転生とらぶる2   作:青竹(移住)

1998 / 2196
4633話

 俺が公安からどのような依頼を受けて雄英のヒーロー科に入学したのかについては、結局それ以上話が続けられる事はなかった。

 代わりに話題になったのが……

 

「なぁ、アクセル。もしかしてこのマンションの部屋に住んでるのって……」

 

 拳藤がふと気が付いたように俺に聞いてくる。

 ヤオモモの方は、特にそれに対して何かを言うような事はなかったが……まぁ、うん。ヤオモモの家の屋敷を思えば、このマンションの部屋も小さいよな。

 あるいは1つの階層を全て借りる……あるいは買い取り、全ての壁をぶち抜いて部屋にしているとか、そういう事でもあればヤオモモも驚いたかもしれないが。

 そんな風に思いつつ、俺は拳藤に頷く。

 

「そうだ。この部屋の家賃は勿論、生活費とかも全て公安持ちだ」

「うわぁ……それはこんないい部屋に住める筈だよな」

 

 少しだけ羨ましそうな様子で拳藤が言う。

 拳藤が住んでいるのは、マンションではなくアパートだし、部屋もそこまで広くないらしいしな。

 とはいえ、雄英に通う生徒の部屋としては、拳藤のアパートの方が一般的だろう。

 

「それよりも、その……少し気になっていたのですが……アクセルさんは国の代表と先程仰ってましたよね? それはつまり、文字通りの意味で国の代表なのでしょうか?」

 

 話題を変えようという訳でもないのだろうが、気になった様子でヤオモモがそう尋ねてくる。

 ここまで話した以上、別に隠す必要もないので、素直に頷く。

 

「そうだな。首相や大統領とか、そんな風な立場なのは間違いない。正確な名称は今のところまだ決まってないけど」

 

 何だかんだと、代表という名称が分かりやすいし使い慣れているものの、それだと分かりにくいのも事実だ。

 そんな諸々について考えれば、やはり何か決まった名称を考えた方がいいと思うんだが……こう、ピンとくるものがないんだよな。

 

「その……何故そのような方が、未知の世界に行くなどという事をするのですか?」

「そうだよ、ヤオモモの言う通りだ。アクセルが国を率いる立場なら、普通に考えて何が起こるか分からないような他の世界に行くなんて、到底考えられないぞ。さっき話したように、それこそ地球と宇宙が戦争をしていたり、宇宙生物が地球に侵略してきているとか、そういう世界に一体何だってアクセルが行くんだよ!」

「あー……やっぱりその辺は気に掛かるか」

 

 この話題については、俺について……そしてシャドウミラーについて知れば、当然だが気になるものだ。

 

「確かにヤオモモや拳藤の言いたい事も分かる。国のトップがどういう場所なのかも分からないような、未知の世界に行くんだし」

「そうだよ。それに、国を率いるのなら仕事だってあるだろ?」

 

 拳藤のその言葉になるほどと頷く。

 実際、拳藤のその言葉は決して間違いという訳ではない。

 ……あくまでも普通に考えればの話だが。

 

「その辺は問題ない。俺が国のトップなのは間違いないが、実際に国を動かしているのは政治班という、政治を任されている者達だし。俺は国のトップではあるけど、それは一種の象徴的な存在なんだよな」

「……いや、けどそれ……象徴だったら象徴だったで、余計にアクセルに何かあった時は危なくないか?」

 

 国の象徴が未知の世界に行った結果、死ぬなりなんなりしていなくなる。

 そういう可能性は決して否定は出来ないが……

 

「話は変わるけど、俺の個性……正確には公安に頼んで個性という事にして貰ったんだが、とにかくその個性という事になっている混沌精霊ってのがあるだろ?」

「え? はぁ……何だよ、いきなり」

「それは……分かりますけど、何ですの?」

 

 突然変わった話に、拳藤とヤオモモはこちらに顔を向けてくる。

 それでも話を遮ったりしないのは、俺との会話をしっかりと聞いておおかないといけないと思っているからか。

 

「この混沌精霊というの、今も言ったが公安に個性という事にしておいて貰っているが、実際には俺の個性じゃない。種族だ」

「……え?」

「はい?」

 

 俺の言葉の意味が分からない様子で、拳藤とヤオモモがそれぞれ呟く。

 まぁ、無理もないか。

 このヒロアカ世界には異形系という個性の持ち主達がいる。

 A組で分かりやすい例だと、常闇だったり障子だったり、口田だったり、梅雨ちゃんだったり、峰田なんかもそうだろう。

 だが、そういう異形系の個性の持ち主はいても、そのような者達も種族という事になれば、当然ながら人間なのだ。

 だというのに、俺は人間ではなく混沌精霊という人外の種族だと言ったのだから、拳藤にしろヤオモモにしろ、それに驚くなという方が無理だった。

 

「えっと……アクセル、人間じゃないの?」

「今はそうだな」

 

 恐る恐るといった様子で尋ねてくる拳藤の言葉に、俺はあっさりと頷く。

 それを見た拳藤は……そしてヤオモモは信じられないといった様子で俺に視線を向けてくる。

 しかし、ふとヤオモモが何かに気が付いたかのように口を開く。

 

「その、アクセルさん。今は人間ではないと言いましたが、それはどういう事なのでしょう? それだと、最初はアクセルさんが人間だったように思えるのですが」

「正解だ。まぁ……そうだな、簡単に言えば魔法の存在する世界に行った時、闇の魔法という魔法を習得したんだが、その結果暴走して……色々とあってその暴走も何とか収まったんだが、その時には既に俺は人間じゃなくて混沌精霊という種族になっていた訳だ」

「……何でそんなにあっさりと言えるんだい?」

 

 拳藤が理解出来ないといった様子で俺にそう言ってくる。

 拳藤にしてみれば、俺が人であることを止めるのが呆気なさすぎると、そのように思ったのだろう。

 とはいえ、俺の場合はいわゆる神様転生だったので、産まれた時点で普通じゃなかったしな。

 それからもスライムとかを使って、色々と吸収したりしたし。

 それに俺の生きてきた世界を思えば、人じゃない程度の事は特に問題にならない。

 ……まぁ、これで混沌精霊になってマイナス要因だけあれば、混沌精霊になった事を嘆いたりもしたのかもしれないが、幸か不幸か俺の場合は混沌精霊になってプラス要因の方が多い。

 権力者にとっての最大の夢である不老不死だって、不死はともかく不老になったしな。

 それに外見についても、人の姿のままだったり、あるいは人の姿でも年齢を自由に変えたりとか、そういう風に出来るようになったのも大きい。

 また、俺が不老になったとしても、俺以外の者達が先に年を取って死んで行くといったような事になれば思うところもあるが、時の指輪だったり、その受信機だったりでお手軽に不老になれるようになったのも大きいだろう。

 そういう意味で、俺は混沌精霊になった事を後悔はしていない。

 ……そもそも闇の魔法が暴走した時に混沌精霊になっていなければ……あ、いや、それでも結局混沌精霊にはなっていたのか。

 ただし、自我を取り戻すまで一体どれくらいの時間が掛かったのかは分からないが。

 そういう意味では、あの時俺と一緒にいて、半ば強引に……力ずくであっても自我を取り戻させてくれたあやか、千鶴、美砂、円の4人は感謝だな。

 

「とにかく、俺は混沌精霊という人とは違う存在になった。そのお陰で、魔力や気を使った攻撃とかならともかく、物理攻撃の場合は……それこそ核ミサイルの着弾点にいても全く問題ない。そういう訳で、未知の世界に行くのはシャドウミラーの中で俺が一番都合がいいんだよ」

 

 もっとも、それはつまり魔力や気の存在を把握している世界においては、普通にダメージを受けるということを意味してもいるのだが。

 そういう意味では、このヒロアカ世界は俺にとってある意味で天敵のような世界だろう。

 魔力や気ではないものの、個性によっては俺にダメージを与える事が出来るのだし。

 もっとも、個性によっては……あるいは個性の習熟度によっては俺にダメージを与えたりする事が出来ないが。

 具体的には、体育祭の時の心操は俺を操ろうとした事があったものの、その時は俺に効果はなかった。

 その辺、具体的にどうなっているのかは、まだ俺にも正確には分からないが……ともあれ、この世界の個性には俺にダメージを与えられる個性もあるという事になる。

 ただ、それはあくまでも個性を使った攻撃を俺に命中させればダメージを与えられるというだけで、それはつまり俺に攻撃を命中させることが出来なければ、意味はないという事を意味してもいた。

 そして、俺は昨夜このヒロアカ世界のラスボスとも呼ぶべきAFOと戦ったが、1発も有効打を受けなかった。

 勿論、AFOと戦ったのは俺だけではなく、イザーク達もいるし、オールマイトやエンデヴァーといった面々もいた。

 そういう意味では、俺だけの実力で勝ったとは言えないが……それでも、1発も攻撃を受けなかったのは事実なのだ。

 

「とにかく、そんな訳で俺が1人で未知の世界に行っている理由については分かって貰えたと思うが」

「……理解はしたけど納得出来ないって感じかな」

「あら、私は納得したけど理解出来ない方ですが」

 

 拳藤とヤオモモがそれぞれに言ってるが、それって具体的にどう違うんだ?

 そう思ったが、ここでその辺について聞いても、それはそれで面倒な事になりそうだったので止めておく。

 

「とにかくそんな訳で、国のトップの俺が未知の世界に来たというのは納得出来たと思う」

 

 話を強引に戻す。

 すると、ヤオモモと拳藤はそれぞれ特に異論はないといった様子で頷いた。

 この辺りの判断力は、俺から見ても素直に凄いと思うし、この状況で下手に色々と言われないのは助かった。

 ……もっとも、この様子からすると全ての話しが終わった後で色々と言われそうな気はするが。

 その辺は取りあえず今は置いておくとして。

 

「とにかく異世界になら、壊理をそっちに連れて行っても問題がないというのは理解出来るだろう?」

「……そうですね。アクセルさんの言いたい事、やりたい事は分かります。ですが、こう言っては何ですが、この世界……ヒロアカ世界とアクセルさんは呼んでましたが、そこから壊理ちゃんを匿う為とはいえ、勝手に連れて行ったら問題になりませんか?」

「ヤオモモが言うように、問題になるかどうかと言われれば、問題になるだろうな。だから、勿論連れては行くが、無断でじゃなくて……そうだな、相澤辺りに話を通す」

 

 一応俺の担任という事になっているし、何かあれば除籍させようとするという意味でも厳しい教師なのは間違いない。

 だが同時に、生徒思いの教師であるのも間違いはないのだ。

 であれば、ここで話を通す相手として相澤を選ぶのは間違っていないだろう。

 もっとも、もし相澤で駄目ならオールマイト……はプロヒーローとしてはともかく、教師としては新米なので無理か。

 そうなると、校長か……あるいは公安の目良に連絡をしてもいい。

 後でどうとでもなるので、そういう意味ではまず最初に相澤に話を持っていくというのは決して間違ってはいない筈だった。

 

「それなら……」

「仕方がないか」

 

 相澤に話を通すと言うと、ヤオモモと拳藤はそれぞれ納得した様子を見せる。

 本当に完全に納得したのかと言えば、正直なところそれは微妙なところだったりするのだが……それでもやはり、何も言わないで壊理をホワイトスターに連れていくよりは、そっちの方がマシと判断したのだろう。

 ……とはいえ、問題なのは相澤が捕まるかどうかだな。

 何しろ昨日の今日だ。

 それに相澤はA組の担任として、生徒達を寮に引っ越しさせる為に生徒の両親とも直接話す必要がある。

 だからこそ、相澤に話があるとしても、そう簡単に捕まるとは限らない。

 とはいえ、だからといって無断で壊理をホワイトスターに連れていく事は……まぁ、やればやったで問題ないかもしれないが、ヤオモモや拳藤がそれを知っているとなると、やはり話を通しておく必要があるのは間違いない。

 もし相澤が捕まらなかったら、その時は校長や目良に連絡をすればいいだろう。

 目良はともかく、校長は生徒思い、子供思いであるのは間違いなので、話を通そうと思えば問題はないだろう。

 そう考えると、最初から相澤ではなく校長に話を通した方がいいような気もするけど……まぁ、どちらにせよ雄英に行かなければならないのは間違いないけど。

 

「壊理をホワイトスターに連れていくにしろ、多少なりとも顔見知りがいた方がいいのは間違いない。どうせなら、お前達も来るか? 異世界に……正確には世界と世界の狭間に存在するホワイトスターに」

『え?』

 

 ヤオモモと拳藤が、揃って意表を突かれたかのような声を上げる。

 まさか、自分達も異世界に……ホワイトスターに行けるとは、思っていなかったらしい。

 

「もうオールマイトや校長もホワイトスターに来てるんだから、別にヒロアカ世界で初めてって訳じゃないと思うけど……どうだ?」

 

 そう尋ねる俺の言葉に、ヤオモモと拳藤は揃って頷くのだった。

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