転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1987 / 2196
4622話

「取りあえずTVに映った件については、こちらでもどうにか出来るように手を打つのさ」

 

 校長がそう言う。

 実際にそのように出来るかどうかは俺には分からない。

 とはいえ、校長の様子を見る限りだと何らかの方法はあるように見えなくもない。

 

「その辺は校長に任せるけど、雄英の敷地内に設置したゲートを見つけたマスゴミがちょっかいを出してくるような事があった場合、最悪不幸な事故に遭って貰うのを忘れないでくれよ」

 

 不幸な事故。

 それが何を意味しているのかは、どうやら会議室にいる者達も容易に想像出来たらしい。

 もっとも、実際には本当の意味で命を取るとか、そういう事をするつもりは……あまりないのだが。

 あくまでもあまりであって、そうしなければならないのなら容赦も躊躇もするつもりはない。

 特にマスゴミの連中は自分達は知る権利の名の下に何をしても許されると思っている。

 それが通用しない場所もあると、教えてやるのもいいだろう。

 ……いっそ、マブラヴ世界の火星にあるBETAの巣であるハイヴに生身で置き去りにするとか、そこまでいかなくてもオルフェンズ世界で俺がトールギス・グレイルの試乗中に遭遇したゲリラの連中の拠点に放り込んだりとかしたら面白いかもしれないな。

 

「……アクセル、何か妙な事を考えてない?」

 

 龍子が微妙な表情を浮かべつつ、そう聞いてくる。

 何だかんだと、この世界に来てから一緒にいることが多かった龍子だけに、俺の様子から何か良からぬ事を考えているのを予想したのだろう。

 龍子と一緒にいる優は、その辺りに気が付いた様子は全くなかったが。

 

「いや、勇気あるマスコミの面々には、シャドウミラーの存在について公表した後は他の世界に行って貰おうかと思ってな」

「……その言葉通り、とは思えないのだけど?」

 

 龍子がジト目で尋ねてくる。

 さすがと言うべきか、俺の考えについてはしっかりと理解しているらしい。

 あるいは理解ではなく予想なのかもしれないが。

 

「いや、一応俺の言ってる事に嘘はないぞ。他の世界の様子を体験して貰うつもりだし。……例えばそれが、宇宙からやって来た侵略生物の巣の中であったり、あるいは火星が統一されて自分達の利益がなくなった者達から資金提供を受けているゲリラとの戦いの真っ只中であったりするかもしれないが」

「WAO……マジかよ。そんな世界があるのか?」

 

 プレゼント・マイクが俺の言葉に驚いた様子を見せる。

 ああ、そう言えばシャドウミラーが色々な世界とやり取りしているというのはそれなりに話したかもしれないが、どういう世界とやり取りをしているのかというのは話した事がなかったか。

 

「その辺については、政治班との交渉で色々と聞いて欲しいところだけど……現状、シャドウミラーが関係している世界の中には危険な世界、あるいは危険だったけど今は問題ないような、そんな世界もある」

 

 マブラヴ世界なんかは、その典型だろう。

 地球におけるBETAは、既にシャドウミラーとの取引に使える素材という見方をしている者もおり、楽観的な者の中にはBETAを養殖出来ないかとか言ってる者もいるらしいし。

 とはいえ、BETAの脅威を知っている者達によって即座に却下されたらしいが。

 無理もない。地球の大半を占領……というか、侵食? とにかく荒らしたBETAを、意図的に増やそうとするような事など許可出来る筈もない。

 これが例えば、BETAとの戦いが終わってから数十年くらい経った後であれば、また話は別だったかもしれない。

 しかし、今この時ではまだ無理だ。

 それに……BETAの死体を集めるという意味では、火星のハイヴで十分間に合っているしな。

 

「あのね……幾ら何でも、そんな世界に人を派遣するのは色々な意味で不味いでしょ」

 

 龍子のその言葉に、他の面々も頷く。

 いやまぁ、その気持ちも分からないではないが、だからこそマスゴミを派遣するのに丁度いいと思う。

 何度かそうした場所に派遣して、BETAに加工される様子であったり、あるいはゲリラの操縦するMSに踏み潰されたりするそんな様子をしっかりと録画して見せれば、マスゴミもシャドウミラーに関わろうとはしなくなる……と思う。

 勿論、中にはそれでも視聴率が取れるからという事で、マスゴミを派遣する上層部とかそういうのがいるかもしれないけど、それだって何度も繰り返せばいずれ問題行動として取り上げられ、失脚する事になるだろうし。

 

「こっちとしては、ヒロアカ世界からのマスゴミから要望があれば乗るとだけ言っておくよ」

 

 そう言うと、龍子は……いや、龍子だけではなく、話を聞いていた者の多くが深刻そうな表情を浮かべる。

 優ですらそういう表情を浮かべているのだから、その重要性というか、危険性は分かるだろう。

 ヒロアカ世界のマスゴミであれば、間違いなく取材を申し込んでくるだろうというのが、容易に予想出来た為だろう。

 

「マスゴミの件はこの辺りにして……俺達の正体はともかく、全般的に見て昨日の一件はどういう感じになってるんだ? 俺が見たのはあくまでも昨日のヒロアカ世界のニュースだけだったから、あれからある程度時間が経った今の状況は分からないんだが」

「……概ね好評といったところだ」

 

 相澤が俺にそう言ってくる。

 

「まぁ、AFOの件がどこまで知られているのは分からないが、オールマイトと互角以上にやり合ったヴィランとの戦いだったんだ。そう思えば、好評なのは間違いないだろうな」

 

 それに、ホワイトスターで行われた治療によって、現在のオールマイトは万全の状態だ。

 OFAこそ緑谷に譲渡したのでその辺は問題になるが、取りあえずマッスルフォームで十分に活動出来るのは大きい。

 多分……本当に多分の話だが、俺が介入していない原作においては、AFOとの戦いでオールマイトは骨と皮の状態……トゥルーフォームになり、しかもその光景が生放送で日本中に流されていた可能性が高い。

 そうなると、AFOを倒しても平和の象徴が限界だというのを知られる事になり、収支的には明らかに赤字だっただろう。

 

「とはいえ、捕らえたのはAFOだけでシラタキを始めとするヴィラン連合の者達に逃げられたのは痛いけどな」

 

 ……うん?

 何だ? 俺の言葉を聞いた途端、オールマイトの表情が微妙なものになる。

 シラタキという呼び名を不満に思ったのか?

 そうも思ったが、オールマイトの様子を見るとそれとは微妙に違うような気がする。

 

「オールマイト、どうかしたのか?」

「え? いや、何でもないよ。昨日の戦いは大変だったからね。どうしてもその件で思うところがあるのさ」

 

 俺の言葉にそう言ってくるオールマイトだが……何だか、何かを誤魔化してないか?

 オールマイトはそういう風に誤魔化すのが決して得意という訳ではないので、俺であってもオールマイトが何かを誤魔化そうとしているのがすぐに分かる。

 もっとも、だからといって俺が具体的にどうしたのかといったような事を聞いても、オールマイトが素直に話すとは思えなかったが。

 

「そうか。とにかくAFOを捕らえたのはいいとして、収容場所がタルタロスだろうと油断はしない事だ。ここにいる面々なら既に知っていると思うが、林間合宿が始まる前に行ったI・アイランドはタルタロス級の警備装置が用意されているという評判だったにも関わらず、ヴィランの侵入や襲撃を許した。それを思えば、AFOが収監されているタルタロスも決して油断が出来るような場所じゃないのは間違いない」

 

 そう言うと、会議室の中が静寂に包まれる。

 見た感じだと、タルタロスという施設に対し、多くの者がそこに収監しておけば安全だと思っていたのだろう。

 だが、実際にI・アイランドの件があった事で本当にタルタロスを信頼出来るのかと、そのように思う者がいてもおかしくはない。

 だからこそ、さっき提案したようにAFOはホワイトスターにでも収納すればいいと思うんだが。

 もっとも、その辺りについてはシャドウミラーの存在がまだ公になっていないから難しいという結論になったのだが。

 

「で、後はヴィラン連合だ。……そっちの方はどうなっているんだ?」

「え? あ、ああ。塚内君から聞いた話だと、警察が全力で捜しているらしい」

「だろうな」

 

 ヴィラン連合の後ろにAFOがいるというのを警察が知っていたのかどうかは分からない。

 あるいは知っていても、AFOと繋がっている者がいればそれを否定したり、あるいは面倒はごめんだという者もそれを否定していたりしたかもしれないが……昨夜の一件で、AFOがヴィラン連合の後ろにいたのが明らかになってしまった。

 であれば、ヴィラン連合はつまりAFOの残党……いや、シラタキが先生と呼んでいたのを考えると、生徒という事になるのだろう。

 残党……という表現は、生徒だったという事と比べると微妙に違うと思う。

 とにかくシラタキ達がAFOに繋がる者であるとはっきりした以上、警察としても知らんぷりは出来ない。

 ……もっとも、警察の中にAFOと繋がっている者がいた場合、捜索する振りをしてヴィラン連合を逃がすという手段を使ってもおかしくはないし、それに……

 

「黒霧の転移で逃げた以上、どこに逃げたのかも分からないというのが痛いな」

 

 ぶっちゃけ、ヴィラン連合の中で一番厄介なのは転移の個性を持っている黒霧だと思う。

 転移可能な距離とかそういうのも具体的に分からないので、それこそ日本ではなく外国とか、あるいはどこかの無人島とか、そういう場所に転移されてしまうと、こちらとしてもどうしようもないのだから。

 幾ら警察が虱潰しに捜していても、そもそも捜索範囲の外にいたら、どうしようもないのは間違いない。

 

「ああ、そうだな。USJの時はあくまでもUSJの内部にしか転移させなかったが、それも転移した先にヴィラン達が待ち受けていたから、そこに転移させた。そう考えると、転移が可能な距離は具体的にまだ分からないというのが正直なところだ」

 

 相澤のその言葉に、俺も同意するように頷く。

 そもそもの話、USJの一件で生徒達を殺すつもりなら、別にヴィランのいる場所に強制的に転移させるのではなおく、例えばUSJの上空500mとか、そういう場所に転移させれば、全員とは言わないが結構死ぬ者もいただろう。

 爆豪とか轟とか、瀬呂とか常闇とか、麗日とかヤオモモとか……あれ? 他にも結構上空500mから落ちても助かりそうな奴はいるな?

 だとすれば、もしかしたらUSJの上空ではなくヴィランが待ち構えている場所に転移させるというのは、意外と悪くない手段だったのかもしれないな。

 あるいはUSJの上空となると、当時USJにはいなかったオールマイトだが、驚異的な視力で落ちてくる生徒達を見つけ、助けるといった可能性も十分にあったんだろうし。

 

「黒霧か……」

「相澤?」

 

 俺の言葉を聞いた相澤は、ふと微妙な表情になる。

 先程のオールマイトもそうだったが、何だか話の途中で微妙な表情になる奴が多いな。

 いやまぁ、プロヒーローとしては色々とあるのかもしれないが。

 

「いや、何でもない。気のせいだろう。……それよりも、今回の林間合宿から始まった一件で雄英が受けたダメージは大きい。保護者の中には、自分の子供を雄英に安心して預けることが出来ないという者もいるだろう」

「まぁ……だろうな」

 

 親にしてみれば、子供を雄英に通わせているというのは、一種のステータスなのは間違いないだろう。

 何しろ日本でもトップクラスのヒーロー科を有し、300倍の倍率を潜り抜けての合格なのだから。

 だが……それでも今回の一件を思えば、USJと林間合宿と、何度もヴィラン連合に襲撃されるような状況で子供を雄英に通わせ続けられるかといった問題がある。

 また、全国から集まっている関係もあって、多くの生徒が1人暮らしをしている。

 俺や拳藤なんかを見れば、その辺りは分かりやすいだろう。

 緑谷のように自宅から雄英に通う事が出来る者は……そう多くはないのだ。

 緑谷と同じ中学出身の爆豪は、また話が別かもしれないが。

 それと毎日来るまで送り迎えされているヤオモモも例外だろうな。

 とにくそんな訳で、1人暮らしをしていればどうしてもヴィラン連合に襲撃された時、対処が難しい。

 1人か2人で襲撃してきた場合なら、対処も可能かもしれないが……複数人で襲われれば、対処は難しい。

 親にしてみれば、自分の子供がそこまで危険な状態にあるのを見逃す訳にはいかないだろう。

 中には子供を自分のステータスとしか思っていない親もいる可能性があるので、全員が確実にそうだとは断言も出来ないが。

 

「それで? どうするんだ?」

「……校長」

「構わないよ」

 

 相澤が校長に確認すると、校長は何の問題もないといった様子で返事をし……相澤は俺を見てくる。

 

「寮を作ろうと思う」

 

 そう、言うのだった。

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