転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4686話

 俺達が今までいた場所が展開するその様子は、大きさの差こそあれどもゲートを思い出させる。

 まぁ、似たような構造である以上、同じような感じになるのも仕方がない事ではあるのだが。

 ともあれ、さすがプロヒーローの仮免試験というだけの事はある。

 まさか、これだけの施設を作っているとは。

 ……もしかして、目良があそこまで寝不足状態なのって、シャドウミラー関係以外にもこうした地形を作るとか、そういう仕事をやっているからだったりしないか?

 日本で仮免試験を行う場所が3ヶ所というのは……まぁ、うん。

 こういう場所を複数用意するのが難しいからという理由で納得出来る。

 それ以外にも1500人程の中から100人。それも第1次試験の状態でそうなのだから、他の試験会場でも多くを落とすというのを考えると、やっぱり3ヶ所で正解だったのだろう。

 いや、あるいは他の2ヶ所ではこの試験会場程に酷い条件ではないかもしれない……いや、それはないな。

 同じ仮免試験なのに、受ける場所によって内容はともかく、難易度がそこまで大きく違うといったようなことになれば、間違いなく面倒な事になる。

 ネット全盛のこの時代において、単純計算で1500人が3ヶ所で4500人程の受験者の全員が仮免試験の内容についてネットに投稿しないというのはまずないだろうし。

 そうなれば、会場によって難易度や合格者数が大きく違うという話になって、それこそ公安委員会の問題となるのは明らかだろう。

 であれば、やはり今日は他の2ヶ所の会場でもこの会場と同じような難易度で、合格者の数もかなり少なくなる筈だ。

 ……拳藤や茨、大丈夫だろうな?

 勿論、あの2人の実力については十分に理解している。

 それこそ圧縮訓練によって以前までとは別物……とまではいかないが、それでもかなり実力が上がっているのは間違いない。

 だが、この仮免試験は周囲の様子を見ても分かるように、明らかに他の面々と比べても難易度は高くなっている。

 そう考えれば、まさか……と、そんな予想外の展開になるような事があってもおかしくはない。

 

「アクセル君。どうかな?」

 

 拳藤や茨について考えていると、不意に緑谷にそんな風に声を掛けられる。

 

「悪い、周囲の様子を見ていて聞いてなかった。どうしたって?」

「皆で集まって行動した方がいいと思って」

 

 その言葉に周囲の者達を見るが……クラスNo.2の轟と爆豪の姿がない。

 轟は氷や炎による広範囲攻撃を得意としているので、そういう意味では緑谷の主張する集団行動には向いていない。

 爆豪は……個性的には向いているものの、本人の性格的にそういうのには一切向いていてないので、そう意味ではここにいないのは当然の事だろう。

 こうしている間にも、時間はどんどん減っている。

 展開してから1分が経過したところでスタートって話だったし、そうなると俺も急がないとな。

 そうなると、どうするか。

 緑谷が言うように、集団で行動してもいいだろう。

 あるいは、もし俺が目良から壁となるように要望をされていなければ、その選択をした可能性も高い。

 だが、今日の俺は目良からの要望で壁として他の受験生達の間に立ち塞がるように頼まれている。

 もっとも、本当の意味で俺が壁になったりすれば、それこそこの1次試験で俺以外全員が失格といった事にもなりかねないので、相応に手加減をする必要があるのは間違いなかったが。

 さすがにそれはやりすぎなので、ある程度はこちらとしても手加減をする必要がある。

 

「悪いな、緑谷。俺も爆豪や轟と同じく単独で行動する」

「え? ちょ……アクセル君!?」

 

 この返答は緑谷にとっても予想外だったのか、緑谷は驚きの表情を浮かべていた。

 緑谷には悪いが、俺がここで緑谷に協力しない事によって、これで多少なりとも緑谷の実戦経験――あくまでも仮免試験だが――を積ませられるという目的もある。

 そんな訳で、緑谷や他の面々もその場に残し、俺は跳躍して虚空瞬動を使いながら移動する。

 空中を蹴る俺の姿を見て、近くにいた者達がこちらを見てくる。

 なお、この場合の近くにいる者達というのは、緑谷を始めとした雄英の面々ではなく、他の受験者達……恐らくは俺が予想したように、体育祭の全国放送で個性を知っているからこそ、弱点を突いて倒してしまおうと思っている者達だろう。

 ……もっとも、そう上手くいくとは思えないけどな。

 緑谷を始めとして、雄英の生徒達は全員が優秀だ。

 競争率300倍を突破したのは伊達ではない。

 その上で、体育祭が終わってからも色々な騒動に巻き込まれたし、あるいは俺の自主訓練に参加したり、圧縮訓練で鍛えたり……そんな感じで、鍛えてきた。

 ましてや、原作主人公の緑谷が、あるいはその緑谷の仲間達がいるのを思えば、そう簡単にどうにか出来る戦力ではない。

 そういう意味では、試験が始まるのを待っている面々は、緑谷達が合格する為の餌と言ってもいいだろう。

 だからこそ、俺がそこにいるのは餌を奪うという形にもなる訳で、緑谷達と別行動をするのは決して悪くないことではあった。

 虚空瞬動を使って空中を蹴りながら移動した先は、幾つもあるフィールドのうち、多数のビルとかがある市街地。

 正直なところ、戦場となるのはどこでもよかったんだが……これから俺がやろうとしている事を思えば、市街地の方がやりやすいと思えたし、獲物となる者達も多数いると判断した為だ。

 

『5……4……3……2……1……Start!』

 

 俺がビル街にある建物の中でも、コンビニを模したと思しき建物の屋根に着地するのとほぼ同時に試験が開始される。

 同時に、俺の前に多数の受験生が姿を現した。

 俺は虚空瞬動を使って空を飛んで……いや、跳んで移動したので、当然ながら他の受験生からも俺の姿は見えていた筈だ。

 空を飛べる個性というのはそれなりに珍しいので、空中を移動すればどうしても目立ってしまう。

 1500人程も受験生がいるとなると、空を飛ぶなり跳ぶなり出来る者はそれなりにいると思うが……そうして目立ってしまえば、出る杭は打たれるといった感じではないが、どうしても狙われる。

 だからこそ空を飛べるなり跳べるなりする個性があっても、俺のようにこれ見よがしに使ったりはしないのだろう。

 実際、こうして俺を狙って多数の連中が来た訳だし。

 とはいえ、先程周囲で話していた者の中には俺を狙うのは自殺行為だみたいな事を話していた奴もいると思うんだが……まぁ、俺としては、それはそれで構わないが。

 

「へっへっへ。ああして目立って移動したら、狙われるってのは予想出来なかったのか?」

 

 俺の周囲に集まってきた者達のうちの1人が、手から砂を出しながらそう言ってくる。

 その言葉をスルーしながら、集まってきた者達の気配を数えると、ざっと200近い。

 俺が予想したよりもかなり多いな。

 一瞬そう思ったが、考えてみれば当然か。

 プロヒーローになった時、どこで働きたいかというのがこの場合大きいだろう。

 田舎と都会のどちらがいいか……勿論、人によっては田舎の方がいいと主張する者が多いが、多くの者は都会で働きたいと思うだろう。

 であれば、そうなった時に活躍出来るように自分の個性を街中で便利に使えるようにするのも当然だし、街中活動しやすいように訓練するのも当然で、そして今回のような試験の場合、自分がしっかりと訓練してきた……得意だと思える場所で活動しようとするのも当然だろう。

 その上で目立つように移動していた俺の存在に気が付いて、こうして集まってきた……と考えるのが自然だった。

 とはいえ、俺にしてみればそれは好都合なのだが。

 

「そんな訳で、いわゆる……こんにちは、死ね」

 

 手から砂を出している男に返事をした……って訳ではないのだが、パチンと指を鳴らすと俺の右手は白炎となり、そこから多数の炎獣が生み出される。

 10、20……50……100……500。

 そんな圧倒的な数の炎獣。

 

「は?」

 

 砂を出している男が、そして俺を狙ってきた受験生達が、一体自分が何を見ているのか分からないといった様子で、間の抜けた表情や声を出す。

 この1次試験……内容的には、ターゲットにボールをぶつけるというものだが、ボールについては必ずしも自分のボールではなくてもいい。

 それこそ、自分を狙っている者達からボールを奪い、それを自分のボールとしてもいい筈だ。

 まぁ、その辺はしっかりと聞いた訳ではないので、もしかしたら違う可能性もあるが、その時は改めて自分のボールを使えばいいだろう。

 そう判断すると同時に、500匹の炎獣が一斉に行動を開始する。

 

「う……うわあああああああぁ!」

 

 狼の炎獣が向かったのは、手から砂を出していた男。

 向こうにしてもまさか炎獣なんて存在については知らなかったらしく、悲鳴を上げ……それでもヒーロー候補生らしく、手にした砂を放つ。

 まぁ、岩とか土の槍とかそういうのならともかく、砂を放ったところで炎獣には一切効果がなかったが。

 これが炎獣ではなく人であれば、あるいは砂が目に入って何も見えなくなったりするかもしれないが。

 あるいはその砂でヤスリの如く皮膚を削るとか、そういう攻撃方法もあるかもしれないな。

 ともあれ、そういう攻撃は炎獣には通用せず、腰につけていた、ボールの入った入れ物を狼の炎獣が噛み千切り、周囲にボールが転がる。

 その数、5個。

 本来なら1人6個のボールなのだが、砂を出していた男はもう片方の手……砂を出していない方の手に1個ボールを持っていた事もあり、地面に転がったボールは5個となる。

 とはいえ、そのすぐ後に鳥……鷲の炎獣がその手に持っていたボールを足で掴んで奪っていく。

 ボールを奪われた男は焦った様子を見せるが、その行動は既に遅い。

 鷲の炎獣が落としたボールを猿の炎獣が奪うと、そのまま男のターゲットの1つにぶつけ……狼の炎獣が口で咥えたボールをターゲットにぶつける。

 瞬く間に3つのターゲットのうち2つのターゲットを失った男は、咄嗟に砂を使った攻撃をしようとしたものの、次の瞬間にはゴリラの炎獣がその動きを止め、先程とは違う猿の炎獣がボールをターゲットにぶつける。

 そうして、砂を出す男はあっという間にターゲットの全てを失って失格扱いとなり、それと同じ光景が俺の周囲のいたる場所で行われていた。

 結果として、俺を倒す為に集まってきた者達は……俺を見た瞬間に本能的に危ないと判断して逃げたような勘の鋭い者や、偶然逃げ切る事が出来た幸運な者以外は全員がその場で失格となるのだった。

 

「さて、これでどうだ?」

 

 周囲で呆然としたり、あるいはやり直しだと騒いでいるような者、泣き喚いている者。

 そんな者達を一瞥し、少し待つ。

 他人のボールを使っても合格するのか、あるいは自分のボールでなければ駄目なのか。

 その辺りについてどうなのかと待っていると……

 

『あ、もう1人目の通過者がでま……え? マジ?』

 

 試験会場中に備え付けられたスピーカーから、目良の声が聞こえてくる。

 なるほど、どうやらこの様子からすると、合格者についてはこの放送で教えてくれるらしい。

 

『えっと、その……脱落者212名。1人で212人を脱落させ合格。いや、だけどこれちょっとやりすぎでしょ』

 

 そんな風に思ったら、付けていたターゲットが不意に3つとも光る。

 

『通過者は、控え室に移動して下さい。早よ』

 

 あー……うん。てっきり放送で合格者の氏名を発表すると思ったんだが、違うらしい。

 えっと、じゃあ目良のこの放送というか実況ってのは一体何の意味があるんだ?

 そう疑問に思ったが、試験がどのくらい進んでいるか、他にどれくらい獲物が残っているのか。

 そんなのを知らせる意味もあるのだろう。

 ともあれ、他人のボールであっても合格なのは間違いないらしいので、案内に従って控え室に向かう。

 そうして案内された控え室に入ると……当然のように、俺以外には誰の姿もない。

 まぁ、目良の様子からすると俺の合格が最初だったらしいし、それを思えばまだ俺以外誰もいないのは仕方がないが。

 一応壁になるようにって伝言があったからそうしたんだが、放送の内容からするとちょっとやりすぎてしまったのかもしれないな。

 とはいえ、それなら具体的にどのくらいにすればいいのかとか、そんな風に最初に言っておいて貰いたかった。

 そう思いながら控え室を見る。

 控え室とはいうが、ファミレスみたいな感じだな。

 よく見れば、サンドイッチとかおにぎりとかの軽食やクッキーやチョコといったお菓子も用意されている。

 合格者は100人という事だったので、100人分……いや、1人で複数食べる奴もいるだろうし、恐らくはかなり多くそういうのが用意されてるんだけど、これも目良を始めとした公安の者達が準備したんだろうな。

 そう思いつつ、俺は取りあえずサンドイッチの中から卵サンドを選ぶ……前にターゲットに指示され、奥にある装置を使ってターゲットを外し、ボールと共に返却するのだった。

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