転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4660話

「はっはっは。やるね君。それは中国拳法という奴かな?」

「ふんっ! 貴様こそ我流の割にはやる!」

 

 相澤とレイの模擬戦が終わり、次に行われたのはオールマイトの模擬戦。

 一体誰がその相手をする事になるのかと思っていたのだが、選ばれたのは五飛だった。

 小さい頃から修行を続け、まさに達人と呼ぶに相応しい中国拳法の実力を持つ五飛。

 それに対して、オールマイトは五飛が言ったようにどこかでしっかりと格闘技を習った訳ではなく、我流の戦闘技術だ。

 もっとも、多数の……それこそ数え切れない程のヴィランを相手にしてきたオールマイトだ。

 アメリカで修行をしていた時は、それこそAFOからの刺客も頻繁に送られていたらしい。

 そのような者達を相手にし続けた結果、オールマイトはOFAがなくなっても――実際にはまだ残滓があるらしいが、それは使えば減るものなので模擬戦で使える筈もない――五飛を相手に戦えるだけの実力は持っていた。

 マッスルフォームによって身体を覆っている筋肉は、普通ならそこまで筋肉をつければ動きが鈍くなるのでは? と思わないでもないが、オールマイトの場合はそれでもかなりの瞬発力を持つ。

 中国拳法特有の、流れるような連続攻撃を五飛に繰り出されながらも、弾き、防ぎ、回避してまだ1発もまともに当たっていないのを見れば、オールマイトの戦闘技術の高さが見て取れる。

 ましてや、五飛は完全にではないにしろ気による身体強化を使っている。

 それでもオールマイトは対処出来ているのだから、素直に凄い。

 PTやMSのような人型機動兵器に乗っての戦いであれば、五飛とレイの実力差はそうない。

 だが、生身での戦闘となると、五飛とレイの間には明確な差がある。

 これについては、それこそ五飛が小さい頃から生身での戦闘訓練を続けていたのに対し、レイは違ったという差だろう。

 まぁ、レイの出自を思えばそれも仕方がないが。

 ともあれ、生身での実力の差があるのは明白なのに、レイによって一蹴されてしまった相澤と、五飛が本当の意味で本気ではないながらも、やり合えているオールマイト。

 ……もっとも、相澤の場合は個性を持ったヴィランとの戦いが前提にあるというか、それに特化したような存在であるのに対し、オールマイトは普通に高い戦闘技術を持ち、相澤よりも圧倒的に経験が上だというのが、この互角……いや、それでもオールマイトが押され気味だが、とにかくそういう戦いになっていた。

 

「凄いな、あれ。五飛を相手に互角って……いや、この場合オールマイトだっけ? そいつの相手に五飛を選んだエヴァの目が確かだといった感じなのか?」

 

 スティングが近くに来て、そう言う。

 どうやらスティングの目から見ても、オールマイトの戦闘力は相応に高いらしい。

 

「エヴァなら、オールマイトの実力を見抜いていても、おかしくはないけどな。そういう意味では、この結果も自然な流れと言ってもいいと思うぞ」

「……ヒロアカ世界、ちょっと楽しみだな。やっぱり俺もこの前の戦いに参加したかったな」

 

 スティングがアウル染みた言葉を口にするが、イザークに止められた以上は仕方がないだろう。

 とはいえ、実際スティング達が来ても普通にAFOやヴィラン連合と戦う事は出来ていたと思う。

 

「はっ、はっ、はっ、はぁっ!」

 

 俺がスティングと話している間も、五飛とオールマイトの模擬戦は続く。

 五飛の連続攻撃、それこそ一ヶ所ではなくオールマイトの身体の色々な場所を狙い、防御の行動を間に合わせなくする。

 マッスルフォームのオールマイトは巨体なので、狙う場所はどこであっても多くなる。

 とはいえ、それでもオールマイトは五飛の攻撃を防ぎ、あるいは回避し続けているのだから、素直に凄いと思う。

 だが……

 

「くっ!」

 

 やはり身体が大きくなれば素早さには対抗出来なくなる。

 いや、勿論オールマイトに実力を考えれば、その辺の速度自慢が幾ら本気を出しても対処が可能なのだが、それはあくまでもその辺の速度自慢を相手にしての話だ。

 五飛のように……いや、より正確にはシャドウミラーの実働班のように、本当の意味での一流、あるいはその一流を更に超えた超一流を相手にした場合、オールマイトであってもどうしようもない。

 あるいは……五飛は中国拳法を多用するので、良くも悪くも手数の多さが大きな意味を持つ。

 そういう意味では、五飛を相手にするのならオールマイトよりも捕縛布を使う相澤の方が向いていた……うーん、どうだろうな。

 一見すると確かに素早い動きをする相手には相澤の方が向いているように思える。

 だが、レイが身体強化や瞬動を使って捕縛布を回避しつつ相澤の懐に潜り込んだように、五飛もまた同じことを出来る。

 ……いや、レイと五飛では生身の実力では五飛の方が圧倒的に上なのだから、だとすれば五飛は捕縛布を回避するのではなく、破壊する……この場合、破くといった表現の方が適切か? とにかくそんな感じで対処してもおかしくはないのだ。

 ましてや、捕縛布はそれなりに高価な品である以上、そうなったら相澤の経済的なダメージも大きい。

 あ、でもホワイトスターで実働班の訓練に参加しての事だとすれば、その辺りの情報を欲している公安から捕縛布の代金が出てもおかしくはないな。

 それどころか、捕縛布をより高品質な――同時に高価な――物にしてもおかしくはない。

 実際、実働班とやった模擬戦の情報というのは、ヒロアカ世界にとってはそれだけの価値があるのだから。

 神野区の一件で、シャドウミラーから派遣された面子が周囲に見せた戦闘力は、それだけのものだった。

 ……実際には荒垣のように正式にシャドウミラーに所属していない者もいたのだが、それは置いておくとして。

 

「あ、決まるぞ」

 

 そう言うと、スティングも模擬戦に視線を向け……

 

「ぐうっ!」

 

 今までは何とか五飛の攻撃を防いでいたオールマイトだったが、OFAを使わない状態ではやはり限界だったらしい。

 防御をすり抜け、肩から体当たりするような一撃がオールマイトの腹部に決まり、オールマイトの巨体を吹き飛ばす。

 そうして吹き飛ばされたオールマイトだったが、それでもすぐに立ち上がろうとし……

 

「そこまで!」

 

 ちょうどそのタイミングでエヴァが模擬戦の終了を宣言する。

 

「なっ!? 私はまだ……」

 

 戦える。

 そう言おうとしたオールマイトだったが、そんなオールマイトに対し、エヴァは呆れの視線を向ける。

 

「貴様がまだ戦えるというのは、見れば分かる。だが……見たところ、本気は出せないのだろう?」

「っ!?」

 

 エヴァの言葉は、どうやらオールマイトにとっても予想外だったらしい。

 息を呑み、俺に視線を向けてくる。

 オールマイトの視線にあるのは、エヴァに自分の事を……OFAについて言ったのかと、そういう事だったのだろう。

 だが、俺はそれに対し当然のように首を横に振る。

 実際、俺はエヴァにオールマイトについての情報は何も話していない。

 オールマイトが身体の治療は終わって万全の状態になってはいても、その力の根幹たるOFAを失ったというのは、エヴァが五飛と戦っているオールマイトの様子を見て察したのだろう。

 勿論、それはあくまでも全てを完全に把握したといった訳ではない。

 OFAについての詳細とか、そういうのも当然ながらエヴァは知らないだろう。

 だが、それでもある程度見抜くことが出来るのは、600年の経験からだろう。

 

「分かりました」

 

 俺の様子から、俺がエヴァに情報を漏らした訳ではないと判断したオールマイトが、渋々といった様子で頷く。

 

「さて、ヒロアカ世界の住人の実力をお前達も確認出来ただろう。この2人が訓練に混ざるのに異論のある者はいるか? まぁ、いてもその意見を聞くとは限らないのだがな」

 

 エヴァのその言葉に、だろうなと思う。

 実際、もしここで誰かが異論を口にしたとしても、エヴァならそれがどうした? といった具合に受け流すだろう。

 あるいは自分の意思を通したければ、その力を見せろとでも言うか?

 まぁ、普通に考えれば魔力や気についてヒロアカ世界の住人に知られるのは不味いと思う者もいるかもしれない。

 実際、ヒロアカ世界の住人であっても魔力や気を使えるのは……まだ確信は出来ていないが、人である以上は間違いないと思う。

 ヒロアカ世界にも魔力や気といった言葉は存在するし、知っている者は知っている。

 ただし、それはあくまでもゲームとか漫画とかアニメとかの空想上のもので、実際にそういうのがあるとは思っていない筈だ。

 だからこそ、実際にそれを自分の目で見るようなことがあれば、本気で自分も使えるようになりたいと考え、修行する者も出て来るだろう。

 ……問題なのは、その力がヴィランにも知られる可能性があるという事だろう。

 結果として、ヴィランが魔力や気を使えるようになったりしたら、洒落にならない。

 まぁ、その辺はヒロアカ世界のプロヒーロー達に頑張って貰うとしよう。

 

「よし、誰も異論はないな。では、訓練を始めるぞ。……相澤だったか。お前は弱いから、そこまで強くない者に相手をして貰え」

 

 そう、エヴァが相澤に向かって言う。

 相澤にとって……それこそヒロアカ世界においては間違いなく一線級のプロヒーローである自覚を持つ相澤にとって、エヴァのその言葉は決して容易に受け入れられるようなものではない筈だ。

 だが、相澤はそんなエヴァの言葉に不満を口にするようなことはない。

 レイとの模擬戦で、自分の実力がシャドウミラーの実働班においては通用しないというのを理解したからだろう。

 そもそも相澤の戦闘スタイルは捕縛布を主にした、対多数向けだ。

 だが、その根幹にあるのはやはり抹消という、見た相手の個性を使えなくする個性なのだ。

 多数いるヴィランの中で、明らかに強者のヴィランの個性を使えなくして、動揺させる。

 あるいは相澤に向かって個性を使おうとしたヴィランの個性を使えなくして、動揺したところを捕縛布で捕らえ、あるいは武器代わりにする。

 そんな戦い方が主な相澤だけに、シャドウミラー実働班を相手にする場合、個性がないので戦力が半減してしまう。

 ……これで抹消の個性が魔力や気も消せるのであれば、あるいはもう少し違ったかもしれないが、生憎と抹消で消せるのは個性だけだ。

 明日菜の魔法無効化能力が個性を消せないのと、同じようなものだろう。

 相澤も自分の個性がこの場では意味がないから、エヴァの指示に不満を抱かない……いや、不満は抱いてるのかもしれないが、それを表情に出すような事はしないのだろう。

 

「分かった。それで、誰に相手をして貰えばいい?」

「ふむ、そうだな。……マーベル、お前がやれ」

「……え? 私?」

 

 マーベルはまさか自分にこの話が来るとは思っていなかったのか、驚きの表情を浮かべる。

 とはいえ……なるほど、マーベルを選ぶ辺り、さすがエヴァといったところか。

 実働班の中で、一番の新顔はオルフェンズ世界で俺と合流したマーベルだ。

 以前……それこそダンバイン世界にいた時から、魔力についての訓練はしていたマーベルだったが、それでもそこまでの成果は上げていなかった。

 だが……だからこそ、実働班の中では弱い。

 勿論、マーベルもその辺りのについては十分に理解しているので、魔法球とかを使って訓練をしていたりするのだが。

 ただ、それでもやはり積み重ねてきた年月にはそう簡単に及ばない。

 そういう訳で、相澤の相手としてはマーベルがいいというのがエヴァの判断だったのだろう。

 

「そうだ。どうした、何か文句でもあるのか?」

「……分かったわ」

 

 エヴァの言葉に不満そうな様子を見せつつも、マーベルが頷く。

 マーベルにしてみれば、エヴァが口にしたそこまで強くない者という表現に思うところがあったのだろう。

 ……どうせなら、弱い者じゃなくてきちんと手加減が出来る者が相澤と模擬戦をした方がいいと思うんだが。

 まぁ、生身での模擬戦の責任者はエヴァだ。

 そのエヴァがこのようにいってるのだから、俺としても反対は出来ないが。

 

「オールマイトは、普通に……そうだな、五飛とある程度やり合えるだけの力があるから、ムラタとやってみるか?」

「ほう?」

「……え」

 

 エヴァの言葉に嬉しそうに声を上げたのはムラタで、たっぷりと数秒の時間が経過してから言葉を返したのが、オールマイト。

 まぁ、オールマイトは神野区の戦いでムラタが普通に……一切の躊躇なくAFOの身体を斬っているのを見ているしな。

 それだけに、OFAがなくなった今のオールマイトにしてみれば、とてもではないが戦いたい相手ではないのだろう。

 もっとも、それでもこれからのことを思えばムラタとの模擬戦もやる必要があると判断し、意を決したようにムラタと向き合い……結局この日の模擬戦は、相澤やオールマイトにとっては苦い経験となるのだった。

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