転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4687話

「うん、このピザはなかなか」

 

 軽食の中に冷凍のピザがあった事に気が付き、最初の卵サンドを食べてからオーブンを使って温めたピザを口に運ぶ。

 エビとイカ、アサリの入ったシーフードピザは、なかなかの味だった。

 絶品! といった程ではないが、ファミレスで出てくるピザとしては十分に合格点だろう。

 チーズも1種類ではなく、何種類かを混ぜたチーズが使われており、コクと旨みが何重にも襲ってくる。

 出来ればベーコン辺りが入っていてもいいと思うんだが……

 

「うわっ、早いっすね!」

 

 そうしてピザを味わっていると、聞き覚えのある声がする。

 ピザを食べながらそちらに視線を向けると、そこには会場に入る前に遭遇したイナサの姿があった。

 雄英の推薦入学試験でトップを取りながら、何故か雄英ではなく士傑に入学した人物。

 そんな様子からすると、間違いなく原作においても重要……かどうかはともかくとして、しっかりとした出番のある人物なのだろう。

 

「どうやら俺が1番だったみたいだな。奥にターゲットを外す装置があるから、それを使ってくるといい。後は試験が終わるまでゆっくりとここで休憩して体力を回復させろって事らしいな。準備されている料理も、なかなか美味いぞ」

「本当っすか!? あ、そのピザ美味そうっすね!」

 

 そう言いつつ、奥に向かうイナサ。

 するとすぐにターゲットを外し、イナサがこっちにやって来る。

 まぁ、この控え室にいるのは現在俺とイナサの2人だけだ。

 それを思えば、イナサが話し相手として俺を選ぶのは分からないでもない。

 

「このピザは冷凍だったから自分で調理……まぁ、オーブン使って焼くだけだけど、とにかくそれでいい。そういうのが面倒なら、サンドイッチのような軽食とかがあるからそれを食べてもいいと思うぞ」

「分かったっす。ちょっと見てくるっす! 何か美味しいのがあればいいんすけど」

 

 そう言い、イナサは調理場に向かう。

 うーん、こうして見るとイナサは人当たりがいい奴だよな。

 まぁ、こう……もの凄い勢いがあるというか、そんな感じではあるが。

 その辺はPlus Ultraに強引に入ってきたのを謝った時と、そう違いはないように思える。

 そう考えると、原作的には他校にいる仲間といった感じか?

 士傑は雄英と同じくらい有名なエリート校なので、それを思えばそういう士傑にイナサのような奴がいるのはそうおかしくはないか。

 そんな風に思いながらピザを食べていると、やがてイナサが俺のテーブルにやって来る。

 やって来るのはいいが……その手にあるのは、丼だ。

 そして漂ってくる香りは、すき焼き……というか、牛丼の匂い。

 

「牛丼か?」

「そうっす。それもただの牛丼じゃなくて、長ネギと温玉と青じそのスペシャル牛丼っす!」

「……青じそ?」

 

 長ネギと温玉は分かる。

 まぁ、俺の場合は牛丼には生卵派だけど、その辺りは好みもあるだろう。

 それに生卵よりも温玉の方が消化とかにもいいらしいし。

 そう考えれば、イナサのチョイスも分からないではないが……そこで、何故青じそ?

 ちなみに青じそは大葉を呼ばれる事もある、日本ではポピュラーな薬味というか、香草だ。

 個人的には日本の香草となるとミョウガも好きなんだが。

 

「青じそって、牛丼に合うのか?」

「これが、意外といけるんすよ。青じそが多くなりすぎると、ちょっと咽せたりするんすけど、適量なら美味いっす」

 

 そう言い、俺の向かいに座ったイナサは牛丼を食べ始める。

 ちなみに牛丼といえば紅生姜だったり、あるいは七味だったり、もしくは漬物だったり味噌汁だったりがあってもおかしくはないと思うんだが、イナサは特にそういうのを持ってきておらず、牛丼だけだ。

 あるいは単純にそれらがなかった……いや、それはないか。青じそとかがあったのを思えば、紅生姜とかも普通にあってもおかしくはないのだから。

 

「まぁ、美味いと思えるのならそれでいいけどな。……それにしても、最初に抜けた俺が言うのも何だけど、イナサも早かったな」

「頑張ったっす! それに皆が熱くなっていたのを見て……」

 

 そこまで言うものの、それ以後は牛丼を食べるのに戻るイナサ。

 どうやら結構流されやすいタイプっぽいな。

 そういう風に見せ掛けているだけというのもあるが。

 ただ、そういう性格であっても俺以外の雄英の生徒達よりも早く1次試験を抜けてきたのは事実。

 それは素直に凄いと思う。

 正直なところ、爆豪や轟といったクラスNo.2はさっさと抜けてくると思っていたんだけどな。

 意外と強敵に遭遇して、手こずってるといった感じか?

 そんな風に会話をしていると、やがて1人、また1人といった具合に1次試験を突破した者達が出てきた。

 俺は特にその辺については気にしていなかったのだが、イナサはその人当たりの良さを発揮してターゲットの外し方とか、飲食の仕方を教えに行った。

 それを見ていると……再び控え室の扉が開き、誰かが入ってくる。

 それは、轟だった。

 俺が轟の方に気が付いたのを向こうでも気が付いたのだろう。

 轟がこちらに向かって近付いてくる。

 ……その際、プロヒーローについて他の参加者と話しているイナサもまた新たに入ってきた轟に気が付いた様子だったが、一瞬、本当に一瞬だけだったが、間違いなく轟を睨み付ける。

 

「……轟、お前イナサと何かあったのか?」

 

 顔見知りが俺しかいないからだろう、轟が近付いてきたので、そう尋ねる。

 だが、轟は俺の言葉に対して首を横に振る。

 

「いや、分からねえ。推薦入試を受けたのなら、知っていてもおかしくはねえんだが」

 

 そう言い、首を横に振る轟は隠しているとかそういうのではなく、本当に俺が何を言っているのか分からないといった様子だった。

 

「そうか。まぁ、人っていうは自分でも知らないところで羨まれたり、あるいは妬まれたりする事もあるしな」

「……実感が籠もってるな」

「それはもう」

 

 これまで色々な経験をしてきたが、その中には何でそれで俺が恨まれる? といったような事も何度もあった。

 そういう意味では、イナサが何らかの……轟が分からない理由で恨んでいてもおかしくはないと思う。

 

「なるほどな。まぁ、それについては置いておくとして、やっぱり最初に放送にあった、200人以上を一気に倒したって奴はアクセルだったのか?」

「そうだな。虚空瞬動を使って空中を移動してビルとかのある街中に移動したら、それを見て多くの者達が集まってきたからな。その連中を一網打尽にした形だ。……もっとも、中には勘だったり、偶然だったりで俺から逃げ切った奴もいたりしたが」

「それでも200人以上を一気にか。で、そのすぐ後に100人以上を一気に倒して試験を突破した奴がいるって話だったが、そっちはさっきのイナサって奴か?」

「俺の後にこの控え室に入ってきたのはイナサだったから、多分そうなんだろうな」

 

 原作において、緑谷の……というか、A組の良きライバル的な存在であると考えれば、そのくらいは当然だろう。

 あくまでもこれは俺の予想でしかないので、実際のところどうなのかは分からないが。

 

「アクセルさん! 轟さんも!」

 

 轟と話していると、不意にそんな声が聞こえてくる。

 声のした方に視線を向けると、そこにはヤオモモ、耳郎、梅雨ちゃん、障子の姿があった。

 ……当然のように露出が激しく、それでいて大人顔負けのボディラインをしているヤオモモは既に控え室の中にいる男の視線を集めていたが、ヤオモモ本人は周囲の視線を全く気にした様子もなく、こちらに向かって駆け寄ってくる。

 その動きによって豊かな双丘が大きく揺れて、それこそ零れそうになるのだが……その辺はヒーローコスチュームの技術によるものか、その双丘が零れ落ちるといったことはなかった。

 そして耳郎はそんなヤオモモから少し離れてこっちに移動してくる。

 まぁ……うん。分からないでもない。

 耳郎は良く言えばスレンダーで、悪く言えば……

 

「うおっ!」

 

 悪く言えばと考えた辺りで、俺の顔面に向かってイヤホンが飛んでくる。

 咄嗟にそのイヤホンを回避したものの、俺を見てくる耳郎の視線には鋭いものがあった。

 ……それこそ、ここでもう少し刺激したりすれば、耳郎さんになってもおかしくはないと思えるくらいには。

 何か変な事を考えなかった?

 声には出さず、口パクでそう聞いてくる耳郎。

 そんな耳郎に対し、俺はぶんぶんと首を横に振る。

 

「あら、どうしましたの、アクセルさん。やっぱり試験でどこか怪我をしたとか? でしたら、すぐにお薬を……」

 

 俺と耳郎のやり取り――というか俺の方だけだが――を見ていたヤオモモが心配そうに言ってくるが、俺は再度首を横に振る。

 もっとも、今回は耳郎の時のような切迫感はなかったが。

 ……というか、さっき耳郎のイヤホンはヤオモモの横を通りすぎて俺の方にきたんだが、ヤオモモはそれに気が付かなかったのか?

 それとも、いつもの事だと考えたのか。

 

「俺は怪我をしてないから、心配するな。それよりも奥にターゲットを外す機械があるから、それでターゲットを外してボールと一緒に回収して貰ってこい。A組の他の連中が来るのを待つにしても、いつまでもターゲットを付けたままにしておくのはどうかと思うし」

 

 そう言うと、ヤオモモと……そんなヤオモモから少し離れた耳郎と、そんな耳郎を励ます意味で軽く肩を叩いた梅雨ちゃん、そして所在なさげな様子の障子が奥に行く。

 障子はA組ではそこまで目立たない……というか、自己主張が強くないタイプなのだが、身体の一部を自由に作れるという個性は非常に強力だ。

 ましてや、雄英のヒーロー科を目指して鍛えていたというのもあるが、異形系という個性による影響によっても、高い身体能力を持っているし。

 そんな訳で、緑谷が提案したようにヤオモモ達と一緒に纏まって行動しても十分な戦力となったのは間違いない。

 

「お疲れさん」

「……ああ」

 

 障子が近くを通る時に声を掛けると、障子は少しだけ意外そうな表情を浮かべつつも返事をし、奥に向かう。

 

「ヤオモモ達が来たって事は、そろそろ他のA組が来てもおかしくはないんだけどな」

「ああ。……ん? 蕎麦もあるのか。アクセル、俺はちょっと蕎麦を取ってくるけど、アクセルはどうする?」

 

 俺と話していた轟が、とある場所……見ず知らずの合格した奴が食べている蕎麦を見て、そう言う。

 ただし、その蕎麦は普通の蕎麦ではなく、いわゆるカップ麺の蕎麦だ。

 ああいう蕎麦って、蕎麦という名称だし、色も灰色の蕎麦っぽい色だけど、大抵は蕎麦粉よりも小麦粉の方が多いんだよな。

 ちなみに蕎麦粉と小麦粉のどちらが多いのかというのは、原材料を見ればすぐに分かる。

 基本的に原材料というのは使っている割合の多い順番に表記されているので、蕎麦と言いつつ小麦粉の方が多い場合は、小麦粉、蕎麦粉といったように書かれている。

 ……あ、でもこれは乾麺とか生麺とか、そういうのの話か。

 カップ麺の場合にどうなっているのかは分からないが……まぁ、俺が以前住んでいたマンションの1階にあった高級スーパーで売ってるような値段の高い本物志向のカップ麺ならともかく、こういう場所で用意されているカップ麺の蕎麦であれば、やっぱり小麦粉の割合の方が多かったりするんだが。

 

「いや、俺はいいや。轟の分だけ……あるいはヤオモモ達が戻ってきて、腹が減ってるのなら、勧めたらいいんじゃないか?」

 

 そう言うと、轟は少し……本当に少しだけ残念そうにしながらも、カップ麺が置かれている場所に向かう。

 そんな轟を見ながら、俺は以前荒垣から聞いた事を思い出す。

 蕎麦打ちというのは、慣れないうちは非常に難しいらしい。

 ましてや、小麦粉を使わずに全て蕎麦粉の……いわゆる10割蕎麦というのは、更に難易度が高いとか。

 しかし、最近だと乾麺でも10割蕎麦というのは普通に売っていたりするらしい。

 本当に10割蕎麦なのかは、それこそ原材料を見れば分かる。

 ただ、人が手で打つのも難しいというのに、乾麺で10割蕎麦って、どうやって作ってるんだろうな。

 当然ながら、人の手ではなく機械で打っているんだろうが。

 多分、独自の製法だとか、そういう感じなんだとは思うけど。

 ともあれ、ここにはそういう乾麺とか……ましてや生麺とかはない。

 あくまでも手軽に食べられるような物だけだ。

 イナサが食べていた牛丼がせいぜいといったところか?

 自分で調理をする必要はなく、丼に白飯を盛って鍋から牛丼の具をかけて、薬味をトッピングすればいいだけだ。

 自分で最初から肉やタマネギを切って……とか、そういう風なのはさすがにない。

 もっとも、ターゲットとボールの奴はあくまでも1次試験で、この後には2次試験があるので、軽くエネルギーを補給するとか、そういうの以外でイナサのように牛丼を本格的に食べるとか、そういう事をしている者は……いない訳ではないが、かなり少ない。

 そんな風に思っていると、少しだけ満足そうな様子で轟がカップ麺の蕎麦にお湯を入れ、こっちに戻ってくるのだった。

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