転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4679話

 圧縮訓練が始まってから4日目。

 

「ほら、ほらほら、アクセル君。見て!」

「へぇ……やる気になれば出来るものなんだな」

 

 葉隠が俺に見せるようにレーザーを放つ。

 とはいえ、まだ出来るようになったばかりという事もあり、放たれるレーザーの威力そのものはほぼない。

 実際にそのレーザーが命中したコンクリートの標的も特にダメージらしいダメージはないし。

 今の葉隠は、言うなればあれだ。

 レーザーはレーザーでも、レーザーポインター? 的な使い方しか出来ない訳だ。

 もっとも、今のこの状況……レーザーを出す事が出来るようになったばかりの葉隠なんだから、それは仕方がない。

 まだ習得したばかりである以上、これからもっと強力なレーザーを使えるようになればいいのだ。

 それに……今のように威力のないレーザーであっても、使い道はない訳ではない。

 暗い中でどこに向かうかといった事をすぐに示せるし、戦闘においても目潰しとして利用出来る。

 あれだ、どの世界のニュースで見たのかはちょっと忘れたが、スポーツの大会において自分の応援している選手の敵、あるいはチームの敵に試合中のレーザーポインターを使うことによって目潰しをしたのが問題になったというのを何かで見た覚えがある。

 それは明らかに妨害行為である以上は問題になるものの、戦闘においてはそういうのが問題になったりはしない。

 今はまだ葉隠もヒーローコスチュームの問題でどこにいるのか分かるが、細胞を培養して作るというヒーローコスチュームが出来たら、透明な場所からいきなり目潰しのレーザーが放たれるのだから、ヴィランにしてみれば厄介極まりないだろう。

 

「うん、結構難しかったけど、少しずつ……こう、太陽の光を集めるコツ? のようなものが分かってきたと思うんだ。……ただ、私のレーザーはあくまでも太陽の光があってのものだから、太陽がないと使えないんだよね」

「なるほど。そうなると、太陽の光を透明な身体に貯め込んでおくとか、そういうのは出来ないのか?」

「え? ……うーん、どうだろう。そういうのはあまりイメージ出来ないんだよね」

 

 残念そうな様子で葉隠が言う。

 勿論透明なのでその顔を見る事はできないので、そんな風に思っているという風に声音で感じているだけだが。

 

「取りあえずレーザーを使えるようになっただけでも1歩前進だけど、Plus Ultraだね!」

 

 気を取り直すように、葉隠が言う。

 葉隠の手袋に覆われた手が、やる気満々といった様子で握り締められていた。

 こうしてすぐに気分を切り替えられるところが、葉隠の長所だよな。

 本人にその気があるのかどうかは分からないが。

 

「そうだな。もしかしたら……これは本当にもしかしたらの話なんだが、葉隠が体内に太陽の光を充満というか、満杯というか、とにかく大量に取り込む事が出来たら、透明な筈の葉隠の素顔とかが俺を含めて他の連中にも見られるようになるかもしれないな」

「え? 本当?」

「あくまでも俺の予想だけど」

 

 そう返しつつも、これは何らかの確信があっての言葉という訳ではない。

 ただ、個性というのは成長する際には個性を持っている人物の願望……というのはちょっと違うか? とにかく、個性の持ち主の意思によって多少なりとも方向性を変える事が出来るらしい。

 であれば、もし葉隠が今の俺の言葉を聞いて、太陽の光を大量に蓄える事が出来れば、その太陽の光によって一時的に透明の個性を無効化する、あるいは意図的に無効化出来るようになる可能性は十分にあった。

 ……もっとも、これは勝算があってのものという訳ではない。

 あくまでも、そういう風に出来ればいいなといったように思い、試してみただけだ。

 それを葉隠に言わないのはどうかと思うが。

 実際、エクトプラズムも何だか俺にジト目を向けているように思えるし。

 とはいえ、それでもジト目を向けるだけで注意してこないのは、エクトプラズムも俺の言葉に一理あると……もしかしたら本当にそういう事が出来るかもしれないと、そう思っているからだろう。

 もし間違っていたら、教師として即座にそれを否定してくるのは間違いないだろうし。

 

「うん、分かった。やってみるよ! アクセル君、ありがとう! アクセル君のお陰で……」

 

 ボゴッ、と。

 葉隠の言葉の途中、いきなりそんな音が聞こえてきた。

 

「あ、おい。上!」

 

 そして響く爆豪の声。

 そこで視線を向けると、その下にはオールマイトがいて、自分に向かって落ちてくるコンクリートの塊に気が付くと、拳でそれを破壊しようとしていた。

 だが、次の瞬間には落ちて来たコンクリートの塊を、緑谷が蹴りで破壊する。

 以前から蹴りについても色々と勉強していた緑谷だったし、俺と行った自主訓練の模擬戦でも、それなりに蹴りを多用するようにはなっていた。

 なってはいたが、それでもまだこう……ちょっとした違和感があったのは間違いないのだが、今の咄嗟に放った蹴りにはそういうのはなく、それこそ自然に放った蹴りのように思えた。

 それは緑谷の練習の成果が実を結んだというのもあるのだろうが、同時にヒーローコスチュームについても以前とそれなりに変わっている。

 葉隠のように全て作り直し……って訳ではないものの、蹴りを主体にする戦闘スタイルに相応しいヒーローコスチュームになっているといった感じか。

 

「うわ、見た!? 凄かったね今の!」

 

 葉隠が驚いた様子で言う。

 実際、今の緑谷の動きはそう称賛されるだけのものがあったのは間違いない。

 もっとも、コンクリートの塊が落ちてきた下にいたのはオールマイトだったので、いざとなればその辺はどうにか出来たと思うが。

 ただし、オールマイトの一撃はマッスルフォームによる一撃だけではなく、緑谷に譲渡したOFAの残滓を消耗する事を意味している。

 つまり、AFOは現在タルタロスにいるが、後々脱出するなり、あるいは新しく強力なヴィランが現れた時、オールマイトがその力を発揮する為に緑谷としては少しでもオールマイトの中にあるOFAの残滓を使わせたくなかったのだろう。

 ……いや、緑谷はオールマイトのファンなので、単純にオールマイトが危ないと判断して咄嗟に身体が動いただけなのかもしれないが、

 ともあれ、緑谷がその成長を……ヒーローコスチュームの件もそうだが、数日ではあってもこの圧縮訓練を行った成果を周囲に見せつけたのは間違いない。

 

「オ、オールマイト、大丈夫ですか!?」

 

 周囲から称賛されていた緑谷だったが、オールマイトが近付いた事ですぐにそう尋ねる。

 ……他の面々は、一体何を大袈裟なといったような表情を浮かべている者も多いが。

 もっとも、今のオールマイトはマッスルフォームで筋骨隆々の状態だ。

 オールマイトの事情を知らない者にしてみれば、もし緑谷の反応が遅れたとしても、オールマイトは自分でどうにかしていただろうという思いがあったのだろう。

 まぁ、正直なところOFAが既になくても、ホワイトスターで治療をしたオールマイトであれば、あのくらいはどうとでもなったと思う。

 

「そこまでだA組!」

 

 と、オールマイトや緑谷の一件があったところで、不意にそんな声が周囲に響く。

 聞き覚えがあるような、ないような……そんな声に視線を向けると……

 

「ああ、B組か」

 

 体育館γに姿を現したのは、B組の担任であるブラドキングと、B組の生徒達だった。

 当然ながら、これからこの体育館γで圧縮訓練をする以上は、B組の生徒達もヒーローコスチュームに身を包んでいる。

 勿論、B組の生徒達のヒーローコスチュームを見るのはこれが初めてという訳ではない。

 林間合宿においても、その姿は見ている。

 だが、俺達――正確には俺以外――もそうだが、林間合宿の時と比べてヒーローコスチュームが大分変わっている者も多い。

 そんな中でも特に凄いのが……

 

「ねえ、知ってる? 仮免試験って約半数が落ちるんだって! B組の為にA組全員落ちてよ!」

 

 堂々と自分の願望をぶつけてくるのは、A組代表なアレな奴、爆豪や峰田と同じくB組代表のアレな奴である物間だった。

 そう言ってくる物間のヒーローコスチュームは……どう表現すればいいんだ?

 オーケストラで指揮を執っている感じか?

 そんなタキシードっぽいヒーローコスチュームを身に纏っていた。

 ヒーローコスチュームである以上、当然ながら本来のタキシードのように派手に動きにくいって事はないと思う。

 それに、こう言ってはなんだが、一般的にはタキシードは動きにくいように見えるが、オーダーメイドとかそういう感じで作って貰えば、それこそタキシードであっても普通に動けたりするんだよな。

 まぁ、その辺りについては当然ながらヒーローコスチュームを作っている会社の方でもしっかりと考えてはいるだろうが。

 

「物間のヒーローコスチューム……あれ、誰も止めなかったのか?」

 

 こっちに近付いて来た……それはつまり、物間の暴走がどうしようもなくなったら即座に手刀を放つべく近付いてきた拳藤にそう尋ねる。

 少し離れた場所では、上鳴もまた俺の質問に同意するように何度も頷いていた。

 

「自分の個性はコピーだから、変に奇をてらう必要はないって言ってた」

「奇をてらってないつもりなのか。……いやまぁ、物間の中ではそういう認識なんだろうな」

 

 物間の中だけではだが。

 ……とはいえ、ヒーローとしての役割の1つに、見ただけでそのヒーローが誰なのかというのが分かるというのもある。

 個性的なヒーローコスチュームであれば、当然ながらそれによって人気が出たりもするだろうし。

 また、物間は性格が色々な意味でアレだが、その外見はそれなりに整っており、そんな物間がタキシードのようなヒーローコスチュームを着ている光景は絵になるのは間違いない。

 そういう意味では、あの様子も決して外れという訳ではないのだろう。

 

「しかし、もっともだ。同じ試験である以上、俺達は蠱毒……潰し合う運命にある」

 

 常闇のその呟きが聞こえたのだろう。

 ブラドキングと何やら言い争いをしていた相澤は、不意に常闇の方を振り向く。

 

「だから、A組とB組は別会場で申し込みしてあるぞ」

 

 そんな相澤の言葉に、俺達には落ちて欲しいと言っていた物間はピタリと動きを止める。

 それこそ、映像の中で一時停止されたかのように……あるいは、エヴァによって魔法で氷の中に封じ込められたかのように。

 まぁ、あれだけ俺達を追い落とす気満々だった物間にしてみれば、相澤の言葉は予想外だったのだろう。

 もっともヒーロー科というのは雄英だけにある訳ではなく、全国中にある。

 そうなれば、当然ながら1ヶ所で仮免試験をやるにしても人数が多すぎてとてもではないが全員がしっかりと試験をするのは難しいだろう。

 他にも沖縄や北海道といった場所からやって来るには結構な額の交通費が必要となる。

 であれば、全ての都道府県に……とまではいかないが、幾つかの県を纏めて1ヶ所で試験をやるとか、そういう感じにした方が、生徒達にとってもやりやすい筈だ。

 公安の、試験を採点する者達も、大勢を一気にやるよりは、少人数――それでも数十人から数百人、場合によっては千人を超えるだろうが――の方がやりやすい筈だ。

 そんな訳で、物間にとっては完全に予想外だったが、相澤にとっては問題ない、当然の選択だったのだろう。

 そしてそれは当然ながら相澤だけではなく、B組の担任であるブラドキングも同様な訳で。

 

「ヒーロー資格試験は毎年6月と9月に全国3ヶ所で同時に行われる。同校生徒での潰し合いを避ける為、どの学校でも時期や場所を分けて受験させるのがセオリーとなっている」

 

 そう、告げる。

 にしても、10ヶ所くらいで行われるかと思っていたんだが、3ヶ所なんだな。

 まぁ、その辺りについては公安とかが問題ないと判断してそうしているのなら、俺がどうこう考えるような事じゃないしな。

 実際、今の話を聞く限りだとこれまでも同じような感じでしっかりと上手く回ってきたんだろうし。

 とはいえ……それによってプロヒーローが大量に生み出され、過剰になっているという問題も間違いなくあるのだが。

 

「ほっ」

 

 何故か安堵した様子で息を吐く物間。

 だが、次の瞬間には……

 

「直接手を下せないのが残念だ!」

 

 一瞬前の安堵の息はなんだったのかと思う。

 あるいは、傍から見れば安堵したように見えたものの、実際には安堵ではなく何かもっと別の……それこそ、今の一言を言う前に思い当たったことでも口にしたのかもしれないな。

 

「ホッ、つったな」

「病名のある精神状態じゃないかな」

 

 切島と上鳴がそれぞれに言葉を交わしているが、実際俺達だけではなく、2人の会話が聞こえてきたB組の面々の中にも頷いている奴がいるので、それを思えばB組の方でも物間については扱いに困ってるのだろう。

 まぁ、それを言うのならA組だって爆豪と峰田がいる訳だが。

 そんな風に思いつつ、俺は『アハハハハハ』と笑っている物間を見るのだった。

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