転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1994 / 2196
4629話

 取りあえずゲームセンターで遊ぶのは、ダンスゲームで終わりにした。

 ヤオモモが恥ずかしがったのだ。

 ……まぁ、うん。自分の胸が揺れている光景を多くの者に見られていたのだから、ヤオモモにしてみれば思うところがあってもおかしくはない。

 それに元々今日ゲームセンターに来た目的は、ヤオモモが抱いていた固定観念……というか、妄想? 昭和や平成初期の、不良が集まっているゲームセンターというのを、今は違うと教える為のものだった。

 そういう意味では、今回の一件はしっかりとやったので問題はないだろう。

 ヤオモモは他にも幾つかのゲームに興味を示していたが、それをやりたいのならまたゲームセンターに来ればいいし。

 今日行った場所ではなく、他のゲームセンターでもいい筈だ。

 もっとも、ヤオモモが個人でゲームセンターに行くといったことが出来るかどうかは……まぁ、今日の一件でその辺りについては問題ないと思うので、気にする必要もないだろうけど。

 

「それで、これからどうする?」

「知りません」

 

 俺の言葉にヤオモモが頬を赤くしたまま、プイッと視線を逸らす。

 どうやらダンスゲームの時に揺れる巨乳を見ていたのが不満だったらしい。

 ……いや、あれは別に俺がヤオモモの巨乳を見ていたのではなく、拳藤に言われて出来るだけ他の者達からヤオモモの巨乳が揺れる光景を見させないようにしていたのだが。

 

「ほら、機嫌を直しなって。……それにしても、暑いね。あそこでアイスでも食べない?」

 

 取りなすように言った拳藤の視線が向けられているのは、某有名アイスチェーン店。

 俺が知ってるのとは微妙に違うような気がするが……まぁ、個性による混乱期の件もあったし、そのままって訳でもないのだろう。

 

「そうだな、奢るよ」

「え? 私もいいの?」

 

 俺の言葉を聞いた拳藤が、驚きと共にそう言ってくる。

 どうやら自分の分は自分で払おうと思っていたらしい。

 

「まぁ、デートの時は男が出すものだろうし」

「デ……デートって……これって、デートだったの?」

「まぁ、男女で出掛けてるんだし、分類上はデートになるんじゃないか?」

「いや、だってデートってのは男女1人ずつでやるようなものだろ?」

「別に女が2人に男が1人でもデートでいいと思うぞ?」

 

 グループデートなんて言葉もあるくらいだし。

 ただまぁ、3人でのデートをグループデートと言っていいのかどうかは微妙なところだが。

 

「デ……デート……ですか?」

 

 そしてヤオモモの方も先程までとは違う理由で頬を赤く染めていた。

 そういうつもりはなかったのだが、このまま上手くやればさっきの一件は誤魔化せそうな感じだな。

 

「一夏の思い出としてデートをする。……ミッドナイトが好きそうな青春じゃないか?」

「……ここでミッドナイトの名前を出すのがアクセルだよね」

「ですわね」

 

 あれ、何だか拳藤もヤオモモも急に冷静になってしまったな。

 とはいえ、夏の思い出としてみれば、それこそミッドナイトならもの凄く喜んでくれそうに思うが。

 

「ほら、行くぞ。見た感じ、店の中は結構混んでるし、早く行った方がいい」

 

 暑ければ、冷たい物を食べたくなるというのはおかしな事ではない。

 ……これで気温が40℃とかもっと暑くなれば、アイスとかよりもかき氷とかそういうのが食べたくなるらしいが。

 実際、スーパーやコンビニとかで売られているアイスも、気温が高くなるとクリーム系のアイスよりもかき氷系のアイスが売れるらしい。

 で、冬になるとクリーム系……というか、ちょっとお高めのアイスとかの売り上げが伸びるとか。

 この辺は蛇足か。

 ともあれ、夏休み真っ只中の今は、アイスの人気はかなり高い訳だ。

 それを示すように、俺が言ったように店の中にはそれなに多くの客がいる。

 

「あら、そうですわね。では行きましょうか」

 

 完全に機嫌を直したという訳ではないのだろうが、ヤオモモがそう言い、アイス屋に向かう。

 こういうアイスも好きなんだけど、俺はいわゆるババヘラアイスとかも好きなんだよな。

 バナナとイチゴ味のアイスを道端で売ってる奴。

 しかも技術のある人なら、それを薔薇の形にしてくれたりもする。

 ……他にも、ソフトクリームとかは好きだな。

 勿論、こういうしっかりと店で作って売っているアイスとかも嫌いじゃないけど。

 そんな風に思いながら、俺はヤオモモと拳藤と共に店の中に入る。

 外から見た時に予想はしていたが、やはり店の中には客が結構いるな。

 

「うわ、アクセルの言う通りだ」

 

 客の多さに、拳藤が微妙な表情を浮かべつつ、そう言う。

 それでもアイスを注文して支払いを行うだけなので、行列の進み具合はそこまで遅くはない。

 結局5分程度で俺達の順番となる。

 これで何を注文するのか迷っていたり、あるいは注文をキャンセルしてまた別の味を注文するとか、そういう事をする奴がいれば、時間も掛かるのだが……幸い、そういう奴はいなかった。

 

「バニラとストロベリーとチョコのトリプルで」

 

 そう注文すると、何故か拳藤からジト目を向けられる。

 ヤオモモも俺と同じくトリプルで、拳藤は悩みに悩んだ末にダブル。

 拳藤は一体何であんな風にジト目を向けてきたんだろうな。

 そう疑問を抱きつつ、支払いを終えて店の外に出ると……

 

「うわ、暑いな」

 

 拳藤が嫌そうにそう言う。

 まぁ、無理もないか。アイス屋だけあって、店の中ではしっかりと冷房が効いていたが、店の外に出ればそうはいかない。

 あるいは駅前を屋根で覆い、壁も作って部屋のようにし、エアコン……は電気代が掛かりすぎるから難しいけど、氷系の個性を持つ人物を雇って、部屋と化した場所を全て涼しくするとか、そういう風にしてみたら面白そうなんだが……まぁ、難しいだろうな。

 実際問題、そこまで強力な個性を持っているのなら普通にプロヒーローとしてやっていける……いや、プロヒーローは副業OKなんだから、副業としてそういうのをやってもいい訳だ。

 もっとも、そこまで強力な氷系の個性を持っている者はそう簡単に見つけることは出来ないだろうが。

 いや、けどそうだな。副業OKなら、シャドウミラーについて大々的に公表したら、気になる個性を持つプロヒーローを雇って研究させて貰うというのはありかもしれない。

 勿論そうして雇う相手である以上、タルタロスから譲渡される事になるかもしれない死刑囚とは違い、倫理的に……本人の負担にならないよう、実験をする必要があるが。

 当然ながら、そうなれば研究の進み具合も遅いだろうが……まぁ、その辺は技術班の考える事か。

 そもそも個性を研究して、一体どういう研究結果が出るのかどうか、その辺もまだ詳細は分からないしな。

 最善の結果としては、量産型W……いや、それ以外の相手にも個性を与える事が出来るようになるといった感じだが、それは簡単ではない。

 けど、そう出来たらいいよなとは思う。

 もっともそうなると、それはつまりAFOと同じ事を個性ではなく技術的に出来るという事な訳で、もしそれをタルタロスの中にいるAFOが知ったらどうなるか……少し気にはなるけどな。

 気にしないか、それともブチ切れるか。

 AFOについては俺も詳しく知ってるわけではない。

 オールマイトから話を聞いたり、あるいは昨夜の一件で短い時間だが俺が直接やり取りをしたり、もくしはオールマイトとのやり取りを聞いたりといった感じか。

 そんな訳で、AFOの性格についてそこまで詳しく知らないが……それでも俺が知ってる限りだと、自分を巨悪だと、まさにこの世界の大魔王といった存在だと、そのように思っているのは間違いない。

 しかし、そんな大魔王の大魔王たる由縁……個性を奪い与えるという個性のうち、与えるという個性を科学的に出来るようになったりしたら、どうなるか。

 それこそ考えるまでもない事ではあるが、怒り狂ってもおかしくはない。

 何しろAFO……All For One、皆は1人の為にというのを自分の名前にしているような奴だ。

 個性を分け与えるというのが自分以外にも出来るとなれば……しかもそれが個性ではなく科学技術であった場合、AFOがどのように思うのかは容易に想像出来た。

 

「うーん、さすが有名チェーン店。美味いな」

 

 AFOについては取りあえず置いておくとして、街中を歩きながらアイスを食べる。

 言葉通り、有名チェーン店……それもそこそこ高級なアイスのチェーン店らしく、アイスは美味い。

 美味いのだが……

 

「あら、これは少し……食べるのを急ぎませんと」

 

 夏の日中……太陽が強烈に自己主張している時にこうしてアイスを食べながら外を歩いているのだから、早くアイスを食べないと当然ながら溶けてくる。

 アイスを舐めるようにして食べるのではなく、囓って食べるような感じだ。

 特にヤオモモは俺と同じトリプルなのもあって、早く食べないとアイスが溶けて大変な目に遭ってしまう。

 そういう意味では、ダブルにした拳藤は正解だったのかもしれないな。

 ……ジト目を向けるのは相変わらずその理由が分からなかったが。

 

「それで、次はどこに行く?」

 

 アイスの最後の1個であるバニラを食べながら、そう拳藤とヤオモモに尋ねる。

 駅前という事もあってそれなりに店は豊富だが、だからといって都会……それこそ東京の繁華街とかと比べると、どうしても店の種類も数も少ない。

 それでも雄英からそれなりに近い場所というのもあって、相応に栄えてはいるのだが。

 

「うーん……私の行きたい場所だけに行くのもどうかと思いますし、アクセルさんの行きたい場所に行ってみるのはどうです?」

「いいね、それ。私も賛成だよ」

 

 ヤオモモと拳藤の2人が俺の行きたい場所に行くという提案をし、そうなると俺も断る事は出来ない。

 とはいえ、それならどこにいくのかとなると……うーん、正直悩むな。

 いや、それなりに行ってみたいと思っていた場所は……

 

「あ、そうだ。少し前にネットでナポリタンの美味い喫茶店の情報があったんだけど、確かこの駅前だったと思う。ゲームセンターで遊んだ後だし、ちょっとお茶でもしないか?」

「……アイス食べたばかりなんだけど……まぁ、いいか。ヤオモモはどう?」

「私は賛成ですわ」

 

 ヤオモモはあっさりと拳藤の言葉に頷く。

 まぁ、ヤオモモの場合はカロリーを使って個性を使うので、そういう意味ではアイスを食べてすぐにナポリタンを食べるというのは、そう違和感はないのだろう。

 もっとも、普通なら食事をした後でデザートとしてアイスを食べるのが、完全にその逆になってしまっているが……まぁ、それはそれ、これはこれって事で。

 そんな訳で、俺達は喫茶店に向かう。

 幸い、その喫茶店は今いる場所からそこまで遠い訳ではなく、真夏の太陽の下ではあってもあっさりと到着した。

 ……もっとも、ヤオモモや拳藤は真夏の暑さにやられているが、混沌精霊の俺にとってはこの程度の暑さはどうという事もない。

 あるいはこの暑さが魔力や気によるものであったりすれば、俺にも多少なりとも影響を与えるような事があったのかもしれないが……そのようなものではないので、何の問題もない。

 そんな訳で喫茶店に無事到着したのだが……

 

「混んでるな」

 

 喫茶店の中に入り、客席の殆どが埋まっているのを見て、そう呟く。

 店の外にまで行列が出来るよう事はなかったものの、それでも店の中は満席に近い。

 ……せめてもの救いは、満席に近いのであって、幾つか空いている席があるという事なのだろうが。

 

「いらっしゃいませ、3名様ですね。席にご案内します」

 

 俺達の姿に気が付いたウェイトレスが、そう声を掛けてくる。

 そうして案内された席は、喫茶店の中でも奥まった場所にあるテーブル席だ。

 氷水がそれぞれの前に置かれると、メニューが決まったらお呼びくださいと一礼し、ウェイトレスは立ち去る。

 ウェイトレスとウェイターが合計3人。

 しかし、客の数に対して人数が足りていないらしく、かなり忙しく周囲を歩き回っている。

 

「忙しそうですねわね」

「そうだね。……アクセル、こんなに混んでいたのは予想出来たのかい?」

「いや、分からなかった。俺もネットでここのナポリタンが美味いって情報を見ただけだしな」

「じゃあ、アクセルと同じ情報を見て、こうして客が大勢きたのかね?」

「どうだろうな。ともあれ、こうして混んでいるって事は早く食べて出た方がいいだろ」

 

 そう言うと、ヤオモモと拳藤がそれぞれ頷く。

 そうして左側の俺とヤオモモはナポリタンを、そして拳藤はフルーツティーを頼む。

 見た感じ、他の客もナポリタンを食べている者が多く、そういう意味ではやはりそれが目当ての者達だったのだろう。

 なので、素早く……それでいて味わいながらナポリタンを食べる。

 少しだけ残念だったのは、テイクアウトは出来なかった事だろう。

 ……まぁ、テイクアウト出来るのなら、ここまで混んではいないか。

 そんな訳でナポリタンを食べ、支払いを終わらせ……暑い日差しから隠れるように建物の隙間でこれからどうするのかと相談していると……

 

「助けて!」

 

 建物の隙間の奥から姿を現した子供……というか、少女? 幼女? が俺達を見て、そう叫ぶのだった。

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