTVがムラタに占有されているので、やる事がないというのもあるのかもしれないが。

 俺の部屋に暇潰し出来るような本とかそういうのがあれば、また少しは話が違ったのかもしれないが、残念ながらそういうのは特にないしな。

 本屋で漫画とか買っておけばよかったかもしれないが、スマホがあれば暇潰しはどうとでもなるし。

 動画投稿サイトとかそういうのは、面白い動画はかなり面白い。

 とはいえ、そういうサイトにアップされている動画は膨大な数になり、まさに玉石混淆といった感じなんだよな。

 なので、面白い動画を見つけるのはそれなりに大変だったりする。

 ともあれ、荒垣はこのヒロアカ世界で使えるスマホを持ってる訳でもないので、こうして料理をして暇潰しをしているのだろう。

 

「買い物はどうする? またスーパーに行くか?」

「あー……いや、買ってきた材料がまだかなり余ってるし、それで間に合うと思う。もし材料が足りなかったら、スーパーに行くよ。……1階がスーパーってのは便利だよな」

 

 しみじみと告げる荒垣。

 どうやら荒垣にしてみれば、このマンションの作りはかなり羨ましいらしい。

 ……今、荒垣がどういう場所に住んでいるのは分からないが、ペルソナ世界でも1階にこのマンションのような高級スーパーとはいかずとも、コンビニくらいはあってもおかしくはないんだが。

 そして荒垣の稼ぎがあれば、そういうマンションとかにも普通に入れると思う。

 あ、でもそういうマンションに入居するには社会的な信用とか、そういうのも必要だったりするのか?

 入居したのはいいが、家賃を滞納されたら大家とかも困るだろうし。

 そうして考えれば、荒垣は定職についてる訳でもないので、それなりに高級マンションに住むというのは難しいかもしれないな。

 俺が住んでいるこのマンションだって、龍子……リューキュウという人気と実力を持つプロヒーローの後ろ盾があり、後は多分公安の方からも手を回したりした結果なのかもしれないけど。

 

「分かった。じゃあ、頼む。俺は部屋にいるから、何か聞きたい事とか、あるいはスーパーに行きたくなったら呼んでくれ」

 

 そう言い、俺は自分の部屋に戻る。

 そうしてスマホで暇潰しをしていると、不意に着信音が鳴る。

 誰だ? と思って画面を見てみると、そこにあったのは切島という文字。

 切島が俺に電話をしてくるというのは珍しいな。

 そう思いつつ、電話に出ると……

 

『アクセル、緑谷が目覚めたぞ!』

 

 切島の叫びがスマホから聞こえてくるが……

 

「そうか、緑谷が……」

 

 昨日病室に行った時はまだ意識が戻ってなかった。

 茨の方は……まぁ、うん。色々とあったのは間違いないが、今頃はゆっくりと休んでいるだろう。

 そんな訳で、緑谷の意識が戻ったのは嬉しいんだが……

 

「何で切島が俺に電話をしてくるんだ? 珍しい事もあるな」

 

 普段なら、瀬呂や峰田、上鳴といった具合に俺と親しい相手が連絡をしてきてもおかしくはない。

 切島とそれなりに仲が良いが、それでも瀬呂とかに比べるとそこまででもないし。

 そう思っていると、何故か切島が真剣な様子で口を開く。

 

『実は、ちょっと今日夜に用事があるんだけど、時間を作れるか?』

「あ? 悪い、無理だ」

 

 今すぐならまだしも、夜になればオールマイト達と一緒にヴィラン連合の拠点を襲撃する予定となっている。

 そういう意味で夜には時間が取れない。

 

「今なら時間があるけど、どうする?」

『……いや、今から話すのはちょっと漢らしくねえ』

 

 何が漢らしいのか、相変わらず分からないが……ともあれ、切島からの通話は切れるのだった。

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