どんっ、ばごんっ、どごおおぉぉおんっ!
そんな轟音が遠くから響いてきている。
それこそちょっとした人型機動兵器が何らかの兵器を使っているのではないかと思える、そんな様子だ。
……いやまぁ、音が聞こえてくるのはオールマイトとAFOが戦っている場所なので、そういう意味では人型機動兵器といった表現も間違っていないかもしれないが。
そんな音のする場所が、みるみる近付いてくる。
やはりと言うべきか、予想通りと言うべきか、オールマイトはAFOと戦ってはいるが、かなり戦いにくそうだ。
一番足手纏いになる爆豪や緑谷達は影のゲートを使って強制的に避難させることが出来たが、リューキュウを始めとした、多くのヒーロー達がAFOにやられて倒れているのは事実。
また、目良が心配していた、脳無の生産工場付近に誰かが住んでいるといった可能性も、否定は出来ないのだ。
となると、先に行った連中がどうにかしてはいるのだろうが……ともあれ、まずは向こうが今現在どんな感じになっているのかを確認する必要がある。
そんな訳で、俺は瞬動を使って現場に到着したのだが……あれ? 微妙にオールマイトの方が有利そう?
いや、勿論オールマイトが戦いにくそうしているのは間違いない。
間違いないのだが、それでも戦闘そのものはオールマイトが有利に進めている。
……もっとも、戦っている場所は大量のクレーターが出来ていたりして、それこそ先程も少し思ったように人型機動兵器の戦闘訓練場といったように見えないでもなかったが。
そしてエンデヴァーを始めとした他のプロヒーロー達が、気絶しているリューキュウ達や……予想通り脳無の生産設備の近くに住んでいる住人達を半ば強制的に避難させている。
いやまぁ、間近でオールマイトとAFOが戦っている状態で、しっかりと事情を説明し、その上で避難させるのを納得して貰うというのは……不可能という訳ではないものの、かなり厳しいのも事実。
それこそ説得している間に戦闘に巻き込まれてしまうという可能性も否定は出来ないのだから。
そのようにならないようする為には、やはり半ば強引にであっても避難させた方がいいだろう。
……まぁ、中にはそのような状況であっても避難しないと言うような者もいるかもしれないし、あるいは戦闘の動画をネットにアップし続ける為に残るというような者もいるかもしれないが……まぁ、そうなったら、それはそれで仕方がないだろう。
その辺については、やはり自業自得としか言いようがないのだから。
また、俺達が爆豪や緑谷達を連れて避難しようとした時にはまだいた、ヴィラン連合の面々の姿もどこにもない。
エンデヴァー達に捕らえられた……いや、違うな。
もし捕らえたとしても、どこにも連れていくような余裕はない筈だ。
つまり、縛られるなりなんなりされて、その辺に転がっていてもおかしくない訳で。
だが、ヴィラン連合の面々はどこにも転がっていない。
つまり、ヴィラン連合の面々はプロヒーロー達に捕らえられる事もなく、この場から離脱したという事になる。
考えられるとすれば、やはり黒霧の個性か。
ムラタやエッジショットによる一撃で気絶していた筈だったが……まぁ、根性で気が付いたとか、あるいは仲間に起こされたとか、そんな感じなのだろう。
……あ、ムラタが瞬動を使って一気に間合いを詰めて、AFOを斬った。
とはいえ、恐らくは何らかの個性によるものなのだろうが、そのダメージそのものはかなり軽い。
それだけではなく、その怪我も急速に回復していた。
当然ではあるが、以前USJで戦った脳無のように、AFOも高い再生能力をもたらす個性を使っているらしい。
ある意味ラスボスらしいのは間違いないのだが。
ただ、イザーク、オウカ、荒垣といった面々が、オールマイトのフォローをする感じでAFOに攻撃をしたりしている。
なるほど、オールマイトが有利に戦っているのは、ホワイトスターでの治療の成果があってのものだというのは間違いないが、それと同じくらい……いや、それ以上にムラタ達の援護が通じていたのか。
なら、と。
俺は戦闘が行われている場所に到着したところで地面に下りる。
そして、気配遮断を使う。
相手の不意を打つ……しかも確実に一撃を入れられるという意味で、気配遮断はかなり使い勝手のいいスキルだ。
ただ、一度攻撃をすれば気配遮断の効果は切れるので、あくまでも最初の一撃だけだが。
また、オールマイトとAFOが戦っている戦場の中を、歩いてAFOの側まで移動する必要があるので、そういう意味でも戦いに巻き込まれないかどうかは微妙なところだ。
他にも不安要素があるとすれば、AFOは顔全体を覆うマスク? のようなものがあるので、それはつまり自分の目で俺の存在を見ていないという事を意味している。
気配遮断で認識出来なくなった俺を、認識出来るかどうか。
恐らくは何らかの個性で周囲の状況を認識してるのだろうが、その個性が……例えば双眼鏡だったり、防犯カメラによって俺を認識出来るのと違うのかどうか。
その辺が分からない以上、もしかしたら気配遮断を使って近付いた俺をしっかりと把握している可能性もある。
勿論、俺としてはそういうのは絶対に避けたいところだし、俺のこの気配遮断は、サーヴァント的な感じではかなりランクの高いスキルだ。
何しろ、アサシンのスキルなのだから。
アサシンは純粋な戦闘能力はサーヴァントの中でかなり低い。
だが、この気配遮断のスキルがあるからこそ、聖杯戦争に参加出来ていると言ってもいい。
……あくまでもこれは俺が体験した中での話だし、佐々木小次郎のようなイレギュラーもいるので、絶対という訳ではないのだが。
ともあれ、そんな気配遮断だけに、AFOに把握されるような事はまずないと思う。
そんな風に考えつつ、激しい戦闘を行っているAFOに向かって近付いていく。
ただ、激しい戦闘を行っているからこそ、オールマイトは勿論、AFOもかなり派手に動く。
気配遮断を使ったまま走るとその効果が切れるので、歩いて移動するしかない。
あるいは、もしかしたらアサシンならその辺はどうとでもなったのかもしれないが……俺の場合は、そういう限界がある。
いやまぁ、そういう限界があったとしても圧倒的なまでの性能を持っているのは間違いないんだけどな。
ともあれ、もしAFOが気配遮断を使った俺を認識出来ていれば、それこそすぐに何らかの反応があってもおかしくはない。
だが、生憎とそういう反応はなく、オールマイトとの戦いに集中している。
認識出来ていない振りをして、そこで俺の不意を打ってくる……そんな可能性も考えたが、AFOが攻撃してくる様子もない。
どうやらAFOにも気配遮断の効果はしっかりとあるらしい。
よし。
……後の問題は上手い具合にAFOに対して不意打ちをする事だが……戦いの流れを見るしかないか。
ただ、オールマイトの戦いについてはそれなりに見た事があるが、AFOの戦いは今日初めてなので、戦いの先を読むといったような事はそう簡単じゃないんだよな。
そんな中でも唯一の幸運は、オールマイトの援護をしているイザーク達の戦闘のタイミングについては十分に理解出来ている事だろう。
オウカの放った魔法の矢……の氷バージョンが数本AFOに向かって放たれる。
オウカが本気になれば、それこそ数十本……あるいは百本以上の氷の矢を作る事も出来るのだろうから、この本数の少なさはオールマイトに被害を与えないように意図的なものだろう。
その氷の矢を回避したAFOだったが、そこにイーザクが瞬動で近付き、拳を放つ。
AFOは拳を振るって強風を起こし、イザークの速度を緩めると、その攻撃範囲から跳び退り……狙い通り、ちょうど俺の前に着地する。
「はぁっ!」
拳による一撃。
武器を出せれば、ゲイ・ボルクを空間倉庫から出して攻撃するといった事も可能だったのだが、ゲイ・ボルクを取り出した時点で気配遮断的に攻撃行為と認識され、気配遮断の効果が解除され、そこから攻撃をしても……いやまぁ、AFOと俺の能力差を考えれば大丈夫だとは思うが、それで個性で防がれる可能性がある。
何より、このヒロアカ世界においてヴィランが相手であっても、プロヒーローが殺すのは禁止されている。
そこにゲイ・ボルクのような槍を取り出すのは……いやまぁ、それを言うのならムラタが持っている日本刀はどうなるのかといった事もあるのだが。
ともあれ、最速で攻撃出来るのはやはり自分の拳であるのは間違いなく……メキョ、と。
そんな音を立てながら、俺の拳はAFOの身体にめり込む。
「アクセル君!?」
イザークの攻撃を回避したAFOに追撃をしようとしていたオールマイトだったが、いきなり俺が姿を現した事に驚いたのだろう。
AFOに対する追撃を断念し……その隙を突くかのように、オールマイトは跳躍して俺から距離を取る。
「ぐ……げほっ、ごほっ……い、今のは……一体何をしたのかな?」
AFOが咳き込みながら、そう言ってくる。
AFOにしてみれば、いきなり俺が姿を現して攻撃をしたのだから、何が起きたのかは全く理解出来なかったらしい。
視覚を始めとして、何らかの手段……恐らくは個性によって周囲の状況を把握しているAFOだ。
だからこそ、一般的には回避出来ないような死角からの攻撃であっても、その行動を把握し、回避するなり、防御するなり、迎撃するなり……といったように、対処が可能だった。
だが、俺の気配遮断については、AFOにも全く理解出来なかったらしい。
さすがアサシンの真骨頂スキル……といったところか?
「アクセル君!」
先程と同じくオールマイトが俺の名前を呼ぶが、そこに込められた感情は先程と全く違うものだ。
それが何を意味しているのかは、すぐに分かった。
空中に存在する透明な何かが、俺に向かって落下してきたのだ。
それが何なのかというのは、分からない。
だが、誰がやったのかと言われれば、それが誰の仕業なのかは容易に理解出来た。
「面倒な!」
そう叫びつつ、AFOの身体に蹴りを放つ。
足に返ってきたのは、濃密な筋肉の塊。
……とはいえ、それは俺にとってそこまで珍しいものではなく、その筋肉の塊に抉り混むように蹴りを放ち、その結果としてAFOの体内にダメージを与えつつ、その反動によってAFOとの距離をとる。
次の瞬間、俺のいた場所に透明な何かが落下し、地面にクレーターを生み出し……消える。
一体AFOがどんな個性でこのような事をしたのかは、俺にも分からない。
ただ、AFOの仕業である事だけは間違いなかった。
「アクセル君、無事かい!?」
俺の隣に立ったオールマイトが聞いてくるが、俺はそれに軽く頷いて視線の先を見る。
……そんなオールマイトの隣には、いつのまにかグラントリノの姿もある。
「ああ、問題ない。……何をされたのかはちょっと分からなかったが」
「AFOの個性なのは間違いないと思うけど……今まで私との戦いでは……」
使っていなかった。
恐らくそう言おうとしたオールマイトだったが、その言葉を途中で切り、鋭い視線をAFOの吹き飛んだ方に向ける。
オールマイトが何を見ているのかは、俺にも容易に想像出来た。
俺の予想通り、土煙の中から姿を現したのは、AFO。
「一応、今のは僕の奥の手の1つだったんだけど、まさかこうも簡単に回避されるとは思わなかったよ」
そう言うAFOは、先程の攻撃……不意打ちと蹴りの二度の攻撃によるダメージが残っているようには思えない。
再生能力を使い、回復したのだろう、
この手の能力を持つ敵と戦う際に気を付ける事は幾つかあるが、その中でもっとも簡単で確実なのは、再生する隙を与えず、圧倒的な攻撃力によって倒してしまうことだ。
そして幸いな事に、俺には他にも幾つもその手の攻撃手段がある。
それこそ最悪の場合は、ニーズヘッグを空間倉庫から呼び出せばいいんだし。
ただ、それを行うとなると間違いなく大きな騒動になるだろう。
何しろこのヒロアカ世界は基本的に生身で戦う世界だ。
そうである以上、人型機動兵器は出来るだけ使いたくはない。
いやまぁ、KMFとかオーラバトラーとかなら、もしかしてサポートアイテムだったり、個性で誤魔化せるかもしれないが。
まぁ、出さない方がいいのは間違いないので、生身でどうにか出来ればいいんだが。
そんな風に考えていると、AFOはオールマイトに向けて、友好的な様子で声を掛ける。
「それにしても、さすがと言いたいところだね。一体どこでこんな素晴らしい人材を見つけてきたのかな? 志村菜奈も君という後継者を見つけたし……血筋については言うまでもないのは、直接彼の姿を見たオールマイトには分かるだろう?」
志村菜奈? 彼? 一体誰の事を言ってるのか、ちょっと理解出来ない。
オールマイトも苛立った様子で……だが、若干の訝しさを抱きつつ、AFOを見ている。
「OFAの後継者……次代の象徴が、まさかこれだけの実力を持っているとはね。OFAを作った者として、僕も鼻が高いよ」
そう、AFOは言うのだった。