転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4670話

「じゃあ、今日はありがとう」

 

 ゲートを使ってヒロアカ世界に戻ってくると、ミッドナイトはそう言って校舎に向かう。

 そんなミッドナイトを見送り、空を見る。

 空が赤くなっており、それが既に夕方であるという事を示していた。

 結局ミッドナイトは、有言実行といった感じでずっと博物館にいたんだが……それで本当に良かったのか?

 いやまぁ、本人が楽しんで博物館にいたのを思えば、俺がこうして心配する必要もないんだが。

 それに実際、シャドウミラーの博物館は門世界の諸々がかなり大量にあり、それこそ人によっては1日どころか数日いてもまだ足りないと思ってもおかしくはない。

 そういう意味では、ミッドナイトが博物館を楽しんだのはそんなにおかしくはない……のかもしれない、多分。

 まぁ、単純にミッドナイトが喜んだだけじゃなくて、校長に……あるいは公安に報告をする為にしっかりと博物館を見ていたとか、そんな感じでもおかしくはないし。

 その辺りについては、正直なところ俺がどうこう言っても仕方がない……いや、そういえばオールマイト、校長、相澤、ミッドナイトといったように雄英からは結構な人数がホワイトスターには来ているが、公安からはまだ誰も来ていないな。

 せめて、公安における俺の担当とも言うべき目良だったり、あるいはいっそ公安委員長だったりをホワイトスターに招待した方がいいかもしれないな。

 まぁ、その辺については俺がどうこうするよりも、政治班に任せた方がいいと思うが。

 

「さて、帰るか」

 

 そんな風に言い、俺も寮に向かって足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 寮に入ると、すぐに食欲を刺激する香りがしてくる。

 これが何の匂いなのかというのは、考えるまでもないだろう。

 カレーだ。

 

「お、アクセルじゃねえか。何だ、外に行ってたのか?」

 

 ソファに座ってTVを見ていた切島が、俺を見つけるとそう声を掛けてきた。

 TVでは相変わらず、神野区についての特集をやっている。

 ……いや、まだ神野区の一件が終わってからそこまで時間が経ってる訳じゃないし、それは当然か。

 とはいえ、夕方なんだから神野区の特集よりももっとしっかりとしたニュースを流して欲しいと思うんだが。

 特に何か新しい情報でもない限り、同じ内容を延々と流すのは、視聴者も飽きるだろうし。

 とはいえ、その辺りについてはTV局が……マスゴミが考える事なので、俺がどうこうといったように考える必要はない。

 切島も熱心に神野区の特集を見ているというよりは、やる事がないから眺めている……そんな感じに思える。

 寮に帰ってきた俺を見て、即座に声を掛けてきたのもそんな感じだったからなんだろうし。

 

「ああ、俺は午前中で片付けが終わったから、特にやることもないし適当に周囲を見て回っていた」

 

 実際にはミッドナイトと共にホワイトスターに行っていたのだが、その件についてはここでは言える筈もない。

 あるいはミッドナイトと一緒にいたというのは言ってもいいかもしれないが、そうなればそうなったで、峰田辺りが暴走しそうだし。

 もっとも、俺がミッドナイトと一緒に行動しているのは多くの者達に見られているので、峰田がどこからかその情報を聞いてきたりすれば、また話は別だと思うけど。

 ……ああ、でも峰田は何気に顔が広い。

 具体的には、1学期中に色々な学科やクラスに顔を出しては、ナンパをしていたので、その辺りの関係もあって知り合いはそれなりに多かったりする。

 とはいえ、当然ながら女の多くからは嫌われているし、真面目な生徒……A組でなら、飯田タイプとは相性が悪い。

 これが上鳴タイプであれば、同じ女好きとしてお互いに連絡先を知っていたり、あるいはLINとかを使って女好きのグループを作ったりもしているのかもしれないが。

 そんな峰田だけに、俺がミッドナイトと一緒にいたという情報を入手する可能性も決してゼロではない訳だ。

 

「ふーん。他の寮はどうだった?」

「やっぱり、多くが頑張って引っ越しをしていたよ」

 

 俺や障子のように午前中で終わる生徒というのは、かなり少ないだろう。

 それこそ、場合によっては夕方になった今もまだ部屋の片付けをしている者がいてもおかしくはない。

 ヤオモモのようにスタートが遅かったり、あるいは部屋の整理をしている最中に見つけた漫画を読んでいたり、疲れて途中で昼寝をしてしまったり……それ以外にも色々な理由によって、まだ引っ越しが終わっていなくてもおかしくはないのだ。

 

「大変そうだな」

「切島は、こうして1階にいてゆっくりしてるって事は、もう終わったのか?」

「ああ、漢らしい部屋だぜ!」

 

 自信満々にそう言う切島だったが……そんな切島の様子を見ると、微妙に嫌な予感がするのは決して気のせいではないだろう。

 とはいえ、部屋というのはあくまでも自分が快適ならいいのだから、そういう意味ではどういう部屋であっても問題はなかったりするのだが。

 けど、誰かが遊びに来たりとかもするから、その辺りを考えるとやっぱりやりすぎなのはどうかと思う。

 切島とはそれなりに親しいので、近いうちに部屋に遊びに行く事もあるかもしれないので、その時を楽しみにしていればいいだろう。

 

「それよりも、この匂い……今日の夕食はカレーか?」

「ああ。学食の人が持ってきてくれたぜ。朝食と夕食だけとはいえ、毎日ランチラッシュの食事を食べられるってのは、ラッキーだよな」

「昼食も2学期が始まって学食で食べれば、3食全部ランチラッシュの料理になるしな。……けど、カレーか……」

 

 ランチラッシュの食事を食べられるというのは、俺にとっては非常に嬉しい。

 嬉しいのだが、その食事メニューがカレーとなると……うん、色々と問題があるのも事実だった。

 以前、1学期の昼休みに学食に行く時、あるいは林間合宿でカレーを作った時もそうだったが、国民食のカレーだけに、それぞれカレーには一家言ある者が多い。

 単純なところで、鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、海鮮類……といったようにメインの具に何を使うか。

 ジャガイモを入れるかどうか、入れるならいつ入れるのか。

 タマネギは飴色になるまで炒めるのか、それとも具として使う為にある程度炒めるだけでいいのか。

 ニンジンを入れるのか。

 あるいはそれ以外の具を入れるのなら、どれか。

 また、辛さは甘口から激辛まで、どれにするのか。

 付け合わせは福神漬けかラッキョウの酢漬けか。

 トッピングを卵にするのなら、それは完熟か半熟か……あるいは生か。

 もしくはゆで卵じゃなくて目玉焼きなら、片面焼きか両面焼きか、こちらも完熟か半熟か。

 隠し味は摺り下ろしたリンゴか、コーヒーか、ソースか、ケチャップか。

 すぐに思いつくくらいで、こんなに色々と考える事がある。

 ましてや、これはあくまでもぱっと思いつくだけで、もっと詳細に考えると幾らでも工夫出来るところがある。

 そんな中で、カレー。

 今日の夕食では、色々と面倒な事になりそうな気がするな。

 

「何だよ、もしかして辛さを気にしてるのか? ランチラッシュは何種類かの辛さを用意してくれたみたいだぞ。お代わり用のご飯もあるし、トッピングもしっかりと用意してるから、辛さを気にする必要はないと思うぞ。……もっとも、一番多いのは中辛で、一番少ないのは辛口……いや、その更に上のスパイシーだったか? それらしいけど」

「ふーん、なら俺はそのスパイシーを食べるか」

「……おい、アクセル。本気で言ってるのか? 辛口よりも上なんだぞ?」

 

 切島がじっと俺を見てくるが、俺はある程度辛いのは大丈夫だ。

 具体的には、辛いと言われているカレールーの中でも、それこそ辛口よりも上のスパイシーであっても普通に食べられるくらいには。

 ランチラッシュも、辛口の上をスパイシーとしたという事は、もしかしたらそのカレールーを使ってるのかもしれないな。

 いや、ランチラッシュならそもそもカレールーを使ったりはせず、全て自分で作るか?

 

「そうだな。ランチラッシュが作ったカレーだし……取りあえず、最初に少し食べてみて、それで問題ないようならそのままスパイシーを食べるよ」

「そうした方がいいな。他にもトッピングで茹でた野菜とか、トンカツ、牛カツ、コロッケ、ゆで卵……といったのがあるから、そっちにも注目だな」

 

 嬉しそうに言う切島だったが、それ……もし余ったらどうするんだ?

 いやまぁ、A組の場合は最悪俺が食べきるとか、あるいは個性の関係でヤオモモが食べるとか、そういうのがあるけど、他のクラスでも同じように出来るかとなると、それは微妙なところだろう。

 それこそ場合によっては食材が大量に余る……ああ、でもそれぞれの部屋に冷蔵庫が完備されてるし、明日の朝食とか昼食とかで食べればいいのか。

 

「そうだな。食事の時間になれば、さすがに殆どが引っ越しは終わっているだろうし」

 

 そんな俺の言葉に、切島は頷くのだった。

 

 

 

 

 

「あ、これ大丈夫だ」

「嘘でしょ……本当に大丈夫なの?」

 

 クラスの全員が揃って、夕食の時間。

 普段ならこういうのを他の面々に合わせたりはしない爆豪も、ランチラッシュが作ったカレーの魔力には負けたのか、素直に一緒に1階で食べている。

 ……それこそ爆豪の性格なら、カレーを持って自分の部屋で食べるとか、そういう風にしてもおかしくはないと思うんだが。

 その辺まで考えなかったのか、あるいはわざわざそこまでするのは面倒だと思ったのか。

 その辺は俺にも分からないが、とにかく爆豪も一緒に食べていた。

 そんな中、俺の向かいに座っている耳郎が、俺の言葉を聞いて目をおおきく見開きながら聞いてくる。

 まぁ、俺が食べているのは切島に言ったように、辛口の上のスパイシーだ。

 肉は豚肉……いや、豚バラで、他の具材はキノコと……溶けているから分からないが、タマネギかな?

 もっとも、具が少ないって訳じゃない。

 キノコと一口に言っても、椎茸、シメジ、マイタケ、エリンギと4種類ものキノコが入っているのだから。

 ニンジンやジャガイモが入っていなくても、十分に具沢山のカレーだ。

 まぁ、トッピングは色々とあるから、具材が足りないと思えばそっちを追加すればいいしな。

 

「ああ、俺にとっては丁度いい……とは言わない。勿論辛いけど、普通に食べられる辛さだ」

「ウチも辛口くらいなら問題ないんだけど……」

 

 そう言う耳郎の皿に入っているのは、その言葉通り辛口のカレーだ。

 具材はタマネギ、ジャガイモ、ニンジン、牛肉といういたって普通のカレーだ。

 個人的にはビーフカレーが好きなので、辛口も美味そうではあるんだよな。

 

「ちょっと食べてみるか?」

「え? あ……でも……うん、そうだね。辛口は美味しく食べられるんだし、それならスパイシーも食べられるかも」

「……一応聞くけど、あーんってやった方がいいか?」

 

 そう言うと、耳郎の顔が真っ赤に染まる。

 

「な、な、何を言ってるのよ! 馬鹿じゃないの? てか、馬鹿じゃないの!?」

 

 あれ? ゆかり?

 耳郎の言葉に、ふとそう思う。

 同じ言葉を2度繰り返すのは、俺の恋人の1人であるゆかりの癖だ。

 勿論いつでもそういう事をする訳ではなく、興奮というか、テンパってる時とかの癖だ。

 ……まさか耳郎がゆかりと同じような事を言うとは思わなかった。

 これは偶然か? それとも……何かあってのものなのか。

 まさか、ヤオモモからそんな風に聞いたとか……まぁ、それはないか。

 

「悪かったよ。ほら、じゃあ食べてみてくれ」

「むぅ」

 

 あまり怒らせると、耳郎が耳郎さんになってしまうので、からかうのはこの辺にして、スパイシーカレーの入っている皿を耳郎の方に近づける。

 耳郎はそのカレーの中でもまだ俺が手を付けていない部分をスプーンで掬い……ルーとご飯を同時に口に運ぶ。

 最初は特に何も感じた様子もなくカレーを味わい、数秒……

 

「っ!?」

 

 耳郎の顔が驚きと衝撃に染まる。

 そのまま、何も言わずに近くにあったコップ……麦茶の入ったコップを口に運ぶと、ゴクゴクと飲み干す。

 耳郎にはその気はないのだろうが、喉が蠢く様子は非常に蠱惑的だ。

 ……実際、少し離れた場所に座っていた上鳴が、耳郎の喉の様子に完全に目を奪われていた。

 上鳴本人は自分が耳郎を見ているのに気が付かれていないと思っているんだろうが、実際には何人かがそんな上鳴に呆れの視線を向けている。

 

「辛っ、これもの凄く辛いわよ!? よく、こんなの平気で食べられるわね!」

 

 がぁっ、と。

 そう言ってくる耳郎。

 

「そうか? それなりに普通に食べられると思うんだけどな」

 

 ましてや、耳郎は辛口のカレーを食べているのだ。

 その一段上のスパイシーも、十分に食べられるのではないかと思う。

 ……あ、いや。でもあれだな。辛口の上はスパイシーだけど、実際のところは具体的にどのくらいの辛さの違いがあるのかどうかは、それこそ作ったランチラッシュじゃなきゃ分からないか。

 そんな風に思いつつ、俺も耳郎の辛口を一口貰い、普通に美味いと思いながら食事を進めるのだった。

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