転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4607話

 しん、と。

 AFOが地面に沈んだのを見て、周囲にいる者達が沈黙する。

 バラバラバラと、空をヘリが飛ぶ音だけが周囲に響いていた。

 ……というか、ヘリいたんだな。

 AFOとの戦いに夢中で気が付かなかった。

 警察……いや、違うな。公安でもない。

 そのヘリの姿を確認してすぐに分かった。

 あのヘリは恐らく……いや、間違いなくマスゴミのヘリだろう。

 まぁ、それでもAFOとの戦いに乱入してこなかったのは褒めるべきところかもしれないが。

 それに、戦いが行われている最中はどうやらあのヘリも邪魔にならないように離れていたっぽいしな。

 

「やった……のか?」

 

 そう口にしたのは、一体誰だったのか、

 ともあれ、その一言が周囲に広がり……そして、オールマイトはマッスルフォームのままで右手を挙げ、勝利をしたと示すように、ヘリに……正確にはヘリでカメラを向けている者達に示す。

 オールマイトの勝利……平和の象徴としての姿は取りあえず守ることが出来たか。

 それにしても……

 

「いいのか?」

「っ!? ……何がだ?」

 

 この世界のラスボスと呼ぶべき存在である、AFOを倒した。

 そして今、AFOは不様に俺の視線の先で倒れている。

 であれば、スライムを使ってAFOを吸収し、スキル欄を充実させてもいいのでは?

 そのように考えたところで、荒垣がそう声を掛けてきたので、そんな荒垣の言葉に驚いたのだ。

 

「いや、こうして俺達も目立ってしまってるが。このちょっと聞いた限りだと、まだシャドウミラーについて知ってる者達は少ないんだろう? なら、オールマイトだったか? あいつが目立ってる間に消えた方がよくないか?」

 

 なるほど、荒垣の言う通りかもしれないな。

 実際、今のこの状況で俺達が目立ってしまっても、そこまで良い事はない。

 であれば、やはりここは撤退するべきか。

 とはいえ、俺達……シャドウミラーという存在についてTVを通し、ヒロアカ世界の住人に知らせておくというのも、悪くないとは思う。

 それこそ具体的には、俺達の正体を大々的に広めた時、あの時の……という風に思い出して貰えれば、それは俺達にとって利益となるのは間違いない。

 誰も知らない、どのような行動をしてきたのかも分からない、そんな相手がいきなり自分達は異世界から来た存在ですと口にしても、だからといってそれを素直に受け入れられるかというのは……正直、微妙なところだろう。

 だが、AFOというこの世界のラスボスと呼ぶべき存在を倒すのに協力した者達が、実は異世界の存在だった。

 そうなれば、シャドウミラーの存在も受け入れられる……あるいは全ての者達が完全に受け入れるといったようなことがなくても、受け入れる者が増えるだろう。

 とはいえ……

 

「ムラタ、日本刀を寄越せ」

「何だと?」

 

 俺の言葉に訝しげな様子で言うムラタ。

 ぶっちゃけ、今回ムラタを連れてきたのは成功だったが、失敗でもあるかもしれない。

 具体的には、AFOを倒すのに日本刀を持つムラタは大きな戦力となったのは間違いない。

 実際、AFOも俺やオールマイトに次ぐくらいには、ムラタに意識を向けていた気がするし。

 だが、そうしてAFOとの戦いでは間違いなく有益だったが、ムラタの強面と日本刀の組み合わせは、ぶっちゃけ裏世界の住人にしか見えなくてもおかしくはない。

 イザークやオウカの場合は、顔立ちが整っているのもあってシャドウミラーの看板として十分に使えるが。

 荒垣は……まぁ、うん。

 荒垣もまた強面だし、拳銃型の召喚器を持っているのは間違いないが、召喚器は小さいので日本刀と違って隠し持つ事が出来る。

 実際、荒垣もAFOとの戦いが終わったところで召喚器を懐に入れていたしな。

 だからこそ、日本刀を隠すでもなく持っているムラタは、どうしても目立つ。

 

「もしくは、瞬動でこの場から一度消えるか……どっちがいい?」

 

 そうムラタに聞く。

 こう聞けば、瞬動で姿を消すかと思っていたのだが……予想外なことに、ムラタは俺に日本刀を渡してくる。

 あれ? マジ?

 いやまぁ、そっちの方が助かるのは間違いないんだけど。

 

「いいのか?」

「お前がどうするのかを聞いてきたのだろう」

 

 不満そうな様子でそう言うムラタ。

 いやまぁ、実際にムラタの言う通りではあるんだが。

 ともあれ、ムラタがそういう風に受け入れるのなら、俺からも特に文句はない。

 そんな訳で、受け取ったムラタの日本刀を空間倉庫に収納する。

 一応、空を飛んでいるマスゴミのヘリに見つからないよう、建物の陰に入って。

 

「それで、アクセル。俺達はこれからどうするんだ?」

 

 イザークの様子からすると、そろそろホワイトスターに帰りたいと、そんな風に思っているっぽいな。

 あるいはオウカとデートの約束でもしてるのかもしれないが……

 

「悪いが、俺達は暫くこの場で待機だ」

「ふんっ!」

 

 俺の言葉に、イザークは不機嫌そうに鼻を鳴らすも、それ以上は何も不満を口にしない。

 あれ? もっとこう……いやまぁ、こっちとしてはその方が楽であるのは間違いないんだが。

 

「すいません、アクセルさん」

 

 そんなイザークの様子に、オウカが頭を下げてくる。

 オウカにしてみれば、イザークの態度に思うところがあるのだろう。

 もっとも、俺にしてみればこれでこそイザークといったようにしか感じられなかったりするが。

 

「気にするな。イザークもここで俺達の存在を……シャドウミラーについて見せておくのが悪いとは思っていないだろうし」

「ふんっ!」

 

 俺の言葉を聞いたイザークが、再び鼻を鳴らす。

 うん、イザークは俺の言葉が正しいというのは理解しているのだろうが、だからといってそれを素直に認めるようなタイプではないといったところか。

 イザークの性格を考えれば、そうであっても不思議じゃない……どころか、寧ろ納得しかできなかったりするが。

 

「でも、アクセルさん。シャドウミラーの存在について知らせる……というか、匂わせておくなら、明日菜達を連れてきた方がよかったのでは?」

 

 あれ? オウカって明日菜と顔見知りだったっけ?

 一瞬そう思ったが、考えてみれば明日菜は生活班で色々な場所に顔を出す。

 オウカともその辺りが理由で知り合っていてもおかしくはない。

 ……ただ、明日菜と呼び捨てにするのはちょっと驚いたが。

 

「あー……そうだな。明日菜達がいたら、悪くない展開になっていたかもしれないな」

 

 木乃香と桜咲はザ・大和撫子といった感じの外見――ただし方向性は正反対――だし、明日菜も顔立ちが整っていて、多くの者が美人と断言出来るような、そんな外見だ。

 そんな3人がシャドウミラーに所属しているとすれば、多くの者達に受け入れやすくなるのは間違いないと思う。

 もっとも、そういうのが嫌いだと、あるいは嫉妬でシャドウミラーを叩く、いわゆるアンチになる奴が出て来てもおかしくはなかったが。

 ヒロアカ世界のマスゴミの民度を見れば、そういうのって普通にいそうなんだよな。

 実際、ネットの某掲示板にある俺のスレにも定期的にアンチが出てくるらしいし。

 ヴィラン連合のリザードマンを見れば分かるように、ステイン信者も結構な数そこにいるらしいが。

 ステイン信者にすれば、ステインを倒した俺が持ち上げられるのは面白くないだろう。

 

「おい、アクセル」

 

 シャドウミラーの面々と話していると、グラントリノがこっちにやってくる。

 これはちょっと意外だったな。

 いやまぁ、グラントリノはオールマイトの師匠でもあるらしいから、そういう意味では俺と色々と話したい事があるのかもしれないけど。

 あるいは、以前ちょっと話したようにオールマイトと同じように治療に関する話かもしれないな。

 

「人に聞かれたくない話か?」

「そうだ。悪いが、ちょっと顔を貸してくれ」

「分かった。……じゃあ、取りあえずお前達はここで待っていてくれ。何か頼まれたら、無理じゃない範囲で協力してくれると助かる」

 

 そう言うと、オウカは笑みを浮かべて頷き、イザークと荒垣は渋々といった様子で頷き、ムラタは視線を逸らす。

 ……イザークと荒垣は態度こそ渋々といった様子だが、結局のところしっかりと協力をするだろう。

 AFOと戦った場所を見ると、まさに瓦礫の山といったようになっているし。

 俺とグラントリノは、離れた場所まで移動する。

 ちなみにオールマイトがいないのは、今オールマイトが動くとどうしても目立つ……というのもあるが、それ以上に気絶しているAFOを見張っておく必要があるからだろう。

 現在警察の方から凶悪なヴィランを拘束し、タルタロスまで運ぶ為の拘束具? を運んできているらしいのだが、どうやらそれはまだ到着していないらしい。

 一応オールマイトから今回のヴィラン連合の拠点となっているバーに突入する際にはAFOが襲ってくる可能性は十分にあるという風に忠告はされていたらしいのだが、その拘束具はこの近くにはなかったらしい。

 とはいえ、それでも近くの警察署に用意はしてあり、連絡があったらすぐに運べるようになっていたのを考えれば、その辺りはしっかりとやっていたのだろう。

 ともあれ、その拘束具が来るまで、AFOが気絶したままならいいが、もし意識が戻った時のことを考えれば、何かあった時に対処出来る人物がいた方がいいという事で、そうなるとやはり一番頼れるのはオールマイトだろう。

 ホワイトスターでの治療によって、当初の状態からある程度回復したオールマイトという事を考えると、AFOが意識を取り戻してもどうとでも対処出来る……筈だ。

 まぁ、本当にいざとなったらムラタ達がいるしな。

 そんな訳で、ある程度オールマイト達のいた場所から離れると、俺はグラントリノに向かって尋ねる。

 

「それで? 俺に用件ってのは?」

「AFOの勘違いの件についてだ」

「あー……その件もあったな」

 

 グラントリノの口から出た言葉に、そう返す。

 うん、まぁ……本当にその件についてはどうすればいいんだろうな。

 正直なところ、俺がOFAの後継者であるというAFOの言葉は、完全に予想外だった。

 とはいえ、改めて自分のこれまでの行動を思い返すと、AFOにそんな風に思われても仕方がないとは思うが。

 このヒロアカ世界において、オールマイトは文句なしのNo.1ヒーローである以上、そのオールマイトに憧れている者も多く、それを知っていただけに、攻撃を放つ時に『スマッシュ!』とか言うようにしていた。

 また、混沌精霊である俺の素の状態での身体能力は非常に高く、実際に個性の説明においては混沌精霊が増強系の個性であるという風に見せ掛けたりしたり。

 USJでシラタキ達と戦っている時も、スマッシュって言葉を口にした。

 また、体育祭においてもそれは同様だったし、ステインの時もそうだった。

 それを見たAFOにしてみれば、オールマイトの真似をしてスマッシュとか言いつつ、圧倒的なまでの増強系という事で、俺がOFAと間違われても仕方がないだろうという思いがあるのも事実だった。

 

「で、どうするんだ? AFOと戦っている時は誤魔化したが、ずっとそのままって訳にもいかないだろう?」

「だが、まだ小僧は未熟だ」

「……それは否定しない。判断力も悪い方向に向かったりしてるしな」

 

 一体どうやって知ったのか、まさかこの場に緑谷達がいるとは思わなかった。

 勿論、原作的には必要な事態だったのかもしれないが、しかしそれを込みで考えてもさすがに緑谷は暴走しすぎだと思う。

 そもそも、何をしに来たのか。

 まさか、AFOと戦おうとしていたとか、そういう事は……ないよな?

 恐らくないとは思うものの、絶対にそうだと断言出来る訳でもないのは痛い。

 そうなると、やはり今回の一件においては相澤にしっかりと叱って貰う必要があるだろう。

 ……さすがに、除籍になったりはしないと思うが。

 ともあれ、そんな緑谷だけに今のAFOに……あるいは逃げ切ったシラタキに、OFAの後継者であると知られる訳にはいかないのも事実。

 そうなると、やっぱり今は俺がOFAの後継者であるという風に思わせておく方がいいんだろうな。

 

「けど、いつまでもずっとって訳にはいかないぞ? 具体的には、シャドウミラーの存在が表沙汰になれば、もうその方法は使えなくなる」

 

 あるいはOFAはヒロアカ世界の人間だけではなく、他の世界の人間に対しても継承する事が出来れば話は別だが……ぶっちゃけ、それはかなり難しいだろうと俺は思う。

 下手をしたら……本当に最悪の場合だが、継承出来ずにOFAが消滅するといった可能性もあるのだ。

 だからこそ、OFAを継承するのならこのヒロアカ世界の人間とするのが安全なのは間違いない。

 勿論、本当にどうしようもなくなった時。それしか手段がないのなら話は別だが……そうならない事を俺は願う。

 

「分かっている。だが、もう少し……小僧がもう少ししっかりするまでは、頼む」

 

 そう言い、頭を下げるグラントリノに、俺は溜息を吐いてから分かったと返事をするのだった。

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