転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4635話

 雄英の校舎……その中でも職員室のある校舎を歩いていると、壊理は周囲の様子を見ている。

 興味深そう……なのかどうかは、ちょっと分からないが。

 表情が変わったりしていないし。

 その為、珍しいと思っているのかどうかは分からない。

 壊理の年齢が具体的にどのくらいなのかは、俺にも分からない。

 だが……あくまでも見た感じだが、小学生になるかどうかといった感じのように思える。

 だとすれば、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、学校に通っていた可能性もある。

 あるいは壊理に暴力を振るっていたヴィランによって、学校に通わせて貰えなかったのか。

 小学校というのは義務教育である以上、当然ながら子供は本来なら学校に通う必要がある。

 しかし、ヴィランであれば、義務教育? 何それ美味しいの? といったような認識でもおかしくはない。

 であれば、やっぱりまだ壊理は小学校に通っていない……そんな可能性も否定は出来ない。

 まぁ、実際にはまだ小学校に通う前だという可能性も否定は出来ないんだけどな。

 

「ほら、壊理ちゃん。あそこにある表彰状……あれは、この雄英の生徒達の頑張りによるものなのですよ?」

「……ひょうしょうじょう?」

 

 ヤオモモが廊下に張られた表彰状や賞状について壊理に言う。

 だが、当然ながら壊理には表彰状も賞状もその意味は分からないらしく、首を傾げるだけだ。

 壊理にしてみれば、あの紙がなんだろう? といった様子なのだろう。

 

「ええ、あれはこの雄英の生徒が素晴らしい行いをしたという証ですのよ」

「……?」

 

 ヤオモモの言葉の意味が理解出来ない様子で、壊理は小首を傾げる。

 そんな壊理の様子に、ヤオモモは笑みを浮かべる。

 自分の言葉の意味を理解出来て貰えなかったのには色々と思うところがあるのだろうが、それでも壊理の愛らしさについてはしっかりと理解出来たといったところか。

 そんな風に話をしながら廊下を進んでいると、やがて正面からプレゼント・マイクがやって来るのが見えた。

 

「おう、リスナー達。一体夏休みに学校に何の用だ? 知ってると思うが、今は……というか、今日は色々と忙しいんだぜ」

 

 プレゼント・マイクはそう言いながら最初は俺に視線を向けてくる。

 俺の正体について知っているプレゼント・マイクだけに、今の雄英はもの凄く忙しいのを知っているのに、一体何をしに来た? といったところか。

 ただ、すぐにプレゼント・マイクの視線は俺からヤオモモの側にいる壊理に向けられる。

 

「一体、そのリトルガールは何なんだ?」

 

 リトルガールって……

 プレゼント・マイクのその言葉に若干呆れたが、まぁ、プレゼント・マイクらしいと言えばらしいのは間違いない。

 

「ちょっとこの子供の事で相澤に相談があるんだけど、相澤は今空いてるか?」

「……ちょっと待ってろ。おーい、イレイザー。生徒が来てるぞ。お前に用事があるらしい!」

 

 プレゼント・マイクらしい、大きな声で、離れた場所にある職員室に向かって呼び掛ける。

 ここから声を掛けるよりも、直接職員室に行った方がいいと思うんだが。

 まぁ、プレゼント・マイクがこっちの事を思ってこうして行動してくれたのだから、不満に思うのが間違っているのかもしれないが。

 そして数秒が経過し……

 

「ああ? 何だ?」

 

 職員室から、相澤が姿を現す。

 相変わらず、プロヒーローとは思えないようなくたびれた姿だな。

 もっとも、昨日の記者会見の為に伸び放題だった無精髭を剃ったので……いや、それでも昨日なので、今はもう少し髭が生えているな。

 そんな髭の生えた相澤は、俺を……というか、俺とヤオモモ、拳藤、そして最後に壊理を見ると、何かを察したのか口を開く。

 

「どうやらあまり人に聞かれたくない話をする必要があるな、こっちだ」

 

 クイッと顎を動かし、その仕草で自分についてくるように相澤が示す。

 これが全く知らない相手なら、あるいは俺も少しは警戒したかもしれない。

 だが、相澤はその外見とは裏腹に頼りになる教師であるというのを、俺は知っている。

 ……まぁ、ちょっとした事で除籍させようとするとか、そういう意味では危険だったりするが。

 ともあれそんな訳で、俺は相澤を追おうとする。

 するのだが……

 

「壊理?」

 

 不意に壊理が俺の手を掴む。

 勿論、俺がその気になればこのまま壊理を強引に連れていく事も出来るのだが、壊理の件について相談するのに、その壊理を強引に……無理矢理連れていくというのは論外だろう。

 それこそ壊理が怖がってしまえば、わざわざここまで壊理を連れてきた意味がない。

 

「安心しろ、壊理。あの人は相澤といって……その、外見はちょっとアレだが、プロヒーローだ」

「プロ……ヒーロー……」

 

 首を傾げる壊理。

 まぁ……こう言ってはなんだけど、壊理にとってプロヒーローというのはそこまで特別な存在ではないんだろうな。

 もしプロヒーローがいたら、壊理を痛めつけていたヴィランから助け出していただろう。

 それこそオールマイトがいれば、その辺りはもっとしっかりと理解出来た筈だ。

 しかし、壊理の様子を見る限りではプロヒーローが壊理を助けるといったような事はなかった。

 だからこそ、壊理にとってプロヒーローというのはどのような存在なのか分からないのだろう。

 

「取りあえず、外見からは想像出来ないくらい、信じられる相手だと思っておけばいい」

「……うん、分かった」

 

 俺の言葉に納得したのか、壊理は俺と手を繋いだまま相澤を追う。

 そんな相澤の側では、ヤオモモと拳藤が羨ましそうに俺を見ており、相澤はあまり表情には出さないようにしていたものの、不満そうな様子を見せている。

 いや……ヤオモモと拳藤はともかく、相澤は自分が疑わしいように見えなくする為なら、もっとだらしなくない格好をすればいいものを。

 ヒーロー科の生徒なら、相澤は教師として信頼出来る相手だというのは理解している。

 しかし、それはあくまでも1学期であったり、B組にしてみれば林間合宿で接する機会が多かったからだ。

 初めて会った者に対して、相澤を信用しろという方が無理だろう。

 人というのは外見が全てではないが、初めて会う相手の第一印象というのは思いの外大きな意味を持つ。

 そういう意味では、壊理にとって相澤は素直に信用出来る相手ではなかったのだろう。

 ともあれ、それでも俺やヤオモモ、拳藤がいるという事で安心し、相澤の案内する会議室に向かう。

 今日雄英で会議をしたのとは違う、少し小さめの会議室だ。

 まぁ、今回は人数が少ないので、このくらいの会議室でも問題はないんだだ。

 その会議室に入り、机を動かし、向かい合うように座る。

 俺の隣には壊理、正面には相澤、そして右にはヤオモモ、左には拳藤といった形だ。

 円卓……と呼ぶには角張っているが。

 

「さて、それで一体何があった?」

 

 まず最初に相澤がそう聞いてくる。

 俺に視線を向けている相澤は、壊理を怖がらせないようにする為だろう。基本的に壊理の方に視線を向けてはいない。

 もっとも、それでも何度か壊理をチラ見してはいたが。

 今回俺達が雄英に来た理由が壊理に関する事だと理解しているからこその行動だろう。

 

「簡単に言えば、この壊理がヴィランから逃げ出してきたのを保護した」

「それは……なら、そのまま警察なり、プロヒーローなりに会いに行けばいいだろう?」

「相澤の言いたい事も分かるが、どうやら話を聞く限りだと、そのヴィランは壊理の保護者か何かのようでな。そうなると、何か決定的な証拠でもない限り、警察やプロヒーローに連れていっても、そのヴィランがやって来れば、法律的に引き渡さない訳にはいかないだろう?」

 

 そう言うと相澤は黙り込み、じっと壊理を見る。

 相澤の視線にビクリとして壊理だったが、俺の服をしっかりと掴むと、相澤の視線に耐える。

 ……もっとも、別に相澤は視線に力を込めて、いわゆる睨み付けるとか、そういう事をした訳ではない。

 あくまでも壊理の様子をじっくりと観察したのだ。

 

「怪我は……ないようだな」

「まぁ、そうだな。それが俺が壊理を雄英に連れてきた大きな理由だ」

 

 もしこれで壊理の身体に見て分かるような傷でもあれば、ヴィランが壊理に暴力を振るっているというのがすぐに分かっただろう。

 だが、壊理の外見には特に怪我の類はない。

 あるいは外からは見えない場所……例えば腹とか背中とかそういう場所に怪我があるのかとも思ったが、ヤオモモや拳藤が軽く調べた限りではそういうのはなかったらしい。

 つまり……外見だけで判断すれば、壊理はヴィランに暴力を振るわれているようには思えない。

 であれば、警察やプロヒーロー、あるいは児童相談所のような組織に壊理を渡しても、保護者がやってくれば壊理を引き渡さない訳にはいかなくなる。

 

「そうだな。この様子を見るとアクセルの言った通りだろう」

「それに……壊理から聞いた話だと……」

「アクセルさん、私が壊理ちゃんの面倒を見たいと思うのですが、構いませんか? 今このままだと、壊理ちゃんも難しい話で退屈でしょうし」

 

 俺が言葉の最後まで言うよりも前に、ヤオモモがそう割り込む。

 何だ? と思ったが……なるほど、これからの話は壊理本人には聞かせない方がいいか。

 

「分かった。じゃあ、頼む」

「私も一緒に行くよ。この場はアクセルに任せた方がいいだろうしね」

 

 拳藤もそう言い、壊理を連れて会議室の端に……俺と相澤の話が聞こえない訳ではないが、何かに夢中になっていれば耳に入るようなことがない場所まで移動する。

 とはいえ、ここは会議室だ。

 何か壊理が遊べるような物はなく……ヤオモモが個性で何らかの人形を作って壊理に渡している。

 最初、壊理はその人形を不思議そうに見ていた、やがてしっかりと人形に触り始めた。

 そんな様子を見つつ、俺は相澤に言う。

 

「壊理からしっかりと聞いた訳じゃないんだが、どうやら壊理の保護者……というか、壊理に暴力を振るっていたヴィランは、今日何らかの取引があるとかで、俺のマンションのある場所にやって来たらしい」

「取引だと?」

「ああ、そうだ。その取引という言葉を聞いただけで、何かあると……そうは思わないか? しかも、俺の住んでいる場所、つまり雄英からそう離れていないような場所で、わざわざ取引をするくらいだ。それなりのヴィランだと思う」

 

 ……ヴィランの取引だと思っていたが、実際には何の違法性もない、普通の商取引といった可能性もないではないが……壊理の様子からすると、ヴィランに対してかなりの恐怖心を抱いている。

 それこそ、半ばトラウマになるかのような、そんな恐怖心を。

 そんな相手である以上、ヴィランではないとは思えない。

 あるいは、本当にあるいはの話だが、父親が教育に非常に厳しくて、それで壊理がトラウマを抱えている可能性もある。

 実際、轟がエンデヴァーに受けていた教育は非常に厳しいものだったらしいし。

 それを考えると、可能性は低いがそれでもゼロではないと思う。

 

「それで、アクセルはそのヴィランからあの子を匿った訳か」

「そうなるな。壊理のような小さい子が助けてと言ってきたんだ。それで助けないのは、ヒーロー科の生徒としてどうかと思うしな」

 

 そう言うと相澤は微妙な表情で俺を見る。

 俺の正体を知っている相澤にしてれみば、説得力がないのだろう。

 

「だが、アクセルの言う事が事実である場合、もしあの子の保護者が……例えアクセルがヴィランだと思っていても、それが証明出来なければどうにも出来ないぞ」

「だろうな。このヒロアカ世界の法律とかルールとかそういうのを見れば、相澤の言ってる事は分かる。……まぁ、それなら正直その辺の法律を改正しろよと思わないでもないけど」

 

 そう言うと、俺の言葉に相澤は黙り込む。

 このヒロアカ世界で実際にプロヒーローとして活動している相澤だけに、この世界の……あるいはヒロアカ世界の法律について、思うところがあるのだろう。

 とはいえ、実際壊理の件を見れば分かるように、本当に助けを求めている人物がいても、法律でそれを助ける事が出来ないからといって助ける事が出来ないのなら、それはプロヒーローとしての意味があるのか? と思わないでもない。

 もっとも、それが本当の意味でのプロヒーローではなく、仕事としてのプロヒーロー……警備員的な仕事であると考え、その通りにしている……つまり、ステインが言っていた偽物のプロヒーローであれば、そうして唯々諾々とヴィランからの要望に従って、被害を受けている人物を助けないというのも分かるが。

 相澤は生徒思いの教師ではあるが、プロヒーローとしてはどうなんだろうな。

 そう思いつつ、俺は言葉を続ける。

 

「だから、このヒロアカ世界の法律が届かない場所……ホワイトスターに壊理を一時的に避難させようと思う」

 

 俺は相澤に向かってそう告げるのだった。

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