転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4605話

「……は?」

 

 AFOの口から出た言葉に、数秒の沈黙の後で思わずそう声を出す。

 俺と同じくAFOの言葉を聞いていたオールマイトとグラントリノも、一体何を言われたのか分かない様子で間の抜けた表情をしていた。

 もし……本当にもしの話だが、AFOが今の言葉を狙って口にしたのだとしたら、まさに今こそがオールマイトを殺す絶好の機会だったのは間違いないだろう。

 だが……AFOがオールマイトを攻撃する様子はない。

 それはつまり、今のAFOの言葉が冗談や、相手の意表を突くといったものではなく、本気でそのように言ってきているのだという事の証だった。

 

「……おや、どうしたんだい?」

 

 そんな俺達の行動に、訝しげな様子でAFOが尋ねてくる。

 この隙に攻撃すればいいものを、そんな事をする余裕もないといったところか。

 もっとも、こうしてAFOが理解出来ないといった様子でこっちに視線を向けているその姿は、つまりそれだけ時間稼ぎをするには十分なものであり、結果としてAFOが呆然としている間にこの場にいるプロヒーロー達が仲間を、あるいは戦いに巻き込まれてしまった周辺の住人達を助け出す貴重な時間となっていたが。

 

「あー……えっと、ちょっといいか?」

「何だい、継承者君。君が雄英のヒーロー科のアクセル・アルマーだというのは、既に予想出来ているんだ。誤魔化そうとしても無駄だよ。どんな個性でそこまで大きく外見を変えているのかは分からないけど」

 

 なるほど、どうやら俺の正体にはAFOも気が付いていたらしい。

 いやまぁ、今の俺は20代とはいえ、あくまでもアクセル・アルマーの20代だ。

 10代半ばのアクセル・アルマーと似ているのは間違いなく、そういう意味ではAFOが俺の外見を見破ったのはさすがと言うべきなのだろう。

 ……もっとも、俺が外見を変えているのは個性によるものだと認識しているのはどうかと思うが。

 個性が存在するこのヒロアカ世界での一件だと思えば、俺の外見が変わっているのも個性によるものだと認識してもおかしくはないと思うが。

 けど……考えてみれば、AFOが俺をOFAの後継者であると認識しても、それはおかしくないのかもしれないな。

 具体的には、俺が表に出た体育祭においても、増強系としての能力を発揮しており、ステインとの戦いの時も増強系……というか、生身での戦いで倒した。

 それだけを見れば、俺がオールマイトの持っていたOFAを後継した人物であると思ってもおかしくはない。

 実際には緑谷が後継者なんだが、何だかんだと緑谷は俺が前に出た影響であまり目立たなかったしな。

 ただ、以前緑谷はショッピングモールでシラタキと遭遇している。

 その辺りから緑谷を怪しんで……いや、シラタキの憎悪の対象はあくまでも俺なんだろうし、緑谷にそこまで興味がなく、結果としてシラタキがAFOに緑谷の事を話していなくてもおかしくはないか。

 だが、雄英に内通者がいて、教師に内通者がいない以上、残るのは生徒だ。

 そして生徒なら、俺が炎獣を使うとか、OFAにない力を持っているのを知っていてもおかしくはないと思うんだが。

 あるいは、元々炎獣を使うのが俺の個性だと思っていて、そこでオールマイトからOFAを継承したとか、そういう風に思っていたのかもしれないな。

 だが……これはチャンスでもある。

 現在AFOの意識は俺に向けられており、それはつまり緑谷が安全になるということを意味してもいる。

 ……正直なところ、ここでネタバレをして俺がOFAの後継者でも何でもないと言ってAFOを小馬鹿にする事によって、AFOの意識を俺に向けさせるといった手段もない訳ではないのだが……どっちがいいのかと思えば、やはり今は緑谷の安全を重要視した方がいいだろう。

 もっとも、そうなると緑谷が実戦経験を積む機会が減る事になるのだが……今の状況を考えると、まだそっちの方がいいか。

 もっとも、俺達シャドウミラーについて大々的に公表した場合、一体どうなるのかは分からないが。

 

「何だ、知られていたのか。こっちとしても出来るだけOFAの件については隠しておきたかったんだがな」

「アクセル君!? 痛っ!」

 

 俺の言葉を聞いたオールマイトが思わずといった様子で何かを言おうとするものの、グラントリノがオールマイトを止めていた。

 この辺り、さすがに年の功といったところなのだろう。

 俺にとって助かる状態なのは間違いない。

 オールマイトは長年……それこそ何十年もヴィランと渡り合ってきているのに、それでもこういうアドリブがいまいちなのは……まぁ、本人の性格なのかもしれないな。

 

「おや、もう少し驚かれると思ったんだけどね。君もわざわざそうして外見を変えているんだ。その辺りについて知られたくなかったんだろう?」

 

 若干得意げな様子のAFO。

 駄目だ、ここで噴き出すな。

 今は何とか我慢するんだ。

 緑谷の安全を考えれば……

 なので噴き出さないように我慢する為、爆豪の顔を思い浮かべる。

 何故そうしたのかは自分でも分からなかったが、取りあえず道化と化したAFOの様子に噴き出す事は避けられた。

 後は、周辺の住人を少しでも救う為、もう少し時間を稼ぐ必要があるな。

 

「残念ながら見破られてしまったがな。……ちなみに、本当にちなみにだが、聞かせて欲しい。どこで俺が怪しいと思った?」

「それは勿論USJでの一件を聞いた時からだよ」

「そんなに前からか!?」

 

 意図的に驚いた様子を見せる。

 ……もっとも、そんなに前と言っても、今は夏休みで、USJの一件があったのは1学期だ。

 そう思えば、実際にはそんなに前じゃなかったりするのだが。

 とはいえ、1学期はかなり色々な事があって、密度の濃い時間だった。

 そういう意味では、かなり前という風に認識してもそうおかしくはないと思う。

 

「ああ、君がいたから弔や黒霧達は捕まった。……考えてみれば、オールマイトがいないのに、対オールマイト用の脳無まで用意して、負けるというのがおかしかったんだ」

 

 なるほど、あの脳無の件か。

 実際シラタキも対オールマイト用とか、そんな風に言っていたしな。

 そういう意味では、そんな脳無が俺に倒されたのはAFOにとっても予想外だったらしい。

 USJで捕らえたシラタキや黒霧を奪還されなければ、ここまで面倒な事にはなっていなかったんだろうな。

 とはいえ、AFOにとってシラタキや黒霧はかなり重要な駒なのは間違いない。

 シラタキもAFOを先生として慕っていたしな。

 そうである以上、USJで捕らえてもAFOはどんな手段を使ってでも、シラタキや黒霧を取り戻していただろうな。

 そういう意味では、USJで捕らえてシラタキや黒霧を奪い返されたのは間違いなかったという事か。

 

「そっちにとって、OFAを受け継いだ俺がUSJの時点であそこまで強かったのは完全に予想外だったと」

「残念ながらそうだね」

「つまり……指導者としては、お前よりオールマイトの方が上だった訳だ」

「……それにはちょっと異議を唱えたいな」

 

 へぇ、てっきりこの件についてもあっさりと認めるとばかり思っていたんだが、どうやらそうではないらしい。

 自分がオールマイトに負けていると認めるのが許せないとか、そんな感じか?

 

「そうか? 俺とシラタキを見れば、その辺は明らかだと思うが」

「……シラタキ? ああ、なるほど。黒霧から聞いているよ、シラタキと言われて弔が不愉快に思っているとね」

 

 あー……うん。林間合宿の時に襲撃してきた面々の前で、シラタキとか普通に言っていたしな。

 それを思えば、黒霧に回収されて拠点となるバーに戻った後で、シラタキ呼ばわりされてもおかしくはないか。

 もっとも、黒霧が転移で連れ帰った時にフラッシュグレネードを数個投擲したから、落ち着いて話が出来たのはその騒動が終わった後だっただろうけど。

 AFOにしてみれば、何気にシラタキ呼ばわりされて不愉快に思ったというのは、あまり好ましいものではなかったらしい。

 もしくは、それも成長の一種として喜んでいる可能性もあるが。

 

「死柄木よりは、シラタキの方が分かりやすいだろう?」

「……どうだろうね。ただ、弔も一連の騒動で一回り大きくなったのは間違いない。それについては僕も嬉しく思うよ。なぁ、オールマイト?」

「貴様っ!」

 

 何だ?

 AFOがオールマイトに話を振ったんだが、それを聞いたオールマイトが苛立ち……というよりは、激昂といった表現が正しい感じでAFOを睨み付けている。

 シラタキが一回り大きくなったという件で、一体何でオールマイトが怒るんだ?

 考えられる可能性としては、ヴィラン連合を率いる……それこそ次代のAFOとでも言うべきシラタキが成長したのが許せなかったとか、そんな感じか?

 

「落ち着け、この馬鹿が! 幾ら何でも呆気なく挑発に乗りすぎだ!」

「がっ!」

 

 激昂してAFOに突撃しようとしたオールマイトを、グラントリノが蹴りを入れて止める。

 うわぁ……幾らオールマイトを止める為とはいえ、今の蹴りは結構な威力だったぞ。

 あんな威力の蹴りを容赦なくオールマイトに叩き込める辺り、グラントリノは素直に凄いと思う。

 もっとも、以前ちょっと聞いた話ではグラントリノはオールマイトの師匠らしい。

 そういう意味では……まぁ、うん。

 オールマイトが鍛えられる時は、今のように強力な蹴りが放たれていたのだろう。

 もっとも、オールマイトの頑丈さを考えれば、そのくらいは必要だったのかもしれないが。

 ……つまり、グラントリノの事務所に行っていた緑谷も、オールマイトと同じように蹴りを放たれていたりした訳だ。

 オールマイトはともかく、緑谷の頑丈さはそこまででもないので、それを思えば……うん、頑張れとしか言えない。

 あるいは俺がOFAの後継者であるとAFOに言った結果、間違いなく減る実戦経験をグラントリノの訓練でどうにかなるのかもしれないな。

 

「……さて、時間稼ぎはもういいかな? どうやら倒れていたプロヒーロー達や周辺の住人の避難は終わったようだしね」

 

 オールマイトとグラントリノのやり取りを聞いていると、不意にAFOがそんな風に言ってくる。

 なるほど、AFOも俺が何故無駄に話をしていたのか、その辺については理解していたらしい。

 ……俺がOFAの後継者であるという確信が欲しかったというのも、決して間違いではなかったのだろうが。

 

「どうやらそのようだけど……随分と余裕だな。オールマイトやグラントリノ、他にもここにいた他の面々を相手にかなり手こずっている様子だったが、そこに俺が加わっても勝てると思っているのか?」

「どうだろうね。例えば君がまだOFAを受け継いでもまだ未熟だったとしたら、あるいはどうにかなったかもしれない。だが……だからといって、悪の帝王と呼ばれた事もある僕が、こういう場面で慌てるのはどうかと思うだろう?」

 

 悪の帝王、か。

 まぁ、オールマイトから聞いた話が本当なら、AFOは実際にそのように呼ばれるような存在であるのは間違いないと思う。

 だが……今まで色々な強敵を見てきた俺にしてみれば、そこまでの存在とは思えない。

 これで、例えばシュウ・シラカワのような存在が俺の前に立っている場合は、こちらとしても対処に困るだろう。

 いや……けど、シュウ・シラカワの場合は、悪の帝王と呼ばれて喜んだりとか、そういう事はしないだろうな。

 その辺もまた、AFOに対していまいち強敵だと、脅威を覚えない理由の1つではあるのかもしれないが。

 そんな風に思いつつ、俺は笑みを浮かべる。

 

「そうか。なら、この世界で昔から語り継がれてきた悪の帝王とやら……ここで倒させて貰うか」

 

 とはいえ、この期に及んでもAFOを殺すのは禁止なんだよな。

 いっその事、ここにいるのが俺の関係者だけならAFOを殺しても問題はないと思うんだが。

 しかしここにはオールマイトやグラントリノ……はAFOの危険性を十分に理解しているので、あるいは殺す方に期待出来るかもしれないが、エンデヴァーを始めとして事情を知らないプロヒーロー達も多い。

 そう考えると、やはりここでAFOを殺すというのは難しいだろう。

 

「ふふふ、僕の前に立ってきた者の中には同じような事を言っていた者も多い。だが、僕はこうして生きている。それを考えれば、その言葉にどれだけ意味がないのか……君なら分かると思うけどね」

「面白い事を言ってくれるな。その割にはお前を倒したオールマイトはまだピンピンしているようだが?」

 

 まぁ、実際には言う程にピンピンしている訳ではないし、それもホワイトスターで治療したお陰なのだが……その辺については、わざわざ言う必要もないだろうという事で黙っておく。

 

「そうだね。それは少し意外だったよ。僕の予想が正しければ、オールマイトはもうそこまでの力は残っていない筈だったんだが……」

「ごちゃごちゃうるせえっ!」

 

 不意に……本当に不意に話している途中のAFOの前にミルコが現れると、問答無用でAFOの頭部に蹴りを放ち……その蹴りをまともにくらったAFOは吹っ飛んでいくのだった。

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