「……じゃあ、行きましょうか」
ヒロアカ世界において、ヴィラン連合の拠点となるバーを襲撃し、更にはそこから続くようにしてAFOとの戦いがあり、AFOを捕らえた翌日……レモンは若干疲れた様子でそう言ってくる。
昨夜の行為の後、朝方から魔法球でゆっくりと休んできたので、体力的には問題ない筈なんだが。
そう思って俺と一緒に技術班の魔法球に向かうマリューを見ると、こちらもこちらで疲れた様子で……だが、それが寧ろ強烈な色気を発していた。
もし昨夜の一件がなければ、それこそすぐにでもどこぞの建物に連れ込んでいてもおかしくはない、そんな色気を。
普段のマリューは清楚……とは言わないが、どちらかと言えば母性を感じさせる優しげな雰囲気を出している。
……もっとも、そんな優しげな雰囲気を出しつつも、万能の天才というのは少し大袈裟かもしれないが、決して間違いではない人物だったりする。
まだシャドウミラーと関係していない時のマリューであっても、SEED世界のMSにおいて重要な要素であるPS装甲の研究をしていたり、コーディネイターの軍人を相手に白兵戦――正確には銃撃戦――をやって勝利し、更にはその美貌だ。
まさに才色兼備と呼ぶに相応しい存在なのは間違いなかった。
……もっとも、そんな才色兼備のマリューがシャドウミラーに来た結果……うん、とんでもない状況になってしまったのは間違いないんだが。
まぁ、その件はともかく、魔法球で休憩があったにも関わらず、まだ疲れているのはどうなんだ? とも思う。
それだけ昨夜は体力を消耗したのかもしれないが。
ともあれ、技術班の拠点とも呼ぶべき魔法区画に到着し、そこに設置してある魔法球の1つに入る。
オールマイトの治療にも魔法球を使ったが、あれを込みで考えても以前より魔法球が増えてるように思えるな。
まぁ、魔法球はあればあっただけ便利なのは間違いない。
であれば、ネギま世界で魔法世界にいるフェイトや、その外見から……そして何より戦いを求めている狛治とかが、入手出来る魔法球を購入しているのだろう。
そう考えれば、寧ろ魔法球の数はまだそこまで多くないという感じになりそうだが。
とにかくその件については政治班……いや、魔法球なんだし、技術班か? そっちに任せておけばいい。
さすがに魔法球を買いすぎた結果破産する事になったとか、そういう場合は口や手を出すような事もあるかもしれないが、そういうのがないのであれば、別に俺がわざわざここで何かを言ったりする必要もないだろう。
そんな訳で、魔法球に入り……技術班のいる拠点となっている場所まで向かう。
「ほら、アクセル。こっちよ。……あ、でもそうね。どうせならサプライズなんだしアクセルには驚いて欲しいから目を瞑ってくれる? 私とマリューで手を引っ張っていくから」
「え? 私も? ……まぁ、アクセルを驚かせるのなら、私も賛成するけど……」
そんな訳で、半ば強引に俺は目を瞑らされ、レモンとマリューに両手を引かれて移動する。
「一応聞いておくけど、そのサプライズってのはそこまでする必要があるのか?」
目を瞑りながら、そう2人に尋ねる。
魔法球に来たのはともかく、こうして目を瞑ってまで移動するというのは……正直なところ、本当にそこまでする必要があるのか? と思ってしまう。
「そうね。期待度という点ではそれなりに大きいと思うわよ? ただ、まぁ……今回の件は私はあまり関わっていないけど」
そうレモンが言うと、それに続けるようにマリューが口を開く。
「それは私も同じね。技術班の……私やレモン以外の面々で、具体的には立候補したうちの1人がくじ引きで当たったという感じね。ああ、安心してちょうだい。立候補してきた中でも、これは駄目って奴は最初から却下して、有望そうなプランの中から選んだ形だから」
技術班が作った何かという事は、多分新しい人型機動兵器とか、そんな感じか?
……そうなると、一体どういうのが出て来てもおかしくはないんだよな。
それこそエステバリスが出て来ても驚かない。
とはいえ、これは別にエステバリスを侮っての言葉ではない。
実際にはエステバリスは使い方さえ誤らなければかなり便利な兵器だし。
特にルリやラピスにしてみれば、遠距離操作……それこそX世界のビットMSの如く使えたりするしな。
とはいえ、俺が使うとなると……微妙だろう。
具体的には、エステバリスというのは動力源を母艦であったり、あるいは基地であったりに任せている。
そのお陰で、動力炉とかそういうのを内蔵しなくてもよく、だからこそああいう風に小型の機体になったのだが……俺の場合はかなり使いにくい兵器になる訳だ。
何しろ俺は基本的に単独で動くので、母艦とかそういうのはない事も多いし、基地については言うまでもない。
俺の戦闘スタイルに合わないんだよな。
ともあれ、技術班もそれについては考えている筈だ。
まさか本当に俺用のエステバリスを用意するとか、そういうのはないと思う。
そんな事を考えている間にも俺は目を瞑って進み……
「到着したわ。……えっと、方向はこれでいいわよね。マリュー、そっちはどう?」
「問題ないわ」
ざわざわといった感じで、多数の気配を感じる。
まぁ、それが誰の気配なのかというのは考えるまでもないだろう。
この魔法球は技術班の本拠地とも呼ぶべき場所であり、そうである以上は技術班に所属する多くの者達が集まっていてもおかしくはない。
ましてや、俺に対するサプライズで、さっき聞いた話によると、それを開発したのは技術班の中で立候補したうちの1人だって話だ。
いや、さすがに実際に1人でその何かを作った訳ではなく、他の技術班の面々やコバッタ、バッタ、メギロート、量産型Wといった労働力も使ってはいるのだろうが。
「いいわよ、アクセル。目を開けて」
レモンに促された俺が目を開けると、そこには……
「え? トールギス?」
そう、その全体像で見る限りだと、それは間違いなくトールギスだった。
ただし、装甲は赤く塗られている。
トールギスと言われれば、白ってイメージが強いんだが。
また、その特徴的な外見からトールギスと認識はしたものの、俺が知っているトールギスとは色々と違いがある。
例えば、トールギスの武器であるドーバーガンは何故か砲身が二つに折り曲がっているし、左手にはトールギスⅢの……綾子が操縦するトールギスⅢのヒートロッド内蔵型の盾があるし、腰にはドーバーガンとは別のライフルが懸架されていたりする。
そんな中でもやはり一番疑問を抱くのは、腰に懸架されているライフルだろう。
いや、トールギスもMSである以上、そういうライフルとかも普通に使おうと思えば使えるのは間違いない。
そういう意味ではトールギスがライフルを持っていても不思議ではないのだが、それでもこうしてトールギスがライフル……それも見た感じでは実弾用のライフルを持っているのを考えれば、そういうのは理解出来ないでもない。
「どう?」
俺がトールギスを一通り見たと判断したのか、レモンがそう尋ねてくる。
「いや、どうって言われても……何でトールギス? それに何かこう……全体的に違和感があるんだが」
言葉通り、これがトールギスであるのは間違いない。
だが同時に、何かこう……何らかの違和感らしきものがあるのは、間違いないのだ。
それが具体的にどのようなところから来た違和感なのかと言われると、俺にもちょっと分からないが。
だが、レモンはそんな俺の言葉に笑みを浮かべる。
「さすがアクセルね、このトールギスの違和感……特殊性に気が付くなんて」
「どういう意味だ?」
「簡単に言えば、このトールギスはトールギスだけど、アクセルの知っているトールギスじゃないのよ。具体的には、オルフェンズ世界のガンダムフレームの技術を使って作られたトールギスなの」
「それは、また……」
ガンダムフレームを使っているという事は、オルフェンズ世界の認識ではこのトールギスもガンダムの一種という事になる。
もっとも、トールギスはあくまでもトールギスであって、ガンダムには見えないが。
W世界のガンダムも色々と特殊性のあるガンダムだったが、このトールギスはどこからどう見てもガンダムには見えない。
いやまぁ、それを言うのならオルフェンズ世界で俺が使っていたグシオンだって、最初に手に入れた時はとてもではないがガンダムっぽい外見はしていなかった。
そう考えると、このトールギスがガンダムであっても納得は出来ないでもない……か?
「けど、何でトールギス?」
トールギスが悪いという訳ではないが、同時に一体何故? という疑問があるのも事実。
例えばこれが普通にガンダムと言われてイメージしやすい外見をしていたのなら、俺もすぐに納得出来ただろう。
だが、一体何故トールギスなのか。
「それは、私の趣味です!」
どどん、と。
そんな効果音が聞こえそうな感じで、技術班の1人が俺に向かって言ってくる。
「いや、趣味って……」
あまりと言えばあまりの内容……だが同時に、技術班に所属している者らしい内容に、唖然とする。
「さっきも言ったように、オルフェンズ世界から入手したガンダムフレームの技術を使ってMSを作ってみようという事になったのよ。そのうち色々な問題で却下された内容を出してきた者達以外の、問題ない面々でくじ引きをして当たったのが彼だった訳」
「……どう突っ込んでいいのやら」
レモンが却下したのが一体どのような内容の機体だったのか気にならないと言えば嘘になる。
あるいは、そうして問題ない者達の中から決めるのはともかく、なんでその方法がくじ引きなのかというのも突っ込みたい。
……まぁ、もうこうしてトールギスが出来てしまっている以上、その辺りについては俺が何を言っても意味はないだろうが。
「まぁ、突っ込むのはトールギスについての解説を聞いてからにしたらどう?」
「そうだな。じゃあ、頼む」
「はい」
レモンの言葉に頷いて男に先を促すと、男は嬉しそうに頷く。
いやまぁ、男にしてみれば自分が設計したMSをこうして作る事が出来たのだから、それに喜ぶなという方が無理なのかもしれないが。
「まず、このトールギスはガンダムフレームを使っているので、当然ながらエイハブ・リアクターを使用しています。なお、このエイハブ・リアクターはオルフェンズ世界製ではなく、シャドウミラー製で、その性能もオルフェンズ世界の物より若干上です」
「……そういえば、その辺りの技術も貰っていたな」
「ええ。オルフェンズ世界のMSはフレームとエイハブ・リアクターがあってのものですから」
その説明は俺にも納得出来るものだった。
「けど、W世界のMSとオルフェンズ世界のMSでは同じMSという種類であっても内容は大きく違うだろ?」
「ええ、その辺については色々と苦労しました。その結果が、このトールギスです。このトールギスはあくまでもアクセル代表が搭乗することを前提にしていますので、機動性は非常に高くなっています。通常のトールギスは15Gでしたが、このトールギスは最大50Gの加速が可能となっています」
馬鹿だろ、お前。
研究者の言葉にそう突っ込みたくなった俺は決して間違ってはいないだろう。
トールギスの15Gの加速ですら殺人的な加速と称されるのに、その3倍以上の加速となると……いやまぁ、魔力や気による身体強化をして、その上でISCとか使えば、シャドウミラーの実働班なら、あるいはどうにかなるかもしれないな。
最大50Gの加速であっても、自分で耐えられるGまでにしておけば、その辺は問題なかったりするのだが。
あるいはリミッターをつけておくとか。
「トールギスのスーパーバーニアを改修し、それ以外にも複数のスラスターを装着する事で、最大50Gの加速が可能になりました。勿論加速だけではなく、運動性についても十分に配慮しています」
「助かるよ」
MSの戦闘において重要なのは、機動性もそうだが運動性……分かりやすく言えば小回りだ。
だからこそ、このトールギスが機動性だけではなく運動性もきちんと考えられているのはありがたい。
もっとも、その運動性も俺が乗るのを前提としたものとなっているのは間違いないだろうが。
「ただ、装甲については……オルフェンズ世界のナノラミネートアーマーでも、W世界のガンダニュウム合金でもなく、高硬度レアアロイをそのまま使っています」
「何でだ?」
「ナノラミネートアーマーは攻撃が命中すると剥げますし、時間経過でも摩耗するので、定期的に専用の設備……そこまで本格的ではないですが、塗らないといけません。その時には相応に手順とかもありますので、アクセル代表が使うには向かないかと」
「なら、ガンダニュウム合金は?」
「そちらは……あくまでもオルフェンズ世界のMSの再現なので、高硬度レアアロイをそのままにさせて貰いました」
それはどうなんだ? と思いつつも、俺は続けて話を聞くのだった。