転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4666話

「美味しい……」

 

 イカ玉を食べた耳郎が、思わずといった様子で呟く。

 あれ? 耳郎は前にもこの店に来た事があったような気がするんだが。

 まぁ、その辺については特に突っ込まなくてもいいか。

 あるいは前に来た事があっても、その時はイカ玉じゃなくて別のメニューを注文していて、今日注文したイカ玉が耳郎の口に合った……という事かなのかもしれないし。

 ちなみに全員が店員に焼いて貰う方を選んだので、焼き上がるのを待っている者はいない。

 全員がそれぞれの席でお好み焼きを食べている。

 もっとも、一緒に来た人数が人数なので、当然ながら1つのテーブルでは足りず、幾つかに分かれてはいたが。

 

「何でこんなに美味しいんだろ。家で作るのと、全く違う」

「あれ? 耳郎は家でお好み焼きを作ったりするのか?」

 

 不思議そうに呟く耳郎の言葉に、俺もまたイカ玉を食べて美味いと思いつつ、そう尋ねる。

 

「え? あ、うん。ただ、ウチが作るのはスーパーとかで売ってるお好み焼き粉を買ってきて、その通りに作るだけだけど。……多分、そうやって書いてるとおりに作ってるから、美味しい事は美味しいけど、このお好み焼きとは違うんだろうね」

「まぁ、それはそうだろ。ここは仮にもお好み焼きの専門店なんだし。しかも美味いってことで、それなりに流行ってる……まぁ、今日は偶然人の数がそこまで多くないけど」

 

 俺達以外にも客はいるが、その数は決して多くはない。

 以前この店に来た時には、全員で座るのがちょっと難しいかも? と思えるくらいには混んでいた。

 だが、今日は雄英が夏休みだというのもあってか、俺達以外の客は少ない。

 

「そうだね。……でも、やっぱりどうせ食べるのなら、美味しいお好み焼きを食べたいじゃない」

 

 そう耳郎が言ってくるのを聞いて、以前何かの拍子で荒垣から聞いた事を思い出す。

 

「何かでちょっと見たんだが、お好み焼き粉として売ってる奴に、蕎麦粉を少し入れると隠し味的な感じで美味くなるらしいな」

「え? 蕎麦粉? 小麦粉じゃなくて? いや、お好み焼き粉のメインは小麦粉だから、小麦粉を追加しても意味がないとは思うけど」

「まぁ、そうだな。どうせ追加するのなら、長芋とか山芋とか、そういうのを擦って入れた方がいいだろうし。ただ、蕎麦粉は蕎麦粉で美味くなるらしい。……まぁ、蕎麦粉を使ったクレープに近い料理で、ガレットってのもあると考えれば、蕎麦粉を入れるのも何となく納得出来ないか? 後は、蕎麦粉は蕎麦粉でも小麦粉の入っていない100%の蕎麦粉な」

 

 蕎麦というのは蕎麦粉しか使っていないと思いがちだが、乾麺の蕎麦の原材料を見ると、結構な割合で小麦粉が入っている。

 原材料の表記順は割合の多い順番なので、最初に小麦粉があって、次に蕎麦粉があるのは……うん、それなら最初からうどんを食べた方がいいと思う。

 ただ、こっちは四葉から聞いたんだと思うけど、素人が蕎麦打ちをやる時、蕎麦粉100%だとかなり難しいらしい。

 小麦粉を使う事によって、上手くいくようになるとか。

 そういう意味では、2:8蕎麦とかそういうのは、分からないでもないけど……やっぱり小麦粉の方が先に原材料に表記されている奴はどうかと思う。

 とはいえ、今の話題の場合必要なのは乾麺の蕎麦ではなく、あくまでも蕎麦粉だ。

 スーパーで売っている蕎麦粉は、普通に蕎麦粉100%だ。

 いや、勿論小麦粉が混ざっているのもあるのかもしれないが、俺はそういうのを見た事がない。

 

「後は、出汁パックを破いて、それを入れるのでも魚粉的な効果を発揮して一段上の味になるらしいな」

 

 荒垣が言うには、炒飯だったり、焼きそばだったりの仕上げに出汁パックの中身を入れてもいいらしい。

 もっとも、出汁パックと一口にいっても色々な調味料が入っていたりする奴もあるので、出来ればそういうのが入っていない奴を使った方がいいらしいけど。

 

「へぇ……アクセルって何気に料理に詳しいね」

「いや、別に詳しい訳じゃないぞ? 動画投稿サイトとかそういうので料理チャンネルを見たりはしてるけど」

 

 捌いていくぅっ、の奴とか、大食いの奴とか、一見するとヤクザにしか見えないキャラ作りをしている奴とか。

 そんな感じの料理動画はそれなりに見る機会があるし、そういうのでもそれなりに知識にはなる。

 あるいは料理漫画とか。

 

「ふーん、意外な趣味だね」

「あ、耳郎もそう思う? 私も今の話しを聞いていてそう思った」

 

 少し離れた場所に座っていた三奈がそう言ってくる。

 

「いや、別にそこまで驚かれる程に意外な趣味って訳でもないと思うけどな」

「えー、だってアクセルって動画投稿サイトとか、そういうの見ているようなタイプには思えないし」

 

 三奈の言葉に、そうか? と首を傾げる。

 正直なところ、自分ではその辺について一体どういう感じなのかというのは分からない。

 いや、勿論誰かが俺をどういう風に思うのかとうのは、俺がどうこう言うような事ではないんだろうけど。

 ただ、それでもやはり俺にしてみれば動画投稿サイトとかは普通に見る訳で。

 スマホがあって、時間があれば、それは別におかしな事でもないだろう。

 そんな風に思いながら、焼きそばを口に運ぶ。

 ……魚粉とかはないけど、それでもやっぱりこういう専門店で食べる焼きそばって美味いよな。

 いや、この店はあくまでもお好み焼きの専門店であって、焼きそばの専門店ではないのだが。

 ただ、お好み焼きのような鉄板料理と考えれば、そこまで間違っていないようにも思える。

 それに、家庭で作る焼きそばも美味いことは美味いんだが、荒垣曰く火力の問題でどうしても最高の出来にはならないらしいし。

 まぁ、それでも色々と技量を尽くせば、専門店並とはいかないが、それに少し劣る程度の焼きそばは作れるらしいけど。

 

「まぁ、人には色々な趣味があるって事だ。……例えば、上鳴がラップをやっていても……いや、それはそれでらしいか?」

「おい!?」

 

 上鳴がそう突っ込む、

 けど、上鳴とラップって、違和感がないように思えるんだよな。

 

「上鳴がラップ……それで、やっぱり、ウェイウェイ言うの? ぷっ!」

 

 耳郎がそう口を挟む。

 ……耳郎にとって、上鳴のウェイるのは余程ツボなのだろう。

 いつもその辺りが話題になるとすぐに笑ってしまうのだから。

 もっとも、そうして笑っていれば耳郎が耳郎さんになる事はないので、俺としても嬉しい事だが。

 上鳴には犠牲になって貰おう。

 

「ねーねー、アクセルの部屋ってどんな部屋なの?」

 

 上鳴と耳郎の件をスルーするように、三奈がそう聞いてくる。

 とはいえ……

 

「別に以前の部屋とそう違いはないぞ? 三奈は何度か俺の部屋に来ただろ? 前のマンションにあった家具とか電化製品のうち、使えそうな奴だけ持ってきた感じだし」

 

 そう言うと、三奈が微妙に残念そうな様子を見せる。

 いや、そこまで俺の部屋が気になる感じか?

 あ、でもそうだな。机とかそういうのは寝室にあった奴を使ってるから、寝室に入った事がない三奈は初めて見る物も多いかも?

 

「えー、でもアクセルが前に住んでいた部屋と、今の寮の部屋だとどうしても使える広さが違うから、そうなると印象も違うんじゃない?」

「まぁ、それは否定しない」

 

 実際、寮の部屋と以前のマンションでは使える面積が大きく違う。

 そういう意味では三奈の言う事は決して間違ってはいないのだろう。

 

「でしょ? ふっふーん」

「いや、何でそんなに自慢げなんだよ」

 

 何故か自慢げな三奈に、思わずそう突っ込む。

 

「えー、だってアクセルの事を分かってるんだから、自慢してもいいでしょ。ふふん」

「む」

「へぇ」

 

 そんな三奈の様子に、何故か葉隠と耳郎が反応する。

 うーん……これは喜んでいいのか?

 そう考え、ふとお好み焼き屋に来ている最後の1人の梅雨ちゃんが気になったのだが……

 

「ほら、峰田ちゃん。口元にソースがついてるわよ」

「あ、ああ。ありがとう。……これが……バブみ……?」

 

 梅雨ちゃんは、峰田の世話を焼いているところだった。

 まぁ、峰田も女子と一緒に食事をして、こうして世話を焼かれてるんだから、悪くないんだろう。

 何気にあの2人は接点が多いよな。

 とはいえ、それは峰田を受け入れる程に懐の広いのが梅雨ちゃんしかいないから……という理由もあるのだろうが。

 もしかしたら、もしかするかもしれないな。

 そんな風に思いつつ、俺は昼食を楽しむのだった。

 

 

 

 

 

「じゃあ、午後からも頑張ろう!」

『おう!』

 

 昼食が終わり、寮に戻ってくると、1階で三奈が気合いを入れる声を出し、それに多くの者達が同意し、それぞれの部屋に戻っていく。

 そんな中、既に部屋の片付けが終わっている俺は午後からは暇なので、1階に残る。

 ソファに座って床を掃除しているロボット掃除機を眺めていた。

 気のせいかもしれないが、何だかロボット掃除機が嬉しそうに掃除をしているように見えるな。

 俺の気のせいか?

 ……まぁ、そもそもロボット掃除機のAIに感情の類はないんだから、嬉しそうだとか、そういう風に思うのがそもそもの間違いなのかもしれないが。

 うーん、こうしていても暇だな。

 あるいは誰かの部屋の手伝いをしてもいいんだが……わざわざ自分から行くというのもなんだし、腹ごなしも兼ねて、適当に寮の周囲でも見て回ってくるか。

 そう考え、TVを消してソファから立ち上がる。

 充電装置のある方にいるスーツケースを一瞥するも、何故か今はスーツケースは動いていない。

 あるいはロボット掃除機の仕事の邪魔をする訳にはいかないとか、そんな風に考えているとか?

 ……いや、だからAIに自我の類はないんだって。

 まぁ、俺が考えるまでもなくそこには何かあるのだろうと考え、寮を出る。

 とはいえ、この寮は雄英の校舎からそう離れていない場所にあるので、寮の周囲を見て回るといったような事をするにしても、それはつまり雄英の校舎の近くを適当に見て回るという事になる訳で……

 

「それはそれで、あまり面白くないよな」

 

 そう呟く。

 それでも一応見て回るくらいの事はしてもいいだろうと考え、歩いて回る。

 寮ということで当然ながら、他の学科や学年の寮も俺達A組の寮と外見は同じだ。

 そうなると、寮を間違えたりとかする奴も出て来そうな気がするな。

 一応寮の入り口にクラスが大きく書かれているので、分からないって事はないけど……これ、来年とか再来年になったらどうなるんだ?

 基本的に雄英はクラス替えないので、1年のクラスがそのまま3年まで続く。

 そうなると俺達は当然来年は2-Aになる訳で……引っ越しをするのか、それとも寮に書かれているクラス名が変わるのか。

 普通に考えれば、やっぱり後者だろうな。

 どっちが大変なのかと考えれば、やはり引っ越しだろうし。

 そんな風に思いながら歩いていると、不意にミッドナイトが向こうから歩いて来るのに気が付く。

 俺から少し遅れ、ミッドナイトもどうやら俺の姿に気が付いたらしい。

 

「アクセル、どうしたの? 部屋の片付けがあるでしょう?」

「俺はもう終わりました。ミッドナイト先生も知ってるように、俺には空間倉庫という能力がありますから」

 

 あれ? ミッドナイトに空間倉庫について話したっけ?

 ふとそう思ったが、混沌精霊について話している以上、空間倉庫についても別に隠さなくてもいいだろうと思い直す。

 

「そう、羨ましいわね」

 

 しみじみと、ミッドナイトがそう言ってくる。

 ミッドナイトにしてみれば、空間倉庫というのは本当にもの凄く羨ましいのだろう。

 実際問題、普通に考えればそのように思うのは当然だとは思うけど。

 ましてや、俺の空間倉庫にはコロニーくらいの大きさであっても容易に収納出来る。

 そこまではさすがに教えるつもりはないが、それでもミッドナイトから見ても本当に……心の底から羨ましいと思えるのだろう。

 

「そうですね。非常に便利なのは間違いないですよ」

「……立場によって言葉遣いを変えるのは分かるけど、アクセルという人物を知った以上、何だかこう……こそばゆいわね。他に誰かがいる時は困るけど、今は普通に話してもいいわよ?」

「そうか? じゃあ、そうさせて貰うよ」

 

 とはいえ、ミッドナイトにしてみれば俺は生徒といったイメージの方が強いだろうし、生徒と教師として接してきた時間の方が長いんだけどな。

 

「それで、ミッドナイトは何でこんな場所に? 俺はさっきも言ったけど、引っ越しが終わったから適当に見て回っている感じだが」

「アクセルみたいな人がいないかどうかをね。……適当に見て回るのはいいけど、ゲートの方に行かれると困るでしょ?」

「あー……うん。けど、セメントスが門というか、壁を作ったんだし、その心配はないんじゃないか?」

「それでも念の為によ。もしかしたら、何かの拍子に生徒がゲートの近くに行って、セメントスの作った壁が何かと疑問を持つかもしれないでしょう?」

 

 その言葉に、なるほどと頷きながら俺はミッドナイトと共に散歩をするのだった。

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