転生とらぶる2   作:青竹(移住)

2011 / 2196
4645話

 ラピスと壊理が打ち解け、一緒にアニメを見ていると……やがて、この家に住んでいる者達が次から次に帰って来る。

 そんな面々は家の中に全く見知らぬ者達がいるのを不思議に思うが、俺や……あるいは俺から事情を聞いた他の者達が説明すると、すぐに納得する。

 

「ウフフフフ、その、アクセル君。私ちょっとヒロアカ世界に行ってもいいかしら。丁度いい長ネギを見つけたのよ」

「落ち着け、千鶴。その長ネギをどうするつもりだ」

 

 壊理についての話……小さい頃――今も幼女だが――からヴィランによって暴力を振るわれてきたという話を聞くと、千鶴は長ネギを手に得体のしれない迫力を発しつつ、そう言ってくる。

 その表情には満面の笑みがあるものの、目は一切笑ってはいない。

 それこそ、冷たい……絶対零度の視線といった表現が相応しい、そんな視線だ。

 もし壊理に暴力を振るっていたヴィランに遭遇したら、それこそ何をしてもおかしくはない。

 ……普通なら、そんなヴィランと遭遇した時、千鶴の身の安全を心配するのだろう。

 だが、千鶴は生身での戦闘においては、シャドウミラーでもトップクラスの実力を持つ。

 本人の性格から、あまり相手を攻撃したりといったようなことはしないものの、それでもあまりの話で、それこそ壊理のような子供に暴力を振るうようなヴィランが相手なら、アーティファクトの虹色領域の腕輪を使ってでも、ヴィランを叩きのめすだろう。

 千鶴は俺の恋人達の中でもかなり母性が強い。

 実際、俺がネギま世界にいた時は、幼稚園とかによくボランティアで行っていたらしいし。

 そんな千鶴にしてみれば、壊理のような幼女に……それも今よりも小さい時から暴力を振るっていたというヴィランは、決して許せないのだろう。

 ちなみに綾子のような例外はあれども、実働班の面々は大半が人型機動兵器を使っていた世界からの出身であり、エヴァから生身での戦闘訓練も受けてはいるが、それでもやはり本領となるとPTとかの人型機動兵器を使った戦闘となる。

 ……もっとも、昨夜のようにヴィラン連合やらAFOやらを相手にしても普通に戦えるだけの実力を持っているが。

 ともあれ、そんな感じではあるが、千鶴の場合はネギま世界……つまり、生身での戦闘がメインとなる世界の出身だ。

 また、シャドウミラーの仕事においても政治班という生身での仕事をする場所で行っている。

 それもあって、千鶴の場合は生身での戦闘力はかなり高い。

 それに千鶴の場合……というか、あやか、美砂、円といった俺と仮契約を結んでいる面々は、アーティファクトを使えるというのも大きい。

 そういう意味では、千鶴はヒロアカ世界向きではあるんだよな。

 もっとも、今のように子供に被害があるのならともかく、そうでない場合は正義感から助けるといったようなことはしない。

 いや、勿論目の前でそういう事でも起きれば話は別だが。

 あるいは千鶴のおっとりとした美貌や、何より俺の恋人達の中でもトップクラスの巨乳に惹かれて、ヴィランが良からぬ事を考え、ちょっかいを出すといった可能性も十分にあった。

 

「あー……ほら、落ち着け」

「あら、アクセル君。壊理ちゃんの話を聞いて、私に落ち着けというの? それは……一体どういう事か、理解してるのかしら?」

 

 ウフフフフ、とそう笑みを浮かべつつ、千鶴が俺に向かって言ってくる。

 あ、これ……逆らっちゃ駄目な奴だ。

 そう判断すると、俺はすぐに壊理に暴力を振るっていたヴィランを売る事にする。

 

「千鶴が今ここで怒っても仕方がないだろう? もしヒロアカ世界で壊理に暴力を振るっていたヴィランを見つけたら、捕らえるのは……絶対にとは言い切れないけど、千鶴に任せるから。それでどうだ?」

「それは……」

 

 俺の言葉に、千鶴から発せられている雰囲気が弱まる。

 消えるのではなく弱まるというところに、まだ千鶴が完全に落ち着いた訳ではないことは明らかだったが。

 ただ、言っておいてなんだが、壊理の件に俺が介入するのは、どうなんだろうな。

 壊理という……小さい頃からヴィランに暴力を振るわれていた幼女が逃げ出し、助けを求める。

 これ、多分だけど普通なら緑谷が遭遇するイベントだったりしないだろうか?

 勿論、それが絶対にそうだとは限らない。

 あるいは俺の考えすぎで、原作には全く関係のない可能性もある。

 だが、それでも……やっぱり、そうである可能性は高いのではないかと、そう思ってしまうのも事実なのだ。

 

「ねぇ、アクセル。その子はヒロアカ世界の子なのよね?」

 

 と、俺が千鶴の相手をしていると、いつの間にか帰ってきていたレモンがそう尋ねてくる。

 このまま千鶴の相手をするのが危険だと判断し、俺はラピスと一緒にTVを見ている壊理を眺めているレモンに近付く。

 

「そうだ」

「なら、あの子にも個性はあるの? 私が聞いた話によると、ヒロアカ世界の個性というのは、4歳くらいで目覚めると聞いているわ。そうなると、あの壊理って子ももう個性には目覚めているのかしら?」

「それは……あの右の額にある角が個性なんじゃないか。一種の異形系の個性の持ち主だと俺は思ってたんだが」

 

 もっとも、異形系と一口に言っても色々な種類がある。

 A組では障子だったり、常闇だったり、梅雨ちゃんだったり、三奈なんかもそうだろう。

 後は……峰田の場合は異形系と呼ぶべきかどうか悩むところだが、それでもあの背の低さというか、デフォルメされたSDキャラ的な存在である事を思えば、やはり異形系で間違いないと思うけど。

 ともあれ、壊理の角から、俺は壊理を異形系だと認識していた。

 もっとも、それも絶対という訳ではないのだろうが。

 

「あの子に暴力を振るっていたヴィランが、それでもあの子を捨てなかったり、あるいは殺さなかったりした理由はどこにあると思う?」

「……それが、壊理の個性に関係していると?」

「あくまでも予想だけどね。けど……小さい頃から、あの子は暴力を振るわれてきたのでしょう? なのに、そうして暴力を振るいながらも、結局育ててきたのも間違いないのよ。そうなると、やっぱりそこに何か意味があるかもしれないと、そう思うのは不思議でもないでしょう?」

「まぁ、そう言われるとそうかもしれないが。ただ、壊理がヴィランにとって都合のいい存在だったから、今までは特に何をするでもなく、普通に育ててきた……そんな可能性もあるだろう? 壊理が今回逃げたのは、向こうにとっても完全に計算外だったのかもしれないし」

 

 壊理はまだ子供だ。

 それこそ運動能力という意味では、とてもではないが普通の大人には及ばない。

 それでも俺達と接触するまで壊理は逃げ続けてきた訳で、それは恐らくだがヴィランにとって壊理が逃げるというのは完全に予想外だったから……という可能性が高い。

 壊理がその辺りをどう考えていたのかは、俺には分からない。

 分からないが、それでもまさに一か八か……生きるか死ぬかといった覚悟で逃げ出したのは間違いないと思う。

 そこまでしたから、何とか俺達と接触出来た訳で。

 ヴィランにしてみれば、まさか壊理が逃げ出すなどとは思っていなかったのだろう。

 もっとも、何らかの理由でホテルに来て、そこに壊理も連れてきたのだから、もしかしたら……本当にもしかしたら、逃げる可能性があるという事については十分に考えていてもおかしくはなかったと思うけど。

 あるいはその辺にも考えが及ばないような、そんなヴィランだったのか。

 その辺りは俺にも分からないが、とにかく壊理が相手の意表を突いた行動を取ったのは間違いない。

 

「どちらかでしょうね。……ヤオモモと拳藤だったかしら? アクセルにその辺が分からないのなら、ヒロアカ世界出身の2人に聞いてみたらどう? もしかしたら、ヒロアカ世界に住んでいる人じゃないと分からないような何かがあるかもしれないわよ?」

 

 レモンのその言葉に、なるほどと頷く。

 俺も一応、ヒロアカ世界では個性とかその辺について色々と調べた。

 しかし、それはあくまでも俺の知ってる限りといった程度での話だ。

 もし俺が知らない……ヒロアカ世界にとっては常識というのがあった場合、それに俺がすぐに気が付くのは難しい。

 

「そうだな。じゃあ、ちょっと聞いてくる」

 

 帰ってきた恋人達のうち、何人かと話しているヤオモモや拳藤に近付く。

 

「ヤオモモ、拳藤、ちょっといいか? 壊理の事で話があるんだが」

 

 そう言うと、拳藤とヤオモモはすぐにこちらに来る。

 ……もっとも、まだ顔が微妙に赤かったり、俺と視線が合うと急いで逸らしたりとかしているが。

 ただ、それでも壊理の件についてとなると、色々と思うところがあるのだろう。

 そうしてリビングの端まで移動すると、俺は早速口を開く。

 

「壊理の事だが、2人は壊理がどういう個性を持っているのか分かるか?」

「……個性、ですか?」

 

 意外な事を聞かれたといった様子でヤオモモが俺を見てくる。

 拳藤もそれは同様で、俺に対して訝しげな視線を向けていた。

 

「そうだ。俺はてっきり壊理はあの角の部分で異形系なのかと思っていたのだが、もしかしたら違うかもしれないという話になってな」

「アクセルは何でそう思ったんだ?」

 

 不思議そうに拳藤が聞いてくる。

 そんな拳藤にレモンとの話で出た内容を教えると……

 

「なるほど。ヴィランは壊理ちゃんの個性を利用しようとしていた、あるいは利用していたって事か」

「あくまでも予想……いや、もしかしたら予想どころか妄想に近い感じかもしれないけどな」

 

 そもそも、壊理のような幼女の使う個性が、ヴィランにとって一体どういう意味を持つのか。

 それを考えると、やっぱり素直に納得出来るような事ではないのも事実。

 事実だが……それでもヴィランが暴力を振るう為だけに壊理を育てていたとなると、それはそれで疑問がない訳でもないんだよな。

 だからこそ、壊理の個性に関係があるかもしれないというのは、それなりに説得力があるのだ。

 

「……なるほど。言われてみれば可能性はあるかもしれないわね。ただ、私は壊理ちゃんの個性については知らないけど。ヤオモモはどう?」

「残念ながら私も知りませんわ。……けど、壊理ちゃんに聞いてもいいものでしょうか? もしアクセルさんの予想が当たっていた場合、壊理ちゃんは自分の個性によって酷い目に遭ってきたという事になります。そうなると、個性について聞かれても、それは決して好ましい事ではないと……それどころか、個性を怖がってしまってもおかしくはないと思うのですが」

 

 ヤオモモの意見に、なるほどと頷く。

 実際、ヤオモモのその言葉は決して間違っているとは言えない。

 もしヤオモモの言葉通り、壊理が自分の個性を忌み嫌っている場合、壊理にお前の個性は何だ? と聞くようなことがあったら、それによって壊理が泣いてもおかしくはない。

 いや、泣くだけならまだしも、林間合宿の肝試しの時の襲撃の時に常闇の個性であるダークシャドウが暴走した。

 そんな感じで、壊理が暴走をしたらどうなるのか……それこそどんな個性かも不明だが、その個性によって周囲に被害が出る可能性も否定は出来なかった。

 勿論、それは最悪の……本当に最悪の場合の話であって、実際にはそこまでいかない可能性もあるだろう。

 

「ヤオモモの言いたい事も分かるけどさ、それでも個性はその人の一部なんだ。自分の個性を嫌ったって、どうしようもないだろ。その個性を使うにしろ、使わないにしろ、上手く折り合いを付けていかないとどうしようもないんだからさ」

 

 そう言う拳藤の言葉には、強い説得力があった。

 あるいは、もしかしたら拳藤もまた自分の個性について以前は思うところがあったのかもしれない。

 ……とはいえ、拳藤の個性は掌を大きくするという単純なものだ。

 そこまで嫌な気がするとは、俺には思えない。

 もっとも、それはあくまでも俺がそう思うだけで、拳藤にはのそのように思う理由があるといった可能性もあったが。

 例えば、個性が地味だからプロヒーローに向いていないとか、そんな風に。

 ただ、もしそうだとしてもきちんと雄英のヒーロー科に入学し、しかもB組の学級委員長になっているのが拳藤だ。

 であれば、その辺については今更気にするような事もない……いや、今は拳藤の事じゃなくて、壊理の事だったな。

 

「そうなると、やっぱり壊理に個性について聞いた方がいいか」

「私はそう思うけどね。……ヤオモモは?」

「そう、ですわね。……この場合はアクセルさんがどうしたいかが大きな問題になると思います。アクセルさんはどのように思っているのですか?」

「俺が? ……まぁ、それなら俺も一応壊理の個性については聞いておいた方がいいと思うけど」

「では、そうした方がいいでしょう」

 

 ヤオモモがそう言い……拳藤もそんなヤオモモの言葉に頷き、これでどのようにするべきなのか、決まるのだった。

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