転生とらぶる2   作:青竹(移住)

2005 / 2196
4640話

「では、さらばだ!」

 

 ガエリオがそう言うと、ワイバーンが羽ばたきながら空に向かう。

 

「いっちゃった」

 

 そんなガエリオを……というか、ワイバーンを残念そうに眺める壊理。

 というか……今更、本当に今更の話なんだが、交流区画にワイバーンで直接下りてくるというのは、問題行動にならないのだろうか。

 いやまぁ、オルフェンズ世界で俺が今日トールギス・グレイルで戦ったゲリラに対しての情報を教える為にやって来たと思えば、その辺は実は問題なかったりするのかもしれないが。

 まぁ、その辺は政治班とかに任せておこう。

 

「さて、これからどうする? ……いつまでもここにいる事は出来ないだろうし」

 

 ガエリオの乗ったワイバーンがいなくなった事で、それと話していた俺達は当然ながら目立っている。

 中には俺とガエリオの、あるいはヤオモモや拳藤が俺に声を掛けた事から、俺の正体について理解している者もいるだろう。

 そんな諸々について考えると、いつまでも交流区画にいるのは不味い。

 ……いやまぁ、実際にはそれだけでどうこうといった事はなかったりするのだが、それでも場合によっては面倒が起きる可能性は否定出来ない。

 

「どこと言われても……私達はこのホワイトスターには詳しくないんだけど」

 

 拳藤の言葉にだろうなと思う。

 そうなると、現在ホワイトスターで観光名所的な存在となると……例えば、門世界のモンスターとの剥製は骨格標本とかある博物館とか、魔力泉のスパとか、エルフ達が住んでいる公園とか、あるいは先程のガエリオの繋がりから牧場に行くのもありだな。

 他にも色々と見て面白い場所はあるが、大雑把にはこんなところか。

 あ、腹が減っているのなら超包子なんて手もあるな。

 

「そんな訳で、どこに行きたい?」

 

 俺が思いつく限りのホワイトスターの観光名所を挙げると……

 

「ぼくじょうにいきたい」

 

 壊理がそう言う。

 どうやらさっきのワイバーンを触った感触がそれだけ楽しかったのかもしれないな。

 

「という事だけど、2人はどうだ?」

「それは……私も興味はありますが、本当に大丈夫ですの?」

 

 ヤオモモは賛成。……若干の疑問はある様子だったが。

 

「私はいいと思うよ。壊理ちゃんが行きたいって言ってるんだし」

 

 そして拳藤は全面的な賛成か。

 これはちょっと意外だった。

 あるいは何だかんだと、拳藤もワイバーンとかに興味を持っているのかもしれないな。

 

「なら、反対はいないという事で、牧場に行くぞ」

 

 そうして歩き出すと、ヤオモモ達もついてくる。

 ただ、先程と違ってヤオモモ、壊理、拳藤といった並びで手を繋いだりはしていない。

 まぁ、別にどうしても手を繋がないといけないとか、そういう事はないのだが。

 

「ねぇ、アクセルさん。牧場というのはどういうところですの? 先程のワイバーンのような、私達の世界では幻想の生物として知られている動物がたくさんいるとか?」

「いや、そこまでじゃない。ワイバーンがいる以外は普通の牧場だよ。牛、馬、羊、山羊、鶏、ウサギ……他にも一般的な動物がいる牧場だ。ワイバーンだけが特別なんだ」

 

 これでゾウとライオンとかがいれば……そうなると、牧場じゃなくて動物園になるか。

 

「後は、牧場で作ったハムとかソーセージとか、あるいは牛乳とか、それを使った乳製品やソフトクリームなんかも売ってるな」

 

 この売店が牧場の中でも最大の売り上げを誇っている場所だったりする。

 実際、あの牧場で売っている肉の加工品だったり、もしくは加工品ではなく普通に肉売り場もあったりするし。

 もっとも、ちょっとお高めだったりはするのだが。

 ただ、値段分の価値があるのは間違いないと思う。

 

「何だ、アクセルの事だから、てっきりもっとこう……特殊な牧場かもしれないと思ってたんだけどな」

「拳藤が何を言いたいのか分かるけど……さっきのガエリオを見れば分かるように、ワイバーンに乗ったり出来る時点で普通じゃないと思うんだがな」

「それはそう」

 

 ちなみに牧場を作った当時は俺も若干協力をしていたが、今となっては完全に政治班に任せている。

 その為、牛や馬、羊、山羊……といったような一般的な動物であっても、中にはかなりの希少種もいるらしい。

 以前ちょっと聞いた話だと、羊の中にはサウスダウン種という羊の純血種もいるとか。

 このサウスダウン種というのは肉として食べられる羊の中でも最上種のもので、羊の肉をよく食べる欧米なんかでは肉の王様と呼ばれたりもしているらしい。

 ただ、最近は何とかしてそのサウスダウン種よりも上と言われる事もある、プレ・サレと言われる羊を何とか飼えないかと考えているらしいが……これがまた難しい。

 このプレ・サレというのはフランスにある一部の名称で、そこは年に数回大潮によって地面が完全に海に沈んでしまうせいで、土壌の塩分濃度が高くなって、塩分を含んだ植物しか生えない。

 そんな草を食べて育った羊、潮の香りがする独特の風味の肉となるとか。

 そのような子羊なので、幻の子羊と呼ばれているらしい。

 ……いやまぁ、この辺りは本当に人聞きの知識なので、それが実際に正しいかどうかとか、そういうのは俺にも分からなかったりするんだが。

 ただ、そういう幻の子羊だからこそ、政治班としては何とか入手し、ホワイトスターの牧場で育てたいのだろう。

 とはいえこのプレ・サレというのは塩分を含んだ草を食べて育つからこそであって、プレ・サレの子供に普通のエサを与えても、それは別物になってしまうだろう。

 シャドウミラーの技術力があれば、牧場の一部をそういう塩分を含んだ牧草地帯にするのも可能なので、頑張れば出来るかもしれないが……ただ、今のところ成功していないのは間違いない。

 

「ああ、それと……俺はそこまで好きって訳じゃないが、牧場の売店で売っているチーズケーキは、チーズケーキ好きにはもの凄い喜ばれるらしいな」

 

 俺はチーズケーキは嫌いという訳ではないが、かといって好きという訳でもない。

 例えばチーズケーキとショートケーキがあればショートケーキを選ぶし、チョコケーキやシュークリームとかがあれば、そっちを選ぶ。

 他に選ぶのがないのなら、あるいは残っているのがチーズケーキだけなら、チーズケーキを選ぶといった具合だろう。

 そんな訳で、俺にとってはそこまで好きではないチーズケーキだったが、周囲の評判はかなり良い。

 

『まぁ』

 

 って、おい。

 今の俺の言葉を聞いて、ヤオモモが嬉しそうにそう言うのなら、特に違和感はないし納得出来る。

 だが、拳藤までもが……それもヤオモモと同じような上品な言葉を口にするのはちょっと意外だった。

 

「ちーずけーき?」

 

 そして壊理は、当然のようにチーズケーキがどういうのかを知らず、首を傾げていた。

 ……というか、産まれてからずっとヴィランと一緒にいて暴力を振るわれていたという事は、多分チーズケーキに限らず、ケーキの類は食べた事がないんだろうな。

 

「美味しいケーキですわよ、壊理ちゃん。販売店に行ったら是非買いましょう」

「そうだね。チーズケーキは良いものなんだ。だから、楽しみにしているといい」

 

 ヤオモモと拳藤が壊理にそう言う。

 そうして話をしながら歩いていると、やがて目的地の牧場に到着する。

 いっそ、車で移動してもよかったのかも?

 そうも思ったが、話しながら歩いてくるというのは、悪くなかった。

 

「うわぁ……」

 

 牧場の中に入ると、壊理の口からそんな声が上がる。

 ……それでいながら、その表情には笑みが浮かばないのが気になるところだ。

 ただ、今は無理でもヴィランから離れてしっかりとリハビリ……というのは少し違うか? とにかくヴィランに関わらずに育っていけば、そのうち笑みを取り戻せるようになるかもしれないが。

 

「凄いね、これは……アクセルが観光名所と言うのが分かるよ」

 

 拳藤が感心した様子でそう言ってくる。

 もしかしたら、拳藤は牧場に来る事そのものが初めてだったりするのかもしれないな。

 であれば、この光景に驚くのも当然か。

 勿論、拳藤もTVとかネットとかで牧場の映像や画像を見た事はあるのかもしれないが……それでも、こうして実際に自分の目で見るというのが違うのだろう。

 

「私の知っている牧場よりも大分広いですわね。……ワイバーンというのを飼っているという時点で予想はしてましたが」

 

 ヤオモモの方は拳藤程に驚きはしていないものの、それでもこうして見ているとそれなりに驚いてはいた。

 

「ほら、牧場を外から見ているだけじゃなくて、中に入るぞ。……どうする? 牧場の見学を先にするか、それとも売店に先に行くか」

『売店!』

 

 俺の言葉に、ヤオモモと拳藤は揃って断言する。

 うーん、これは……どうやら、チーズケーキ目当てか?

 買った後は俺が空間倉庫に収納しておけば悪くなったりしないし、問題はないか。

 

「壊理もそれでいいか?」

「うん」

 

 壊理も売店に興味があるのか、それとも単純にヤオモモと拳藤が売店に行きたがっていたからそうしたのか。

 その辺りは分からないが、とにかく売店に行く事に賛成する。

 そうして売店に向かうと……

 

「まぁ、凄いですわね」

 

 ヤオモモが売店を見て、驚きの声を上げる。

 この牧場の売店は、ちょっとしたスーパー並みの広さを持っているのだから、それも当然だったが。

 もっとも、ヤオモモが普通のスーパーに行くような事があるのかどうかは微妙なところだが。

 一応、1学期には放課後の自主訓練の殆どに参加し、その帰りに皆と一緒に買い食いしたり、ラーメン屋とかハンバーガー屋とかお好み焼き屋とか、そういう食事が出来る店で買い食いをたしたりもしていたので、それなりに世慣れている……というには少し大袈裟かもしれないが、とにかくそんな感じでそれなりに色々な店に行ったりはしている。

 だが、スーパーとなると……うーん、俺が住んでいるマンションの1階にある高級スーパーに行った事があったか?

 もっとも、高級スーパーはあくまでも高級スーパーな訳で、一般的なスーパーとは違っていたりする。

 

「とにかく、チーズケーキだったか? 他にも色々と買って、それから牧場の見学に行くぞ」

「分かりましたけど……アクセルさん、その、ここでカードは使えますか?」

「無理だな」

 

 正式に国交を結べば、あるいはカードが使えるようになるかもしれないが……今は無理だ。

 

「だから、ここでの買い物は俺が奢るよ」

「え? いいのか、アクセル?」

 

 奢るという言葉に、拳藤がそう尋ねてくる。

 拳藤にしてみれば、その辺りの経済観念がしっかりとしてるので、ここで俺に奢られるというのはどうかと、そう思ったのだろう。

 

「あのな、そのくらい俺にとっては何の問題もないんだよ。俺はこのシャドウミラーを率いる存在だぞ? そのくらいの金は自由に出来るに決まってるだろ」

 

 その言葉で、ようやく拳藤も納得したらしい。

 拳藤にしてみれば、俺はやはりシャドウミラーを率いる存在ではなく、クラスは違えど同じヒーロー科の生徒だという認識の方が強いのだろう。

 ともあれ、そんな訳で目的のチーズケーキだったり、ウィンナーやハム、ベーコン……それと牛のモツ詰め合わせがあったので、それも買っておく。

 モツ煮込みだったり、あるいは焼き肉にだったりと、それなりに使い道があるんだよな。

 それに店頭に出されているのはしっかりと下処理をしたモツなので、洗ったりとか、そういうのはする必要もないし。

 ただ、生のモツなので食べる料理によっては煮こぼしたりといったような下処理が必要な場合もあったりする。

 まぁ、その辺については今はどうこう考える事じゃないか。

 それと……牛タンのブロックもあったので買っておく。

 ヒロアカ世界で俺の住んでいるマンションの1階にある高級スーパーでも牛タンは売ってるが、どうしてもスライスされた牛タンなんだよな。

 勿論、牛タンの中でも最も美味いとされているタン元……牛タンの根元の部分を厚く切った奴とかもあるけど、こうしたブロックは滅多にない。

 ……滅多にないという事は、たまにはあるという事だったりするのだが。

 ともあれ、牛タンのブロックは俺にとってはありがたい代物だ。

 そうなると、このままここに置いておくというのもなんなので、それなりに纏めて買っておく。

 出来ればいっそ全部纏めて購入したいという気持ちもあったりするのだが、そうなると他の客が困るしな。

 そんな訳で、俺はある程度残して牛タンのブロックを買っていく。

 自分で食べるのもよし、バーベキューなんかをやる時に使うにもよし、

 牛タンのブロックは使い道は多い。

 そういえば。以前荒垣がタンシチューがどうとか言っていたな。

 タンシチューのタンというのは当然ながら牛タンのタンな訳で……そう考えると、荒垣に牛タンを1つ渡してタンシチューを作って貰うというのも悪くはないな。

 そう思いながら、俺は支払いを行うのだった。

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