転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4674話

 引っ越しと部屋王決定戦が終わり、それから数日……寮生活にも慣れた頃、夏休み中だが、俺達は教室に向かう事になった。

 

「うええ……夏休みだってのに、学校なんて……オイラの熱くてヌルヌルな夏はどこ行ったんだよ」

 

 寮に届けられたランチラッシュの朝食……塩鯖、だし巻き卵、キュウリと大根の漬物、タケノコの土佐煮、豆腐とわかめの味噌汁といった、ザ・日本の朝食といった料理を食べていると、近くに座っている峰田がそう呟く。

 いや、熱さはともかく、ヌルヌルってなんだよ。

 そう突っ込みたくなったのは、きっと俺だけではないだろう。

 

「まぁ、夏休みの最後は寮での生活になっていたし、簡単に外に遊びに行くとかも出来なかったしな。……アクセルとの訓練で実力は上がった気がするけど」

 

 瀬呂がそう呟く。

 そう、寮生活が始まったものの、神野区の件もあって迂闊に出歩けない雰囲気があった。

 なので、暇な奴を誘って自主訓練をしていたんだよな。

 ぶっちゃけ、林間合宿が中途半端に終わったのもあって、その続きをしっかりと訓練した形になる……のか?

 とはいえ、強制参加ではないので当然ながら出なくても問題ない。

 なのに、峰田は自主訓練を最後まで付き合い、そうしながら色々と弱音を吐いては、梅雨ちゃんに慰められていたのだが……そういう意味では、峰田は梅雨ちゃんといる機会があったという事で、そんなに悪くなかったんじゃないか?

 

「まぁ、雄英のヒーロー科なんだからきっと厳しい日々があるのは間違いないだろうな」

 

 俺の言葉に、何人かが嫌そうな表情を浮かべ……それでもランチラッシュの朝食を食べるのだった。

 

 

 

 

 

「おはようございます、アクセルさん」

「お……おう」

 

 朝食を食べ終え、制服に着替え、それ以外の諸々の準備を終えて寮を出た俺を待っていたのは、茨だった。

 相変わらず鋭い棘の髪を生やし、どこか清楚といったイメージが相応しい茨は、俺を見ると深々と一礼してくる。

 それは、友人に対するような一礼ではなく、目上の者に対する一礼。

 とはいえ、それは別にもうそこまで気にするような事ではない。

 茨が俺をどのように思っているのかは、それこそ考えるまでもなく明らかなのだから。

 だが……それでも、こうして驚いたのは、まさかA組の寮の前で茨が待っているとは思わなかった為だ。

 1学期中……体育祭の後になるが、それから茨は毎朝のように雄英の駅の前で俺や拳藤が来るのを待っていた。

 清楚系美人である茨だけに、そんな茨が毎日のように誰かを待っているというのは、当然ながらそれなりに噂となっていた。

 ……ましてや、その待っている相手が俺で、それも毎日拳藤と一緒に登校してくるのだから、峰田じゃなくても何人もから嫉妬の視線を向けられた覚えがある。

 それこそ1年だけじゃなくて、2年や3年の色々な学科の生徒から。

 だが、寮生活でそういうのも終わると思っていたのだが、まさか寮でも茨が待っているとは思わなかった。

 そもそもの話、この寮から校舎まではゆっくりと歩いても数分程度でしかないのに、わざわざ待っているのはどうなんだ?

 そうも思ったが、茨がこうして俺を迎えに来るのは好意……もあるが、より大きなものは信仰心だろう。

 信仰の為であれば、こうして人がいる中であっても特に気にした様子もなく俺のいる場所に来てもおかしくはないのだろう。もっとも……

 

「ぐぎっ、ぐぎぎぎぎ……ぎぎぎ……」

 

 峰田が血涙を流しつつ、ギリギリと奥歯を噛み締めながら俺を睨み付けているが。

 また、そんな峰田程ではないしろ、上鳴も俺に恨めしそうな視線を向けていた。

 上鳴もまた女好きなので、茨が迎えに来るという……言い換えれば、どこか見せつけるようなこの光景を、心の底から羨ましいと思っているのだろう。

 うん、まぁ……正直なところ、分からないでもない。

 もしこれで俺が当事者じゃなければ、それこそ露骨に表情に出したりするつもりはなかったが、羨ましいと思っただろうし。

 

「あー……ほら、いつまでもここでこうしている訳にもいかないだろ。新学期初日から遅刻をしたら、相澤にどう思われるか……どんな罰をさせられるのか、分かったものじゃないだろう?」

 

 そう、誤魔化す。

 とはいえ、これは誤魔化しではあっても決して嘘という訳ではない。

 実際に相澤の性格を考えれば……ましてや、徒歩数分の位置に寮があるのに、それでも遅刻をしようものなら、相澤の性格を思えば除籍されてもおかしくはない。

 もしくは、そこまでいかなくても反省文とか書かされたりするだろう。

 

「う゛っ……」

 

 俺の言葉を聞いた峰田が、そんな声を漏らす。

 ……まぁ、うん。峰田は1学期もセクハラとかそういうので、結構相澤から反省文を書かされたりしていたしな。

 いや、寧ろセクハラの常習犯である峰田に、反省文だけにしているというのがおかしいのか?

 普通なら、セクハラとかを何度も繰り返すような事をすれば、反省文どころか除籍になってもおかしくはないし。

 とはいえ、相澤にしてみれば峰田の個性はプロヒーローとして有用だし、何しろ峰田の性格からすると、雄英を除籍になったら即座にヴィランになってもおかしくはないと判断してもおかしくはない。

 そうなると、有用な個性を持っているだけに、ヴィランになられると困るのだろう。

 

「峰田、タルタロスに面会に行くから元気でな」

「おいぃっ!? 一体いきなり何を言ってるんだよ!」

 

 峰田が目を大きく見開き、絶叫する。

 

「いや、峰田……このままだと多分ヴィランになって、タルタロスに収監されるんじゃないかと思ってな」

「あー……あるある、それは有り得そうだよね」

 

 近くにいた葉隠が、思わずといった様子でそう言う。

 すると他の女達も葉隠の言葉に頷いていた。

 まぁ……うん、峰田のセクハラの対象となるのは、当然ながら同じクラスの女達な訳で。

 ただ、そんな中で耳郎が微妙な表情なのは……耳郎は峰田のセクハラの被害に遭う事がないからだろう。

 勿論、耳郎もわざわざセクハラされたいとは思わないが、だからといってそういう対象に見られないというのは、それはそれで面白くないといったところか。

 もっとも、セクハラされればされたで、場合によっては耳郎さんになるのだから、セクハラはされない方がいいのだろうが。

 

「おいぃっ! そんな事はないよな? な? な?」

 

 俺達の話を聞いて、本当に危険だと思ったらしく、峰田は必死になって俺に聞いてくる。

 聞いては来るのだが……普段の峰田の性格を考えると、それを素直に否定するのは難しいのも、また事実。

 

「なら、2学期からはもう少し自分の性格に気を付けるんだな」

 

 そう忠告すると、茨が俺の隣に立つ。

 

「色欲の者よ、悔い改めなさい。そうすれば、やがては報われることもあるでしょう。……さぁ、アクセルさん。行きましょう」

 

 茨の言葉に峰田は何か言い足そうにするも、結局口を開く事はない。

 多分だが、今ここで何かを言っても、決して茨には理解されないと思ったのだろう。

 実際、以前恋人が欲しいのならがっつくのは止めて、もう少し大人しくしろとアドバイスをしたものの、素の自分でも受け入れてくれないと嫌だと言っていたくらいだしな。

 とはいえ、結局のところ峰田がどうするのかを決めるのは峰田次第だ。

 今のまま意地を通すのか、それとも恋人を作るのを優先して自分の信念を曲げるのか。

 その辺りは俺がどうこう考えても仕方がないので、気にしない事にする。

 そのままA組の面々……爆豪を始めとして、既に寮にいない奴もいたが、とにかくそれなりの人数とB組の茨と一緒に校舎に向かう。

 

「あ、やっぱり……寮にも教室にもいないと思ったら……」

 

 昇降口に入ったところで、拳藤がこっちに近付いて来てそう言う。

 その視線が向けられているのは、茨。

 どうやら寮にも教室もいなかったので、茨を捜しに来たらしい。

 

「おはよう、アクセル、ヤオモモ、それにA組の皆。うちの茨が少し迷惑を掛けてしまったようだね」

 

 拳藤が俺達を見てそう挨拶をしてくるが……何人かが、俺とヤオモモ……特に俺に向かって疑問の視線を向けてくる。

 拳藤が先に俺とヤオモモの名前を口にした事に、思うところがあったのだろう。

 ただ、ヤオモモの場合は同じクラス委員長という事でそれなりに親しくてもおかしくはないものの、何故そこで俺が個別に出てくるのかと、そんな風に疑問に思ってもおかしくはない。

 もっとも、俺と拳藤は雄英の入試の時からの知り合いだし、それだけではなく住んでいる場所も近く、1学期は毎日一緒に登校していた。

 それを思えば、俺と特別に親しかったとしても、特におかしな事はないと思うが。

 実際にはそれ以外にも壊理の件であったり、ヤオモモと共に俺の正体について知っていたりと、色々と特殊な事情があったりするのだが。

 

「ああ、おはよう。茨の件は……まぁ、仕方がないから気にしていない」

 

 茨が俺を崇めるのは、もうどうしようもないと諦めている。

 それどころか、俺が正体を公表した後は、恐らく……いや、ほぼ間違いなくシャドウミラーに来るだろう。

 そうなればエルフ達と上手い具合にやっていけるのは間違いなく、茨にとっても幸せな未来が待っている……と思っておきたい。

 シャドウミラーに所属するようになれば、当然ながらヒロアカ世界においてプロヒーローにもなれなくなるのだが……茨の性格を考えると、そういうのは気にしなさそうなんだよな。

 勿論、茨がそれで幸せなら問題はないんだが。

 

「悪いね。……ほら、茨行くよ。寮から校舎までは数分なんだから、アクセルを迎えに行く必要はないだろ?」

「そうは言いますが、私の1日はアクセルさんと会うことから始まるのです」

「全く……本当に、何でこうなったんだろうね」

 

 拳藤がそう言いながら俺に視線を向けてくるものの、別に俺が特別に何かをした訳ではない。

 いや、体育祭の打ち上げの時に茨の態度が急変したのだから、もしかしたら俺には分からないものの、何かをした……のかもしれないとは思うけど。

 ただ、それでも本当に俺が何かをしたのかといったような事になると、実際のところ何がどうなってそうなったのかは分からず、そういう意味では俺だって本当に何がどうなってこうなったのかは分からない。

 ましてや、エルフ達の件があるだけに、根も葉もない……という風にも言えないのがちょっとな。

 もしかしたら、茨は俺の近くにいる事で個性の蔓によって俺を通してホワイトスターにいるエルフと何らかの繋がりを持って、その結果として俺を崇めるようになったとか……そういうのは少し考えすぎか?

 

「取りあえず、茨をよろしくな」

「はいはい、今度壊理ちゃんについての話を聞くから、そのつもりでね」

 

 拳藤はそう言いながら茨を引っ張っていくが……

 

「ねぇ、アクセル。壊理ちゃんって……誰?」

 

 近くにいた三奈が、そう聞いてくる。

 拳藤め、もしかしてわざとか?

 そう思ったが、三奈の様子を見る限りだと純粋に自分の知らない名前が出て来て驚いたといった感じだ。

 セーフ……何か分からないけど、とにかくセーフ。

 

「以前、ちょっとした件でヴィランから助けた子供だよ」

 

 うん、嘘は言っていない。

 真実を全て口にしたといった訳ではないが、同時に全くの嘘という訳でもない。

 実際にはその壊理は現在ホワイトスターで保護されている。

 特にラピスは壊理を可愛がっていて、壊理もラピスに懐いている。

 ラピスは今までずっとルリの妹としての立場だった。

 勿論、ラピスがそれを不満に思っている訳ではなく、ラピスもルリに懐いていたしルリもラピスを可愛がっていた。

 だが、それでもラピスはずっと妹であったのは間違いない。

 そんなラピスにしてみれば、自分が壊理の姉として振る舞えるのはそれだけ新鮮だったのだろう。

 その為、ラピスは壊理をかなり可愛がっている。

 勿論、ルリもそれは同様で末っ子的な存在となりつつある壊理をラピスと同じくらい可愛がっているのだが。

 そんな訳で、壊理は今のところこう……かなり環境が悪くないのは間違いない。

 ちなみに、寮に入ってからも何度か以前住んでいた俺のマンションや拳藤のアパートの様子を探ってみたものの、見張りの類はいなかった。

 これは、壊理を虐待……という言葉では生温いが、とにかく壊理の個性を使って何かをする為に身体を分解するなりなんなんなりして、それから自分の個性で壊理を元に戻す……といったようなことをしていたヴィランが、俺や拳藤の住んでいた場所を把握出来ていないのは、ラッキーと言うべきか、それとも何か狙いがあっての事なのか。

 そんな風に思いつつ、教室に行くと……茨や拳藤との話で少し遅れたので、教室に到着してからそう時間が経たずに相澤がやって来る。

 

「お前達には、これから仮免収得の為に頑張って貰う。ヒーロー免許ってのは、人命に関わる責任重大な資格だ。当然収得の為の試験は非常に厳しい。仮免ではあっても、その合格率は例年5割を切る。そこで今日から君達には1人で最低2つ……」

 

 そう言いながら、相澤が何か合図をする。

 同時に扉が開き、そこから姿を現したのはミッドナイト、エクトプラズム、セメントス。

 何やらポーズを決める3人を見ながら……

 

「必殺技を作って貰う」

 

 そう、相澤が宣言するのだった。 

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