転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1985 / 2196
4620話

 魔法球から出た俺は、時間を確認する。

 どうやら10時を少し回ったところで、予定していた時間よりも少し遅れている。

 とはいえ、ヒロアカ世界で行われる会議については、まだ余裕がある。

 ……いや、正確には全体的な会議という意味では既に行われている筈なのだが、俺がそれに出る必要はなかったりする。

 何しろ、シャドウミラーはまだ秘密の存在だしな。

 昨日あれだけ思う存分目立っておいて、それでシャドウミラーを秘密にしておくというのは厳しい気もするが……まぁ、公安がそういう風にするって言ってるんだから、それなら俺としては公安に任せるだけだ。

 あるいはシャドウミラーの技術班が出る可能性もあるが。

 そうなると、それはそれで色々と混乱しそうでちょっと怖いんだよな。

 そんな訳で、俺は一応政治班に顔を出す。

 

「アクセル代表? どうしたのですか?」

 

 俺に真っ先に気が付いたのは、レオン。

 まさか俺がここに顔を出すとは思っていなかったのか、かなり驚いた表情を浮かべていた。

 

「いや、昨日のヒロアカ世界で行われた一件についてな。今日雄英で行われる会議に出るように言われていたけど、政治班はどうするのかと思って」

「ああ、そちらについてはアクセル代表だけで問題ありません。公安との会議には政治班から数人出席していますが」

「そうなのか?」

「はい。……というか、この件については昨日のうちにアクセル代表に報告してある筈ですが?」

 

 レオンの言葉に、そうだったか? と疑問に思う。

 思うのだが……そういえば何かそういう連絡が来ていたような気がしないでもない。

 まぁ、昨日は色々とあったから、そういう意味では仕方がなかったという事にしておこう。

 

「そうか、悪いな。なら、俺はそろそろヒロアカ世界に行くけど……ちなみに、政治班として、ヒロアカ世界はどう思う?」

「どう……というのは具体的にどのような意味ででしょうか?」

「交流する事によって、シャドウミラーに利益があるかどうかという意味でだな」

「ああ、そういう。……正直なところを言わせて貰えば、その価値は十分にあるかと。多種多様な個性という特殊能力というのは、それだけで非常に興味深いです。魔法や気を使った戦闘というのが個性に近いかもしれませんが、こちらについてはある程度までは誰でも習得出来ます。ですが、ヒロアカ世界の個性は、オンリーワンの能力ですから」

 

 レオンのその言葉は、納得出来るものがあった。

 実際、個性というのは人によって違う。

 中にはヤオモモの創造のように、シャドウミラー的に見ても非常に魅力的な個性すらも存在するのだから。

 もしかしたら……本当にもしかしたらの話だが、ヤオモモの創造があればホワイトスターのキブツでは生み出せない、その世界独自の物質すら生み出せる可能性がある。

 具体的には、ナデシコ世界のチューリップクリスタル、C.C.であったり、ギアス世界のサクラダイト、マクロス世界のフォールドクォーツといった具合に。

 他にもその世界特有の物質を持つ世界は多数ある。

 それら物質を作る事が出来る可能性を持つ個性が、ヤオモモの創造なのだ。

 ……場合によっては、ニーズヘッグの動力炉の1つとして使用されるトロニウムすら創造出来るかもしれない。

 もっとも、トロニウムは扱いが非常に難しいので、もし量産出来たとしても他の機動兵器の動力源として使うのはかなり難しかったりする。

 

「そうだな。個性の多くはどうでもいいような個性が多いけど、中には非常に希少な個性もある。そういう意味ではヒロアカ世界は非常に重要だな」

「はい。それにサポートアイテムでしたか、その中にはシャドウミラーから見ても驚くような物もあります」

「それについても同意する」

 

 I・アイランドで見た最新鋭のサポートアイテムは、どれもがかなり高性能だった。

 唯一の難点としては、あくまでもプロヒーローが使う物……つまり、生身の人間が使う為に作られており、実働班的にはPTとかにはあまり流用出来ないといったところか。

 とはいえ、ヒロアカ世界やペルソナ世界、ネギま世界のように生身で戦う為の世界は普通に存在する。

 そういう意味では、ヒロアカ世界のサポートアイテムはそれなりに魅力的だろう。

 

「なので、ヒロアカ世界と交流……というか、異世界間貿易を行うのは問題ないかと。ただ心配なのが、サポートアイテムが武器や兵器と認識された場合、異世界間貿易で使えないという事でしょうが」

「あー……それがあったな」

 

 異世界間貿易においては、兵器の類は取引出来ない事になっている。

 その唯一の例外がシャドウミラーなのだが、それは今はあまり関係ないだろう。

 とにかく、ヒロアカ世界のサポートアイテムが異世界間貿易で使えないとなると、かなり痛い。

 それこそ場合によっては、ヒロアカ世界で取引出来る物がなくなってしまう可能性もある。

 勿論、一般的な貿易品……食料であったり、資源であったり、そういうのを貿易の商品とする事も出来るだろうが、他の世界にしてみればどこででも入手出来る品である以上、どうしてもヒロアカ世界から輸入しなければならないという訳ではない。

 例えば、マブラヴ世界が以前のようにピンチの状態であったら、食料品は喉から手が出る程に欲しかっただろうが、今はもうそこまでじゃないしな。

 

「ヒロアカ世界のみ特別扱い……という訳にもいきませんしね」

「そうだな。そうなると、他の世界も自分達を特別扱いして欲しいと、そう言ってきてもおかしくはないし」

 

 現状において特別扱いされているのは、俺達シャドウミラーだけだ。

 そうである以上、ヒロアカ世界を特別扱いするというのは、致命的……とまではいかないが、色々と問題がある。

 

「武器として使えないようなサポートアイテムとか、そういうのはどうだ? 他にも俺がヒロアカ世界で住んでいる部屋で使っているロボット掃除機なんかはかなり高性能だぞ」

 

 まぁ、ロボット掃除機は優のように散らかす相手を見付けると敵と認識して体当たりするようになったりするが。

 ただ、俺が使っているロボット掃除機は最上級のグレードだから、かなり賢い訳で、グレードを下げれば散らかす相手を見付けても体当たりをしたりはしない……と思う。

 あくまでもこれは俺の予想なので、実際のところどうなのかは分からないが。

 

「なるほど、ヒロアカ世界の高い科学技術を使った一般的な家電製品ですか。それなら欲しい人は欲しいと思いますが……ただ、その場合だと保証とかそういうのはどうするんですか?」

「あー……そっちについては考えてなかったな」

 

 一般的に、家電というのは相応に高価だ。

 だからこそ、何かあった時には補償を受けられるように保証書とかそういうのが用意されている。

 店によっては、金を支払って保証期間を長くしたりとか、そういうのも出来る程だ。

 だが、当然ながら異世界間貿易で家電製品を売ったりした場合、保証書とかそういうのが大きな問題となる。

 ヒロアカ世界の家電を買ったのが、異世界間貿易について知っている者なら、あるいは何とかなるかもしれない。

 しかし、ヒロアカ世界から仕入れた者が売ったのを買った相手だったりした場合……うん、かなり厳しい事になるのは間違いない。

 

「まぁ、その辺はヒロアカ世界に任せるしかないだろうな。それでこっちを納得させる事が出来るような方法を示せば、そのまま問題なく進めてもいいだろうし、駄目なようなら家電製品の異世界間貿易の取引はなしにすればいいし」

 

 公安……あるいは公安が引き込むなり、あるいは委託するなりした企業によるとは思うが。

 

「分かりました。その方向で進めます」

 

 俺の言葉に頷くレオンだったが、考えてみれば政治班なら当然ながらこのくらいの事は思い当たっていてもおかしくはない。

 そう考えると、今回の一件は敢えてこちらに花を持たせるつもりで聞いてきたのかもしれないな。

 

「じゃあ、公安との交渉はこっちに任せる。俺はこれから雄英で昨日の一件について会議……というか、報告? そういうのをしてくるから」

「分かりました、お気を付けて」

 

 そう言い、頭を下げるレオンをその場に残し、俺はゲートに向かうのだった。

 

 

 

 

 

「……えっと、これは?」

 

 ゲートでヒロアカ世界にやって来たのだが、するとゲートの前には相澤やプレゼント・マイク、ミッドナイトの姿があった。

 相澤はいつもの無精髭がしっかりと剃られており、見慣れない外見をしている。

 いやまぁ、昨日の会見に出る以上は仕方がなかったのだろうが。

 

「来たか、アクセル。……一応、俺達はお前を迎えに来たんだ。今の世間の状況を考えると、何があるのか分からないからな」

 

 相澤の言葉にプレゼント・マイクが同意するように頷く。

 ミッドナイトの方は微妙な……何とも言えない視線を俺に向けていた。

 ん? ああ、今の俺は20代の姿だったな。

 この世界で活動するとなると、雄英の生徒の外見の方がいいか。

 パチンと指を鳴らすと、俺の身体が白炎に包まれ、次の瞬間には先程の20代の姿から10代の姿に変わっていた。

 

「……一体どんな個性なんだと、アクセルの事を知らなければそう言いたくなってもおかしくない様子なのだがな」

 

 相澤が呆れたように言う。

 ミッドナイトの方は……うん、まだ複雑な表情を浮かべているな。

 まぁ、ミッドナイトにしてみれば20代の俺は以前街中で会った時の印象が強いのだろう。

 ……とはいえ、別にそこまで印象が強かったのか? という疑問もあるが。

 何しろ以前会った時は街中で少し会話をした程度でしかない。

 であれば、その程度の事で何故そこまで強く印象に残っているのかと、そう疑問に思っても当然だろう。

 まぁ、ミッドナイトにはミッドナイトで、色々と思うところがあるのかもしれないが。

 

「そうだな。何度も言うが、混沌精霊だと思って貰えれば、それでいい。以前は個性という事にしておいたが、俺が混沌精霊であるというの今も変わらないしな」

「……つまり、お前は俺達にしてみれば、人間という個性を持っていたと、そのような感じなのか?」

「ああ、それは分かりやすいな。ともあれ、いつまでもここにいると目立つ……目立つ? まぁ、量産型Wやコバッタがいる時点で目立つか。とにかく移動しよう」

 

 そう言うと、相澤達も異論はなかったのか、俺を校舎まで案内する。

 ……とはいえ、俺にしてみればこの雄英の校舎は夏休み前まで普通に通っていた場所だ。

 わざわざ案内して貰う必要とかもないし、あるいは案内をするにしても教師が3人一緒にいる必要はない筈だ。

 それでもこうして実際に3人の教師が俺を迎えに来たという事は……

 

「ちなみに、俺がいない間に何か大きな出来事があったか?」

「昨夜の一件の件で、未だに大騒ぎだよ。マスコミの中には俺達が記者会見を行った裏でヴィラン連合の拠点を襲撃していたという事で、こちらを責める者もいるが」

「あー……それについては、昨日俺もTVで見たな」

 

 これぞマスゴミといった感じの連中。

 いや、もしかしたら本人的には自分が正しいと思っているのかもしれないが……個人的にそれはどうかと思う。

 あるいは自分の正義に酔っているのか。

 いっそ、そういう連中の私生活を24時間ずっと放送して、何か後ろ暗いところがあったら思い切り責めるとか、そういう風にしてみても面白いかもしれないな。

 そうなると、コバッタか、あるいは専用のカメラをシャドウミラーの技術班に開発して貰うか。

 

「マスゴミについては、この世界だと……いや、この世界に限らず、気にしない方がいい。この世界程酷くはないが、どの世界のマスゴミも似たようなものだし」

 

 そう言うと、相澤が微かに眉を顰める。

 

「アクセル、マスゴミという表現は止めろ。幾らそのように思えるからといって、実際にそれを口にすれば、マスコミはこれ幸いと叩いてくるぞ」

「俺がそういうのを気にする方が間違っていると思うんだが……まぁ、いい。取りあえず今はマスゴミ呼ばわりは止めておくよ」

「……いや、今だけではなく、これからもずっと止めて欲しいんだが」

 

 そう言ってくる相澤だったが、俺が知ってる限りのこのヒロアカ世界のマスゴミのやりようを見ていると、マスゴミと称したくなるのは間違いない。

 

「この世界のマスゴミ……マスコミ連中の行動を考えると、シャドウミラーの一件を公表したら、まず間違いなく知る権利を声高に叫んでホワイトスターに自分達を連れて行くように主張し、そしてホワイトスターに行けば行ったで知る権利を盾にして問題を起こす……というのは、容易に想像出来るけどな」

 

 ホワイトスターではヒロアカ世界のマスゴミの権利は役に立たない以上、いっそホワイトスターの外に……世界と世界の狭間の空間に生身で投げ出して、死ぬまでの短い時間、思う存分取材をさせてもいいかもしれないな。

 そんな風に思いながら、俺は雄英の校舎の中を進むのだった。

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