転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4598話

 全ての準備が整い、いよいよバーに突入する瞬間となる。

 既にバーの周辺の住人達は避難させられており、もしあのバーで激しい戦闘になっても怪我人は出ないだろう。

 ……いやまぁ、オールマイトとAFOが戦いになったり、俺が全開で戦うようになったりしたら、話は別だったが。

 もしそうなったら、それこそこの周辺どころか、この地区……いや、場合によってはこの地方、もしくはこの国、世界に影響を与える可能性も十分にあった。

 そこまで激しい戦いをしたいとは、さすがに思わないが。

 オールマイトを始めとして、中に突入するヒーロー達がバーの扉の前に立つ。

 やっぱりこの世界において気配を察知することが出来ないというのは、かなり致命的だよな。

 

「よし、向こうの準備も出来た。こっちも準備するぞ」

 

 ムラタ、イザーク、オウカ、荒垣にそれぞれ言葉を掛ける。

 ちなみにムラタは日本刀を持っているが、イザークとオウカは武器を持っていない。

 荒垣の手には、いつでもペルソナを召喚出来るように召喚器が握られている。

 ……実はこの召喚器、荒垣が持っているのを見たプロヒーロー達が、最初騒いだ。

 いやまぁ、召喚器は拳銃の形をしているのだから、そう考えれば無理もない。

 事情を知らない者達にしてみれば、ヤンキーっぽい……それこそこの世界ではヴィランっぽいといった表現が相応しい荒垣が拳銃を持っているようにしか見えないのだから。

 このヒロアカ世界において、プロヒーローはヴィランを捕らえる必要があるものの、それはあくまでも捕らえるであって、殺すではない。

 ……雄英の教師の中にもスナイプがいるのを思えば、絶対に銃の類を使うのを禁止という訳でもないのだろうが。

 ただ、それがペルソナという能力を使うのに必要な道具であると説明し、そもそも外見は拳銃だが、実際に銃弾を撃てるようになっていないのは少し詳しい者ならすぐに分かる。

 そんな訳で、最初こそ少し騒動になったものの、結果として荒垣の持っている召喚器については問題ないという事になった。

 

「オールマイトが扉をノックしてピザ屋の振りをして相手の意表を突いて一瞬……もしくは数秒動きを止めた瞬間、突入する」

 

 そう言い、影のゲートを展開する。

 後はそこに身体を沈めれば、あのバーの中に姿を現すことが出来るようになる。

 ……もっとも、バーの中が具体的にどのようになっているのかは分からないで、そういう意味では行き当たりばったりに近い状態になるのだが。

 とはいえ、それはオールマイト達も同様だ。

 警察の方でこのバーがヴィラン連合の拠点であるというのを突き止める事は出来たが、バーの中が具体的にどのようになっているのかは、調べる事が出来なかったのだ。

 あるいはそういう個性を持っている者が警察にいるかもしれないし、もしくはプロヒーローにもそういう個性を持っている奴がいるかもしれないが、そうなるとそれはそれでバーの中にいるヴィラン連合に察知される可能性も否定出来ない。

 なので、結果としてこうして行き当たりばったりになった訳だ。

 あるいはこれで、AFOがいないという確信でもあれば話は別だったが。

 行き当たりばったりになる訳だ。

 ……龍子達の方も無事に任務を達成出来ればいいんだけどな。

 そう思いつつ、オールマイトを始めとした突入組がバーの前に移動するのを観る。

 龍子や優、他にも結構な数のプロヒーローはこのバーの前ではなく、他の場所……塚内が言っていた、脳無を培養している場所に向かっている。

 そちらもこちらと同様、結構な戦力が必要なのは間違いない。

 何しろ、ヴィラン連合は厄介なヴィランが揃っているものの、それ以上に脳無が厄介な存在だ。

 通常なら1つ、あるいは遺伝によっては2つの個性を使う事が出来るのだが、脳無の場合は3つ、4つ、5つといった個性を使う事が出来る。

 それが出来るのは、当然ながらヴィラン連合を率いる……いや、裏にいるといった表現の方がいいのか? ともあれ、AFOのせいだ。

 しかもこれまでヴィラン連合が関わった事件……ステインの一件だったり、林間合宿の一件だったりで、多数の脳無を有しているのが分かっている。

 複数の個性を使える脳無を大量に生み出す技術……量産型W的な意味では興味深いけど、今の状況では厄介な存在でしかない。

 なので、そちらについても今のうちに潰す事になっていた。

 一応、公安を通して脳無の培養設備を一式貰う事になってはいるが……それはあくまでも無事だったらの話だ。

 龍子や優……リューキュウやマウントレディがいるとなると……うん。

 ドラゴンと化したリューキュウと、巨大化したマウントレディ。

 他にも向こうにはそれなりの数のプロヒーローがいるから、脳無の生産設備がいくらかは無事であって欲しい。

 ……もっとも、見方によっては違うと思うが、俺から見たら脳無よりも量産型Wの方が能力……性能は高いような気がする。

 勿論、個性を複数使えるという脳無の能力は素直に凄いと思うが、それを言うのなら量産型Wだってガンドを使えたり、魔力や気を使って身体強化したり、魔法を使ったりといったことが普通に出来る。

 それも脳無のように個々に能力が違うのではなく、全ての――世代的な問題はあるが――量産型Wが同じように使えるというのは非常に大きい。

 ただ、量産型Wの方が勝っているからといって、脳無の培養設備が全く何の役にも立たないのかと言えば、それは当然ながら否だ。

 レモンであっても思いつかなかったような何らかの機構があるかもしれないし。

 なので、やっぱり培養設備は欲しいと思うのは当然だった。

 恐らくその辺については、レモンも同意見だろう。

 

「アクセル」

「ん?」

 

 もう1ヶ所の、脳無の培養設備の方について考えていると、イザークに呆れたように声を掛けられる。

 何だ? とイザークに視線を向けると、イザークは無言でオールマイトがいる方を顎で示す。

 何だ? と思ってそちらに視線を向けると……なるほど、オールマイトがこちらに視線を向けている。

 準備はいいか、と。

 そのような意味を込めて。

 どうやら脳無の培養施設の方に考えを集中しすぎていたのもあってか、そちらに気が付かなかったらしい。

 バーの外で待ち受ける予定になっているエンデヴァーが、そんな俺に苛立たしげな視線を向けている。

 いやまぁ、考えに集中しすぎていた俺が悪いんだから、この件については俺からは何も言えないな。

 なので、エンデヴァーからの視線はスルーして、オールマイトに頷く。

 それを見たオールマイトは、一緒にバーに突入する面々と共に扉の前に立つと、何度かその扉をノックし……

 

「どーもぉ、ピザーラ神野店です」

 

 おい、と。

 そこまでピザ屋の店員になりきらなくても。

 そんな風に頭の中で考えつつ、シャドウミラー組の中でバーの中に突入する面々と共に影のゲートに潜る。

 次の瞬間、俺達はバーの中で影から姿を現し……

 俺は真っ先に周囲を見回す。

 真っ先に見つけたのは、爆豪。

 その爆豪の前にはシラタキがいて、他にも何人ものヴィランが……それこそ林間合宿の時に襲ってきた開闢行動隊の面々の姿もある。

 俺が林間合宿の時には遭遇しなかった奴もいるが。

 いやまぁ、それが開闢行動隊の一員だったのか、あるいは林間合宿の襲撃には来なかったヴィラン連合の奴なのかは分からないが。

 そして……俺が倒すべき最優先の第一目標、黒霧。

 

「ムラタ、カウンターの向こうだ!」

 

 影から飛び出したムラタに指示し、それを聞いたムラタが日本刀を手にカウンターの向こう側にいる黒霧に向かい……そんな俺の声が聞こえたのか、バーの中にいる者達が反射的にこちらに視線を向けて来ようとし、次の瞬間にはつい先程ノックされた扉が……いや、扉とその周囲の壁が破壊され、一気にオールマイトがバーの中に突入してくる。

 

「何だと!?」

「ぐぅっ!」

 

 驚きの声を発するムラタと、苦痛に呻く声を発する黒霧

 その声を聞きながら、イザーク、オウカ、荒垣も俺の影から出ると近くにいるヴィランに向かう。

 イザークは初めて見るマスクを被ったヴィラン。

 オウカは、林間合宿でマンダレイや虎と戦っていたうちの1人、オカマのヴィラン。

 荒垣は蒼炎の個性を使う口裂けのヴィランといった具合に。

 俺は爆豪を確保する為に移動しつつ、ラグドールの姿がないかを確認するが……ちっ、いないな。

 破壊された壁から木の根が大量に流れ込み、まだ無事だった……シャドウミラーの面々が戦っていないヴィランを拘束していく。

 シンリンカムイだったか……若手の中でも腕利きのプロヒーローとして有名な奴の個性だ。

 シンリンカムイ……森林、つまり木を自由に扱えるといったように認識すればいいのか?

 そう思いつつ、改めてムラタの方に視線を向ける。

 そこでは、予想通りムラタが苦々しい表情を浮かべ、黒霧に再び斬りかかろうとしていた。

 どうやら、さっきの声からすると、黒霧にダメージは与えたものの、致命的――殺すという意味ではなく、動けなくするという意味で――なダメージ与える事が出来なかったらしい。

 そんな状況を見つつ、俺は目の前のシラタキに視線を向ける。

 爆豪を後ろに確保し、どういう訳かラグドールがここにいない以上、取りあえずこれで心配はいらない。

 いやまぁ、AFOがいると思ったんだが、そのAFOがどこにもいないのは……このバーを制圧するという意味では悪くないものの、敵の親玉がいないというのはちょっと予想外だった。

 

「あー……ったく、何でヒーロー共が……ああ? お前、見た事がねえな。プロヒーローか? いやまぁ、俺もプロヒーローの顔を全員知ってる訳じゃねえが、それだって今回の一件に参加するくらいの奴なら、顔くらいは知っていてもおかしくないんだが」

 

 ガリガリと頭を掻きながら、シラタキが俺に向かってそう言ってくる。

 ……いや、シラタキじゃないな。

 こいつをシラタキと呼んでいるのは、俺……ヒーロー科の生徒であるアクセル・アルマーだけだ。

 今の俺は20代の姿で、シラタキとは初対面なのだから、俺の正体をシラタキに教える訳にもいかない。

 もっとも、俺がシラタキと呼んでいるのはそれなりに多くの者が知っているし、林間合宿でも開闢行動隊の奴にその辺については言ったので、このバーを襲うプロヒーロー達がシラタキという呼び名を知っていてもおかしくはないかもしれないが。

 ただ、それでも俺が誰なのかという事に繋がりそうな情報を残すつもりはなかった。

 そんな訳で、シラタキに向かって何かを言おうと思ったのだが、俺が口を開くよりも前に、バーの中に突入したオールマイトが口を開く。

 

「もう逃げられんぞ、ヴィラン連合。何故って? 我々が来た!」

 

 そうオールマイトが宣言する。

 気が付けば、荒垣と戦っていた蒼炎の個性を持つヴィランは、気絶をして床に倒れている。

 素早く動いたグラントリノが、宣言を終えたオールマイトの隣に着地したのを見ると、どうやら荒垣と向き合っていた蒼炎のヴィランの隙を突いて倒したのだろう。

 もっとも、床に倒れた蒼炎のヴィランの様子を見る限りだと、特に大きな怪我をしているようにも見えないので、顎先を蹴って脳震盪を起こさせた……といったところなのだろうが。

 勿論、俺には理解出来ないような、何らかの攻撃手段を持っていて、それを使った可能性もあるけど。

 何しろ、グラントリノはオールマイトの師匠だ。

 つまり古強者と呼ぶべき相手で、そう考えると奥の手の1つや2つ、持っていてもおかしくはないだろうし。

 まぁ、その辺については俺が聞いても奥の手であれば気軽に教えたりはしないだろうから、聞いても無駄なような気がするけど。

 ともあれ、シラタキの意識は完全に俺からオールマイトに移っている。

 それも当然か。

 シラタキにしてみれば、今の20代の俺は見知らぬ相手だ。

 ……あるいはもっとしっかりと俺の顔を確認し、気持ちに余裕があれば俺がアクセル・アルマーだと……シラタキの知っている、雄英のヒーロー科のアクセル・アルマーと似ていると、そのように思ったかもしれないが。

 もし俺だと……シラタキの知っているアクセル・アルマーだと気が付いていれば、あるいはオールマイトよりも俺に意識を向けていたかもしれないが、生憎とシラタキが俺に気が付くことはなかった。

 

「てめえ……誰だ?」

 

 そしてシラタキの代わりという訳ではないが、爆豪が俺を訝しげに見ていた。

 なるほど、爆豪は俺に……ヒーロー科のアクセル・アルマーに、何度となく挑んで来た。

 それを思えば、シラタキよりも俺に詳しくてもおかしくはないのだろう。

 とはいえ、それでも爆豪も何らかの確証がある訳でもなさそうだったが。

 

「せっかく色々こねくり回していたのに……何そっちから来てくれてんだよ、ラスボス。仕方がない。いまはこっちが不利だが、だからってどうにも出来ねえ訳じゃねえ。黒霧……無理をしてでもいい、持ってこられるだけ持ってこい!」

 

 シラタキが、そう叫ぶのだった。

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