転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4664話

 部屋の整理が出来たので、俺は1階に向かう。

 俺と一緒に移動するのは、ロボット掃除機とAI搭載型スーツケース。

 ただし、俺の手には2台分の充電装置がある。

 正直なところ、空間倉庫に入れて移動した方が手っ取り早いと思ってはいるのだが……まだA組ではヤオモモしか俺の正体を知らない。

 そうなると、やっぱり堂々と空間倉庫を使う事は出来ない。

 そんな訳で1階に下りると……

 

「あら、アクセルさん」

 

 そこには少し困った様子のヤオモモの姿がある。

 

「丁度いい……と言いたいところだけど、どうしたんだ?」

 

 ロボット掃除機については相澤から許可を貰っているので問題ないが、スーツケースについては……まぁ、学級委員長のヤオモモからOKは貰っているものの、一応念の為に改めて聞いておいた方がいいと思ってやって来たのだが、どうヤオモモに連絡をするか考えていなかった。

 当然ながら、男が女子寮に、あるいはその逆であっても移動するのは禁止だし、もしそれが相澤に知られたら除籍……いや、そこまでいかないか? 停学とか反省文とか、そんな感じになると思う。

 そんな訳で、電話を掛けるか、あるいはLINで呼ぼうと思っていたのだが、まさかその対象であるヤオモモがいるとは思わなかった。

 だが、ヤオモモは少し困ったように笑みを浮かべ、口を開く。

 

「その……お部屋の広さが少し予想と違ってまして……荷物の大部分を送り返したところですわ」

「あー……」

 

 ヤオモモの家は屋敷と呼ぶべき大きさで、当然ながら部屋も10畳とか12畳とか、あるいはもっと広いのだろう。

 その広さを予想して、ヤオモモは荷物を用意したのだろう。

 だが、実際にはヤオモモが予想していたよりも狭い部屋だった訳だ。

 ……とはいえ、ヤオモモは俺の部屋に来た事も何度かあった。

 それを思えば、一般的な部屋の広さは……いや、駄目か。

 確かにヤオモモは俺の部屋に何度か来たが、その時は基本的にリビングにいた。

 俺の寝室ならこの寮の部屋と同じか、少し広いくらいではあったが、ヤオモモが俺の寝室に入ったりした事はなかったしな。

 で、俺が住んでいたのは仮にも高級マンション……それもあの辺り一帯では一番家賃の高いマンションだっただけに、リビングもかなり広かった。

 あのリビングを知っていれば、ヤオモモが寮の部屋はもっと広くなっていると思っておかしくはない。

 これはヤオモモがお嬢様だからこそ起きたミス……といったところか。

 ともあれ、そんな訳で荷物の大部分を送り返すことにしたと。

 ヤオモモの家なら、荷物を運ぶトラックとかそういうのを用意するのも難しくはないだろうし。

 ……あるいは、雄英が全ての生徒の引っ越しをするのに、もしかしたら八百万家の力を借りていたりしたのかもしれないな。

 

「そうなると、必要な荷物だけをどうにか残したといったところか?」

「はい、お恥ずかしながら」

 

 言葉通り恥ずかしいのだろう。

 ヤオモモの頬が薄らと赤くなっている。

 まぁ……うん。普通に考えれば今回ヤオモモがやったミスは恥ずかしいものだよな。

 とはいえ、人が失敗する事で学んでいくのだと考えれば、それは決して悪い事だけじゃないと思う。

 

「話は分かった。取りあえず部屋の件で問題がなくなったのは良かったと思うよ。それで……こいつらだが」

「あら、お久しぶりです」

 

 俺の側にいるロボット掃除機とAIを搭載したスーツケースを見て、ヤオモモがそう言う。

 俺の家に何度も来ているヤオモモだけに、当然ながらロボット掃除機もスーツケースも見覚えがある。

 あるいは相澤に聞いた時、学級委員長のヤオモモが許可を出せばいいと言われたので聞いた時、即座にヤオモモが許可を出したのは、実際に自分がロボット掃除機とスーツケースを知っていたからとか、そういう理由かもしれないな。

 かといって、こうして挨拶をするのはどうかと思わないでもなかったが。

 とはいえ、今の状況を考えると印象が良いのは助かるけど。

 

「それで、ロボット掃除機はともかく、スーツケースの方は本当に1階に置いて……というか、自由に行動させてもいいのか?」

 

 そう尋ねると、ヤオモモは即座に頷く。

 

「勿論構いませんわ」

「分かった、それなら、俺も適当な場所に置いておくよ。……コンセントを2つこれで占有してしまうけど、問題ないか?」

「ええ、見たところ1階にはそれなりの数のコンセントがあるようですので、その辺りについては問題ありませんわ」

 

 そうしてヤオモモと相談をしながら、充電用の機器をどこに設置するのかを決めていく。

 とはいえ、ヤオモモが言ったように1階にはそれなりに多くのコンセントが用意されているので、充電用の機器はあまり人が来ないような隅にあって、そこで待機していても邪魔にならないような場所にすぐに決まった。

 

「よし、ここなら問題がないな」

「そうですわね。……それで、アクセルさんはもう荷物の整理は終わりましたの?」

「ああ、知っての通り、俺の場合は空間倉庫があるからな。荷物を段ボールに入れたり、ダンボールから出したりとか、そういうのが必要ないという意味で、かなり楽だ。重量とかそういうのもあまり気にしなくてもいいしな」

 

 普通の引っ越しなら、棚とかそういうのを運ぶのにも苦労する。

 だが、俺の場合はその辺の心配がない訳で、そういう意味では本当に楽なんだよな。

 

「羨ましいですわね」

 

 しみじみとヤオモモが言ってくる。

 ヤオモモの場合は荷物が多すぎてその大半を送り返したとはいえ、それでも恐らく部屋にはまだ結構な荷物が置かれている筈だ。

 これからその荷物を出して、部屋の中に置いていくといったようなことをする必要があるのだから、ヤオモモが大変そうにしているのは分かる。

 正直なところ、手伝ってやりたいとは思うが……俺が女子寮に入るのは、色々と不味い。

 いや、影のゲートを使ったりすればその辺は問題ないかもしれないが……ただ、壁はそこまで厚い訳ではない。

 勿論ペラペラで完全に声が聞こえるといった訳ではないが、それでも俺の声が女子寮側で聞こえるというのは、不味いだろう。

 いっそ、音量を大きくした電話だとか、そういうのでなら……あるいは?

 そうも思ったが、やっぱり無理はしない方がいいのも事実。

 なので、俺は部屋に戻るというヤオモモを見送って、1階の共用スペースにあるソファに座る。

 うーん……まぁ、しょうがないとはいえ、このソファはそこまで良い品じゃないな。

 もっとも、このソファは全ての寮に用意する為にそこそこの品質の物を用意したのであって、俺のは公安のカードを使って購入した高級品だし。

 もっとも、ソファというのは本当の意味で高い奴だと100万くらいする奴もある。

 それと比べると、俺が買ったソファは10万ちょっとくらいなので、高級品ではあるが、高級品の中では安めのソファとなる。

 ただ、それでも高級品である以上、座り心地は悪くないんだよな。

 だからこそ、寮に揃える為のこういうソファよりも座り心地はいい。

 ……優が来た時、菓子クズとかをボロボロと零していたりしたので、そういう意味では使い方に難があると言ってもいいのかもしれないが。

 

「あれ、アクセル。どうしたんだ、こんな場所で」

 

 ソファに座りながらTVを見ていると、不意にそんな風に声を掛けられる。

 声のした方に視線を向けると、そこに上鳴の姿があった。

 TV……まだ神野区の件が色々とやってるんだが、その中で問題になっているのは、やっぱりシャドウミラーの面々だった。

 まぁ、プロヒーローのリストとかそういうのを調べても、シャドウミラーの面々が載ってる筈もないので、一体誰だという風にはなっているが。

 考えられる可能性としては、ヴィジランテではないかともあったが……まぁ、普通ならそう考えるよな。

 異世界からやって来た存在だとか、そういうのは普通は思いつかない。

 

「俺はもう部屋の片付けが終わったからな。あれを持ってきたついでに、ここでゆっくりしてるんだよ」

 

 俺は上鳴にそう返し、早速1階の掃除をしているロボット掃除機に視線を指さす。

 上鳴はロボット掃除機を見て、なるほどと頷いた。

 

「ここを掃除してくれるだけで助かる……そういえば、掃除ってどうするんだろうな? 自分の部屋は自分でやるとして、1階は全員で? それとも業者が入るとか?」

「この寮の優遇っぷりを思えば、業者が来る可能性の方が高いと思うけど……プロヒーローとして、掃除くらいはやれとか、相澤なら言いそうじゃないか?」

「言いそうだよな」

「相澤の好きな効率を考えれば、俺達がやるよりも専門の業者に頼んだ方がいいと思うけど」

「そっちもありそうだけど、どうだろ?」

 

 2人揃って首を傾げる。

 どっちも普通にありそうなので、素直にどっちとも言えないのだ。

 とはいえ……そうだな。ロボット掃除機を1階に持ってきたって事は、当然ながら俺の部屋の掃除は自分でやる必要があるのか。

 これが昨日まで……いや、今日まで住んでいたマンションなら、それこそ高級マンションだけに業者に頼む事も出来たし、実際に俺は頼んでいた。

 ロボット掃除機がかなり優秀だったので、実際には殆ど掃除をする必要はなかったらしいが。

 ただ、当然ながらロボット掃除機が掃除出来るのは床だけなので、窓のサッシとか、テーブルの上とか棚の上とか、そういう場所は業者がきちんと掃除していた。

 当然ながらロボット掃除機は俺が持ってきた奴なので、掃除出来るのはあくまでも床だけとなる。

 棚の上とかそういう場所は人力でやる必要があった。

 

「まぁ、その辺は今夜か明日にでも説明されるだろ。それに……1階はそれなりの広さがあるが、A組の人数を考えればすぐに終わるだろうし」

「……だろうな」

 

 人数というのは、やはり力なのだ。

 まぁ、いざとなったら炎獣を使ってどうにか出来る……出来る……うーん、炎獣で掃除が出来たりするか?

 そう疑問に思う。

 炎獣であれば、棚の上にある埃を燃やしながら、家具に燃え移らないようにするとか、そういうのは出来ると思う。

 思うのだが、そうなると埃が燃えかすに変わるだけではないかとも思ってしまうのだ。

 勿論、炎獣なら燃えかすを床に落として、それをロボット掃除機が掃除するといったような連携? は出来ると思うけど、だからといってそれはそれで面倒そうなのも事実なんだよな。

 

「まぁ、掃除はともかくとしてよ。アクセル、昼飯どうする?」

「あ? あー……なるほど、もうそんな時間か」

 

 1階にある時計を確認すると、もう少しで12時といった時間だ。

 寮にランチラッシュが作った食事が届けられるのは、朝食と夕食。

 そして当然ながら今日の朝食の時間はもうすぎているので、食事はない。

 元々昼食が届けられるようなことはないので、昼食は自分達でどうにかする必要がある訳だ。

 俺の場合は、それこそその気になれば空間倉庫の中に大量の食料や食材が入っている。

 あるいはコンビニ弁当やスーパーの弁当、あるいはちょっと豪華にパック寿司もある。

 いや、単純に寿司というだけなら、寿司屋で握って貰った奴とかもあるので、それを食べようと思えば食べられる。

 だが、当然ながら空間倉庫について知っているのはヤオモモだけなので、もしそうなっても食べるのは俺だけか、俺とヤオモモだけとなる。

 ……まぁ、それはそれで構わないと言えば構わなかったりもするんだが、どうせなら寮で初めての食事である以上は、もっとこう……特別感が欲しい。

 同様の理由で、カップラーメンとかも却下だ。

 俺が住んでいたマンションの1階にあった高級スーパー、一応カップ麺とかそういうのも売ってんだよな。

 ただし、高級スーパーとしての意地なのか、1個300円くらいの、いわゆる高級カップラーメンと呼ばれる類の物が多かったが。

 で、当然ながら俺はそういうのも相応に買い溜めしている。

 ただ、そういう高級カップラーメン……具体的には名店が監修したスープを使っていたりとか、そういう奴であっても、今この時に食べるのは合わないと思う。

 もうちょっとこう……例えば、どこかに全員で食べに行くとか?

 もしくはいっそ、出前を頼むというのでもいいかもしれないな。

 

「どうする? 忙しくない、ある程度余裕のある連中を呼んで、どこかに食べに行くか? もしくは……食堂は……どうなんだろうな? 今日やってるかどうか分かるか?」

「さぁ? でも、朝食と夕食でランチラッシュの料理が食べられるのなら、どうせなら他の料理を食いに行きたいな」

「なら、外か。……駅前にあるお好み焼き屋とかはどうだ?」

 

 以前チャレンジメニューに挑戦したから、再チャレンジ出来るかどうかは分からないが、それがなくても俺としては純粋にお好み焼きを食べたい。

 

「いいな。じゃあ、クラスのグループに書き込んで……もう少ししたら行こうぜ」

「分かった。……一応1階にはキッチンもあるんだから、いっそ材料を買ってきて自分達でお好み焼きを作るとか、そういうのでもいいかもしれないけど」

「いいな、それ。けどそうなると焼くのに時間が掛かるし、焼く場所もないから大変そうだけど」

 

 そんな風に会話をしながら、俺と上鳴は皆が下りてくるのを待つのだった。

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