転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4684話

 俺に向かって握手を求めてくる真堂。

 その目には俺という存在を読み取ろうと……あるいは自分の方が上だと、そんな色が隠し切れていない。

 あるいは本人にとってもそこまで隠すつもりはないのかもしれないな。

 どのみち、俺にしてみればここで退く訳にはいかない。

 ……いや、普通に考えればここで意地を見せるのはそれはそれでどうかという思いがない訳でもないのだが、雄英の生徒として、ましてやA組のNo.1として、ここで退くといった事をすれば、後々面倒な事になるだろう。

 特に爆豪辺りなんかは、それこそ一体何をしているのかといった具合に怒鳴ってきてもおかしくはないくらいなのだから。

 なので、俺は素直に真堂の手を握る。

 

「へぇ」

 

 意外そうな声を上げる真堂。

 自分の本性を僅かにでも現した――傍から見れば分かりやすかったが――真堂にしてみれば、まさかこうもあっさりと俺が自分の手を握るとは思っていなかったのだろう。

 そうしてお互いに手を握ると……俺の手を握る真堂の力が強くなる。

 なるほど、力比べでもしたいといったところか。

 ここで俺に力比べで勝てば、その時は俺に対して……あるいはクラスNo.1である俺が負けたという事で、A組全員に対して精神的に有利になる。

 もっとも、爆豪辺りはそういうのは一切関係ないといった様子ではあるのだが。

 この仮免試験の合格率を考えると……ましてや、全国でもトップのヒーロー科を持つ雄英の生徒に対し、少しでも自分達の合格率を上げる為に、こういう……何て言えばいいんだ? 盤外戦術か? そういうのをしてくるのも、分からないではない。

 分からないではないが……だからといって、俺がそれを受け入れるかはまた別だ。

 真堂にとっても不運は、握力勝負で俺に挑んで来た事だろう。

 向こうにとっては完全に予想外だろうが、俺は金属の塊からですら、握力で毟り取るといった事が出来るのだが。

 ……とはいえ、まさか真堂の手を本気で握り潰す……いや、握り砕く? 訳にもいかないので、やるのは程々といったところだろうが。

 なので、真堂が俺の手の握るよりも少しだけ強めに握り返し、少しずつ力を強めていく。

 最初、真堂の表情は変わっていなかった。

 それがやがて少しはやるなといったような表情になり……そして、次第にその顔には苦痛の色が浮かんでくる。

 

「ぐ……」

「どうした? 俺はまだ全然力を入れてるつもりはないんだが」

 

 そんな俺の言葉に、真堂は必死になって俺の手を握ってくる。

 その表情には既に先程までの爽やかさといったものは一切ない。

 うーん、取りあえずこのまま続ける真堂の手の骨が砕けてしまう訳で、さすがにそれは可哀想だ。

 仮免試験が具体的にどのような内容なのかは、俺にも分からない。

 だが、実技であるのは間違いなく、それで右手が使えないというのは厳しいだろう。

 

「アクセル、その辺にしておきなさい」

 

 不意に、そう声が掛けられる。

 その声には聞き覚えがあると同時に、何故ここに? といった疑問を抱きつつ声のした方に視線を向けると……

 

「龍子……リューキュウ?」

 

 そう、そこには龍子の姿があった。

 まさかこのタイミングで龍子が姿を現すとは思っていなかったので、思わずヒーローネームではなく本名を口にしてしまったが、慌てて言い直す。

 また、龍子の側には優……マウントレディの姿もある。

 この2人は人気のあるプロヒーローの女で、しかもどちらも少数の事務所という共通点もあり、ついでに優が龍子を先輩と慕っているというのもあって、現在チームアップをしている。

 ……いやまぁ、実際には俺の一件があってそうなるしかなかったというのが正しいのだが。

 ともあれ、女のプロヒーローの中でも上位に位置する人気と実力の持ち主がこうして姿を現したのもあって、周囲はかなりざわめいている。

 ただでさえ雄英という事で目立っているのに、そこに龍子と優が来れば当然ではあるが。

 

「ほら、いいから手を放しなさい。そっちの子の顔色、凄い事になってるから」

 

 突然の登場に驚く俺に対し、龍子はそんな風に言ってくる。

 龍子の言葉に真堂の顔を見ると……うん、青くなったり、赤くなったりと、かなり限界に近いのは明らかだ。

 それでいながら、まだ右手の骨が砕けていないのは真堂が思ったよりも頑丈だったのか、それとも俺の力の制御が予想よりも上手かったのか。

 その辺は、残念ながら分からないが。

 ともあれ、このままだと真堂の右手が大変な事になるのは間違いないので、手を放す。

 

「っ!?」

 

 すると、真堂はすぐに俺から離れ、手を撫でる。

 ……うん、ちょっと悪い事をしてしまったかもしれないな。

 そうも思ったが、元々仕掛けて来たのは真堂の方なので気にしない事にする。

 

「で、何でリューキュウとマウントレディが仮免試験の会場に? 単純に応援に来てくれた……とかじゃないんだろ? ミスジョークのようにどこぞの高校のヒーロー科の付き添いって訳でもないだろうし」

 

 ちなみにそのミスジョークは、自分のところの生徒が痛い目に遭ったにも関わらず、相澤にウザ絡みしている。

 ……あるいは、あのウザ絡みこそがミスジョークの相澤に対するアピールなのかもしれないが。

 そこまで生徒の心配をしていないのは、相澤の生徒である俺が本気で骨を砕くような事はしないと思っているのか、それとも真堂が実は俺達にとっての峰田枠で、少しは痛い目を見た方がいいと思っているのか。

 

「そうね。アクセルが仮免試験を受けるって聞いたから、ちょっと来てみたのよ。……少し、いい?」

「うん? どうした?」

 

 龍子の言葉に首を傾げるが、それを見た優が俺を引っ張っていく。

 

「ほら、いいからちょっと来て。伝言があるんだから」

「……伝言?」

 

 誰からの伝言なのかはちょっと分からないが、それならここで言ってもいいような気がするんだが。

 そう思ったが、龍子と優の様子を見る限りではそういう訳にもいかないらしい。

 そんな訳で、俺は龍子と優に腕を引っ張られて移動する。

 ……そんな俺を、峰田は血の涙を流しながら、上鳴は心の底から羨ましそうな様子で見ており、それ以外にもヤオモモや三奈、葉隠、耳郎からジト目を向けられていった。

 いやまぁ、葉隠は透明だから本当にジト目なのかどうかは俺にも分からなかったが。

 ただ、耳郎が……何となくこのままだと耳郎さんになってしまいそうな感じがして、微妙に怖い。

 他にも当然ながらここに集まっている他の高校のヒーロー科の生徒達の多くは、プロヒーローの中でも人気の高い龍子や優について知っている者は多く、俺に嫉妬の……中には憎悪の視線すら送ってくる者がいたりする。

 ただまぁ、有象無象からのこの手の嫉妬はこれまでにもよく向けられていたので、気にするような事じゃない。

 そんな訳で、俺は龍子と優に引っ張られ、会場の隅……どこかの学校のバスが停めてあり、周囲からの死角になってる場所にやってくる。

 

「それで? わざわざこんな場所まで連れてきてどうしたんだ? まさか、何の用件もなく、こんな場所に連れてきたとか、そういう事はないよな?」

 

 何だか以前にもこれと同じシチュエーションがあったような?

 そう思いつつ、俺は目の前の2人に尋ねる。

 

「勿論理由があっての事よ。あそこだと……アクセル以外の生徒は林間合宿に参加していた子達ばかりでしょ? だからアクセルだけをこっちに連れてきたの」

「林間合宿? それが一体何の関係が?」

「いいから、聞きなさい。えっと……こほん。『頑張って』『私が唾付けたんだから、落ちたら承知しないわよ』以上よ」

 

 龍子が少し照れ臭そうにそう言う。

 性格はともかく、外見はクールビューティといった様子の龍子が、薄らと頬を赤く染めて恥ずかしがる様子には、こう……かなりの破壊力があるな。

 そう思いながらも、俺は龍子の言葉の意味を考え……るまでもなく、誰からの伝言なのかを理解する。

 林間合宿という単語を使った時点で、半ばそれは分かっていたが。

 つまり、プッシーキャッツのうちの、ピクシーボブとマンダレイの2人だろう。

 ラグドールはAFOに個性を奪われた影響でまだ入院中の筈だし、虎は何だかんだとあまり俺と話す機会はなかった。

 だが、ピクシーボブとマンダレイの2人は、林間合宿が始まった時からA組と一緒にいる機会が多く、それだけ接する機会も多かった事になる。

 特に……まぁ、うん。マンダレイのテレパスは……ちょっと、色々と凄い事になった結果、良くも悪くも俺という存在をマンダレイに強烈に焼き付けてしまったし。

 ピクシーボブに関しては、元々結婚願望が強いのもあってか俺に目を付けていたようだったし。

 もっとも、唾を付けられた覚えはないが。

 ただ、その台詞から今の伝言がピクシーボブとマンダレイからのものであるというのを理解出来た。

 とはいえ……俺のLINのIDだったり、あるいは電話番号だったりも確か教えた筈なので、わざわざ龍子達に伝言を託さなくても俺に連絡する事は出来たと思うんだけど。

 あるいは、現在プッシーキャッツはラグドールの件もあって活動を休止中なので、直接連絡をしにくかったのか。

 だからといって、龍子や優に伝言を頼むというのは、どうかと思うけど。

 というか、ピクシーボブやマンダレイの伝言を伝えるだけなら龍子だけでいいと思うし。

 いやまぁ、俺の激励に来たと思えば、そんなに悪くないとは思うけど。

 そう思っていると、今度は優が口を開く。

 

「で、私からの伝言は公安の目良さんからよ」

「……それこそ、わざわざ伝言をしなくても電話をすればそれで全く問題ないと思うんだが」

「多分、サプライズとか、そういう感じだったんじゃない?」

「サプライズ、か」

 

 実際、龍子と優の2人が来た事で、仮免試験の会場の外がかなりざわついたのは間違いない。

 そういう意味ではサプライズとしてはちょうどよかったが、だからといってこのサプライズが何か役立ったかと言われると……微妙だろう。

 寧ろこれから仮免試験を受ける者達を動揺させたという意味で、マイナスですらあるように思える。

 そんな俺の視線を気にした様子もなく、優は口を開く。

 

「壁としての役割を期待している、だってさ」

「……は? え? いや、言いたい事は分かるけど、それ本当にいいのか?」

 

 目良の言う壁の役割。

 それはつまり、俺がA組で行ってきた他の生徒達の壁となるのと同じ事をこの仮免試験でもやって欲しいと言ってるのは明らかだ。

 仮免試験の内容については、俺も分からない。

 あるいは目良に聞けばその辺りについても教えてくれたのかもしれないが。

 そもそも俺が仮免試験を受けるのは、半ばカモフラージュ……いや、個性という事になっている混沌精霊の力を自由に使えるようにするという目的もあったりするが。

 とはいえ、仮免はあくまでも仮免でしかなく、本物の免許には及ばない。

 具体的には、仮免を持っている者が個性を使えるのはあくまでも緊急事態の時だけで、それ以外……何となく個性を使うとか、そういう事は当然ながら禁止されている訳だ。

 そうなると、俺が個性という事になっている能力を思う存分使うといった事は出来ないし、そもそも特例として試験を免除して仮免を渡してもいいと思うんだが。

 ともあれ、目良としては俺という存在を使って試験を受ける者達に対し、壁を見せつけた方がいいと判断したのだろう。

 まぁ、俺もこの仮免試験には少し興味があったのは事実だから、ついでと言えばそれは問題はないし、何よりも俺が……シャドウミラーを率いる俺がわざわざ手を貸すのだから、それはつまりシャドウミラーの政治班的にも美味しい事ではあるのだろう。

 とはいえ、俺が壁として仮免試験に参加したとなると、それは他の生徒にとっては絶望的だろう。

 この仮免試験の合格率は5割前後という話だったが、試験内容にもよるけど、俺が壁として他の参加者の前に立ち塞がった場合、合格率は3割……場合によっては2割を切ってしまう可能性すらある。

 そんな諸々について考えるも、目良がそれでいいというのなら構わないのだろう。

 何しろ現在はヒーロー飽和社会とも呼ばれているくらいだ。

 もしかしたら公安としても、有象無象よりも精鋭が欲しいと思ったのかもしれない。

 ……もっとも、ホワイトスターで治療したとはいえ、オールマイトは既にOFAを緑谷に譲渡しており、今のオールマイトはOFAの残滓を使っているにすぎない。

 いずれ……そう遠くないうちに、OFAの残滓もなくなればオールマイトはプロヒーローを引退する必要がある。

 そうなると、現在No.2のエンデヴァーが自動的にNo.1になるのか、それとも他の者が出てくるのか……その辺りは分からないが、それでもこれからの日本のプロヒーロー事情は色々と混沌としたものになるのは間違いないだろう。

 

「分かった。目良が何を考えてそんな風に言ったのかは分からないが、仮免試験で俺は壁になる」

 

 そう、龍子と優に宣言するのだった。

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