転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4606話

「えー……」

 

 俺がAFOと話している途中で、不意にミルコが乱入し、AFOの頭部に蹴りを放った。

 ウサギはウサギでも、肉食ウサギといった表現が正しいミルコの蹴りは、AFOを吹き飛ばすだけの威力を持っていたのだ。

 いやまぁ、AFOが油断をしている状況なのだから攻撃をする……蹴りを放つというのは、分からないでもない。

 既にこの周辺の住人達の避難は終わったらしく、それを考えれば余計にAFOに隙があるのなら、攻撃するのはおかしくない。

 だが……この世界のラスボスとでも呼ぶべき人物が喋っている中で、それを無視して蹴りを放つというのは……まさにミルコらしいと言ってもいいのかもしれない。

 とはいえ、本人がその辺りについてまで全て知った上で行動しているのどうかは、微妙なところだが。

 それこそミルコだけに、ノリと勢いでやった。後は流れでとか、そんな風に言ってきても俺は驚かない。

 

「おい、アクセル! 油断をするな! あいつ、私の蹴りを食らったのに、まだ普通に動ける!」

 

 蹴りを放ち、俺の隣に着地したミルコが鋭く叫ぶ。

 その様子を見れば、ミルコが本能でAFOの危険性を感じているのは容易に見て取れる。

 ……まぁ、ウサギの本能と言われてミルコの様子を思い浮かべる奴は、そうはいないだろうけど。

 それこそ生きる為に逃げ延びるとか、そういうのがウサギの本能っぽい感じがする。

 ミルコは色々な意味で例外って事なんだろうな。

 そう思いつつ、吹き飛んだAFOのいる方向……土埃が大量に舞い上がっている方に視線を向ける。

 先程俺が蹴りを放った時もそうだったが、AFOはその身体が高密度の筋肉によって覆われている。……あるいはそれも個性によるものなのかもしれないが、とにかくその高密度の筋肉が鎧の役割を果たしている訳だ。

 もっとも、それならそれで対処のしようはある。

 あるのだが……問題なのは、プロヒーロー達がそれを受け入れられるかという事だろう。

 

「やれやれ、話をしている時にいきなり攻撃をするなんて……一体どんな育ちをしてきたのやら」

 

 パンパン、と。

 自分についた土埃をはたき落としながら、AFOがそう言う。

 高密度の筋肉の鎧と、高い再生能力か。

 そういう意味では本当に厄介だな。

 

「油断している方が悪いとは思うぞ。……俺が言うのもどうかと思うが」

 

 その言葉は、AFOにとってはあまり好ましいものではなかったらしい。

 先程までと比べて、AFOの纏う雰囲気が一変する。

 ……今の言葉のどこにAFOをそこまで怒らせるような内容があったんだ?

 そう疑問に思ったものの、AFOが何をどのように思っているのかとか、そういう事は俺には分からない。

 それこそ、そういうものだと思うしか出来ないのだから。

 それにAFOを怒らせる……正確には不機嫌にさせる程度といったところだが、とにかくその程度の様子であることを考えれば、まだ怒らせる……激昂させるには足りない。

 とはいえ、AFOも長い間闇の世界で生きていた存在だ。

 激昂することによって周囲に大きな被害を与えるというのは、十分に理解している筈だった。

 あるいは、だからこそ意図的に不機嫌になったようにしてみせ、こっちをコントロールしようとしているとか、そういう可能性も否定は出来なかったりするが。

 だからこそ、今のAFOを見てもすぐに油断をするといったようなことは出来ない。

 俺にしてみれば、それはそれで悪くないかも? と思わないでもなかったが。

 意図的に激昂した様子を見せれば、どうしてもそこには演技のようなものが見えてしまう。

 だからこそ、それを行うにしろ何をするにろ、チャンスであると、そのように思ったりしてもおかしくはないのだ。

 ……まぁ、AFOの性格を考えれば、もし演技をするのでも、しっかりと演技をして、こっちに気が付かせないようにして逆にこっちの隙を狙ってくるとか、そういう事をしてもおかしくはないような気もするけど。

 ただ、実際にそれを口にするつもりはないが。

 どちらにせよ、AFOの様子を思えば何してきてもおかしくはないのだから。

 それに対して、どのように対応するのかというのはしっかりと考えないといけない。

 

「そうだね。では、次からは油断しないようにしよう。……特に、アクセル君。君を前にして余計な事をすると、すぐに最悪の事態になってもおかしくはないようだからね」

 

 それはAFOが俺を褒めているのか、それともただ単に警戒しているだけなのか。

 その辺は生憎と俺には分からない。

 ただ、AFOの相手をする上で、AFOの意識を俺に向けるというのは決して悪い事ではない筈だ。

 オールマイトにしろ、グラントリノにしろ、更にはエンデヴァーやミルコといったプロヒーロー達、そしてムラタ、イザーク、オウカ、荒垣といったシャドウミラーの面々がいるのを思えば、AFOの勝ち目はまずないと断言してもいいだろう。

 ……その割に、AFOは今も焦った様子を見せることはなく、俺達を眺める……いや、睥睨するような感じで見ている。

 まぁ、顔が覆われているので実際に見ている訳ではなく、あくまでもそういう風に思えるというだけなのだが。

 ただし、そういう雰囲気を発しているのは間違いない。

 このヒロアカ世界のラスボスだけの事はある。

 ……だが、残念ながらそれはヒロアカ世界の住人に対しては効いても、俺を含めたシャドウミラーの面々に対しては効果がない。

 いや、絶対に……一切の効果がないかと言われれば、それは否だ。

 だが、AFOよりも圧倒的な強者を相手に、俺は今まで戦ってきた。

 例えば……本当に例えばの話が、AFOはバッタは余裕で倒せるかもしれないし、メギロートももしかしたら倒せるかもしれない。

 だが……シャドウミラーのペット枠であるハシュマルを相手にした場合、AFOが勝てるかと言われれば、否だ。

 勿論勝てないからといって負けるかと言えば、それは違うだろう。

 それこそ逃げようと思えばAFOなら幾らでも逃げる手段がある筈だし。

 ただ……それでも、勝つのはまず不可能だと思ってもいい。

 もっとも、ガンダムのような人型機動兵器の存在する世界と、生身での戦いを行うヒロアカ世界での戦いを同一視するのが、そもそも間違ってはいるのだろうが。

 そういう意味では、AFOがそちら側に1歩踏み出しているのは間違いない。

 間違いないのだが……あくまでも1歩踏み出しているだけでしかないのも事実。

 こう言ってはなんだが、1歩踏み出すどころか完全にそちら側に踏み込んだ俺、1歩どころか5歩か6歩踏み込んでいるムラタ、AFOと同じ程度踏み込んでいるイザークやオウカがいる状態で、AFOがどうにかなる筈もない。

 そういう意味では、荒垣はまだまだなので、AFOなら勝てると思うけど、それはつまりシャドウミラーの面子に対しては、荒垣にしか勝てないという事を意味している。

 

「降伏するか?」

「はっ、まさか僕がそのようなことを言われるとは思わなかったよ。だが……答えは、否だ! 空気を押し出す+筋骨発条化+瞬発力×4+膂力増強×3!」

 

 そうして個性を発動したAFOによって、周囲に膨大な風が巻き起こる。

 それこそ暴風と呼ぶに相応しい攻撃。

 多くの者は喋っていたAFOの突然の攻撃に何とか吹き飛ばされないように耐えるのが精一杯だ。

 だが……俺はその場に踏み留まり、大きく手を振るう。

 そんな俺の行動に合わせ、白炎が生み出され、そして白炎が周囲を満たす。

 より正確には、俺を中心にしてAFOの使った個性によって生み出された暴風そのものを焼きつくしたといった表現の方が正しい。

 

「な……に……?」

 

 どうやらAFOにとっても、今の俺の行動は予想外だったらしい。

 唖然と、一体何が起きたのか分からないといった様子で、俺を見てくる。

 AFOにしてみれば、今俺が一体何をしたのか、それを聞きたいのだろう。

 

「やれ」

 

 だが、既に話をする時間は終わった。

 AFOにやられたプロヒーロー達や周辺の住人の避難は既に完了している。

 そうである以上、俺がここでAFOの疑問に答える必要はない。

 AFOにしてみれば、俺達の時間稼ぎには付き合ったのにと、不満を抱いてもおかしくはないものの……まぁ、その辺については、俺からは何も言えない。

 AFOがこっちの時間稼ぎに付き合ったのは、AFOの勝手。

 俺達がAFOの時間稼ぎに付き合わないのも、俺達の勝手なのだから。

 そんな訳で、俺が指示をすると真っ先にシャドウミラーの面々が、少し遅れて荒垣とオールマイトが、それから少し遅れ、エンデヴァーとミルコ、グラントリノがAFOに向かって攻撃を行う。

 この攻撃の順番は、俺という存在をどこまで認識しているかだろう。

 イザーク達は何だかんだと俺との付き合いも長く、だからこそ即座に反応出来た。

 荒垣はシャドウミラーに協力しているとはいえ、あくまでも協力者という立場でしかなく、俺と戦場を共にしたことはそこまで多くはない。

 ……とはいえ、それでも反応は十分に速いもので、そういう意味ではオールマイトが即座に反応したのはさすがと言うべきだろう。

 そして続いてエンデヴァー、ミルコ、グラントリノは、プロヒーローとしてトップクラスの実力を持っているからこそ、出来たことなのは間違いない。

 ただ、AFOがかなり大きな身体を持っているとはいえ、それでもこれだけの人数が一斉に攻撃するとなると、自由に動ける空間の問題が出て来る。

 ムラタ、オールマイト、ミルコ、グラントリノといった4人以外は遠距離からの攻撃……それも前衛にいる者達を巻き込まないよう注意しての攻撃だった。

 味方に誤射をしない辺り、腕の立つ者達が集まっている証拠だろう。

 この状況で1発だけなら誤射とか、とてもではないが言えるような事ではないのだから。

 もしこの状況でそのような事をしたら、それこそそこを突かれてAFOに逆転されてしまってもおかしくはない。

 そういう意味では、ここで攻撃に参加出来た者達は相応の実力の持ち主であるという事を意味しているのは間違いなかった。

 なら、俺もついでに……

 

「鬼眼」

 

 オールマイトやムラタ、ミルコ、グラントリノの攻撃の隙間を縫うように、鬼眼を放つ。

 鬼眼は相手に状態異常を付与するといった便利な……言い換えれば強力なスキルではあるが、与える状態異常がランダムであるという特徴……もしくは欠点も持つ。

 ランダムである以上、当然ながら俺の方で状態異常を変えられる筈もない。

 さて、今回はどんな状態異常だ?

 そんな風に思っていると、不意にAFOの動きが鈍くなる。

 オールマイトの拳による一撃は何とか受け流すことに成功し、ムラタの日本刀の一撃も何とか致命傷を避ける。

 だが……そこまでだ。

 ミルコとグラントリノの蹴りがそれぞれAFOに命中し、イザークやオウカ、荒垣、エンデヴァーが行う遠距離攻撃が次々とAFOに命中する。

 これは、一体何だ? どういう状態異常を与えた?

 見た感じだと動きが鈍くなったし、速度半減とかそんな感じか?

 それが事実なのかどうかは、俺にも分からない。

 実際に鬼眼を受けたAFOが教えてくれれば話は別だが、まさかこの状況で素直に話してくれるとは思えないし。

 なら、取りあえず動きが鈍ったのを奇貨として、AFOに攻撃を命中させるべきだろう。

 

「AFOの動きを遅くした! 今なら全員の攻撃が楽に当たる筈だ!」

 

 俺がそう叫ぶと、シャドウミラーに所属する以外の者達は最初はすぐに信じなかったが、それでも1発2発と攻撃が連続して命中するのを見ると、信じざるをえなくなったらしい。

 オールマイトやミルコ、グラントリノの攻撃が次々とAFOに命中していく。

 AFOにしてみれば、自分の動きが遅くなったというよりも周囲にいる者達の動きが素早くなっていると感じていてもおかしくはない。

 おかしくはないが……それでもだからといってAFOに今の状況のままで何かが出来る筈もない。

 結果として、次から次にダメージを受け続けるAFOだったが、それでも驚くべきなのは攻撃を防いだり、受け流したりといったようにして致命的なダメージは受けないようにしているという事だろう。

 だが……当然ながら、そのような無理な状況がいつまでも続く筈もなく、防ぐ事が出来ない攻撃が1発、2発と多く入り、更には受け流す事が出来ない攻撃も次第に増えていく。

 見る者が見れば、大勢で1人を集中攻撃しているような、酷い構図ではある。

 ましてや、その1人は外見だけなら怪我人か病人のように見えなくもない……そんな者なのだから。

 だが、それでも今この場でAFOを倒すべきなのは間違いない。

 しかもそうして攻撃を受けながらも再生能力だろう個性で回復し、風の塊とでも呼ぶべきものを飛ばして反撃してくるのだ。

 だが、それも悪あがきにすぎず……

 

「デトロイト・スマッシュ!」

 

 まさに一撃必殺と呼ぶに相応しい強力なオールマイトの一撃が命中し、とうとうAFOは地面に倒れ込むのだった。

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