茨の見舞いに行った翌日……俺はヒロアカ世界の雄英の敷地内にあるゲートの前で待っていた。
すると、時間通りに相澤とオールマイトが姿を現す。
「すまんな、アクセル。家庭訪問なのに、わざわざ迎えに来て貰って」
「気にしないで下さい。こっちの世界にあるマンションに来るのならともかく、ホワイトスターに来るとなると、俺がいた方がいいでしょうし。一応以前オールマイトが校長と一緒に来ましたけど、案内するとか、そういう状況じゃなかったですしね」
今日は教師と生徒という立場なので、その立場に合わせた言葉遣いにする。
オールマイトは俺の言葉に何と言っていいのか分からないといった様子を見せていた。
実際、以前オールマイトがホワイトスターに来たのは、林間合宿を途中で切り上げて雄英に帰ってきて、教師とかに俺の素性とかそういうのを教えた日だった。
その後ですぐに校長からの要望もあってオールマイトを連れてホワイトスターに行き、結果としてオールマイトの治療をする事になった訳だ。
ともあれ、その時にオールマイトはホワイトスターを見てはいるものの、壊理を保護した時のように色々と見て回るといった事は出来なかった。
勿論、政治班の仕事場に向かう途中で、色々と見たりはしたが。
「あの時だけ見た光景でも、ホワイトスターの凄さというのは十分に理解出来たよ。……出来れば、もっとゆっくりと色々な場所を見て回りたいとは思うけど、今はそんな時間はないしね」
オールマイトが少しだけ残念そうな様子でそう言う。
それは冗談のように見せ掛けつつも、恐らくは本音のような気がする。
「まぁ、雄英の教師……というか、ヒロアカ世界の住人がホワイトスターに自由に来られるようになるには、正式に契約を結んでからの事になりますしね。……ちなみに、雄英の教師とかなら大丈夫だとは思いますけど、もしヒロアカ世界の住人がホワイトスターで何らかの問題を起こした場合、その時にペナルティを受けるのは問題を起こした1人じゃなくて、ヒロアカ世界全体での事になるので、注意して下さい」
「……山田には言っておいた方がよさそうだな」
俺の言葉を聞いた相澤が小さく呟くが、山田って誰だ?
まぁ、相澤がこういう風に言うという事は、何らかの問題を起こしそうな相手という事になるんだろうけど。
「じゃあ、そんな訳で……行きましょうか。転移の準備を頼む」
前半を相澤とオールマイトに、そして後半を量産型Wに声を掛ける。
相澤とオールマイトは俺のすぐ側……正確にはゲートの側までやってくる。
オールマイトは以前ゲートを使ったので、転移についてはこれが初めてという訳でもない。
だが、相澤はゲートを見た事も……あるいはゲートを使って転移してくる相手を見た事もあるかもしれないが、自分が直接転移するのは初めてな割にはあまり緊張していないな。
まぁ、相澤もプロヒーローだ。
もしかしたら黒霧のように転移を使うヴィランやプロヒーローによって、転移させられた経験があるのかもしれないな。
ともあれ、落ち着いた様子のオールマイトと相澤がゲートの側に移動し、量産型Wがシステムを操作し……俺達はホワイトスターまで転移するのだった。
「これが……ホワイトスター……?」
相澤が周囲を見ながらそう呟く。
それが疑問的な感じの口調なのは、ここが転移区画だからだろう。
「相澤君、ここは転移区画という場所で、いわばホワイトスターの玄関のような場所だ」
オールマイトがそう相澤に説明している。
俺がわざわざ説明する必要がないのは助かるな。
「そうなのか?」
一応の確認といった様子で相澤が俺に聞いてくる。
これは別にオールマイトを信用していない訳ではなく、単純にもっと詳しい俺に聞いた方がいいと思ったからだろう。
実際問題、オールマイトはホワイトスターに来た事はまだ1度しかないので、そういう意味では相澤が俺に聞くのは間違っていない。
「そうですね。この転移区画からシャドウミラーが交流をしている他の世界と自由に行き来出来ます。……ああ、ほら」
話の途中でちょうとどこかの世界から転移してきた相手がいたので、それを指さす。
すると相澤とオールマイトも俺の指さす方を見て、そこで転移をしてきた相手を目にし、納得していた。
「まぁ、あんな感じですね。俺達も当然あんな風にしてここに来た訳です。……さて、じゃあ俺の家に行きましょうか。さっきも言いましたけど、色々と見て面白い場所とかはありますけど、今日は家庭訪問で来たんですし」
そう言うと、相澤とオールマイトも特に異論はないようで頷いた。
もっとも、オールマイトは少しだけホワイトスターの中を見て回りたそうにしていたが……相澤に視線を向けられると、何も言えずに黙り込む。
けど……そうだな。家庭訪問が早く終わったら、実働班の訓練を見せるくらいはしてもいいかもしれない。
丁度今日はエヴァと共に生身での戦闘訓練をする筈だったから、相澤やオールマイトに臨時として参加して貰う……うーん、オールマイトはともかく、相澤には厳しいか?
相澤の個性である抹消は、あくまでも個性を消すというもので、魔力や気を消せる訳ではない。
それはつまり、相澤が模擬戦に参加しても個性は全く役に立たない事を意味していた。
勿論、相澤は個性だけでなく捕縛布を使った戦闘も可能なので、本当の意味で全く何も出来ないという事はないだろうが……ただ、捕縛布を使った戦闘スタイルであっても、実働班に模擬戦で勝てるとは到底思えない。
ただ、そうなると相澤の訓練としては十分に価値のある訓練であるという事になるのだが。
オールマイトの方は……うん、OFAを緑谷に譲渡してしまったが、それでも普通に戦えるので、きちんと戦闘になると思う。
「相澤先生、オールマイト、家庭訪問が終わったら、シャドウミラーの実働班……分かりやすく言えば軍隊ですが、その訓練を見学、あるいは参加してみますか?」
「何? ……だが、お前から聞いた話によれば、シャドウミラーというのはロボットを使った戦いをするんだろう? それを俺達が見ても……いや、全く何も得るものがないとは言わんが」
「安心して下さい。俺の記憶が確かなら、今日は生身での模擬戦です。……俺を見れば、そして神野区での戦いを見れば分かるように、シャドウミラーの実働班は生身での戦闘力も高いですよ」
そう言うと、相澤もすぐに納得する。
実際、神野区でのAFOとの戦いにおいて、シャドウミラーの面々はかなり活躍していた。
……もっとも荒垣は実働班に所属している訳ではなく、臨時の協力員的な感じなのだが。
もっとも、荒垣がもし希望するのなら、俺としてはシャドウミラーに入れてもいいと思っている。
他のシャドウミラーの面々も、何だかんだと荒垣はそれなりに長い間協力している事もあって、人によっては既に半ば仲間のように思っている者も少なくない。
また、TVカメラには映されなかったが、明日菜は生活班だし、木乃香と桜咲は治療班で、実働班ではない。
「それで、どうします? 見たくない、参加したくないのなら、どこか適当な場所……ワイバーンの試乗体験が出来る牧場とか、あるいは魔力泉のスパとか、門世界というファンタジー世界に行った時に確保した諸々が飾られている博物館とか、エルフ達が住んでいる公園とか、もしくは色々な世界の者達がいる交流区画とか、案内する場所はありますけど」
そう言うと、相澤とオールマイトは真剣な表情で悩んだ様子を見せる。
どうやら2人にとっても俺からの提案はもの凄く気になるらしい。
「ともあれ、俺の家に行きますか。影のゲートで転移するので、俺に近付いて下さい。家庭訪問が終わった後の事は、その時までに決めて貰えればいいですから」
その言葉にオールマイトが少しだけ残念そうな表情を浮かべる。
オールマイトにしてみれば、最初にホワイトスターに来た時のように少しだけでも車で移動する時に見て回りたかったのかもしれない。
正直なところそれでもよかったんだが……ただ、そうなると移動に時間が掛かりそうだったから、俺としてはそれは避けたかったんだよな。
そんな訳で、相澤とオールマイトが近付いてきたところで影のゲートを展開するのだが……
「うわ、何だこれ」
影に身体が沈む感触が合わなかったのか、相澤が嫌そうな……気持ち悪そうな様子でそう言う。
とはいえ、だからといって影のゲートで転移するのを止めるつもりはないので、相澤には我慢して貰うしかないだろう。
オールマイトの方は、そこまで嫌そうな様子ではなかったが。
この辺りは人によって感覚が違うので、実際に転移してみないと分からないんだよな。
ともあれそんな風に影に身体が沈んでいき……次の瞬間、俺と相澤、オールマイトの3人はホワイトスターにある俺の家の前に転移していた。
「はい、到着です。これが俺の家ですね」
「……国の代表という立場の割にはあまり豪華な屋敷という訳でもないんだな。八百万の実家のような感じかと思っていたが」
ああ、そういえば相澤はヤオモモの家にも当然ながら家庭訪問に行ってるんだよな。
もっとも、その家庭訪問では寮生活の件以外にも、神野区にいた件についても色々と言われたとは思うが。
その件については俺からは何も言えないだろうし、もう終わっている事なので気にしようにしておく。
LINで昨夜話した感じだと、特に落ち込んでいる様子はなかったし。
もっとも電話で直接話した訳ではなく、LINを使ってのメッセージのやり取りなので、ヤオモモに思うところがあっても隠してる可能性はあったが。
「別にここに他の国の重鎮を招待したりとか、そういう事はありませんしね。……そういう意味では、ヒロアカ世界において日本のトップヒーローであるオールマイトが俺の家に来たという意味では、もしかしたら他の国の重鎮という意味では初めてかもしれませんね」
「私がかい? ……重鎮と言われるようなものではないと思うのだが」
「オールマイトはあまり自覚がないようですけど、普通にしていればやっぱり重鎮と呼ぶに相応しいんですよ。……取りあえず玄関前でこうしていてもしょうがないですし、入って下さい」
そういい、扉を開ける。
するとそこにはレモン、コーネリア、マリューの3人の姿があった。
恐らく気配で既に俺達が家の前にいるのを察してこうして待っていたのだろう。
「これはまた……」
「……凄いな……」
相澤とオールマイトが、レモン達3人を見て思わずといった様子でそう呟く、
この3人は、俺の恋人の中でも最初に恋人にした3人だ。
正確には最初に恋人にしたのはレモンで、それに続いてコーネリア、マリューといった具合に続いたのだが。
そうなると、敢えて名称を付けるとすれば……始まりの3人とか、そんな感じか?
今日の家庭訪問で、誰が相澤やオールマイトの相手をするのかという件については女同士で話し合うという事だったが、どうやら順当にこの3人に決まったらしい。
昨夜の行為が終わり、その後でいつものように魔法球で体力や精神力を回復する為に休んでいる時、その辺りをしっかりと決めるって話だったんだが。
「ようこそ、相澤先生、オールマイト先生。私はアクセルの恋人のレモン・ブロウニングです」
「コーネリア・リ・ブリタニアだ」
「マリュー・ラミアスです」
そうしてレモンを始めとした3人がそれぞれ自己紹介をする。
相澤とオールマイトがそれに対して驚きの表情を浮かべる。
俺に恋人が複数いるのは知っていた……あれ? 言ったっけ? まぁ、多分言ったと思うが、まさかその恋人がここまで美人だったとは、全く思っていなかったのだろう。
そんな3人に、相澤とオールマイトもそれぞれに自己紹介をする。
人前に出る事が多いオールマイトはともかく、相澤も普通に自己紹介出来たのは……いや、でも考えてみればそうおかしな話でもないか。
俺が後で見直した、林間合宿についての記者会見。
これについては、相澤も普通にそういうのが出来ていたしな。
そう考えればこれは別にそこまで不思議な事でもないのだろう。
「さぁ、入って下さい。雄英でのアクセルの生活についてとか、色々と聞きたい事もありますから」
マリューがそう言い、相澤とオールマイトをリビングまで案内する。
……今更の話だけど、普通なら家庭訪問って生徒の両親を相手にやるものだろう。
あるいは何らかの理由で両親がいない場合、両親以外の保護者と。
だというのに、何で俺の場合は恋人が家庭訪問を受けてるんだろうな。
そんな風に思いながらも、今の俺の状態を考えればしょうがないかと、そうも思う。
「ほら、アクセルの話なんだから、アクセルもしっかりしなさいよ」
そうレモンに言われ、仕方がないかと溜息を吐いてから俺もリビングに向かうのだった。