転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1988 / 2196
4623話

 相澤の口から出た寮を作るという言葉は、予想外であると同時に納得も出来る。

 そもそも、雄英は全国から生徒達が集まってきているのだ。

 なのに寮は存在せず、緑谷や爆豪のように自宅から通える者、あるいはヤオモモのように車で送り迎えされている者以外は、基本的にアパートやマンションで1人暮らしだ。

 そんな環境であるのを考えれば、寮くらいは用意されていてもおかしくはない……あるいは普通だと、そう思うのだが。

 あるいはその辺りも雄英の校訓であるPlus Ultra、自分で何とかするのもヒーロー科の生徒のやるべき事だったりするのかもしれないが。

 だが、ヴィラン連合の件でそういう事も言ってられなくなってきてってところか?

 

「寮を作るって話だけど、夏休みが終わるまで、もうあまり時間がないぞ?」

「その辺は心配いらない。うちにはセメントスがいる。学生全員分の寮となればそれなりに時間は掛かるが、それでも全員分の寮を作るのは可能だ」

「……なるほど」

 

 そういえば、雄英にはセメントスがいたな。

 雄英の教師の1人、セメントス。

 その個性はヒーローネームからも分かるように、セメント……あるいはコンクリートを自由に操るというものだ。

 無から有を作り出せる訳ではないので、無人島とかそういうセメントのない場所では本領を発揮出来ないが、コンクリートジャングルと呼ぶべき都会では無類の強さを発揮する。

 実際、雄英にあるUSJを始めとした各種施設は、セメントスが作ったって話を以前聞いた事がある。

 実際にはセメントスが土台を作り、それに相応しい感じで飾りとかそういうのを作っていくのだろうが……ともあれ、セメントスがいれば建物を作るのも難しくはない。

 それだけに、相澤が言うように夏休みが終わるまでの生徒全員分の寮を作るのも本当に不可能ではないのだろう。

 

「それなら、シャドウミラーからも量産型Wやコバッタを出そうか? 作業をするにはこれ以上ない程に便利な労働力だぞ」

「いや、気持ちはありがたいが断る。寮を作る上で、雄英以外の者達も敷地内に入れる必要がある。そのような者達が量産型Wやコバッタを見たら、驚くだろう」

「そうか? 雄英ではロボがそれなり作られているんだし、量産型Wは無理でもコバッタなら問題なさそうな気がするが」

「それでも一応だ。シャドウミラーの存在について公表された時、工事に来た者達が雄英で見た事があると言ったら面倒な事になるだろう」

「それは今更の話だと思うんだが」

 

 ホワイトスターに移動出来るゲートは、雄英の敷地内に設置されているのだ。

 であれば、当然ながら雄英とシャドウミラーの間に友好的な関係があると思うのは当然だろう。

 ……まさか、雄英の敷地内にゲートが設置しているのを、雄英側で誰も気が付いていないとか、そういうことはさすがにない筈だった。

 そうなったらそうなったで、面白そうだと思わないでもなかったが。

 

「それでも、一応念の為だよ」

 

 相澤がそれでもそのように言ってくる以上、俺もこれ以上は無理は言えない。

 いや、あるいは本気で無理を通そうと思えば通せるかもしれないが、だからといってそこまでする必要があるのかと言われれば、当然ながらそれは否だ。

 雄英側でそうするというのなら、別に俺が無理にどうこうする必要もないだろう。

 

「分かった。じゃあ、俺からはこれ以上何も言わない。……けど、緑谷のように自宅から通ってる者達はともかく、俺のように1人暮らしをしている者達となると、色々と大変じゃないか?」

 

 まず未成年である以上は両親に話を通す必要がある。

 それも電話とかメールとかそういうのじゃなくて、出来れば直接会って話をする必要があるだろう。

 そうなれば、日本中に散らばっている生徒達の実家に向かう必要がある。

 例えばだが、俺と親しいねじれの場合、実家は秋田だ。

 相澤ではなく3年のヒーロー科の担任だが、ねじれを寮に入れるには秋田県まで行く必要がある。

 また、もし寮に入れるのを両親が認めても、そうなると引っ越しの料金とか、今まで住んでいた場所の敷金礼金の精算とか、そういうのもある。

 そんな諸々は……まぁ、恐らくだが雄英側でその辺りの金額は出すのかもしれないが。

 

「分かっている。その件についてはこちらでも色々と動く予定だ。……飛行機とかもあるしな。もっとも、転移の個性があれば便利なんだろうが」

 

 そう言い、俺に視線を向けてくる相澤。

 この時点で、相澤が何を言いたいのかは十分に理解出来た。

 とはいえ……

 

「俺も色々と忙しいから、手伝いは出来ないな。それとも……雄英としてシャドウミラーに借りを作ってもいいのなら、考えてもいいが?」

「……いや、何でもない。気にしないでくれ」

 

 俺の言葉を聞いた相澤は、そう断ってくる。

 相澤にしてみれば、さすがに自分の事で雄英がシャドウミラーに借りを作るといった事はとてもではないが出来ないと判断したのだろう。

 少しだけ惜しいとは思ったものの、その件で俺がどうこう考えても仕方がないか。

 

「そうか。まぁ、頑張ってくれ。……で、だ。話を変えるけど、俺達がAFOと戦っていた場所に緑谷達がいた件についてはどうするんだ?」

「それは……普通に考えれば除籍だろう」

 

 相澤らしい判断である。

 あるのだが、だからといって俺にとってそれは避けたい出来事でもあった。

 何しろ、緑谷は原作主人公なのだから、ここで除籍……退学にされては困る。

 それこそヴィラン連合が緑谷を狙う……狙う……うーん、どうなんだろうな。

 原作ではAFOが緑谷がオールマイトの後継者であると判断し、ヴィラン連合に緑谷を狙わせていたんだと思うが、今のAFOは何を思ったのか俺をオールマイトの後継者と判断してるしな。

 いやまぁ、俺が今までやって来たことを思えば、緑谷よりも俺の方がオールマイトの後継者であると認識してもおかしくはないのかもしれないけど。

 何がおかしいって、昨夜訂正しなかった事もあって、今もまだAFOは俺がオールマイトの後継者であると認識している点だよな。

 そんな訳で、緑谷がシラタキに狙われる可能性は……あ、でも林間合宿の買い物にショッピングモールに行った時、緑谷はシラタキと遭遇したんだったか。

 その時に何らかの因縁があった場合、緑谷が狙われる可能性はあるのか。

 

「出来れば除籍は止めて欲しいところだな」

「何故だ?」

「A組の生徒は、既にヴィラン連合に全員把握されていると思ってもいい」

 

 教師の中には恐らくAFOと繋がっている奴はいないが、生徒の中……A組かB組か、あるいは普通科、経営科、サポート科といったようにどこのクラスなのかは不明だが、とにかく生徒にAFOと繋がっている者がいる以上、続けてヴィラン連合にも情報を流さないとも限らない。

 

「もし除籍をした場合、ヴィラン連合が1人ずつ殺していく、あるいは連れ去っていくとか、そういう事になりかねない。それなら、生徒達は一纏めにしておいた方がいいと思うが?」

 

 そう言うと、相澤は表情を変えなかったものの、オールマイトは嬉しそうな表情を浮かべる。

 恐らくだが、オールマイトも相澤の除籍という件についてはどうにかしたかったのだろうが、どうにもできなかったのだろう。

 それを俺がどうにかしたので、オールマイト的にはそれが嬉しかったというところか。

 

「……なるほど。参考にさせて貰おう」

 

 俺の言葉にそう返す相澤。

 俺の提案が完全に通ったという訳ではないようだったが、それでも相澤の様子を見る限りだと、ある程度はどうにかなったと思ってもいいらしい。

 まぁ、ヴィラン連合には転移の個性持ちの黒霧がいる。

 除籍して別々に行動していれば、それこそ黒霧によっていいように狙われるだろう。

 それは相澤としても避けたいといったところか。

 

「結局のとこ、逃げ延びたヴィラン連合をどうにかして捕らえる必要があるって事なんだよな」

「そうね。私も知り合いに声を掛けて、それらしいヴィランを見なかったか捜してみるわ」

 

 俺の呟きを聞いた龍子が、そう言ってくる。

 龍子はプロヒーローの中でも実力派だし、その美貌から、そして何よりドラゴンに変身出来るという個性から、知り合いは多い。

 ドラゴンというのは、やっぱりそれだけ多くの者達の心を掴むのだろう。

 宗教的には、ドラゴンは悪魔であるとしていたりもするのだが。

 ……まぁ、日本は世界的に見ても珍しい宗教に関しては寛容――という表現でいいのかどうか微妙だが――な国だ。

 年始には神社でお参りをし、2月にはバレンタインを楽しみ、夏にはお盆で先祖を供養し、10月にはハロウィンを楽しみ、12月にはクリスマスを楽しむ……といった具合に。

 シャドウミラーとして色々な世界に関与してきたが、その多くの世界で日本はそんな感じだった。

 もっとも、原作的に見れば恐らく俺が行った世界の多くは日本で生み出された原作である以上、日本の扱いが同じような感じになってもおかしくはなかったが。

 これが例えば、アメリカで原作が生まれた世界とか、イギリスで原作が生まれた世界とか、そういう原作の世界ならドラゴンは悪の象徴的な存在として使われてもおかしくはなかったりするのだが。

 

「頼む。龍子なら知り合いも多いだろうから、安心出来る」

「……ちょっと? その言い方だと私に知り合いが少ないみたいじゃない。私はどこぞの露出狂と違って男以外の知り合いも多いんだけど?」

 

 ヒクリ、と。

 優の言葉を聞いたミッドナイトが、マスクの覆われていない頬をヒクつかせる。

 

「あら、それは一体誰の事を言ってるのかしら?」

「自覚がないのって大変よね。もしかして更年期障害とか?」

「……行ってくれるわね、小娘」

 

 優とミッドナイトの間で、強力な視線がぶつかり合う。

 その視線の中央辺りに火花が散ったのを見たような気がするのは、出来れば気のせいという事にしておきたい。

 というか、この2人ってもしかして仲が悪かったのか?

 今まで何度か顔を合わせた事があった筈だが、そういう感じはなかたっと思う。

 ……いや、優とミッドナイトが顔を合わせた時は、基本的にふざけているような余裕はなかった。

 だが、今は違う。

 いや、勿論本当に全く何の問題もないのかと言えばそれは否だが、しかしそれでも昨夜の件が終わった事である程度気持ち的にも、状況的にも、時間的にも余裕が出来たのは間違いない。

 だからこそ、不仲な相手とこうしてやり合えるようになった……のか?

 とはいえ、それでも優とミッドナイトの相性が悪いというのは、少し予想外だった。

 いや、でも考えればみれば相性が悪いのはそうおかしな話でもないのか?

 優にしろミッドナイトにしろ、双方共に自分の美貌を武器にしている。

 勿論、お互いに方向性そのものは大きく違うが、それでも自分の美貌を大きな武器にしているのは間違いのない事実でもある。

 であれば、こうして相性が悪いのも納得出来る事ではある……のかもしれないな。

 龍子に視線を向けると、俺の視線に気が付いた龍子は困った表情を浮かべる。

 相澤に視線を向けると、無表情で全く気にした様子がない。

 プレゼント・マイクは……と思うと、何だか面白そうな表情を浮かべていた。

 うん、これは誰も止める気はないな。

 元から相性が悪いのを知っていたのか、それとも今日初めて知ったのか……その辺りは分からないが。

 

「年齢を考えろって言ってるのよ」

「若さしか取り柄のない人はいやね」

『ぐぎぎぎぎ』

 

 俺がどうにかしようとしている間にも、優とミッドナイトのやり取りは続いていた。

 けど、優……年齢を理由にすると、ミッドナイト以外にもピクシーボブとマンダレイに聞かれたらとんでもないことになるぞ?

 ミッドナイト、ピクシーボブ、マンダレイ。

 この3人の正確な年齢は分からないものの、緑谷とのやり取りを考えると……多分似たような年齢だろう。

 ミッドナイトが、あるいはこの場にいる他の誰かが年齢の件でマウントを取った事を話したら、恐らく……いや、間違いなく詰め寄られるだろう。

 ピクシーボブが緑谷にやった、『心は18』というのを、優にもやってもおかしくはない。

 そうなると、さすがに優も何も言えなくなるだろうし。

 そういう意味では、今日この会議室にプッシーキャッツの面々がいなかったのはラッキーだったな。

 他にそれっぽいのとなると、優に先輩と慕われている龍子だが、年齢的にはまだ20代なので、取りあえず問題はないっぽいし。

 もっとも、龍子も気にしているように見えるのは……多分俺の気のせいだろう。

 ともあれ、この騒動によってこれ以上会議を続ける事は出来なくなり、話す内容についても概ね話していたので、結局そのままの流れで解散という事になる。

 

「アクセル、お前は今日どうするんだ?」

 

 相澤の言葉に、少し考え……

 

「取りあえずマンションに行くよ。夏休みが終わった後も雄英に通うかどうかは分からないが、どちらにしろ引っ越しの準備はしておいた方がいいだろうし」

 

 そう言うと、相澤は意外な程に驚きの表情を浮かべるのだった。

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