転生とらぶる2   作:青竹(移住)

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4688話

「ふぅ……落ち着きましたわね」

 

 紅茶を飲みながら、ヤオモモがそう呟く。

 ……何故か、先程までは俺と一緒にいた轟は、今となっては障子と一緒に別のテーブルにいる。

 いやまぁ、この控え室は半ばファミレスのような形式なので、テーブルも基本的に4人用だ。

 そして今ここにいる雄英の面々は、俺、轟、障子、ヤオモモ、耳郎、梅雨ちゃんの6人。

 それならいっそ男と女の席に分かれた方がいいと思ったんだが……ヤオモモの要望で、俺は何故かヤオモモ、耳郎、梅雨ちゃんの席にいる訳だ。

 まぁ、俺もこの席にいるのは構わないので、問題ないのだが。

 ……もっとも、結構控え室に集まってきた者達のうち、男からは嫉妬の視線を向けられている。

 何しろ耳郎と梅雨ちゃんもそうだが、やっぱりこの場合は発育の暴力たるヤオモモ、それも露出度の高いヒーローコスチュームを着ているヤオモモと一緒にいるのが嫉妬の視線の理由だろう。

 もっとも、こっちに視線を向けているのは別に仲間という訳でもなく、それこそ仮免試験のライバルなのだから、嫉妬されるくらいは何の問題もなかったりするのだが。

 

「取りあえず一段落したから、後は他の連中がここに来るのを待つだけだな」

「峰田ちゃん、大丈夫かしら」

 

 俺の言葉を聞いて、梅雨ちゃんが心配そうに言う。

 まさか、ここで真っ先に峰田の名前が出て来るとは思わなかった。

 もっとも梅雨ちゃんにしてみれば、峰田は半ば弟のような扱いだ。

 それだけに、今もこうして峰田を心配している気持ちは十分に理解出来た。

 とはいえ……

 

「峰田なら大丈夫だろ」

 

 そう、梅雨ちゃんに言う。

 これは励ましでも希望的な観測でもない。

 実際今回の1次試験の内容は峰田にとってはかなり有利なものなのだから。

 峰田のモギモギに触れれば、その相手はもう動けなくなる。

 モギモギが1個だけなら、あるいはそこを起点として動けるようになる可能性もあるが、それが2個、3個となれば当然のように動けなくなる。

 その上で1500人近い受験者がいるのだから、狙いたい放題だろう。

 ……まぁ、俺が200人近く、イナサが100人近くを倒したのを考えると、残りの人数はかなり少ないだろうけど。

 

「峰田のモギモギがあって、緑谷が言うように他の連中と協力していれば……それこそ、今すぐにでも峰田がここに現れても不思議じゃないと思うけどな」

 

 個人の攻撃力はともかく、補助という意味ではかなり便利だし。

 

「何だか前から思ったのですが、アクセルさんの峰田さんに対する信頼は、かなり強いですよね?」

「ウチもそう思う。……いやまぁ、峰田のモギモギが便利なのは分かるんだけど、それでもこう……普段の言動を見ると、とてもじゃないけどアクセルのように信頼するのは難しいんだよね」

 

 ヤオモモと耳郎の言葉に、この辺は男と女の違いもあるんだろうなと思う。

 男の俺にしてみれば、峰田の普段の言動……もっと言えば、セクハラ気味なその言動は、そこまで気にしたりはしない。

 いやまぁ、限度を超えるようなセクハラなり下ネタの発言がある時もあるので、一概に大丈夫とは言えないのだが。

 ましてや、俺は今の状況を見れば分かるように、クラスの女達と仲が良い。

 ……峰田も外見は悪くない――マスコット的な意味で――のだから、女にがっつくのをもう少し隠すなりなんなりしていれば、モテるとは思うんだが。

 峰田自身が本当の自分を偽りたくないと言っている以上、それは仕方がないとは思うけど。

 

「男にしてみれば、峰田は時折ちょっとやりすぎというのはあるけど、そこまででもないんだよな」

「……でも、アクセルの場合はそういうのとは別に、峰田に絡まれてるでしょ?」

 

 耳郎のその言葉には、俺もすぐには反論出来なかった。

 実際、その言葉は決して間違っている訳ではないのだから、当然だろう。

 

「まぁ、それは仕方がないと思う。茨とかを見れば、峰田にとってはもの凄く嫉妬してきてもおかしくはないんだから」

『あー……』

 

 耳郎やヤオモモだけではなく、梅雨ちゃんまでもがそんな風に同意の声を上げる。

 いやまぁ、今の言葉は同意の声というよりも多分に呆れの意味が込められていたが。

 実際、茨は色々な意味で特殊な存在ではある。

 男として俺に好意を持っている訳ではなく、あくまでも崇める対象、信仰する対象として俺を見ているのだから。

 狂信……というのは少し大袈裟かもしれないが、もし俺が冗談めかしてでも茨に抱かれろと言えば、茨は一切の躊躇なくその身を委ねる程に俺を信仰している。

 俺にしてみれば迷惑……とまではいかないが、それでも決して大喜びするような事ではないのだが、峰田にしてみれば贅沢を言うなという思いが強いのだろう。

 それ以上に嫉妬が強いのだろうが。

 

「でしたら……あら」

「あーっ! 皆、いたーっ!」

「あ、本当だ。それにまだ私達以外にも来てない人はいるみたいだし、最後って訳じゃなかったね」

 

 ヤオモモが何かを言おうとした時、控え室の扉が開いて誰かが入ってくる。

 それが具体的に誰なのかというのはその声からすぐに分かった。

 

「三奈、それに葉隠も……お前達は2人で組んでいたのか?」

「うん。何だか、ミスジョークの学校……傑物学園だっけ? そこでアクセルや爆豪と揉めてた、爽やかな人がいたでしょ? あの人が地面を割って、それでA組は全員バラバラになってしまったんだ。そんな中で透と一緒になって、何とかクリアしてきたって訳」

「凄かったよね、三奈ちゃんの出した酸がビューンって、こう……ビューンって飛んだんだよ」

「透だって、目眩ましをしたりしてたじゃない。あのお陰で相手の動きが止まって酸を命中させることが出来たんだから」

 

 そんな2人の会話を聞く限りだと、見事に圧縮訓練の成果を出したといったところか。

 とはいえ、いつまでもここで話している訳にもいかず、三奈と葉隠は奥に行ってターゲットを外し、ボールと共に回収すると、こっちに戻ってきた。

 その時にはシュークリームやクッキー、チョコといったものをそれぞれ持ってきており……

 

「おい、無理にこっちに座らなくてもいいだろ」

 

 何故か4人用の席に強引に入ってくる。

 いやまぁ、4人用というのは大人の男を基準にしてのものである以上、女は人数以上に座れるだろから、そこまで窮屈という訳でもないんだが。

 

「ケロ、私はちょっと移動するわね」

「あ、梅雨ちゃん、ごめんなさい。やっぱり私が……」

「いいのよ、葉隠ちゃん。今は頑張り時でしょう? 私は参戦してないんだし、ここは葉隠ちゃん達が頑張る番だと思うから」

 

 何だかそんな風に俺には意味を理解出来ない言葉を交わしつつ、梅雨ちゃんは轟達の席に向かう。

 ……梅雨ちゃんと轟、障子って一体どんな話をするのかちょっと興味があるな。

 そんな風に考えていると、最初に席に座った三奈が口を開く。

 

「ね、ね。それより聞きたいんだけど、やっぱり最初に放送があった200人くらいを一気に倒したのって、アクセルなの?」

「そうなるな」

「どうやって? ボールは1人6個でしょ? なのに……」

「これだよ」

 

 三奈の言葉に、パチンと指を鳴らして炎獣を生み出す。

 当然ながらこの控え室の中で目立つ炎獣を生み出す訳にもいかないので、テーブルの上に乗るくらいの小さなリスの炎獣だったが。

 

「炎獣を大量に作って、それに相手のボールを奪わせて、ターゲットに直接触れさせた。……まぁ、他人のボールでもこっちのポイントになるかどうかは分からなかったが、試してみたら上手くいったってところか」

 

 もし失敗したら、それこそ俺がボール6個を使って2人をさっさと撃破扱いにして合格をすればよかっただけなのだが、幸いなことにボールを奪った時点で所有権はこっちのものになったし。

 ……もっとも、炎獣でボールを奪うといった事をしてもこっちに所有権が移るというのは、一体どうやってその辺を判断したのか、ちょっと気になるが。

 ただ、あのターゲットは何気に高性能な装置だったのを考えると、多分だがあのターゲットが何らかの情報収集機器の役割も果たし、目良を始めとする仮免試験の試験官達に情報を送っていたのかもしれない。

 そうなると、俺が人間ではなく混沌精霊であるというのも、身体情報から伝わっている可能性もあるのだが……まぁ、その辺については目良が相手だし、その辺りの情報を目良が公にするとも思えないので、問題はないが。

 公安が独自の情報として保存しておくといった可能性もあるが……まぁ、そのくらいなら俺にとっても特に問題はない。

 

「ふーん。そういうのもありなんだ。それなら、酸の濃度を弄って吸着力を高めて、それでボールを奪って使ってもよかったかもしれないね」

 

 三奈の言葉に、そういうのも出来るのかと納得する。

 三奈の個性の酸は、その名称通り酸性の液体をかなり自由に使う事が出来る。

 その辺りの調整を上手い具合にやれば、峰田のモギモギと同じような感じで相手を地面なり壁なりに瞬間接着剤で付けるような事をしたりとか、そういうのも出来る訳だ。

 

「残念だったな。……まぁ、次からはその辺も気を付けてみるのもありだとは思うけど。あるいは2次試験の時とか」

 

 そう言いつつ、パチンと指を鳴らしてテーブルの上にいた炎獣を白炎にして消す。

 

「あ……」

 

 そんな声が聞こえ、そちらに視線を向けると……そこには見ず知らずの男の姿があった。

 知り合いはまだ合格していないのか、1人で少し離れた椅子に座り、何らかの飲み物を手にしていた。

 その男が、唖然とした様子で俺の方を見ていたのだ。

 ハーレム状態の俺を見て驚いたのか、あるいは消えた炎獣を見て驚いたのか。

 タイミングから考えて、恐らくは炎獣が消えたのを見て、こうして驚きの声を上げたのだとは思うが。

 とはいえ、それでどうしたとも思うが。

 炎獣について見られたらところで、あれだけ1次試験で大々的に使ったんだから、今更だしな。

 1次試験をやった場所はかなりの広さがあったのを思えば、俺が炎獣を使えるというのを知らない者もいるだろうから、2次試験の内容については炎獣について知らない者にとっては俺の存在が有利になるといった可能性は十分にあったが。

 

「どうしたの、アクセル君」

 

 俺がこの場にいる面々ではなく、他の場所に視線を向けているのに気が付いたのだろう。

 葉隠が不思議そうに尋ねてくる。

 

「いや、今テーブルの上にいた炎獣を見ていた奴がいてな。それで炎獣が消えたのに驚いていたんだよ」

「……ああ、なるほど。そういうこと。ここで炎獣を見せるのは失敗だったんじゃない?」

 

 俺と葉隠の話を聞いていた三奈が、そう会話に入ってくる。

 

「まぁ、どうせなら知られない方が次の試験の時にも有利かもしれないけど、その辺についてはもう今更の話だしな。それに、プロヒーローとしてやっていくのなら、自分の個性について知られる事はそう珍しい事じゃないし」

 

 特にビルボードチャートの上位に入るようなプロヒーローであれば、当然ながらその辺についての情報も多くの者に知られているのが当然だとなる。

 だからこそ、今回の一件においても炎獣について知られても特に問題はないとしておく。

 もっとも、だからといって自分から炎獣という能力が使える個性であると言ったりはしないが。

 

「……」

 

 そして、俺の言葉を聞いていたヤオモモがジト目を向けてくる。

 ヤオモモは俺の正体について知っているので、俺がプロヒーローになるつもりはないというのを知っているだけに、ビルボードチャートがどうとか言われても、一体どの口で……といったように思っているのだろう。

 とはいえ、シャドウミラーの件が明らかになっていない今のヒロアカ世界において、自由に行動するのにプロヒーローの資格というのはかなり便利なものなのは間違いない。

 それに……プロヒーローの資格、それも仮免ではなく本試験に合格した者であっても、必ずしもプロヒーローとして働いている訳でもないのは、ヒーロー飽和社会の現状を見れば明らかだろう。

 そういう意味では、俺が仮免試験や本試験に合格してプロヒーローが出来る状態にするというのは、決して悪い事ではない。

 寧ろ何かあった時に迂闊に能力を使い、周囲の者達を怖がらせるようなことがない状況の方がいいだろう。

 なので、ヤオモモのジト目は実はそこまで気にするようなことではない訳だったりするんだよな。

 まぁ、実際にそれを言ったりすれば、それはそれでヤオモモにとっては色々と不満があるのだろうが。

 

「何だかアクセルとヤオモモが目と目で会話してるんだけど……ウチの気のせいかな?」

「ううん、私もそう思う」

「だよね。……これはヤオモモから色々と、本当に色々と聞かないと」

 

 耳郎の言葉に葉隠と三奈がそう言い……別に小声で話している訳でもないので、しっかりヤオモモの耳にも聞こえたのだろう。

 ヤオモモは薄らと頬を赤く染めるのだった。

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