楽しい夕食の時間も終わり、寮だけに広い風呂にも入り……当然のように峰田が暴走しそうになったものの、飯田が頑張った。
そんな訳で後は自由時間となる。
自由時間とはいえ、寮ということで当然のように皆が慣れなく、自然と共用スペースの1階に集まる。
とはいえ、集まっているのは男達だけだ。
女達はまだ部屋の整理が終わっていないのか、それとももっと別に何かやることがあるのか、今この場にはいない。
とはいえ、爆豪のように既に部屋に戻っていてここにいない者もいるが。
あるいは他にも何らかの理由でここにいない者もそれなりにいる。
……まぁ、別に絶対に1階にいなければならないという訳でもないので、ここに集まっているのは特に今はやる事がなくて、それでも寮生活という事で、ワクワクドキドキしていて、誰かとそれを分かり合いたい、あるいは単純に話をしたいといった者達だ。
もっとも、そんな中に俺も入っている訳だが。
とはいえ俺は寮生活は初めてって訳じゃないけどな。
OGs世界で士官学校に入った時は全寮制だったし、あるいはネギま世界に転移した時も寮生活だったし。……まぁ、前者はともかく後者は女子寮だったが。
ともあれ、そんな訳で寮生活は俺にとってはそこまで特別って訳ではないものの、それはあくまで俺ならの話だ。
俺以外の面々は普通に高1なんだから、これが初めての寮生活って面々が大半だろう。
もっとも、寮生活になる前は大半が1人暮らしだった訳で、そういう意味では生活の大変さは大分減ったのか?
自分で料理を作るとかもしなくてもいいし。
そんな風に話していると、女子寮の方からクラスの女全員が姿を現す。
……普段の制服姿と違って、部屋着のラフな格好なのはまた違った印象を受けるな。
ヤオモモとは一緒に出掛けたりする事も多いけど……その時は当然ながら外出に相応しい服装だ。
それに対して、今のヤオモモはラフな格好をしており……うん、発育の暴力がこれでもかと強調されていた。
他にも麗日は上は袖のないTシャツで、緑谷が目のやり場に困っていた。
実際、ちょっとした動きで横乳とか見えそうな……いや、この場合は下着か?
とにかく楽な部屋着ということで、峰田や上鳴の目はかなり血走っていた。
「アクセル、部屋出来たー?」
そう三奈に声を掛けられるも……
「いや、俺の場合はもう午前中に部屋は出来ていたから」
「あ、そうだったね。じゃあ、他の男子達は? こうして1階でゆっくりしてるんだから、部屋の片付けはもう終わったんだよな?」
「そうそう、そんな訳で今は寛ぎ中なんだよ」
上鳴のその言葉に、気のせいか三奈の口元がニヤリといった笑みを浮かべたように見えた。
とはいえ、それは俺の気のせいだったのか、それとも意図してその笑みを消したのか。
ともあれ、三奈は嬉しそうな様子で口を開く。
「あのね、今皆で話してて……それで提案なんだけど……」
「お部屋披露大会、してみない?」
三奈の言葉を続けるように、葉隠が言う。
……そして、そんな葉隠の言葉に、何故か緑谷、峰田、常闇は顔色を青くするのだった。
「オールマイトだらけだ! オタク部屋だ!」
「憧れなので……恥ずかしい……」
麗日の言葉に、恥ずかしそうに緑谷が言う。
とはいえ……まぁ、うん。麗日がこうして叫ぶのも分からないではない。
何しろ壁にはオールマイトのポスターが何枚も貼っており、壁や棚、ベッドにまで多数のオールマイトの人形……フィギュアが並んでいる。
写真立ての中にも当然のようにオールマイトの写真があり、まさにこれぞオールマイトのオタクといった感じの部屋だ。
「うーん……予想通りというか、ある意味期待を裏切らないというか、色々と凄い部屋だな」
緑谷の部屋を見て、そう呟く。
オールマイトはこのヒロアカ世界の日本において、No.1ヒーローだ。
それを示すかのように、神野区における戦いでも勝利した姿を全国放送で見せたのだから。
実際、あの神野区の件があってから、ヴィランによる犯罪件数は縮小傾向にあるらしい。
オールマイト、ここにあり! と見事に示した形だし、それを見たヴィラン達がオールマイトの存在を怖がったのだろう。
もっとも実際にはオールマイトの力の源であるOFAは既に緑谷に譲渡されており、今のオールマイトはOFAの残滓で戦っているにすぎない。
まぁ、それでも怪我をしたオールマイトの治療をしたので、個性がなくてもこれまでの身体の動かし方とかは忘れていない為に、相応の強さは持っているだろうが。
ともあれ、恐らくは原作のオールマイトと比べると今のオールマイトはかなり状態が良い筈だ。
いやまぁ、もしかしたら原作でも俺が……いや、シャドウミラーがオールマイトの治療をしなくても、何らかの方法で治療はされていたと思うのだが。
あるいは、あの骨と皮だけのトゥルーフォームで最後まで頑張ったという可能性もないではないか。
とにかくそんな訳で、今もオールマイトの人気が衰えたりはしていない訳だ。
そんな風に思いながら緑谷の部屋を改めて見ると、やっぱりオールマイトのグッズがかなりの部分を取っているが、それ以外にもオールマイトに限らずヒーロー関係の本が結構ある。
まぁ、A組においてプロヒーローについて分からない事は緑谷に聞くというのが一般的だしな。
それこそ場合によっては、相澤のような教師でも知らない事を緑谷は普通に知っていたりするし。
そういう意味でも、緑谷の部屋はこういう資料の類がそれなりにあってもおかしくはないのだろう。
そうして一通り緑谷の部屋を見た後、次に向かうのは常闇の部屋。
……何故か常闇は扉の前に陣取って他の面々を部屋に入れないようにしていたものの、三奈によってあっさりと移動させられる。
常闇はA組……いや、1年全体で見ても、間違いなく上位に来る強さを持つ。
だが、その強さの大部分は個性であるダークシャドウによる強さで、常闇本人の身体能力は決して高くない。
そんな常闇に対し、三奈は身体能力という点ではA組でも上位に位置する。
構造的に、男は女よりも力が強い。
だが、それはあくまでも一般的な話でしかなく、しっかりと鍛えた女と特に鍛えていない男であれば、当然ながら鍛えている女が勝つ。
もっとも、常闇も自分の個性であるダークシャドウに頼り切りではいけないというのは理解しているのか、最近……具体的には体育祭が終わった後くらいから鍛えているらしいが。
ただ、それでも鍛えた始めたからといってすぐにそれが身体に反映される訳ではない。
また、筋肉の付きやすさというのは個人差も多い。
それでも……個人差があっても、鍛えればしっかりと筋肉がつくのは間違いなく、そういう意味では無意味という訳ではないのだが。
ただ、それでも今のこの状況ではどうしようも出来ず……ましてや、葉隠も三奈に協力したので、常闇は強制的に扉の前から移動させられ……
「黒っ! 怖っ!」
そう叫んだのは誰だったのか。
だが、実際に常闇の部屋は明かりも点いておらず、光源は部屋に幾つか用意されている紫のランプだけ。
まぁ、それでもある程度は見えるだろうし、夜目の利く俺にしてみればこの程度は全く問題ない。
俺を含め、他の面々が部屋の中をしっかりと見てみると、長剣のキーホルダーだったり、ドラゴンのキーホルダーが飾られているスペースがある。
……それどころか、勿論刃はついていないのだろうが実物大の長剣があったり、壁には魔法使いが着るようなローブが掛かっていたりもする。
うーん……厨二病というのもそうだが、ファンタジーものにどっぷり嵌まってる感じか?
常闇、ホワイトスターの牧場とか博物館とか、あるいはネギま世界の魔法界とかに行ったらもの凄く喜びそうだよな。
部屋の中の物をあれこれ言ってると常闇が我慢の限界に達し、次に向かったのは青山の部屋。
「うわ……ミラーボールって……」
耳郎が唖然とした様子で呟く。
青山の部屋は、こう……らしいと言えばらしい。
ちょっと予想外ではあったが、それでもやっぱりらしいのは間違いない。
三奈や葉隠は普段の青山の性格から何となく予想していたらしいが。
ちなみに刃がついていないとはいえ、長剣の実物があった常闇の部屋に対して、青山の部屋には全身鎧と騎馬槍があったものの、これも特に突っ込まれることはなかった。
……やっぱり、ミラーボールはそれだけ衝撃的だったんだろうな。
そして次に行くのは……
「入れよ……すげえの見せてやんよ」
扉から顔を出した峰田が、はぁはぁとした息遣いでそう言ってくる。
当然ながら、峰田の普段の生活からどのような部屋なのかは予想が出来たのだろう。
女達は次の部屋に向かおうとするが……
「よし、行ってみよう」
「え……ちょっ、アクセル!?」
ちょっと……本当にちょっとだけ峰田の部屋に興味を抱いた俺に三奈がそう突っ込む。
三奈以外の女達も、言葉には出さないものの本気か? といった視線を俺に向けていた。
峰田という存在について考えれば、そのように思ってもおかしくはない。
だが……それでも、少しだけ興味深いのも事実な訳で……
「まぁ、無理にとは言わない。何なら外で待っても……あるいは他の奴の部屋に行ってもいいとは思うけど」
そう言うと、三奈は耳郎や他の面々と顔を合わせ……やがて、何かを決意したかのように、頷くのだった。
「何だ、見た感じ普通……いや、椅子とか机とかは峰田に合わせた特別製になってるみたいだけど、結局それだけだな」
峰田の部屋の中を見て、俺の口から出た感想はそれだった。
机や椅子が特製の物になってはいるが、言ってみればそれだけでしかない。
いや、机や床にグラビアアイドルと思しき写真集はあるが、言ってみればそれだけでしかない。
それこそもっとどぎついエロ本であったり、それどころかダッチワイフの類が転がっていてもおかしくはないと思ったんだが。
「あ、本当だ。……何だ」
耳郎が予想外だったといった様子で呟く。
「峰田ちゃん、改心したのね」
ケロケロと嬉しそうに言う梅雨ちゃん。
……けど、恐らくだが本棚にある本の何冊かはカバーと中身が違うだろう。
後はスマホだけじゃなくてタブレットの類もあるが、あの中とかには一体どんな画像や動画があるんだろうな。
まぁ、せっかく梅雨ちゃんが嬉しがっているのだから、その夢を壊すような事はしたくないので、黙っておくが。
ただ、三奈がジトッとした視線を本棚に向けているのを見れば……うん、恐らくは俺と同じ結論になっていてもおかしくはないと思う。
「破廉恥ですわ」
そしてヤオモモにしてみれば、グラビアアイドルか何かの写真集の表紙を見ただけで、薄らと頬を赤くしてそう呟くのだが……
「いや、それを言うならヤオモモのヒーローコスチュームの方が破廉恥なんじゃない?」
葉隠の言葉にヤオモモ驚きの表情を浮かべる。
うん、まぁ……ヤオモモのヒーローコスチュームは胸元とかが大きく空いていて、かなり扇情的なのは間違いない。
もっともミッドナイト……はともかく、優、マウントレディのヒーローコスチュームを見れば分かるように、女のプロヒーローが着るヒーローコスチュームというのは、最近は扇情的な物が多いのも事実。
そうである以上、ヤオモモのヒーローコスチュームも……まぁ、きっと、多分許容範囲内なんだと思う。
「あれは、私の個性を使う上でどうしても必要だから、仕方がなく……」
葉隠にそう返すヤオモモ。
……もっとも、それを言うのなら葉隠もまた全裸が本気というとんでもない感じだ。
とはいえ、以前サポート科に話をしてその辺をどうにかすると言っていたので、今も同じようなヒーローコスチュームなのかは分からないが。
ヤオモモもそうだが、葉隠もまたこれから夏も終わって秋に、そして冬になり、静岡であってもかなりの寒さになるのは間違いない。
そう考えると、もうちょっとこう……防寒について考えた方がいいと思うんだけどな。
ともあれ、峰田の部屋は予想外に一見した限りでは問題ないと判断したので、次の部屋に向かう。
『普通』
尾白の部屋は、全員がその一言で表現してしまう。
それにショックを受ける尾白。
とはいえ、普通に暮らすのであれば、下手に特徴的な部屋よりも、こういう普通の部屋の方が快適だとは思うけどな。
『眼鏡』
それが次の部屋である飯田の部屋の印象だった。
基本的には尾白の部屋と似たような感じだが、唯一違うのが壁に予備の眼鏡が大量にあるという事。
『チャラい』
上鳴の部屋は、まさにそんな感じだった。
流行の物を手当たり次第に集めてみた感じ。
まぁ、色々と面白そうな物もあるので、暮らすのに快適そうではあるけど。
『うさぎ』
口田の部屋にはペットのウサギがいた。
俺のペット的な存在であるAI搭載のスーツケースは1階にいるものの、このウサギは当然のように口田の部屋にいて、女達が可愛い可愛いと可愛がるのだった。