転生とらぶる2   作:青竹(移住)

2014 / 2196
4648話

 風呂上がりのルリが、ろくに髪も乾かさず、身体もしっかりと拭かずに俺達の前に現れたと思うと、いきなり泣き始めた。

 普段は冷静沈着で、ラピスの姉としてしっかりとした行動を取る事の多いルリが、一体何故泣き出したのか。

 そう疑問に思ったが、ともあれまずはルリを泣き止ませるのが先決で、マリューと千鶴はまだ風呂にいるラピスと壊理の面倒を見るべくそちらに向かったのだが……

 千鶴がこの場にいなくてよかったと、しみじみとそう思った。

 何故なら、ルリの口から出た言葉はそれだけ驚きと……そして聞いた者に怒りを抱かせるものだったからだ。

 

「……ちなみに、本当にちなみにの話だが……何かの間違いとかそういう事は……ないよな」

 

 万が一の可能性を思ってそう言おうとしたのだが、それを聞いたルリは涙の流しすぎ、涙の拭きすぎで目を赤くして、俺を見てくるのでそれ以上は何も言えなくなる。

 無理もない、か。

 ルリから聞いた話は、それだけ衝撃的だったのだから。

 事の始まりは、風呂の中での話。

 その時、何がどうなったのかは分からないものの、壊理が自分の手足が、あるいは胴体が斬り刻まれ、破壊される経験を何度もしていると、そう口にしたらしい。

 最初は、ルリもラピスもそれを冗談だと……それも人の悪い、悪すぎる冗談だと思ったらしい。

 実際、風呂の中で見た限りだと壊理の身体にはそんな傷口の類は一切なかったらしいのだから。

 だが……それでも壊理の口から出る言葉には強い真実味があり、何よりその傷をなかったことにされるというのを聞いて、それでルリは限界を迎えたらしい。

 幸か不幸か、ラピスの方はルリ程にショックを受けていなかったらしく、壊理を抱いて慰めていたらしいが。

 ともあれ、そんな訳でルリは感情の整理が出来なくなって、風呂を上がって俺達に知らせに来たらしい。

 当然ながら、ルリの話を聞いた者達は怒り狂っている。

 

「許せないわね。……あんな小さな子をそんな目に遭わせるなんて」

 

 ミナトは感情が限界を超えたのだろう。

 その感情を表情に出すようなことはなく、能面のような表情でそう呟く。

 当然ながらそのようになっているのはミナトだけではない。

 

「人を殺したいと……そう思ったのは、これが初めてという訳ではないけど、それでも胸糞悪いな。私が半サーヴァントであるのは、この時の為だったのではないかと思える」

 

 綾子もまた、苛立ちを露わにしていた。

 

「落ち着け、お前達。幾ら苛立っているからといって、それでも感情のままに暴走するような事は決してするなよ」

「……アクセル、手、あまり力を込めすぎない方がいいんじゃない?」

 

 ゆかりが俺の手を……それこそ爪で掌が破れてもおかしくはないくらいに握り締めている俺の手を見て、そう言ってくる。

 そんなゆかりの言葉に、俺は自分でも気が付かないうちに握り締めていた手からそっと力を抜く。

 

「とにかく、壊理がどんな目に遭っていたのか……それが分かっただけでも価値はあった。……あったと、そう思いたい」

 

 壊理が育ての親のヴィランに暴力を振るわれているというのは知っていた。

 だが、それはあくまでも普通の暴力……という表現はどうかと思うが、とにかく殴る蹴るといったような、そんな暴力だと思っていたのだ。

 勿論、壊理のような幼女には……ましてや、その暴力を振るうのがただの虐待であっても、大の大人が振るう暴力は壊理を痛めつけるのに十分だっただろう。

 だがしかし、その暴力が殴る蹴る程度のものじゃなくて、手足を、胴体を……切り裂き、破壊し、砕く。そんな暴力であるというのは、予想外だった。

 ましてや、そのような暴力を振るった結果の傷跡が壊理の身体に残っていないのを思えば、それは明らかに普通ではない。

 リカバリーガールのような回復系の個性か、あるいは壊理をそういう目に遭わせているという事は、そのヴィランもまた壊理の持つ巻き戻しのように時間に関係する個性を持っているのか。

 その辺りは生憎と俺には分からないが……同時に、疑問に思う事もある。

 即ち、何の為にそうしているのか、と。

 あるいはただ単純に暴力を振るいたいだけ、あるいは幼女に暴力を振るうという性癖の持ち主である可能性も十分にあるが、それだけとなるとやっぱりどこかに違和感がある。

 また、そのバックボーンから考えても、壊理は間違いなく原作キャラで、恐らくは原作では緑谷に助けられていたんだと思う。

 そんな諸々について考えると、やっぱりただ暴力を振るいたくて壊理に暴力を振るい、それを他人に知られたくないから自分の個性で壊理の傷を治すとか、そういう事じゃないと思う。

 ……もっとも、だからどうしたという事を考えれば、それはそれで疑問ではあるのだが。

 

「何の為に壊理ちゃんにそんな……酷い事をしたのかしら?」

 

 普段は明るいというか、おちゃらけたというか、そういう感じのムードメーカー的な存在でもある美砂が、悲しそうな表情でそう言う。

 美砂にとっても、壊理の受けた暴力……いや、それを暴力の一言で表していいのかどうかは微妙なところだが、とにかくそんな相手の行動を、とてもではないが許せないのだろう。

 当然ながらそのような表情を浮かべているのは美砂だけではなく、他の面々も同様だった。

 壊理の愛らしさは、何だかんだと皆の心を捕らえていたらしい。

 あるいはラピスと友好的だったのも、この場合は影響してるのかもしれない。

 

「自分の趣味……これが一番高いとは思うけど、それにしてはやりすぎだよな。あるいは個性で回復出来るから、自然と暴力の度合いが増していったという可能性もあるけど」

 

 最初は少しだけ……そう思っていても自分の個性ですぐに怪我が治るのなら、自然と壊理を痛めつける度合いが増していってもおかしくはない。

 良くも悪くも、人というのは慣れるものなのだから。

 そこまで考え、ふと気が付く。

 もしかしたら、次第にエスカレートしていったのではなく、そのヴィランにとってどこまでなら治せるのかを調べる為に壊理に暴力を振るっていたのではないか、と。

 

「もしかして、そのヴィランは治療系の個性を持っていて、それがどこまで治るのか壊理で試していた……そんな可能性はないか?」

「許せませんわ!」

 

 俺の言葉を聞いたあやかが、真っ先にそう叫ぶ。

 あやかにしてみれば、とてもではないが許容出来ることではないのだろう。

 勿論、そう思っているのはあやかだけではない。

 他の者達も実際に声に出すようなことはしなかったが、そこには大きな怒りや憤りの表情を浮かべている。

 

「落ち着け、これはあくまでも俺の予想でしかない。もしかしたら、もっと違う何かが理由である可能性もある」

 

 しまったな。

 思いつきで口にした事だが、可能性としては十分に有り得る事なせいもあってか、あやかを怒らせるには十分ずぎる内容だったらしい。

 

「そうね。……それに怪我を治すだけなら、それこそ幾らでも機会はあるでしょう? ヴィランであっても、例えば闇医者として活動するとか」

 

 レモンのその言葉は、それなりの説得力があった。

 実際、レモンの言ってる事は決して間違いないではないからだ。

 ヴィランとして活動している者は、当然ながら普通に病院で怪我を治療したりとかは出来ない。

 もしそのような事をすれば、それこそすぐに警察やプロヒーローに連絡がいって、取り押さえる為に病院に来るだろう。

 ……まぁ、表向きは一般人として活動していて、裏ではヴィランとして活動しているような者であれば、あるいは誤魔化せるかもしれないが。

 ただ、当然ながらそのようなことが出来る者は決して多くはない。

 だからこそ……だからこそ、ヴィランにとって闇医者というのは非常に需要がある。

 勿論、そうした闇医者となれば治療料金も正規の値段よりも跳ね上がる……あるいは単純に保険の適用外だからそうなるのかもしれないが、とにかくそんな訳で値段が高くなる為に、ヴィランもヴィランであるが故に、治療費を踏み倒そうとしてるのかもしれないが。

 とにかく、闇医者として活動すればヴィランを相手に客に困ることはなく、プロヒーローと戦ったり、あるいはヴィラン同士で戦ったりと、多種多様な怪我を治療出来るのだから、もし壊理に暴行……という言葉すら生温いが、とにかく怪我をさせて、それを治療するといった事は、まずないと思う。

 あくまでもこれは俺の予想なので、もしかしたら全く違う理由から壊理を痛めつけている可能性もあるのだが。

 

「とにかく、壊理が逃げ出してきた理由は分かったな。……今更、本当に今更の話だが、壊理をこの家で匿う事に反対する者はいるか?」

 

 壊理が何をされていたのかという事を知った上でこう聞くのは、もしかしたら少し卑怯かもしれないとは思う。

 思うのだが、それでもこうして話を聞いておく必要があるのは間違いないのも事実。

 

「アクセル、あのような事を聞かされた上で、断れると思うのか? ……そのような事、ユフィに誓って出来る筈もない」

 

 そう、コーネリアが言う。

 そしてコーネリアに続くように、他の者達も賛成の声を上げていく。

 コーネリアがユフィ……ユーフェミアの名前に誓ってという事は、その決意の硬さを示していた。

 もっとも、壊理のような幼女が暴力を……それも殴る蹴るといったような単純な暴力ではなく、聞くのすら醜悪に思えるような行為をされていたのだから、そこには本当に色々と思うところがあってもおかしくはない。

 

「となると……雄英にも話を通す必要があるな」

「あれ? アクセルは雄英に話を通して壊理ちゃんを連れてきたって言ってなかったっけ?」

 

 俺の言葉にゆかりがそう反応する。

 実際、その言葉は決して間違ってはいない。

 間違ってはいないものの、だからといって正しい訳でもなかったりする。

 相澤を通じて、壊理を一時的にホワイトスターに……俺の家に匿うという話はした。

 だが、それはあくまでも一時的なものだ。

 この一時的というのは人によって違うが、大体数日から十日くらいが一般的といったところか?

 だが、今回俺が言っているこの家に匿うというのは、それこそこの家に定住というか、永住というか、とにかく住むという事だ。

 場合によっては、ルリやラピスのように俺の養子にするといったことをしても構わないと思っている。

 そう説明すると、ゆかりは微妙な表情を浮かべる。

 

「壊理を預かるのは嫌か?」

「うん、嫌って事はないわよ。壊理ちゃんが良い子だってのは分かってるし」

「なら、どうした?」

「あー……うん。まぁ、その。恋人に3人目の養子かぁ……と思って。いわゆる、シングルファザーって奴?」

「……ゆかりの言いたい事は分かるけど、それってもう今更の話じゃない?」

 

 美砂がゆかりに向かってそう言う。

 実際、普通に……本当にシャドウミラーのような特殊な例を除いて、一般的な常識のある世界では、もし付き合う事になった時、相手に子供が3人もいるとなれば……そういうのが絶対に無理とまでは言わないが、それでも条件的にかなり厳しくなるのは間違いないと思う。

 そういう意味では、ゆかりの言ってる事はそう間違ってはいない。

 間違ってはいないのだが……ここはそういう一般的な常識の通じるような世界ではなく、シャドウミラーなのだ。

 そもそもそういう一般的な常識を考えれば、1人の男がこれだけ大量の恋人達と同棲をするというのが、そもそも有り得ないだろう。

 いやまぁ、世の中にはもしかしたらそういう集団もいるかもしれないから、絶対とは言い切れないが。

 ただ、それでも俺については色々な意味で特殊な状況にあるのは間違いなく、だからこそ今更俺に養子が、もう1人増えたところでそう騒ぐ事でもないと、そう美砂は言いたいらしい。

 

「そうなんだけどね。ただ、やっぱり普通とは違うなぁ……と思っただけよ」

「それは否定しないけど、そういうのだからこそゆかりも救われているところがあるんじゃない?」

「それは……」

 

 どうやら美砂の言葉は図星だったらしく、ゆかりは反論出来なかった。

 実際、俺達が普通ではない、一般的ではないのは間違いないが、だからといってそれで迷惑を掛けたりは……まぁ、俺の恋人達は全員が魅力的なので、多くの者に好意を……恋心を抱かれていたりするが、その相手を軒並み俺が奪ったという意味では、迷惑というか、不満を抱いてる者は多数いるだろうが。

 とはいえ、だからといってその辺について俺もだからどうした? としか言えないが。

 

「皆、話が逸れているぞ。今は壊理についてだろう」

 

 スレイの言葉に、ゆかりや美砂、他の面々も我に返る。

 

「それで、アクセル。壊理を引き取る……養子にするか、あるいはホームステイ的な感じにするのかは私には分からないが、どうするんだ?」

「それについては、明日にでも雄英に行って校長に話してみるけど……ヤオモモと拳藤はどうする?」

 

 そう俺が聞くと、黙って俺達のやり取りを聞いていたヤオモモと拳藤は戸惑ったような表情を浮かべるのだった。

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