転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4610話

 車ごと転移すると、次の瞬間には俺達の姿は俺のマンションのある地区……の、あまり人目のない場所にあった。

 

「これが……転移……」

 

 車の運転手として公安から派遣された男は、どうやら初めて転移をしたのだろう。

 驚きながら、そう呟いてくる。

 ……もっとも、転移と一口で言っても、転移というのは色々な種類がある。

 例えば俺の影のゲートを使った転移と、黒霧の霧を使った転移、AFOの黒い泥の転移……といった具合に。

 もっとも、そういう意味では一番劣っているというか、使うのに躊躇をするのはAFOの黒い泥の転移だろう。

 何しろあの転移……というか、転移を使う際の媒介になっている黒い泥は、かなりの悪臭を放っている。

 これが例えば、悪臭を放つ泥ではなく臭いとかそういうのはない土や砂を使った転移であれば、また話は微妙に違っていたのだろうけど。

 もっとも、その辺については俺がどうこうと考えてもそれは意味がないしな。

 俺が使える転移は、あくまでも影のゲートを使った転移だけなのだから。

 ……あ、でもネギま世界には転移を誰でも使えるようにした呪符があるな。

 いわゆるマジックアイテムの一種だが、当然ながら非常に高価だ。

 高価だが、それでも金で買えるという意味ではかなりお手軽だろう。

 魔法球のように、金を積んでも物がないので購入出来ないというのは、普通にあってもおかしくはないのだから。

 

「転移を体験出来てよかったな。……それで、俺達はこれで問題ないけど、お前はこれからどうするんだ? 公安の拠点に戻るのか?」

 

 運転手にそう声を掛けると、最初運転手は俺の言葉に反応しなかったものの、何度か声を掛けるとようやく我に返る。

 

「えっと、あ、はい。ここからそう離れていない場所にうちの拠点がありますので」

 

 舌が滑ったな。

 あるいは転移を初めて経験し、それによってしっかりと今の状況を口に出来るような余裕はなくなっていたのか。

 多分……本当に多分の話だが、ここからそう離れていない場所にある拠点というのは、俺がこのマンションに住んでいるからこそ、用意された拠点なのだろう。

 つまり、俺に何かあった時に対応する為……もっと言えば、俺が何かをしないように見張っているという一面があってもおかしくはない。

 もっとも、俺を監視しているような視線とかそういうのはなかったと思うので、何かあった時のフォロー的な意味合いの方が強いとは思うが。

 実際、公安によって何か不利益を被った事はないし。

 いやまぁ、ゲートを設置する件についてはちょっと思うところがあるが。

 ただ、それについてもどうやら元から雄英の敷地内にと考えていたっぽいんだよな。

 

「分かった。じゃあ、気を付けて帰れ」

「はい、お疲れ様でした!」

 

 俺の言葉に深々と一礼し、運転手は車に乗り込んで出発する。

 それを見送ってから、次に俺が視線を向けたのはムラタ。

 

「まずはムラタをゲートまで送ってきてから、イザークとオウカ、荒垣を部屋に転移させ、その後で残りでマンションの1階にあるスーパーで買い物をしていくって事でいいか?」

「何故、俺達を部屋に転移させるという面倒な事を? 普通にマンションに入ればいいだろう」

 

 俺の言葉にイザークが不満そうに言ってくる。

 イザークにしてみれば、わざわざ面倒な事をしたくないのだろう。

 

「俺の住んでいるマンションは、高級マンションだ。当然ながらセキュリティの類も相応にしっかりとしている。そうなると、イザークやオウカ、荒垣のように今日AFOと戦って顔出しをした奴がいれば、防犯カメラの記録に残るんだよ」

「……ちっ」

 

 イザークは舌打ちをしたものの、それ以上不満は口にしない。

 いやまぁ、どうしてもというのなら録画データのある場所まで侵入して、技術班謹製のハッキングツールを使えば録画データを削除出来たりもするんだが、わざわざそこまでする必要があるとは思えないしな。

 

「ちょっと待ってくれ」

 

 そんな中で、不意にそんな風に声を掛けてきたのは荒垣。

 

「荒垣、どうした?」

「打ち上げの食材は俺も買いにいきてえ」

「……あー、なるほど」

 

 料理が趣味の荒垣にしてみれば、マンションの1階にあるスーパーにある食材は魅力的なのだろう。

 実際、今日の昼食を作る為にスーパーに行った時も、色々な食材に目移りしていたし。

 本当に気になる食材については、今日の昼食の時に購入したものの、気になってはいるけど昼食の時に買えなかった食材とか、そういうのを使って料理をしてみたいといったところか。

 そういう意味では気持ちも分からないではないが……そうなると、問題もある。

 

「イザークにも言ったが、AFOと戦った面々はTVで流れたのは間違いない。そうなると、変装をして貰うしかない。特に荒垣の場合は念入りにな」

 

 何しろ、荒垣は夏だというのにコートを着ているので、どうしても目立つ。

 その上、今日の昼近くにもスーパーで買い物をしている。

 高級志向のスーパーだけに、当然ながら防犯設備もしっかりと整っているんだよな。

 もっとも、この場合の防犯設備というのは迎撃をする為の設備がある訳ではなく、あくまでも防犯カメラとかそういうのだ。

 それだけに、目立つ荒垣の姿が防犯カメラの映像に残っていれば、当然ながらそれを見て荒垣だと……AFOと戦っている時に現場にいた人物であると気が付いてもおかしくはない。

 ましてや、荒垣の戦い方は拳銃――のように見える召喚器――を使ってペルソナを召喚して攻撃するといったものだ。

 ぶっちゃけ、ムラタ、イザーク、オウカよりも荒垣が一番目立っていたのは間違いない。

 そんな荒垣だけに、もしスーパーで一緒に買い物をするのなら、どうしても目立たないようにする必要がある。

 

「……構わねえ」

 

 予想外なことに、荒垣は変装を受け入れる。

 

「いいのか?」

「ああ」

 

 念の為に尋ねるも、荒垣は変装する気満々といった様子だった。

 そこまでしてあのスーパーに行きたい訳だ。

 となると、変装の用意をする必要があるが……

 

「アクセル君、アクセル君、ウチにやらせてんか?」

 

 予想外なことに、木乃香がそう言ってくる。

 

「いやまぁ、ムラタとかを送ってくる事を考えれば、それも悪くないとは思うけど」

「じゃあ、ほら。私達で変装はさせておくから、適当に着替えを出して」

 

 何故か明日菜もやる気で、結局俺は空間倉庫の中から変装に使えそうな服を幾つか出す。

 別に仮装をする訳でもないので、今の荒垣と同一人物に見えなければそれでいい訳だ。

 そう考えると、変装そのものはそう難しくはない。

 それに荒垣にしてみれば変装しているのはあくまでも買い物をする時間だけだ。

 であれば、変装についてはそこまで気にしなくてもいい……と思う。

 もっとも、その辺りは本人の考えとかによって違うから、本人がどのように思っているのかまでは分からなかったが。

 

「じゃあ、荒垣の件は任せた。……まずは、ムラタ。行くぞ」

「ああ」

 

 言葉短く、ムラタは俺の言葉に頷く。

 何だか微妙に不満そうに、不機嫌そうに見えるのは、時代劇を見ることが出来なかったからか、それともAFOとの戦いの結果が不満だったのか。

 ともあれ、こっちに近付いてきたムラタと共に影のゲートに沈むと、次の瞬間には雄英の敷地内に設置されたゲートの側に姿を現す。

 

「ではな」

 

 ムラタは影から出ると、短くそれだけを言ってゲートに向かう。

 ゲートの管理人をしている量産型Wは、そんなムラタの姿を見るとすぐに転移の用意をし、やがてムラタの姿が消える。

 そんなムラタを見送ると、俺は再び影のゲートを使い、先程の場所に戻った。

 

「明日菜、それはちょっと違うと思うんやけど。荒垣さんに似合うのは、こっちやろ」

「いやいや、木乃香こそ何を言ってるのよ。敢えてよ、敢えて。あ・え・て、夏らしい露出の多い格好をする方がいいんだってば」

 

 元の場所に戻ると、何やら木乃香と明日菜が言い争いをしている。

 いやまぁ、その内容が何に対するものなのかというのは、考えるまでもないが。

 そちらについては関わると面倒なので、イザークとオウカに声を掛ける。

 

「じゃあ、行くぞ。俺の部屋に直接転移する」

「アクセルの部屋か。一体どういう部屋なんだろうな」

「楽しみね」

 

 イザークとオウカは微妙に楽しそうにしているが、別にそこまで特別な部屋って訳でもないんだが。

 あ、いや。でもロボット掃除機とAI搭載型スーツケースがいるのを考えれば、特別な部屋だったりするのか?

 もっともシャドウミラーでは普通にコバッタとかの無人機がいるし、そう考えれば珍しくないかもしれないけど。

 敢えて面白そうなことを考えるとすれば、ロボット掃除機とAI搭載型スーツケースはこのヒロアカ世界で作られた物……それも特注品とかそういうのではなく、普通に売られており、誰でも買おうと思えば買えるような奴だという事か。

 勿論、ロボット掃除機にしろAI搭載型スーツケースにしろ、どちらも最高ランクの品なので、買おうと思えば相応の資金が必要となるのは間違いないが。

 そういう意味では、ちょっと珍しいかもしれないな。

 

「じゃあ、行くぞ」

 

 そう言うと、近付いてきたイザークとオウカと共に、影に沈む。

 そうして影から出ると、そこは既に俺の部屋。

 正確には部屋ではあるものの、玄関というところか。

 そんな訳で、すぐに靴を脱いで部屋に上がる。

 イザークとオウカも同じように靴を脱ぎ、俺の後を追う。

 すると、そんな音や衝撃を感じたのだろう。

 ロボット掃除機が玄関までやって来た。

 ……ロボット掃除機って、その名称通り、あくまでも掃除機でしかないのだが、いつの間にか防犯システム的な存在にもなってるよな。

 あるいは最初からそういうモードもあって、ただ単純に俺が知らないだけだったのかもしれないが。

 ともあれ、困る事はないし……敢えて困る事となると、執拗に優を敵視していて、体当たりを繰り返すといったところだが。

 まぁ、その辺については優が悪い。

 食べ散らかして、床を汚すとかしていれば、ロボット掃除機にしてみれば敵と認識してもおかしくはないだろう。

 

「じゃあ、俺は買い物に行ってくるから、イザークとオウカはそこのリビングで待っていてくれ。TVでも適当に見ているといい。……まぁ、今は多分AFOとの戦闘による臨時ニュースばかりだろうけど」

 

 全てのチャンネルを確認した訳ではないが、恐らく殆どが臨時ニュースであるのは間違いない。

 そうして他の局と同じ内容を流しているのはどうかと思うが……かといって、それを嫌って本来の番組を放映したりすれば、それはそれでけしからんとか、そういう突っ込みが入ったりすんだろうな。

 

「この2人は俺の客だ。スーツケースの方にも問題はないと知らせておいてくれ」

 

 こう言っても話が通じるのかどうか分からないが、幸いなことにロボット掃除機は俺達の前から姿を消し、スーツケースのいる方に向かう。

 

「じゃあ、そういう訳で頼んだ。冷蔵庫には飲み物とかがあるから、それを適当に飲んでいてもいいぞ」

 

 そう言い、俺は影のゲートに沈み……

 

「うわ……」

 

 影のゲートで元の場所に戻ってきた俺が見たのは、夏らしく露出の多い格好をした荒垣だった。

 先程の言い争いからすると、どうやら明日菜の方が勝ったらしい。

 

「……何だ?」

「いや、何でもない」

 

 不機嫌そうな様子で言ってくる荒垣だったが、俺はそれに対してスルーしておく。

 今のこの状況で何かを言ったら、それはそれで面倒な事になりそうな気がしたし。

 それに荒垣も、買い物に行きたいのでこの状況でも我慢しているのだ。

 もっとも、俺が見た感じではコート姿の荒垣が見慣れているから今の薄着には違和感があるが、一般的に見れば今の方がコート姿よりも普通に見える。

 ただまぁ、このヒロアカ世界なら個性の関係で夏でもコートを着ていないと駄目だという風にすれば、そこまで不審に思われたりはしないだろうけど。

 

「さて、じゃあ……買い物に向かうぞ。まずはマンションの近くに転移するから全員近付いてくれ」

 

 そう言うと、荒垣、明日菜、木乃香、桜咲の4人が俺の側にやってくる。

 すぐに影のゲートを使い、マンションの側……それでいて防犯カメラとかそういうのがない場所に転移する。

 防犯カメラだけではなく、他にも周囲に誰もいないのはしっかりと確認しての行動だ。

 

「よし。じゃあ、買い物にいくぞ。荒垣は一度行ってるから分かると思うが、結構な広さがあるから迷子にならないようにな」

「……あのね、アクセル。私達は別に子供じゃないのよ?」

 

 不満そうな様子を見せつつ言う明日菜だったが、初めて行くスーパーである以上、はぐれるといった可能性は十分にある。

 そうならないようにという注意だったんだが……まぁ、本人がこう言ってるのなら、問題はないか。

 そう思いつつ、俺はスーパーに向かうのだった。

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