転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4672話

「釈然としねえなぁ」

「ああ、奇遇だね。俺もしないんだ、釈然」

「そうだな」

「僕も」

「だよな、だよな、やっぱり釈然としねえよな」

 

 それぞれの部屋を見て、上鳴、尾白、常闇、青山、峰田がそれぞれに自分の感想を言う。

 いやまぁ、自分の部屋を見て好き勝手に批評されたんだから、そんな風に思うのも当然の事ではあったが。

 だが……その後の諸々、特に峰田の勢いもあって、結果として男の部屋だけではなく女の部屋も見た上で誰の部屋がNo.1なのかを決める事になった。

 耳郎はそんな峰田の言葉に何かを感じたのか微妙に嫌そうな表情だったが、三奈があっさりとそれを受け入れた事によって、女子寮の部屋も見る事になり、最終的に部屋王を決める事になるのだった。

 ……いや、部屋王って。

 ともあれ、そんな訳で男子寮の部屋を見る事になったのだが、爆豪はもう眠っているので飛ばし、切島の部屋は彼氏にやって欲しくない部屋ランキング2位くらいの部屋で、障子の部屋は予想通り特に何かがあるような部屋ではなく、ザ・ミニマリストといった感じの部屋だった。

 で、5階に来て……

 

「あれ? この場合俺の部屋が最初じゃないのか?」

 

 階段を上がってすぐの場所にあるのが、俺の部屋だ。

 だというのに、何故か俺の部屋と砂藤の部屋が飛ばされ、瀬呂の部屋となる。

 瀬呂の部屋は、予想外なことにアジアっぽい感じの部屋で皆が驚き、意外性の男というのを瀬呂が強調していた。

 で、轟の部屋に来たのだが……

 

「何だ、これ」

 

 轟の部屋を見て、思わずそう呟く。

 そうして驚いたのは、俺だけではない。

 他にも……というか、部屋の見学ツアー……もとい、部屋王戦に参加している全員が恐らく同じように思っただろう。

 何しろ、轟の部屋は明らかに他の部屋と違う。

 俺の部屋も含めて他の部屋は全員がフローリングの洋室だった。

 だというのに、轟の部屋はそういうのとは違い、完全にこう……和室となっていた。

 これは一体何がどうなってこうなったのか、正直なところ俺にも分からない。

 いやまぁ、こうして目の前にある以上、これが幻覚でも何でもない現実であるのも間違いないのだが。

 

「実家が日本家屋だからよ。フローリングは落ち着かねえ」

『理由じゃなくて、当日即リフォームって、どうやったんだ、お前!』

 

 和室にした理由を話す轟だったが、峰田と上鳴は息もピッタリといった様子で、一言一句の違いもなく、そう尋ねる。

 うーん、こういうのを見ると峰田と上鳴が親友だって分かりやすいよな。

 少し……本当に少しだけ羨ましく思う。

 もっとも、峰田は毎回俺に向かって血涙を流し、個性のモギモギを使って攻撃してくるのだから、そういう意味ではよく考えたらそこまで羨ましくなかったりするのかもしれないな。

 

「頑張った」

 

 そして轟はあっさりとそう言う。

 頑張っただけでどうにかなるのか?

 そう思わないでもなかったが、実際にそれでどうにかなっている以上はどうしようもないしな。

 そんな訳で予想外の驚きとなりつつ、残りは俺と砂藤の部屋となったのだが……

 

「あ、悪い。見るのなら俺の部屋からでいいか? 多分、時間的にそろそろだと思うんだが」

 

 次に俺と砂藤の部屋のどっちに行くかという事になったところで、砂藤がそう言う。

 俺としては特に異論はない。

 別に早く俺の部屋を見せたいとか、そういう思いがある訳でもないので、このまま砂藤の部屋に向かう事になる。

 ……砂藤の部屋から漂ってくる甘い香りが気になったというのも、俺が砂藤の部屋を選んだ理由ではあったが。

 ともあれ、そうして砂藤の部屋に行くと……

 

「シフォンケーキ焼いてたんだよ。皆で食べようと思って」

 

 そう言い、部屋に設置されたオーブンからシフォンケーキを取り出す。

 それを見た女達の視線が、それこそ獲物を狙う肉食獣の如き鋭さを持つ。

 まぁ……うん。女を釣るには甘いものというのは俺も分かっている。

 分かってはいるのだが、それでもこう……それで本当にいいのか? と思ってしまう。

 いやまぁ、ここで何かを言えばどういう目に遭うのか分かるので、口にはしないが。

 いつも余計な一言でお仕置きをされる峰田や上鳴も、その辺りについては分かっているのか、口を開いて余計な事を言う様子はない。

 まぁ、砂藤の個性は増強系だが、その条件が砂糖だ。

 甘いものを食べると身体能力が強化されるのだが、ただ砂糖を舐めるよりも、こうしてお菓子として一緒に食べた方がいいというのが砂藤の考えなのだろう。

 勿論、いざという時……時間に余裕がない時は、砂糖を直接摂取するだろうが。

 そんな砂糖の……甘味のスペシャリストと言ってもいいような砂藤が作ったシフォンケーキ。

 当然ながらそういうのが好きな女達は、砂藤の作ったシフォンケーキをしっかりと味わう。

 実際、俺も少し――女達と比べるとかなり小さいが――シフォンケーキを貰って食べたのだが、そのケーキは実際に美味い。

 プロ級……とまではいかないが、セミプロ級といったところか。

 料理好きな者が作った料理と言えば分かりやすいか?

 もっとも、趣味が料理という者が作った料理が、プロの料理よりも美味いという事はそれなりにあったりする。

 その理由が、料理好きというのはあくまでも趣味として料理をやっているので、趣味だけに材料とかにも幾らでも金を掛けられる。

 それに対して、プロというのはあくまでも仕事で料理をやっている者達だ。

 例え美味いと客に絶賛されようとも、例えば材料費だけで3000円の料理を1000円で出していたりすれば、当然ながらそれは赤字となる。

 その辺を考えると、趣味だけに食材に幾らでも金を掛けられる者が作った料理の方が美味くてもおかしくはない。

 勿論、料理というのは食材だけで全てが決まる訳ではなく、料理人の技術も大きな要素なので、材料の違いも絶対とは断言出来ないが。

 ……実際、俺が高級食材を使って料理をしても、普通の食材を使った四葉に勝てるとは到底思えないし。

 まぁ、別に俺は料理が趣味って訳でもないから当然かもしれないが。

 ともあれ、そうして砂藤のシフォンケーキを楽しんだ後は、俺の部屋となる。

 

「うわぁ……アクセル君の部屋かぁ……楽しみだねヤオモモ」

「え? そ、そうですわね」

「あれ? 何かヤオモモ……そこまで楽しみじゃない? もしかして、先にアクセル君の部屋を見たとか、そういうことじゃないよね?」

「当然ですわ、はしたない」

「いや、それではしたないって表現はどうなの?」

 

 葉隠とヤオモモの会話に耳郎が突っ込む。

 うん。まぁ……実際のところ先に部屋を見たのとかそういうのはないのだが、もしそうであってもそれではしたないとか言うのはどうかと思う。

 ああ、でも部屋を先に見たとかそういうのじゃなくて、俺の部屋を見る為に男子寮に来ていたと思われたからはしたないと言ってもおかしくはないか。

 

「あのな、何だか妙に楽しみにしてる様子だけど、俺の部屋は他の面々みたいにそこまで尖った部分はないぞ? 寧ろ尾白系の部屋だ」

「え? じゃあ普通?」

 

 皆が俺の言葉にそう突っ込むが、それを聞いた尾白が微妙にショックを受けていたりするのは……まぁ、適当に流しておくとしよう。

 実際問題、尾白の部屋は暮らしやすそうだとは思うが、普通の部屋なのは間違いなかったのだから。

 

「その辺は見てのお楽しみだな。……じゃあ、開けるぞ」

 

 俺の部屋は砂藤の部屋の隣なので、移動するのもすぐだ。

 そんな訳で扉を開けると、そこには俺の部屋があった。

 

「へぇ……何と言うか、ゴージャスっぽい?」

 

 上鳴のその言葉に、他の面々も頷く。

 いやまぁ、ベッドにしろソファにしろ、机や椅子にしろ……どれも公安の金で買った高級品なので、上鳴が言うゴージャスというのは決して間違ってはいない。

 もっとも、ヤオモモの部屋にあるだろう家具には及ばないと思うけど。

 

「えー……これ、俺の部屋と同じ感じって、ちょっと間違ってないか? 寧ろ、俺の部屋の上位互換って感じだと思うんだけど」

 

 俺の部屋を見て、尾白が呟く。

 まぁ……うん。快適に暮らせるようになってはいるが、高価な、そして高品質な家具とかそういうのがあるので、それを考えれば尾白の言う事も分からないではない。

 

「けど、アクセル。TV……ちょっと大きすぎないか?」

 

 峰田の言葉、多くの者達が俺の部屋にあるTVを見て、その言葉に納得する。

 まぁ、実際このTVは大きいのは間違いない。

 何しろ俺が住んでいたマンションのリビングで使っていてTVなのだから。

 この大きさを考えれば、もっと離れた方が適切なサイズ……と言えるのかもしれないし。

 もっとも、混沌精霊の俺は目が悪くなるという事はない。

 例えば暗い部屋の中……常闇の部屋とかでこういうTVとかを見ていても、視力が落ちるといった事はまずないのだ。

 そういう意味では、このTVは大迫力で、借りてきた映画とかを楽しめる。

 

「寮に引っ越す前の部屋で使っていたTVだしな。他の連中も、基本的には前に住んでいた部屋から持ってきた奴だろ?」

 

 緑谷や爆豪のように、実家から雄英に通っていた者であれば、今回寮で暮らす為に色々と必要な家具とかを買う必要があるだろうが、それ以外の1人暮らしをしていた者達にしてみれば、前に住んでいた部屋から荷物を持ってきて、それを改めて並べたというところだろう。

 ……それはつまり、瀬呂の場合は1人暮らしの部屋でもああいうアジアンテイストな部屋だった事になるのだが。

 あるいは寮生活という事で、心機一転してああいうのを新たに買ったのかもしれないけど。

 ともあれ、大半の者は自分の部屋から持ってきた家具とか家電製品とかをそのまま使っている訳だ。

 まあ、俺の場合はその気になればホワイトスターから持ってく事も出来たりする。

 あるいは、公安から受け取ったカードはまだ返して欲しいと言われていないので、それを使って新しいTVを買うといった選択肢もあった。

 ……ゲートを設置してホワイトスターと繋がったんだから、そろそろ公安にはカードを返した方がいいと思うんだけどな。

 後でちょっと目良に聞いてみる……いや、この場合は政治班を通して聞いてみた方がいいな。

 この辺については外交とかそっち関係でもあるし。

 もっとも、公安が他国――正確には異世界の存在だが――との交渉をするというのは、さすがに無理があると思う。

 そろそろ公安じゃなくて国の外務省が出て来てもおかしくはないと思うんだが……まぁ、その辺は俺が気にするような事じゃないか。

 

「うわ、このソファ……凄い……」

 

 緑谷がソファに座り、しみじみとそう呟く。

 緑谷の家は一般家庭……いわゆる中流家庭といった感じなので、こういうソファは使った事がないのだろう。

 あ、いや、でも緑谷の両親がそういうのを趣味にしているのなら分からないでもないけど……いや、そうなればそうなったで、緑谷があのソファに座ってもあそこまで感激する事もないか。

 

「あ、そのソファ……緑谷が言うように、座り心地がいいんだよね」

「へぇ」

 

 ギロリ、と。

 三奈の言葉を聞いた峰田の視線が……それこそ、物理的な圧力を持っているのではないかと思えるような、そんな視線が俺に向けられる。

 

「なーんで、芦戸がアクセルの部屋にあるソファの座り心地を知ってるのかなぁ?」

 

 そう言いつつ、峰田はモギモギを手にする。

 ああ、なるほど。峰田にしてみれば三奈が俺の家に来たというのが、それだけ思うところがあったのだろう。

 とはいえ、三奈が俺の家に来たのは体育祭の打ち上げをやった時だ。

 当然ながら三奈だけではなく、他にいつもの面子が揃っていたくらいだ。

 というか……

 

「体育祭の打ち上げだぞ? 峰田も上鳴や常闇と一緒に俺の部屋に来ただろ?」

 

 そう、今更の……本当に今更の話ではあったが、体育祭の打ち上げを俺の家でやった時、峰田も一緒に来ていたのだ。

 あの時、峰田は自分が誘われた事に涙を流して喜んでいた筈なんだが……どうやら、今となってはすっかりと忘れてしまっているらしい。

 おい、と。

 あの時の涙は何だったのかと、そう突っ込みたくなった俺は決して間違っていないだろう。

 もっとも、あの打ち上げの時は茨が何故か急に俺を崇めるようになって、その印象がもの凄く強く残っているのも事実だ。

 そうである以上……いや、それでも峰田の性格を考えれば、あの時の事を忘れるとは思えないんだが……俺の買い被りだったか?

 いや、この場合買い被りというのはちょっと違うか。

 

「あー……あーあーあーあー、そういえばそういうのもあったな。うん。あの時はアクセルの家に行ったし、それで覚えていてもおかしくはないよな」

 

 うんうんと、そう納得の表情を浮かべる峰田。

 多分これ、三奈が俺の部屋のソファの感触を知っていたからってことで、半ば反射的に怒ったんだろうな。

 ある意味、峰田らしいと言えばらしい……そう、思うのだった。

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